『奇跡の寄席 天満天神繁昌亭』
平成18年(2006)9月15日に大阪天満宮そばに開席した天満天神繁昌亭。これは江戸、上方問わず「噺家が、自分たちの手で定席(常設寄席)を建設させた」という前代未聞の快挙であった。
しかし、天満天神繁昌亭の「奇跡」はこれだけに留まらない。
●戦後、ほとんど消えかかっていた上方落語の灯を、四天王(六代目笑
福亭松鶴、三代目桂米朝、三代目桂春團治、五代目桂文枝)の熱意で
守り継承させていったこと
●「定席建設」が決まるも資金も土地もあてはなし。落語家だけがその
「元手」であったこと
●大阪天満宮の土地を無償で借り受けるという幸運が訪れたこと
●行政が1円も出していないのに、市民や地元企業から2億4千万円の
寄付が集まったこと
●構想からわずか3年あまりで開席が実現したこと
●「落語家による寄席運営」も前代未聞だったこと
●開席後、4年以上経った今日でも「繁昌」を続けていること
複数の「奇跡」に彩られた繁昌亭秘話を記した著者の堤成光さんは大阪商工会議所中小企業振興部(流通担当)の現役所員で、シカゴ日本商工会議所時代に落語家・桂三枝と出会い、仕事上の親交が始まった。そして平成15年(2003)の正月、彼は三枝から「落語の定席を建設したい」との思いを打ち明けられ、この物語が加速する。
いくつかの産みの苦しみを経て、繁昌亭が完成し今日の隆盛を築き上げた最大の理由を、堤氏は「そこに桂三枝という噺家がいたからこそ実現できた」と断言し、それこそがやはり、繁昌亭最大の奇跡ではなかったかと振り返っている。
この本を紹介するにあたり、発売前(http://www.140b.jp/blog/2009/08/post_465.html)や、繁昌亭3周年の日にめでたく発売が出来たこと(http://www.140b.jp/blog/2009/09/post_481.html)、この本を出版するにあたっての思い出話(http://www.140b.jp/blog/2009/11/post_505.html)をブログに書いた。この類い希な「伝えたい情熱」を持った著者と出会ったことは、落語好きの読者にとって、もちろん140Bにとっても実に大きな財産であったと感じる。
『読み歩き奈良の本』
それらは知られた観光名所であることもあれば、車窓から見飛ばすような風景であったり、どこにでもあるような商店街であったり(実は物語の重要シーン)...という発見が随所にある。
これらのページや後半の「私ならこの奈良を語る」に登場する奈良各地の表情は、凡百の観光ガイドブックが逆立ちしても出せない「地元の人間がよく知る普段着の奈良」の顔である。なるほど、人々が暮らす奈良を歩いて地元の人に出会ってこそ、自分なりの「物語」を紡ぐことができるのだと、写真が語りかけてくる。
取材・構成を担当した140Bの平井和哉は、現地の空気感までを切り取ったような写真のために、四国から中村政秀(せとうちカメラ)を呼び寄せ、それに応えて中村は数日間シャッターを押し続けた。慌ただしい名所巡りではない、「ゆっくり日なたぼっこ」したいがために奈良を訪れたくなるビジュアルがページを彩っている。「奈良の人たちが知ってそうで知らなかった切り口」を見つけるため、あえて、取材者を含めた制作チームはすべて非奈良在住の人間を起用した。
冒頭にて紹介した奈良県立図書情報館館長・千田稔氏は、ならまちのカフェ[カナカナ]のオーナー・井岡美保さんと「いかにも奈良らしい、ということ。」で対談しているが、これが実に本音満載トークで時にクスッとさせ、時に「奈良の値打ちとは何ぞや」と考えさせ...と、この本の締めくくりにふさわしい内容となっている。「奈良を第二の京都にしたらあかん」という千田館長(京大卒です)の発言に、地元奈良人の矜持を感じた。
「遷都千三百年」の年に発刊したが、そんな「イベント的」なものが嫌いor苦手な人にこそ手に取って奈良を歩いてほしい1冊である。
ヘルシオでつくるアラン・デュカスのナチュラル・フレンチ
「素材の力をとことん引き出し、ナチュラルなひと皿に仕上げる」料理で注目の三つ星シェフ、アラン・デュカスが、余分な塩分や脂を落として調理するウォーターオーブン「シャープ ヘルシオ」を使ったオリジナル料理レシピ集。
【コンテンツ】
- 料理の前に
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- アラン・デュカスからのメッセージ
