大阪・京都・神戸 街をよく知るからこそできる出版物&オリジナルメディアづくり
本好きの目を開かせてくれる「司書」という人

担当/中島 淳

これまでナカノシマ大学に講師として何度も登壇してくれた、観光家でコモンズ・デザイナーの陸奥賢(むつ・さとし)さんが、Facebookに興味深い投稿をしておられた。

陸奥さんは、「まわし読み新聞」の伝道者であり、街の歴史のオーソリティであるだけでなく、大阪や堺の「七墓めぐり」や怪談の聖地めぐりなどいろんな地域の「物語」にちなんだまち歩きを主宰して、私たちを刺激的で知らない世界に連れて行ってくれる案内人だ。

最近は福島県いわき市や宮崎県えびの市からも依頼を受けて、現地の「知られざる歴史」を掘り起こし、そこを徒歩や自転車で散策することで、その都市の新しい「宝」を発見するような面白いアイデアを提案されては実行している。

陸奥さんの博学全開のページ。浪速区にちなんだ24組の人物紹介とまち歩きコースを提案(このあと4頁続きます)。大阪市立の各図書館で読めます(2025年『浪速区100年ものがたり』/イラスト・辻井タカヒロ)

「博学」の引き出しの多さと深さが半端ではなく、かつ遊び心がいっぱいの人なので、一緒に仕事をすると刺激がありまくりなのだが、先日その陸奥さんが投稿をした内容が、ずっと頭に残っている。

陸奥さんが通ったのは街場の公立図書館だったと思うが、場所が街場であれ学校であれ、図書館司書の仕事というのはきっと、「短期間で数値的な成果が出る」というものでは決してなく、司書の方からお薦めの本を紹介してもらった人が、10年とか20年とか後に「そういえばあのとき」と振り返って思い出されるようなものだと思う。

1月16日(金)のナカノシマ大学「大阪の小中学生は図書館でどんな本を読んでいるのか」に登壇する学校司書の須藤みかさんが担当している学校は、一つではない。

その雇用形態は大阪市の事情でそうなっているが、それがスタンダードでは決してなく、例えば豊中市や箕面市には「常勤の学校司書」がいる。

大阪市の場合、学校司書は「週○回」の勤務。その「週○回」の中で、例えば月曜日にA小学校、水曜日にB中学校、金曜日にC小学校といった具合にめぐる。

須藤みか(文)・井上ミノル(絵)『学校図書館 新米司書フントー記』(少年写真新聞社)より

それでは子どもたちと司書のコミュニケーションが難しいのでは、と思うが、ここは大阪市の政策の是非はさて置き、須藤さんは「決して一つではない学校で勤務する」ことを前向きに捉えていろんな種を蒔いている。「A小学校で試しにやってみてうまく行ったことが、C小学校でも上手くいくかもしれない」というように。歳の離れた中学校もあるので、試行錯誤の連続だろう。

そんな日々を送っておられる須藤さんはじめ学校司書のみなさんは「ネタの幅と蓄積」がほんまに凄い。

彼らが(というより大人も、であるが)カウンターにやって来る時によく口から出るのは「書名は忘れたけどこんな本」である。「まんなかに『いぬ』って入ってた」というワードを聞き漏らさないことが重要なのだ。

「それだと書誌検索できないから分からないよ」と言うのではなく、児童生徒に対してさまざまな「手がかりになる言葉」を引き出し、本を探し当てて実際に手渡すという行為の「力」が、何年後に生きてくるかは分からないにせよ、子どもたちはそんな司書を見て、「本好き」の道を歩きはじめるのだ。

そして、司書が子どもたちに本を手渡したとしても、彼らが読むのは「司書がそこにいない時間」が圧倒的に多いのだから、「いない時間」に彼らがより本好きになる仕掛けもあれやこれや考える。

前回のブログで、須藤さんが図書室で子どもたちにクイズを出すことで本への興味を引き起こすことに触れたが、須藤さんは校内放送のブースに座って、お薦めしたい本の朗読をしたりしている。

勤務先の中学校で実施した「みみどく」。聴いているのは生徒だけではなく、先生も(同)

須藤さんはお薦め本の朗読を「みみどく」とネーミングし、各校で定着しているという。

たしかにテレビよりラジオで本の紹介をされた方が印象に残ることが多いように、「声」の力はほんまにすごい。

須藤さんの声はハリがあって滑舌が素晴らしいので、ナカノシマ大学の受講者のみなさんは、それもぜひ楽しみにしてほしいところだ。

長々と書き過ぎたが、「学校司書」が登壇するナカノシマ大学初の試み、ぜひご受講ください。須藤みかさん、井上ミノルさんの著書『学校図書館 新米司書フントー記』も販売しています。

少年写真新聞社大阪本部の足立英臣さん(右)と末光康隆さん。こちらのお二人が会場にいてはります。よろしく!

版元の少年写真新聞社の大阪本部は、会場の大阪府立中之島図書館から徒歩5分の場所なので、当日は出張販売に来てくれます。

受講申し込みはこちらへ。

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20260116