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山崎豊子を語る4人の女性(3・田中光子さん)

担当/中島 淳

今回のナカノシマ大学9月特別講座は、田中光子さん(文藝春秋)という編集者がいなかったら開催はなかったと思う。というより、田中さんがいなかったら『作家・山崎豊子』という本も生まれなかったはずである。

2018年9月27日(木)、ナカノシマ大学9月講座「作家・山崎豊子との52年」で講義する野上孝子さん。今回も同じ相愛大学本町キャンパスで開催します

私は、山崎豊子(1924〜2013)の秘書として半世紀を作家と並走した野上孝子さん(1939〜2021)を取材したことがきっかけでとても良くしていただいて(ひつこいヤツだと思われていただけかもしれないが)、彼女が大作家を偲んで書いた『山崎豊子先生の素顔』の文春文庫版が発刊される2018年9月に、ナカノシマ大学に登壇していただいた。

野上さんは本の「あとがき」で田中さんのことをこのように書いておられる。

「とりわけ本にするに当たっては、田中光子さんに大変、お世話になった。田中さんは『運命の人』文庫本化の時から、先生と深いお付き合いがあった方だった。記憶は正確に思い出すようにと、常に厳しくチェックして下さり、ご自分で当たられた資料を元に、机を並べて何度もご指導戴いた。おかげで山崎先生は不確かな私の記憶から免れることが出来た。」

(野上孝子『山崎豊子先生の素顔』文春文庫)

田中光子さん。入社2年目に松本清張(1909〜92)の担当となり、『松本清張全集(第三期十巻)』を編集。山崎豊子は『運命の人』文春文庫版を編集。雑誌『文學界』の元編集長で、柴崎友香の芥川賞受賞作『春の庭』の担当編集者でもある。後輩の某女性編集者は「文春の宝であり良心」と彼女を評していた

野上さんと田中さん間にはとてもいい空気が流れていて、野上さんは口癖のように「やっぱり田中さんがいるから仕事がやりやすいよね〜」と言っておられた。親子ほど離れた歳の差なのに、野上さんは田中さんを姉のように慕っていた。

山崎豊子の没後は、展覧会や講演会などで文藝春秋や新潮社などの出版社や毎日新聞社、ラジオ大阪などのメディア各社と山崎家の連合チームで動くことも結構多いのだが、田中さんはチームの人たちから「気さくで頼りになる存在」だとリスペクトされていた。私もど厚かましいながら、いつも頼りにしている。

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この『作家・山崎豊子』には初収録講演も載っている。

大阪の財界人・文化人たちの手で1923(大正12)年に設立された社交クラブ「清交社」にて山崎豊子が「大阪と小説」というお題で話した講演録は、清交社の会報に掲載されただけだったのが、今回初めて書籍に所収された。

田中さんは清交社の担当者にも熱心にお願いして、初の転載が成されたという次第である。私も以前会報でこの講演を読んだが、率直かつユーモア満載で非常におもしろい講演録だったので、実にうれしい。

「作家の講演ぐらい珍しくないだろう」と多くの人がお思いかもしれないが、山崎豊子という作家は違う。

講演どころかエッセイやコラムの執筆、文学賞の審査員、テレビ出演、雑誌のグラビア撮影のような「人気作家に依頼される仕事」はほとんど受けず、ひたすらに取材→作品執筆→校正→出版の日々を修行僧のように歩む日々だった。

1962(昭和37)年1月23日の、堂島ビルヂングの9階にあった清交社で行われた講演は、山崎豊子がまだ『白い巨塔』を書く以前、殺人的日程に身を投じる前だったということもあって、とても貴重である。

『作家・山崎豊子』より、38歳になったばかりの山崎豊子の講演。『暖簾』はどんな人たちが読んでいたか、という出版社の数字を紹介したり、『暖簾』をヒット作品に押し上げた意外な「応援者」にも触れたり、聴衆を飽きさせない

この講演は山崎豊子の小説とは違って、「虚構としての小説と、モデルとなった実在の人物とは違うんやで〜!」と自分自身がエラい目に遭った実例を交えて思いのたけをズバズバ話し、しっかり笑いもとっている(電車の中で読むのは危険かもしれない)。『作家・山崎豊子』はまずここから読んでいただいても良いくらいおもしろいので、ぜひご一読ください。

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今回、田中さんには講座の進行と聞き手をやっていただけることになった。

第1部では、学内図書館で初めて「女学校時代の山崎豊子の作文」を掘り出してくれた相愛大学教授・荒井真理亜先生の、第2部では、山崎豊子の姪で姉妹の小八木利子さん・香西順子さん二人にとって「パワフルすぎるおばの思い出」の聞き手を務めていただきます。

田中さんは『作家・山崎豊子』を1冊作った編集者だけに、「泣く泣く掲載できなかったネタ」もたくさん持っておられるはず。それも楽しみです。

それにしても、こんなグレートな編集のプロが進行と聞き手をしてくれるとは、ナカノシマ大学の受講者はかなりラッキーだと思います。ぜひ26日(土)の午後は相愛大学本町キャンパスにお越しください。

お申し込みはこちらまで→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20260926