- 本書に登場する2つの基本レシピ
- 使ってみたい食材と調味料
- 全40レシピの調理時間&材料リスト
- 野菜料理
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- グリーンアスパラガスのロースト 黒オリーブのタプナード
- カリフラワーとブロッコリーのクスクス
- 野菜のギリシャ風
- 野菜のクロックマダム
- なすのファルシ
- トマトのファルシ
- 冬の野菜とフルーツのグラタン マッシュルームのデュクセル
- 夏野菜とパルメザンチーズの薄いタルト
- じゃがいもとカボチャのグラタン ベーコンの香り
- グランアイオリ
- ブロッコリーのブーケ アンチョビソース
- さやいんげんのサラダ 桃とアーモンド添え
- トマトコンフィ&トマトのグラタン
- 長ネギのエチュベ ビールとハムのソース
- 冬野菜のロースト
- 紫キャベツと半熟卵のサラダ
- その他の素材料理
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- 魚介料理
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- サーモンの冷製 パリ風 蒸しジャガイモ添え
- 帆立貝のキャベツ包み レモン風味のバターソース
- かにのクロケット スパイスのきいたアボガドのソース
- あじのフィレと夏野菜のティアン
- さばのオリーブ、レモン、トマト、バジル風味
- たらのくるみ入りパン粉焼き 緑野菜を添えて
- かれいとにんじんのエチュベ
- 米料理
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- いかのリゾ サフラン風味
- ココナッツミルクのピラフ えびのブロシェット、カレー風味
- パスタ
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- トマトとほうれん草、リコッタチーズのラザニア
- 小麦粉料理
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- ねぎとベーコンのそば粉のクラフティー
- とうもろこしのガレット いくら、マーシュのサラダ
- 卵料理
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- 目玉焼きときのこのパセリ風味
- ズッキーニのスカルパッチャ
- 鶏料理
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- 鶏胸肉のアーモンドの衣焼き アンディーブとレーズン添え
- 鶏のフリカッセ バスク風
- 豚肉料理
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- 豚ヒレ肉とじゃがいもの香草焼き
- 豚肩肉と秋野菜のオーブン焼き
- 牛肉料理
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- 牛リブロースのロースト ポム・ブーランジェール
- カルボナード(牛肉のビール煮)
- デザート
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- モワルー・オー・ショコラ いちごのソルベ
- プチ・ポ・ド・クレーム ショコラ、バニラ、カフェ
- ルバーブといちごのタルティーヌ キルシュ風味のサバイヨンソース
- レモンのケーキ
- 価格
- 2,100円
- 単行本
- 84ページ
- ISBN-10
- 4903993116
- ISBN-13
- 978-4903993119
- 発行日
- 2010/10/25
- 商品の寸法
- 24.4 x 18.6 x 0.8 cm
おせっかい教育論
教育とはビジネスではなく、個人の利益追求でもなく、もちろん商品でもない。
その本質は「おせっかい」である──。
日本有数の思想家、大学総長、住職、大阪市長の4人が、「街場の学び」と「これからの教育」、そして、それを支える「共同体の再生」について語り合った。
2回で計6時間以上にわたった、3度目はないような濃密な座談会を完全収録。
