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思わぬ本に登場する「小林カツ代」の足あと(その1『時代をきりひらいた日本の女たち』)

担当/中島 淳

少ない材料、短い時間でも「美味しさ」は決して妥協せず、見事な一皿を作り出す方法を次々と考案し、「家庭料理に革命を起こした」と称賛され今もレシピ本が売れ続けている料理研究家・小林カツ代(1937〜2014)。

彼女は生涯で250点もの著書を上梓しているが(そのうち200点は6月26日のナカノシマ大学に登壇する、直弟子の本田明子さんが関わっている)、カツ代の没後もさまざまな著者・編者が、彼女の足跡をユニークな視点で紹介している。

B5判ハードカバー152ページ(2021年・岩崎書店・税込4,950円)

『時代をきりひらいた日本の女たち』 (小杉みのり・著/落合恵子・監修/朝野ペコ・イラスト)は子ども向けに書かれた近・現代女性の31人の人物評伝だが、大人が読んでも十分楽しめる。

とくに、初めて目にした名前の人が残したものの価値に、新鮮に驚くことができる。

興味のある人のページからつまみ食い的に読んでも楽しめるし(私はまず女優の杉村春子を読んだ)、人物の生年順に編集されているので、各人が生きた時代が前後の人物と重なる。

ページを進めるごとにその人が生きた時代のことがくっきりと浮かび上がってくるのが特徴だ(カッコ内は筆者が記入)。落合恵子さんの人選、ええですな。

広岡浅子(実業家・教育者)、荻野吟子(医師・女性運動家)、津田梅子(教育者)、樋口一葉(小説家)、羽仁もと子(ジャーナリスト)、上村松園(日本画家)、与謝野晶子(歌人・作家)、平塚らいてう(思想家・運動家)、市川房枝(政治家)、加藤シヅエ(政治家)、知里幸恵(アイヌ文化伝承者)、金子文子(アナーキスト)、杉村春子(俳優)、人見絹枝(陸上競技選手)、神谷美恵子(精神科医)、猿橋勝子(科学者)、長谷川町子(漫画家)、朝倉摂(舞台美術家)、越路吹雪(シャンソン歌手・舞台俳優)、茨木のり子(詩人)、石牟礼道子(小説家・環境運動家)、兼高かおる(ツーリストライター)、土井たか子(政治家)、高野悦子(岩波ホール総支配人)、若桑みどり(美術史家) 、増井光子(獣医師・動物園長) 、小林カツ代(料理研究家)、米沢冨美子(物理学者)、田部井淳子(登山家)、高田喜佐(シューズデザイナー) 、米原万里(同時通訳・エッセイスト)

「小林カツ代」のページより。全31人がこんなつかみで登場する

 

この本は値段が値段だったので図書館で借りたが、イラストがとても親しみやすくて可愛らしいし、4ページずつの人物紹介文の随所に小見出しが配置されていて、本当に読みやすい(子ども向けの本だから多くの漢字にルビが入っている)。

小林カツ代を紹介する「つかみ」はこんな感じだ。

 カツ代の登場前、料理研究家の紹介するレシピといえば、いくつもの手間をかけた時間のかかる料理だった。伝統的な和食や、おもてなしの西洋料理。それは、家庭料理の高い目標をしめすものだった。

 カツ代はそこへ、まったく新しい発想をもちこんだ。ずばり「早くてかんたん、安くておいしいレシピ」。

 社会には、はたらく女性が増えていた。カツ代は女性たちを家事の負担から解放し、家族のだれもが作れるようなアイデアレシピをつぎつぎに提案した。

 

そして、カツ代紹介文の小見出しは、以下このように続く。

味覚の原点は子ども時代/自分のみそ汁のまずさにびっくり/思いがけないテレビデビュー/「今日をのりこえる」レシピを作る/本物の味がわかるから型をやぶることができる/だれが作ったっていいじゃない

 

最後の見出しは、私らのようなオッサンに対するエールである。

カツ代さんはそれを行動に示し、「年配の男性に向けて料理教室を開催したり、非行に走った子どもの施設に足を運び、ボランティアで料理を教えたり。時間と労力をおしまず、『だれもが料理に親しんでほしい』という思いを行動にうつしていた」(同書の注釈より)

250に及ぶカツ代さんの著書ももちろんお薦めだけど(レシピ本や古本屋にもなかなか在庫がない=ファンが手放さない)、このような「出会い頭の小林カツ代」に触れると、また新しい発見があると思う。

6月26日(金)のナカノシマ大学「料理家・小林カツ代が広めた 大阪人『おいしい』の真髄」に登壇される本田明子さんは、この本のことをご存じだろうか? ぜひ感想を聞いてみたいものです。

お申し込みはこちらまで。あと10席ほどですのでぜひ♬

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20260626