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拝啓・古地図サロンから⑨

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」
毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、9月に開かれたサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年9月28日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

先月に続いて今月も台風のニュースを気にしながらのサロンになりました。今日のところは御堂筋の空に明るい晴れ間がのぞいています。秋はもうそこに。皆様、いかがお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、9月26日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。

10分前に会場に入り、珈琲を注文していると、早くも来場の方がお一人。お話をしながら、古地図を広げてサロンの準備している最中に、またお一人。その後も最後まで、ぽつぽつの来場が続く一日でした。「月刊島民」発行人の大迫さんも来場。「島民」編集部は、このブログを運営している株式会社140B(毎回のブログ更新ありがとうございます)にあって、140Bは大阪ガスビルのご近所なのでした。大迫さんは仕事の話が終わると、展示の古地図をひととおりじっくり閲覧。来場者との記念写真にも加わっていただきました。大型台風接近中にもかかわらず、今日はとてもなごやかな雰囲気です。

今回の展示テーマは「大阪以外特集」でした。いつもは地元大阪の古地図がほとんどなのですが、東京・京都・滋賀・神戸の古地図をならべてみました。参加者はみなさん大阪とその近隣の在住なので、他都市の地図はどうなんだろうと思っていたのですが、心配無用でした。いつもと同じように、興味をもってゆっくり見て帰られる方ばかりで、むしろなじみの薄い場所だからこそ疑問もいっぱいで、話のタネが尽きなかったように思います。大阪の古地図も一部まぜておいたので、比較という面からもいつもとちがう面白味がありました。話もなかなか弾みました。

たとえば、明治14年の大阪の地図には梅田ステーション(大阪駅)が絵入りで載っていますが、明治11年の東京の地図では東京駅を探してもありません。新橋は載っていて、「新橋を早やわが汽車は~♪」という懐かしの鉄道唱歌を思い出し、この時点では新橋までしか鉄道が通じていなかったと納得。地図を見ながら、あると思ったものがなかったり、ないと思っていたのにあったりする意外性に直面して、軽い驚きとともに自分たちなりの発見を体験できるのが古地図の面白さです。こういうのはネットで検索すればたぶんすぐわかるのですが、小さな疑問、小さな発見でも自分で見つけてこそ楽しみが大きいのですね。

サロンでは毎回、来場の方たちが古地図を熱心にのぞきこむ姿が見られます。きっと、古地図の中にそれぞれの楽しみを見つけて心を遊ばせているのだと思います。展示の中に東京市が東京都になった当時の地図があります。大京都、大神戸という呼び名が題名に付けられた地図もあります。近代化が大いに進んで人口が増え、市街区域も拡大して、それぞれに大都市となった自信が地図にもあふれています。銅板で印刷された明治の京都地図は、繊細な線描の表現と淡い彩色がなんともいえない味を出しています。地図そのものの味だけで充分楽しめそうです。

今回は明治時代の東京風景を描いた石版画も二枚、お見せしました。吾妻橋と上野の東照宮。いずれも当時の有名な名所です。グラデーションがかかった赤と青の色調がきれいです。地図ではありませんが、この時代の印刷物がかもしだしている美意識には、注目させられます。印刷技術はその後の時代のほうが優れているのですが、明治の印刷物には、なんというか人間味、ぬくもりを感じさせるものが多いのです。

こういう感触は、写真では充分に伝わらないと思います。来月以後のサロンの日程は余すところ2回です。発行された当時の古地図をまとめてご覧いただく機会も、あとわずかになりました。珈琲一杯でどなたでも出入り自由のサロンを定期的に開催できるのは、これが最初で最後になるかもしれません。次回のサロンは教科書になった地図を特集。なかなか見る機会がないので、必見です。大阪の古地図も用意します。お見逃しなく。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。


本日の公開古地図
★「京都府管内地図」明治初期
「京都府・滋賀県交通地図」昭和初期
「大京都市街地図」昭和17年(1942)
「実測東京全図」明治11年(1878)
「東京都政地図」昭和18年(1943)
「新区政・東京全図」昭和23年(1948)
石版画・東京名勝「上野東照宮之図」
石版画・東京名勝「吾妻橋之図」
「大神戸市街地図」昭和16年(1941)
「最新実測・大大阪明細地図」大正14年(1925)
「最新大大阪市街全図」昭和4年(1929)
「大阪府大地図」昭和30年代

 

以上11点、石版画2点。すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

今回のセレクト地図は★京都府管内地図でした。明治初期の銅板地図です。

なお、本も3冊展示しました。

『鳥瞰図!』本渡章(私の最新刊。朝日放送ラジオ「武田和歌子のぴたっと」のおすすめ本コーナーで紹介されました)
『凸凹を楽しむ東京スリバチ地形散歩』皆川典久(東京での地形ブームの原点となった本)
『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』伊藤比呂美(東京のとげ抜き地蔵よりも効く悩み多き人生の特効薬)

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、10月以後の日程は次のとおり。

10月26日(金)午後3~6時
11月休み
12月7日(金)午後3~6時 ※この日がサロンの最終回です。

 

どなたでも参加できます。もし、興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。では、次回サロン(10月26日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年9月28日
本渡章

★本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

第10回は10月26日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。