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水都ラブ・サスペンス「樽屋おせん」にヤラれてください

担当/中島 淳

春野恵子さんがナカノシマで浪曲を演じるのは2009年12月以来、14年ぶり!

7/20(木)のナカノシマ大学で春野恵子さんが演じる浪曲「樽屋おせん」は、戦乱を経た大坂が国内最大の「経済都市」としてめまぐるしい変貌をとげていく17世紀後半に生まれた、井原西鶴の『好色五人女』の一篇です。

秀吉の時代に造られた「町割り」は、大坂夏の陣で勝者となった徳川政権下でいっそう本格化していきます。交通と物流は、当時は陸上を「水運」が圧倒していました。交通の拠点は大川(淀川)沿いの八軒家浜。いまで言えば大阪駅・新大阪駅・伊丹・関空を一つにしたような巨大ターミナルだったかと。長〜い熊野街道もこの八軒家浜から始まります。

物流では、承応2年(1653)に八軒家浜の対岸に「天満青物市場」(現・南天満公園)が誕生。市場は亀岡街道(天神橋筋商店街)の終点でもあり、水路・陸路から各地の名産が集まってきました。青物市場の目と鼻の先にある大阪天満宮は、これまでの数倍の規模でにぎわいを見せたことだと思います。

当時の地図。オレンジの印を付けた天満宮から天満青物市場も樽屋橋も徒歩数分の場所にある(1691年『新撰増補大坂大繪圖』より〜国際日本文化研究センター所蔵)

近世の天満宮界隈では「醸造業」が盛んでした。味噌や酒が造られると、必ず必要とされるのが「樽」。天満宮から300メートルほど西に「樽屋町」があり、その名の通りの「樽製造の町」として栄えていました。出来上がった樽には天満の酒や味噌が入り、これらが16世紀末に開削されたばかりの「天満堀川」を下って大川本流に入り、青物市場経由で旅立っていきました。

……以上はざっくりした前置きですが、当日は髙島先生が浪曲がはじまる前に詳しく解説します。さて。

春野恵子さんの「樽屋おせん」は、かつて奉公していた天満の麹屋で営まれる法事の手伝いに来ていたおせんが、ふとしたことから御寮(ごりょん)さんに店主・長左衛門との「不義密通」を疑われ、夫の伊助からも愛想を尽かされ、追い詰められていく話です。

健気で働き者で器量良しのおせんがいじらしさ満点な一方、彼女を容赦なくいたぶる嫉妬深い御寮さんが、表情も含めてほんまにえげつない!  男女4人の演じ分けがお見事ですが、とくに御寮さんには、釘付けになってしまう迫力満点です。

髙島先生による、近世の水都大坂の解説も請うご期待

しかし、おせんはただ追い詰められるだけではありません。

ラストは西鶴の原作を少しアレンジしていますが、こちらの浪曲のほうが水都大阪らしく、「その後」の行方をあれこれ想像したくなるような結末です。

井原西鶴×春野恵子の近世版ラブ・サスペンス。どうぞお楽しみに!

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