第1回 カドマル建築(前編)

芝川ビル 
国登録有形文化財
1927年築
大阪市中央区伏見町3-3-3
設計:本間乙彦、澁谷五郎
個性豊かな大大阪時代の建築のなかでも、とりわけ異彩を放つ芝川ビル。マヤ・インカの古代文明をモチーフにした、彫りの深い濃密なデザインが特徴。戦前までは芝蘭社(しらんしゃ)家政学園という花嫁学校だった。現在は人気店舗の集結する話題スポットになっている。
カドマルの部分がそのままビルの顔になっているのが芝川ビルの特徴。全体に装飾豊かなビルだが、玄関廻りは一段と濃密
全景を見下ろすと、外壁全体が3つのパートに分割されたデザインであることがわかる
屋上は2007年に復元工事が行われた。現在は「モダンテラス」としてイベントスペースに
段を付けたり模様を変えたりして、窓は垂直線を強調したデザインになっている
全ての窓に鉄扉が付いているのは、関東大震災の教訓を活かした耐震耐火の建築を目指したため
地下室に光と空気を送るドライエリア
正面玄関
マヤインカの古代遺跡を思わせる圧巻の玄関装飾
外壁には兵庫県の高砂市で取れる竜山石(たつやまいし)が用いられている。柔らかくて細かな彫刻が施しやすい
放射状に拡がる階段のステップは、訪れる人の気持ちを高揚させる
窓の下を飾る巨大なレリーフは、劣化が激しかったために2009年に復元された
メインの階段も個性的なデザイン。分厚い木の手すりと支柱の彫刻に対して、アンモナイトのような鋳物の飾りが対比的。これが4階までずっと連続する。
玄関入ってすぐに設けられた小部屋は、かつて客だまりとして使われていた。芝川ビルの中で最も濃密な装飾の施された部屋。梁の持ち送りには謎の怪獣が鎮座する。現在は人気のチョコレート店が入居。
チョコレート店店内の装飾(北側)
チョコレート店の装飾(南側)
チョコレート店の彫刻
内外の至る所にみられる個性的な装飾の数々。1911年にアメリカの探検家がマチュ・ピチュの遺跡を発見して後、アメリカでは中南米風の装飾が流行するが、芝川ビルもその影響を受けてデザインされたのかもしれない。
玄関ホール内、ドア付近の石柱
玄関ホール内、郵便受け横の石柱
三階窓の上の装飾
正面玄関上部の装飾
各階の階段横の壁に設けられたパイプの口。各階毎につながっていて、当時はこれを使って会話をしたと考えられる。
正面玄関の天井に設けられた小さな照明のカバー。こんな細かなところまでデザインされている。現在は点灯していない。
昔の窓はスチール製。小さな金物はまさに工芸品のような美しさだ。もちろん現在は入手不可能。
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