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最初の駅を見て唸った、スズキナオさんの「大阪環状線」本

担当/中島 淳

大阪での移動は地下鉄が多いけれど、そうすると目的地に着くまでのプロセスが見えない。だから、ちょっとおもしろくない。

電車に乗った街から、目的地の街までの間に「徐々に景色が変わっていく」というのが、とくにコンパクトシティの大阪ではお薦めの体験なのだ。

40分ぐらいで一周できて、生駒山や六甲山、二上・葛城・金剛山が見えて安治川や木津川、寝屋川も渡って、高層ビル街も工場も商店街も盛り場も住宅街も車窓からよく見える大阪環状線というのは、ほんまに「よう出来ている」路線だと思う。

加えて、「どの駅前にも、湯気の立つウマいものがある」ことが決定的な魅力だろう。

本体2,200円+税。もちろんナカノシマ大学当日に販売します!

8月21日(木)のナカノシマ大学に登壇するスズキナオさんがインセクツから上梓した『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』は、編集者でインセクツ代表の松村貴樹さん(共に登壇)と環状線の全19駅を「事前アポ取りなし、打ち合わせなし」でぷらぷらと歩き、立ち寄り(飲み)、また歩き、立ち寄り(飲み)……を繰り返したエッセイだ。

「そうそう、〇〇駅前はこんな感じやった」とか、「環状線とは何だかんだ言うても付き合い長いよなぁ」ということを思い出させてくれて、「こんど、あの商店街歩いてみたろ」という気持ちに、自然となる。

駅ごとにドラマチックな出来事が待っている訳では決してないが、スズキナオさんの文章を読むと、「どの駅前でも、楽しい客として普通に歓迎してくれる街がある」と分かり、改めて「大阪はフトコロの深い街だな」だと感じさせる。

著者の現場での佇まいが「ええ感じ」なのはこのイラストが物語っている。

『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』より新今宮駅前の探索。初めての店でも好奇心たっぷり&楽しげに振る舞うスズキナオさんは、どの店からも「上機嫌なお客」として歓迎されたのでは ©️スケラッコ

スズキナオさんは東京生まれ東京育ちで、大阪での生活はまだそんなに長くないと思うが、「大阪は“よそもの”に優しい街」であることが文章から伝わってくるし、彼自身がいろんな店を「まずは受け入れる」というスタンスで楽しんでいる。

変にスカしたり、知ったかぶりしたりしていないのだ。

筆者も(大昔だけど)九州から来た“よそもの”なので、「大阪に住もうかどうしようか」と迷っておられる方はぜひ、この大阪環状線や他の著書を読んでじっくり考えてほしい。

とくに筆者が「おお!」と思ったのは、この本の最初に「野田駅」を持ってきたこと。

こういう本の場合、どうしてもトップに「売れ筋の街」を持ってきたがる書き手なり編集者なりが必ずいる(その誘惑にはなかなか抗しがたい)。

まず京橋や鶴橋、新今宮、西九条などの「私鉄連絡主要駅」か、福島や天満を持ってきてインパクトを出す、という手もあるが、あえて快速が停車しない(けどとても環状線らしい)野田をまず持ってくるとは、この企画に対して著者も編集者も自信満々であることを感じさせる。

「大阪の駅前酒場の特集でなく、環状線の特集やで〜」である。

この本はナカノシマの会場でMoMoBooksさん(『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』p25に登場)が出張販売してくれるが、前もって読んでからナカノシマ大学へ行けば、また別の楽しみが広がると思う。

当日は、本には出ていない環状線駅前の楽しみ方もお二人がアレコレ指南してくれるはずで、会場とのキャッチボールも楽しみです。

ナカノシマ大学の申し込みはこちらへ。ちょうど半分を超えたところ。ぜひ!

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250821