担当/中島 淳
6月21日(金)に迫ったナカノシマ大学6月講座「大阪の本好きに伝えたい、『参加』したくなる本屋の話」の講師である三砂慶明さんは、北区鶴野町、新御堂筋沿いにある[TSUTAYA梅田MeRISE]の書店員であるが、本好きの集まり「読書室」の主宰者であり、奈良敏行『町の本屋という物語〜定有堂書店の43年』(作品社)などの編集者でもある。
もう一つあった。
『千年の読書〜人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)の著者でもある。
21日(金)の本番を前に一度さらっと読んでみたが、これが無茶苦茶おもしろい。
「明日から仕事はヤメて本読んで暮らせ」と言われても、ここで紹介されている本を1冊1冊じっくり読んでいきさえすれば、少なくとも10年は機嫌よく、前向きにものを考えられる人生を送るのではなかろうか……と思えるほど中身の濃いブックガイドである。
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この『千年の読書』はこんな章立てになっている。
まえがき なぜ人生には本が必要なのか
第1章 本への扉 人生を変える本との出会い
第2章 生きづらさへの処方箋 眠れない夜に読む本
第3章 新しい働き方を探す旅
第4章 「お金」から見た世界
第5章 「おいしい」は味なのか 現代の食卓と料理の起源
第6章 幸福の青い鳥 瞑想と脳と自然
第7章 本から死を考える 死の想像力
あとがき 本との出会いは人との出会い
どの章も、このしんどい時代を生きる人間にはきっと刺さるフレーズばかりだが、著者お薦めの本(章ごとに約30冊登場×7章)を紹介するアプローチが親和的で文章が読みやすいため、この『千年の読書』を読んで登場した本を手に取った人はきっと、読書好きの小学生から90代ぐらいまでいるのではないか、と思った。
なんと言ってもこれだけの本の情報が詰まっているのに、「詰め込んだ」感は一切なし。著者のテキストが、その本の一番美味しいところをスコーンと抜き取ることができる技術あってのことだが、ほんまにストレスなしで読めました。
「ナカノシマ大学に登壇する人が書いた本やから読んどかなアカンわ」と思って購入して読んだが、ちょっともったいなかった。「必要に迫られて」読むような本では決してないと思う。
できれば、旅に出る列車(新幹線でないほうがいいし、酒がお供にあればなおさら)でガタゴト揺られながらページをめくっていったほうが、もっと頭も心もクリアになって、幸せな読書体験ができたやろなぁ……と後悔しているが、この本をご紹介できることもまた幸せなことです。
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この『千年の読書』がユニークなところは、どの章にも著者・三砂慶明氏の「自分ごと」がきっかけでその本を手に取り、彼の読書体験を通じて「救われた」「視界がクリアになった」「習慣が変わった」という箇所が随所に登場していることである。
面識のある人の文章を読む楽しみは、「今まで知らなかったその人のこと」が読めることだと思う。
『千年の読書』では、著者の交友関係や節目節目での葛藤や挫折、新たな出会いや出発など「知られざる三砂慶明の人生」を各章で知ることができるが、それが決して「他者と共有できない俺の話」にはならず、「この名著に至ったひとつのエピソード」としてさりげなく紹介されているところがいい感じである。
主役はあくまで「本」であり、それを推す語り部である著者の人生経験が絶妙なブレンド具合のテキストとなって、300ページのハードカバーなのにすいすいすらすら読ませてしまう。
またこの本の「あとがき」が、「これだけで1クールのドラマになるのではないか」というほどおもしろい。詳しくはお手に取ってご覧ください。
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ナカノシマ大学当日は、今回のテーマとなった『町の本屋という物語〜定有堂書店の46年』と、こちらの『千年の読書〜人生を変える本との出会い』、そして彼が編集したもう一つの本『本屋という仕事』(世界思想社)を会場で販売します。
さらに、2023年4月に46年の歴史を閉じた、鳥取市の定有堂書店発行の、濱崎洋三『伝えたいこと』(定有堂書店・1998年刊)を販売します。
たぶんこの本の話も、きっと三砂さんの口から当日に披露されると思います。
お支払いは現金のみ(カードやPayPayなどのキャッシュレス決済不可)なので、すみませんがみなさまよろしく。
ただし、この日だけはどの本を買っても「特別付録」があるそうなので、どうぞお楽しみに。
ナカノシマ大学はあと5人で締め切ります。どうぞお早めに!