久坂部羊さん『ブラック・ジャックは遠かった』の発売記念イベントのラストは、北海道大学准教授で政治学者の中島岳志さん。中島さんは大阪のご出身。中之島からもほど近い場所にご実家があったそうで、阪大病院や大学のキャンパスがあったことも、よく覚えておられました。
大阪人のお二人の対談とあって、さぞ「ふらふら」トークに花が咲くことと思いきや、ちょうど対談当日の朝日新聞朝刊に、中島さんのインタビュー記事が掲載されたこともあってか、2人のトークは中国やインドの政治思想の問題へと発展。「政治というリアルな問題を扱いながらも、人間の内面を表現したい」との中島さんの発言から、「フィクションを描くことによって、現実以上に現実的なことを表すのが小説なんです」(久坂部さん)と、表現をめぐる考察も。この日が初対面とは思えないほど、対話は深まっていったのでした。
後半には(ようやく?)『ブラック・ジャックは遠かった』の内容に合わせて、中之島での思い出も。小学生の時に1万円札の図柄が聖徳太子から福沢諭吉に変わったのをきっかけに、福沢諭吉について調べてみたという中島さん。福沢が中之島の対岸で生まれていたことを知り、石碑のあるその場所を訪れ、壁新聞に書いたのだそうだ。「阪大の医学部や阪大病院があったのも覚えています。建物が古くて、ちょっと怖かったですね(笑)」。
また、「後期群集墳」と呼ばれる時代の古墳を訪ねるのが小さい頃からお好きだったという話もあり、春野恵子さんに続いて、「ちょっと変わり者」同士の会話に、集まった人たちからは大きな笑いが。政治思想の話題からカンニングまで、予測不能の広がりを見せたトークショーとなりました!
トーク終了後に行われたサイン会には、本を買って下さった人たちの行列が。一人ずつ、話ながら丁寧にサインをする久坂部さん。集まって下さった方々、そして中島さん、久坂部さん、どうもありがとうございます。