第五話 市場と立ち飲み

私は、長屋の残る町に住んでおり、必要なものは市場と銭湯と、
立ち呑みではないかと、仮説を立てて、けっこうこの持論の検証をやっている。

この3つが揃う場所は、あるようで案外少ないが、阪急池田駅の近くで
手頃なベース基地を見つけた。そこからこの文を書いている。

街が古ければ、何でも良いと言う訳ではないが、人間は齢をとると動線が近い方が助かる。

つまりタワーマンションに住みたい人は、北浜のように、三越の跡地に住んで、降りて行くと、買い物が出来て、
便利に思えるが、やっぱり「ちょっと買い物のついでに出す郵便物を忘れた」からと、取りに帰るのが大変だ。

北浜には個人的な好きなバーが、三越跡地のタワーの裏にあるレトロビル1階にあるので、この街は私は批判しない。

しかし、老後や、セミリタイアして、のんびりした町に住むことは理想の人は多いと思う。

今回はそういうテーマの考察である。

北摂でも阪急宝塚線に、沿って電車に乗ると、まず庄内に大きな市場がある。

そして岡町駅、次が箕面線乗り換えの石橋。
石橋の商店街は、阪急と平行にあるロケーションだ。

次いで小さな商店街の残る池田と来る。
川西能勢口から先の兵庫県に入ると、アーバン化が進んで、庄内や十三のような風景は、
今は全く見られなくなった。マンションの街である。


なぜ市場があると、良いのかを説明すると、高齢者はバリアフリーが理想だが、
エレベータやエスカレータを使って、ビルの内部を上下するよりは、
立って歩けて、目線で商品を見て、肉や野菜を鮮度を見ながら買い物できるのが、理想だと思われるから。

それと発泡スチロール容器を用いた、スーパーの商品よりも、
買い物かごや私のように手提げ袋で買い物をすれば、スチロール容器を極力減らせる。

そういう考えに到って、歩きや自転車で、市場に買い物に行くのが、
昭和のままの風景のある街を探して、現在の住居に至った。

あとは、銭湯が近くにあれば、一日の疲れは寛げるだろうし、さらに安い立ち飲みがあれば、最強だと思う。

私のこういった考え方に近い、有名な方に平川克美さんがいる。

小商いの勧めくらいから、似た考えをされる方がいることに気が付いた。

街の規模はどのくらいが、理想的だろうか。

阪急神戸線、宝塚線、京都線が合流する、十三駅は町歩きが面白い。
商店街は、西口を出て、大きな国道を渡った所から始まる。この商店街は楽しい。
一方東口の商店街は、小さく魅力は落ちるが、アーケードの横から出た辺りに
酒屋のやっている立ち飲みが在り、その30m横には、遅くまで開いている銭湯がある。

これは立ち飲み歩きには、好適な組み合わせで、よくこの二点を「はしご」する。
今年は一回、「ちちんぷいぷい」で取材を受けたこともあった。


さて面白い店が、最近、庄内の豊南市場に出来た。
真横で野菜を売ってるような場所の、スタンドである。
立ち飲みというより、もっと屋外感覚に近い、ドラム缶に料理と酒を置いて飲むお店だ。

オープンしてふた月くらい。今は透明ビニールの囲いに入って、立って飲む。
開く時間は昼間からで、市場に買い物がてら、ショッピングツアーはいかがだろう。

豊南市場はプロの店だから、細かな買い物には、向かない所もあるが、
ムードが変わるのは、土曜日で、一般客の狙い目はサタデーである。

最近、阪急庄内駅周辺は、大阪空港や新大阪駅への便利が良いので
外国人向きのゲストハウスが、複数出現して、豊南市場を買い出しに利用、
そしてゲストハウスで自炊する旅行客も、現れるようになった。

もしかしたら、昼下がりの立ち飲みで、市場帰りの大将と、ガイジンさんとが
遭遇する風景が、そのうちに見られるようになるかもしれない。

変貌する大阪。賛否を呼ぶ万博誘致。
しかし、食いもんのある風景や、酒を巡る風景は、うまく様変わりしながら続いて欲しい。
後継者問題も囁かれるが、新しい話題のある市場の一角からレポートした。


【今日のお店】

立ち呑み「やっちゃん」

豊中市庄内東町1丁目8-7

豊南市場本館建物の前の角。漬け物店の隣

☎︎080-1444-2489

営業時間 14:00-23:00 LO22:30


生ビール400円、中瓶450円 
18:00までは、生ビールとチューハイ、ハイボールは100円引きの300円

料理は、牛スジ煮込み400円、ネギ入りだし巻き300円など

弘津 興太郎(ヒロツ コウタロウ)

新聞社を50歳で早期退職。私鉄沿線の路地裏長屋に棲み、立ち飲みと銭湯に通うのが日課。
好きなものはヤレたイタリア車。