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拝啓・古地図サロンから⑱

2020年1月24日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

【今回の目次】
■新・古地図サロン(1/24)のレポートと次回予告
●2019年12/14|船場大阪を語る会「大坂三郷から大阪24区まで」講演・レポート
●2020年1/15|ナカノシマ大学「古地図で謎解き・なにわ七不思議」講座・レポート
●2020年1~3月|朝日カルチャーセンター中之島「新・古地図地名物語」講座・進行中
●2020年3/14|住まいのミュージアム「災害古地図に学ぶもの」講座・予告編
●その他(出版関連)

■新・古地図サロンのレポート
開催日:1/24(金)午後3~6時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

早いもので古地図サロンも3年目に入りました。2020年もよろしくお願いします。本年最初のサロンは真冬にしては温かな午後、いつものカフェにて、いつもの調子で始まりました。窓の外はコートなしで歩く人の姿が目立つ御堂筋です。
まずは1時間ほど、古地図を囲みながらの雑談。今回展示したのは主に明治前期の大阪市街図です。現代の地図とちがって、江戸期・木版地図のノスタルジーが濃厚に漂います。近代化を映す市街図と絵図的な描写のミックス加減が、なんともいえません。地名表記がまちまちなのは、おおらかさの表れ。江戸時代そのままの表現もあちこちに残って、細かいことは気にしないのが、この頃の地図の面白さです。原図と復刻版が内容が全く同じであるのにかかわらず、まるで別の市街図に見える例(下記◎印)もあり、気づいてから驚いた人が多かったのも愉快でした。

さて、今日のメインテーマは前回の予告どおり、発行年不明の明治初期の大阪市街図(下記★印)について、いったい何年頃の作成なのか、みんなで考えてみようというものでした。ポイントは年代判定の目印になるものを見つけること。地図に載っている鉄道の駅や路線、有名施設などが何年にできたかを探っていけば、おのずと解答が出ます。検討の結果、今日のところ、問題の地図は明治12年以後の発行であるのがわかりました。次回はたぶん結論が出るでしょう。くわしい話はその時に。

本日初参加の方が持参された東区(現・中央区)の地図(昭和62年発行)にも、みなさんの注目が集まりました。小さな本になった地図で、各ページに住宅地図並みの細かい情報がびっしり載っていたのが驚きです。平成元年に消滅した東区の最後の姿を詳細に伝える貴重な地図でした。よく大事に持ち続けておられたと思います。
というわけで、またお会いいたしましょう。次回以後の日程は下記をご覧ください。

今回のサロン古地図
《原図》
★改正新版大阪市街新図 明治初期
◎最新大阪市中細見全図 明治14年(1881)
・改良大阪明細全図 明治20年(1887)
《複写》
・市郡境界朱引略絵図 明治6年(1873)
《復刻》
◎最新大阪市中細見全図 明治14年(1881)
・文久三年大坂大絵図  文久三年(1863)
《資料》
・天保期の大坂三郷(『新修大阪市史』付録)

他に復刻版古地図約10点。

★次回は3/27(金)午後3~6時 会場は大阪ガスビル1階カフェにて開催。私の30分トークは午後4時頃からです。テーマは「明治の大阪地図(後編)」を予定しています。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。
★2020年も奇数月の第4金曜(7月のみ第3金曜)に開催します。

【最近の主な古地図活動】
●2019年12/14の船場大阪を語る会「大坂三郷から大阪24区まで」講演・レポート
今のような大阪の24区はどうやってできたのか。そのルーツをたどると明治12年誕生の東・西・南・北の4区にたどりつきます。その原型は明治初期の4大組で、さらにルーツをたどると江戸時代の大坂三郷、豊臣秀吉の大坂城下町にあった上町と船場にまでさかのぼれます。明治以後、最初の4区が13区、15区、22区、26区にまで増え、最終的に24区になったのも、それぞれの時代背景に基づく必然性がありました……というような主旨で江戸時代から明治~大正~昭和の地図を見ていただきながらお話ししました。1時30分~4時まで、たっぷり時間がありましたが、それでも全部の区には触れるのは無理で、今日のところは区の物語のあら筋を聞いていただきました。またどこかで、続きをお伝えできればと思います。

●1/15のナカノシマ大学「古地図で謎解き・なにわ七不思議」講座・レポート
ナカノシマ大学ではこれまで何度も講座をいたしましたが、今回がいちばんくだけた内容になりました。地図の中にしかない幻の区、変名(?)で載った名橋、いくつもある梅田、七不思議の木など、古地図に描かれた「何これ?」と言いたくなる七つの謎をとりあげ、あれこれ推理を楽しみながら解答を探してみました。今回初めて私の講座に参加された方も多かったようです。古地図に興味を持っていただく方が増えるのは、うれしいことです。参加者に記念品として進呈された大正14年の電車路線を描いた古地図クリアファイルが美しい出来栄えで、よかったです。私も早速、使っています。

●2020年1~3月の朝日カルチャーセンター中之島「新・古地図地名物語」講座・進行中
大阪24区をひとつずつ順番にめぐっていく古地図地名物語の新シリーズがスタートしました。1月講座は終了しましたが、2~3月(テーマは東区・南区)の参加申し込みは今からでも可能です。
2/28(金)午前10時30分~12時 東区(現中央区)
3/27(金)午前10時30分~12時 南区(現中央区)
お問い合わせは☎06-6222-5222 または朝日カルチャーセンター中之島で検索を。

●2020年3/14の住まいのミュージアム「災害古地図に学ぶもの」講座・予告編
大阪メトロ天六駅にある住まいのミュージアム(暮らしの今昔館)にて開催の「住まいの大阪学」連続講座の第3回に登場します。古地図に描かれた大阪の災害をテーマに、災害と向かい合ってきた人々の知恵を読み取っていきます。参加無料。要予約。
3/14(土)午後2~3時半 「災害古地図に学ぶもの」。
お問い合わせは、
住まいのミュージアム(暮らしの今昔館)
☎06-6242-1160
「住まいの大阪学」参加申し込みはhttps://www.sumai-machi-net.com/

●その他(出版関連)
☆『図説・大和名所図会を読む』(創元社)2/20刊行予定。
本書の旧版にあたる『奈良名所むかし案内』(創元社・2007年刊)が品切れのため、一時は古書店で正価の8倍の値段がつき、読者に復刊が待たれていました。本書は、その旧版を大幅に増補・改訂し、版型も大きくなって見開き図版の迫力がアップ。江戸時代の名所絵を読み解きを楽しみつつ古都の歴史と風俗に触れられる決定版です。「大和名所図会」の全図版(180余点)掲載。価格3800円。

☆姉妹編の『図説・摂津名所図会を読む』も数カ月後に刊行の予定です。