当時最新の構造設計技術が、82mを超える大スパンを柱なしで支える繊細なトラス構造を実現した。
構造のジョイント部分もデザインされている。
天井に貼られたテフロン膜はオープンエアダクトと呼ばれる。ジェットノズルで勢いよく吹き出した空調が、膜のラインに沿って大空間全体に運ばれる。
天井に飾られたフライングモビールは、世界的に活躍する造形作家・新宮晋の作品。
サインや照明は全て床や建屋の上に設けられていて、天井には余分なものは一切ない。実は天井が美しい建築は、日本にはとても少ない。オープンエアダクトは照明の反射板も兼ねる。
大阪には、優れた現代建築がないとよく言われる。関西国際空港が完成してからもう20年が経とうとしているが、大阪を代表する現代建築として今なお「関空」の名が真っ先にあがるのは、何とも寂しいところだ。
関空のターミナルビルは素晴らしい。特に国際線出発フロアの柱のない大空間、滑走路に向かって伸びていく天井の絶妙のカーブが、いやがうえにも旅への気分を盛り上げる。
設計したのはイタリアの建築家レンゾ・ピアノ。大規模な国際コンペで選ばれた。大きな鳥が羽を広げたようなターミナルビルは、両ウイングの端から端までなんと長さ1.7km。こんな長い建築、他に例がないだろう。しかもレンゾ・ピアノは、その長さ1.7kmを直線にするのではなく、半径16.4kmの緩やかな曲線にデザインした。地球の丸さをも意識した、まさに地球規模の建築。
新しくなったJR大阪駅にも、同じような大屋根が架けられた。関空を上回る迫力だが、練られた形態とディテールの精度は、遠く関空に及ばない。