ミーツへの道 「街的雑誌」の時代

 2010年11月12日 00:00
meets.jpg著/江 弘毅
本の雑誌社 2010年


本の雑誌の人気連載(08年2月号〜10年6月号)の単行本化。当初、2年間24回の予定だったが、好評のために29回になった。帯文は「街と雑誌と人間と 街と付き合い、街で遊び、街を書く。そんな雑誌を作りたい! 京都・大阪・神戸の「おもろい」を詰め込んで創刊された『ミーツ・リージョナル』。個性豊かな仲間たちと巻き起こる出来事の数々...。「街場」のリアリティを前進で追いかけた名編集者の回想記。」とある。

書評掲載については酒井順子さんが、朝日新聞でデカく書いてくれたほか、週刊朝日(文は名人編集者の中川六平さん)、「散歩の達人」でも。
ミーツへの道―「街的雑誌」の時代 [著]江弘毅

[掲載]2010年6月27日
[評者]酒井順子(エッセイスト)

■情報でなく街と店への思い載せて

 関西に「ミーツ・リージョナル」(以下「ミーツ」)という面白い雑誌がある、大阪や京都に行くなら「ミーツ」別冊を読むべし、という話を聞いたのは、八年ほど前のこと。京都に行った時に「ミーツ・京都本」を買ってみたらなるほど、それは情報誌のようでありながら、普通の情報誌とは全く違っていたのです。

 何が違ったのか。それは、「ミーツ」編集長を長年務めた著者による本書を読んだら、わかりました。「ミーツ」は、単に情報を並べる雑誌ではなく、街と店に対する思いを載せた雑誌だったのです。自分たちが好きな街の好きな店に、客として行って、書く。客がいない時の店の写真ではなく、臨場感あふれる営業中の写真と、その街を知っているからこそ確立する文体で書かれた文章とによって構成された頁(ページ)は、見せるし、読ませます。

 そんな「ミーツ」のできるまでがこの本では明らかにされているのですが、底流として存在するのは、他の情報誌に対する、懐疑。「情報誌にはおいしい店やカッコいい服やいい音楽が載っているとは限らない」と読者に刷り込んだ罪は大きい、と書く著者が抱く情報誌への懐疑は、我々の消費生活に対する懐疑、そして東京という大都市に対する懐疑にもつながるのでした。

 岸和田生まれの著者は無類のだんじり好きとしても知られますが、地元を愛することができる人は、他の街の美点を発見することにもたけているのでしょう。街と雑誌との相思相愛関係が、そこにはあります。

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