第2回 カドマル建築(後編)

朝日ビル  
屋上にはかつてアイススケート場があり、地上まで行列が並ぶほどの人気だった。
最上階の大きなガラス面にはレストラン「アラスカ」があり、眼下に広がる大阪の景色を眺めながら、当時まだ珍しかった洋風料理を楽しんだ。
水平線の強調をベースにしながら、要所に垂直線を入れて対比させている。この縦のラインにはかつて照明が仕込まれていて、夜になると光の抽象画が浮かび上がった。
ステンレスの表面には、よくみると渦巻状の模様が付いている。これだけ多くの金属素材を外観に使った建築は、当時大変に珍しかった。
水平線に対する要素として、上下動の階段をガラス張りにして強調している。非常にモダンなデザイン。
カドマルの部分はバルコニーのような壁で水平線を強調しているが、全体が重たくならないよう、途中で細い線に切り替えている。
昭和初期の日本を代表するモダニズム建築。あまりに斬新なデザインは、「日本で最もセンセーショナルなデザイン」と評された。全く装飾を排したシャープで幾何学的なデザイン、ステンレスやアルミなど、当時まだ珍しかった金属素材の多用など、その新しさは、今も全く褪せることがない。
堂島川に架かる渡辺橋に面して、非常に大きく取られたアールが特徴。最上階の連続する大きなガラスの曲面は、当時としては画期的だった。
1931年築
大阪市北区中之島3-2-4 
設計:竹中工務店(石川純一郎)
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