大阪・京都・神戸 街をよく知るからこそできる出版物&オリジナルメディアづくり
拝啓・古地図サロンから34

2022年11月25日・本渡章より

【今回の見出し】

■11月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第14回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その13〉

昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図〈その11〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:11月25日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。2022年最後のサロンレポートをお送りします。
もともと誰でも気軽に参加できる場として生まれたサロンで、来場された方々のお名前や連絡先を尋ねることもなく、毎回、一期一会の顔ぶれで古地図を囲み雑談を楽しむスタイルで続けてきました。そうしてまる5年が経ち、この頃は人数もほどほどで落ち着き、参加者も固定しつつあるようです。かと思うと、今回のように、また新しい方が参加されたり、しばらく顔を見なかった方が来られたりして、同じようでも毎回ちょっとずつ雰囲気が違います。4時からの私の30分トークは講座という趣ではなく、展示の古地図を手にとって、その場で浮かんだあれこれをしゃべり、参加者からの声も聞きます。2時間のサロンですが、途中入退出もオーケー。「日本一気軽に古地図と遊べる場」がキャッチフレーズです。

さて、今回の展示古地図で目立ったのは明治32年(1899)発行の「大阪市明瞭新地図 」でした。横に並んだ「大日本大阪名所双六」と発行者が同じで、あわせて見ると、明治後期の街の活気がうかがえます。1世紀以上前の印刷物なので、色褪せや破れ目がありますが、それも過ぎた歳月のしるし。古さは味わいの深さでもあります。虫眼鏡をとりだし、地名の文字をみんなで読みとる場面もサロンではおなじみになりました。いつまで続けられるかわかりませんが、とりあえず2023年もこんな調子でサロンはゆるゆると続いていく予定です。

というわけで、みなさま、よい年をお迎えください。2023年にまたお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


◉今回のサロンで展示した古地図
地図(原図)
大日本大阪名所双六 明治31年(1898) 東新太郎
大阪市明瞭新地図 明治32年(1899) 東新太郎
最新大日本鉄道地図 昭和11年(1936) 大阪毎日新聞
日本産業大観図豊中市・昭和28年(1953)若山太陽社
大阪府近郊地図・昭和27年頃(1952)朝日新聞社
大阪都市計画街路及土地区画整理事業計画区域図・昭和39年(1964)大阪市区画整理局

復刻
大日本大阪名所双六 大阪城天守閣特製
嘉永改正堺大絵図 河内屋清七他

次回は2023年1月27日(金)午後3~5時開催予定

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは基本、奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

 

【最近と今後の古地図活動】

●「大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで一年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第10回仏地名は難波(なにわ)から大坂、大阪へ【前編・後編】
第9回人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】
第8回語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第7回古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第6回街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】(仕事地名・大阪市中編)
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】

●電子書籍のお知らせ

本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)

【次の2冊は各電子書籍ストアでお求めください】

『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)

思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。

『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)

梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。

【次の8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます】

『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。

『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。

『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)

記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。

『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)

著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。

『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)

井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。

『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)

江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。

『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)

名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。

『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)

名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。

※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧

『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)

『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)

『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)

『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)

『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)

『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)

 

●動画古地図でたどる大阪の歴史」続編、作成中

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。「此花区・港区・大正区」の動画も作成中。
制作・大阪コミュニティ通信社

文学・歴史ウォーク

2023年1月8日(日)午前10時・近鉄藤井寺駅前集合、講演と道明寺天満宮周辺ウォーク
当日参加OK。主催・文学歴史ウォーク

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

2022年12月16日(金)午後1時~2時30分「古地図で訪ねる大阪の60年代と万博」
2023年1月27日(金)・2月24日・3月24日午前10時30分~12時「古地図地名物語」

 

|古地図ギャラリー|

1.【嘉永改正堺大絵図】嘉永5年写・久野恒倫

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その13〉

江戸時代・幕末期の堺を描いた絵図としてよく知られた作品。凡例の他に「附言」として堺の地名由来が記されています。それによると、堺は狭小ではあるけれど三国の境を地内に擁し、他の地域にはみられない特徴を持つ故に、名を堺(境)と呼ぶとのこと。三国とは旧国名の摂津・河内・和泉をさします。現在も残る地名の三国ヶ丘が、三国の境界が接する場所なのですが、不思議に思われる読者もおられるかもしれません。現在の堺市は、泉州に属する街で、摂津との境界は大和川とされ、三国ヶ丘が境界とは言えなくなっています。では、絵図の附言は誤りなのかというと、そうではありません。大和川が宝永4年(1704)に現在の川筋に付け替えられ、摂津と泉州を隔てる太々としたラインとして横たわるようになったので、境界線が変わったのです。

図中の北側には大和川が描かれています。川向うに住吉大社、住吉浦が載っています。江戸時代の堺は、政令指定都市になった堺市の中心街と重なり、三国は図の中央右にあり、近くに方違の風習で有名な方違神社が載っています。悪い方位による災いを避ける方違ができるのは、この地が三国の境界が接する場所だからです。三国ヶ丘にはJRと南海の三国ヶ丘駅があり、方違神社には今でも方災除けのために訪れる参拝者が絶えません。この絵図は、新大和川が開通してから100年以上経って生まれましたが、三国の境の逸話を附言として伝えました。伝承は三国ヶ丘で今も生きています。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2.【私たちの和田山町】

鳥観図絵師・井沢元晴の作品より〈その11〉

古地図ギャラリー第1~10回で紹介した昭和の伊能忠敬・井沢元晴の幻の作品発見のニュースが届きました。郷土絵図と題して各地の学校に寄贈された鳥瞰図は、いずれも井沢元晴が戦後の日本の街々を足で歩いて描き残した労作。寄贈から半世紀を経た今、その消息を知るのが難しくなっていました。今回の発見は今年、神戸市の安養寺で開催された井沢元晴「戦災画スケッチ展」(前回のサロンレポート参照)を記事にした神戸新聞・中島摩子記者の丹念な調査が実ったもの。兵庫県和田山市の大蔵小学校にその1枚が現在も校舎に掲げられていたとの知らせをきっかけに、郷土絵図「私たちの和田山町」と遺族との対面が実現。当日は私も同席の機会を頂戴し、感動を分けていただきました。鳥瞰図絵師・井沢元晴の活動の原点となった郷土絵図が、半世紀の作品とは思えない風合いを保っていたのは驚きです。絵図を見上げながら元気に階段を駆け上がる子供たちの姿も印象的でした。

その後も郷土絵図発見の続報がありました。絵の由来を知って共鳴された大蔵小学校の先生方のお力添えのおかげです。和田山訪問の詳細は中島記者が記事にされました(12月17日付・神戸新聞夕刊1面)。今後の展開に注目を。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介されました。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られました。学校のエリアは主に西日本です。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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過去の古地図ギャラリー公開作品

第13回(2022年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」

 

第12回(2022年7月)

①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」

 

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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