「知識を得たり、技術を身に付けたり、資格を取ったりして、それで高い年収を得たり、社会的地位や威信を獲得したり、そういう自己利益を達成するために人は教育を受けるのだという思想が広まってしまった。
それが教育崩壊の根本にあると思います(「おせっかい教育論」本文より)」という内田樹氏の問題提起に始まり、教育を通してニッポン社会の歪みをズバズバ指摘していく、知的好奇心を刺激する1冊。
第一夜(2009年10月1日、ナカノシマ大学での座談会)、 第二夜(2010年1月、大阪市内某所での完全クローズド座談会)に加え、本書のために4氏が新たに書き下ろした「教育論」(2010年7月)を収録。 中沢新一氏の推薦帯付き。
- 価格
- 1,260円
- 単行本
- 218ページ
- ISBN-10
- 4903993108
- ISBN-13
- 978-4903993102
- 発行日
- 2010/9/28
- 商品の寸法
- 18.6 x 12.8 x 1.6 cm
アラン・デュカスのひと皿フレンチ 魚 (LECON日本版)
世界の3つ星シェフ(全部で20個)アラン・デュカスによる、フランスで大人気の家庭料理レシピ本「LECON」日本版が初登場。日本の食材と調理器具で作れる、オリジナルレシピ集。 料理の行程写真が1レシピ平均25カット。 日常なじみのある食材。 レシピ毎に「おすすめワイン」と「食材買い出しカード」つき。
【コンテンツ】
料理の前に
アラン・デュカスからのメッセージ
フランス料理と魚
成功への10の秘密
魚料理
いわしのグリル ラタトゥイユ バジル風味
さばのマスタード風味
あじのグージョネット ハーブのグリーンソース
鯛の黒オリーブ詰め アスパラガスのロティ
サーモンのタルタルとブリーニ
ほうぼうのポワレ ズッキーニのリボン タプナード風味
舌平目のムニエル グルノーブル風 じゃがいものサラダ
かれいのロティ 野菜のバリグール風
かつおのバスク風
鱈のブランダード にんにく風味のクルトン
アラン・デュカスのひと皿フレンチ お米 (LECON日本版)
世界の3つ星シェフ(全部で20個)アラン・デュカスによる、フランスで大人気の家庭料理レシピ本「LECON」日本版が初登場。日本の食材と調理器具で作れる、オリジナルレシピ集。料理の行程写真が1レシピ平均25カット。 日常なじみのある食材。 レシピ毎に「おすすめワイン」と「食材買い出しカード」つき。
『せやし だし巻 京そだち』 小林 明子 (原作), ハンジ リョオ (漫画)
京都ど真ん中の呉服問屋に生まれ育ち、今も京都に住む雑誌ライター小林明子さんの少女時代を綴ったコミックエッセイ。漫画は売り出し中の若手ハンジリョオさん。舞台となった昭和40年代の京都はハンジさんがまだ生まれてない時代ながら、原作者小林さんをして「あたしの頭の中を覗いたか、タイムマシンに乗ったの!?」と驚嘆せしめた。
淡交社の雑誌『キョースマ!』の「錦市場特集」が小林・ハンジの最初の仕事だったが、その時にハンジさんが描いた「中京のアッコちゃん」という4コママンガが小林さんの記憶に残り、「これ本にしたら絶対に面白いよ」と東京のある編集者からも薦められて小林さんは「本にしよう!」と決意。それから1年近い年月を経て出版となった。
タイトルについては二転三転あったが、発売2カ月前にこれに落ち着く(後述)。小林さんは次のように書いている。
せやし は、便利な言葉である。
後に続くのが否定の言葉でもいいし、肯定でもかまわない。
そのどちらでなくともかまわない。
英語の「you know」。「because」ほどカタくない。「あの〜」みたいなもん。
こんな風に断言すると、京都評論家の人が怒ってくるかもしれないが、少なくとも私たち京都の女子は、そのように使ってきた。
(あとがきより)
物語は60〜70年代、京都・中京区の呉服問屋に三姉妹の次女として生まれた主人公アッコちゃん(小林明子)と周囲の人々が織りなす、昭和風味満載の「京都家族」物語である。
躾に厳しいファミリーの面々、出入りする職人さん、お手伝いさん、ナゾに満ちたご近所の人々...。当時は「子供は社会の中で、いろんな人によって育てられる」というのが普通だったことが分かる。
「いけず」のひと言ではくくれない、愛すべき京都人の「ややこしさ」とことんを描いた、リアル京都なコミックエッセイである。
この本は朝日新聞や京都新聞だけでなく、共同通信でも紹介されたし(後述)、大垣書店四条烏丸店では発売3週間後に小林明子・ハンジリョオ両著者を招いてトークショーも開かれた。また1カ月後には富小路三条のギャラリーH2Oにてハンジリョオさんの原画展も開催された。
社会的な反響も大きかったが、。発売後にずいぶん経過しているにもかかわらず、この本を読んだ人たちがいろんなブログやツイッターで書いてくださっていることが実にうれしく感じる。
京都で知り合いの家を訪問した際、その家の人にぶぶ漬けを勧められたら帰宅をさりげなく促している、というのは有名な話。「一見さんお断り」の精神文化にも代表されるように、京都には"裏"の顔がある。
本書は京都の老舗呉服問屋に育った著者(アッコちゃん)の子供のころの話を描いたコミックエッセー。叔父や叔母、住み込みのお手伝いさんも合わせて13人の大家族で暮らしていたというのだから、爆笑エピソードが満載。京都版「ちびまる子ちゃん」だ。
「いかなる時も人の目を気にするべし」というのが京都人の流儀。見栄っ張りで、行列に並ぶのを恥ずかしがり、誰に見られても恥ずかしくないように振る舞うのだそう。
例えば、アッコの母。アッコが風邪をひいて休んだときに、先生がお見舞いに来ると聞いて、パジャマを新品に替え、寝床を客間に移動させる。旅行に行く前に、肌着を必ず買い替える祖母。いつどこで病院に担ぎ込まれても、恥ずかしくないように。
いつの間にか著者が聞こえるようになったものは、京都人の裏の声。「ほっそりして着物がよぉ似合わはるわぁ」というのは、「あの人痩せすぎで、しがんだ(※茶カスのように水分がなく魅力がない)みたいやなぁ」ということ。
No.1観光都市の"京都"を支えるおもてなしの心は、京都人の表と裏の顔でできている!? 京都で暮らすには、まだまだ修業がかかりそうだ。
(140B 933円+税)=江藤かんな
(共同通信)
「中身は面白いと言ってくれるんですがね、このタイトルでは伝わりづらいとあちこちの書店さんで言われて...」と販売のアオキが営業から戻ってきてこぼす。
弊社がつくる初のコミックエッセイは、京都のド真ん中の呉服問屋で生まれ育ち、雑誌の京都特集で数多く執筆しているライター、小林明子さんの原作。13人家族で三姉妹の次女だった小林さんは幼稚園の頃から「家事労働補助要員」だったそうで、昭和40年代&京都&大家族の笑えたりホロっときたりする話を、若手のハンジリョオさんが描いたもの。「雅でもはんなりでもいけずでもない、リアル京都家族マンガ」である。
最初のタイトル『中京のアッコちゃん』は「チュウキョウって名古屋の話?」という声でアウト。それで『京都・呉服問屋のアッコちゃん』なら文句はないだろと自信満々で販促したら、冒頭のご指摘を書店さんからいただく。「呉服屋さんの職業マンガと違うでしょ?」おっしゃる通り。
「もっとええタイトルが見つかるはずやし、みんなで考えよか」
2月のある日、作者のお二人にアートディレクターのサカモトさん、販売のアオキと私の5人で集まる。何だかんだと紙に書いては消していくうちに、最終的に一つだけなら何を残したいか、という話になって、原作者がまず...
小林「やっぱりだし巻きやね。あれ出されて怒る人いてないやん」
青木「ハンジさんはどない?」
ハンジ「だし巻きが登場する話は気に入ってるので賛成だけど、都育ちという意味を入れたいな」
坂本「それだけやったらいかにも京風って感じなので、何かリアル感のある言葉を足したいですね」
中島「リアル京都な言葉いうたらやっぱり"せやし"かなぁ...」
かくして、美味しそうなだし巻きの黄色が表紙の『せやし だし巻 京そだち』という商品が世に出たのだが、こんなタイトルに着地するとは全く想像の範囲外だった。
おかげさまで『せやし...』は順調な出足だが、そのこと以上に嬉しかったのは、「もっとええタイトルがあるはずや」という書店さんからの「お題」に対して、一つの答えまでたどり着けたいうこと。
あれが正解かどうかは分からないが、当初目指した「そうそう、こんな本」というイメージは形にできた。書名が最初から明確な時もあるが、大概はイメージだけで「言葉」になっていないことが多い。言葉を探す道中で書店さんと一緒に歩けてラッキーでした。
(『文化通信』'10.6.14付/中島淳「大阪発・暑苦しい版元の話5」)