第07回
「饅頭喰い」
友人である武者小路千家家元後嗣の千(宗屋)くんからFBにメッセージが届きました。西陣の産土さんで、厄除け疫病封じの神さんである『今宮神社』と、その境内の桜の写真。今年はコロナでどこの桜も観にいけへんかったし、とても心が和みました。こちらの神社のご利益を知っていれば時節柄ほんまに嬉しいお心遣い。
神仏の有り難さは、ここに詣でれば病気にかからへんとか、そういう即物的なご利益の効能ではなく、よしんばかかったとしてもご加護があるという安寧をいただけることに他なりません。千くんのメッセージはそのまま神さんからの優しいひとことにも似てる。
かつて社寺の参詣は庶民の娯楽だったから、名刹・古刹の傍には名物があります。今宮さんの場合は参道に向かい合う二軒の「あぶり餅」。香ばしく焼かれたひと口大のお餅に白味噌あんを絡めた一束は、今宮さんの
ここに載せた写真は昔に
はこのことやろか。
というわけで今年はお国の自粛要請もあってお花見でけへんかった人も多いやろし、来年のお楽しみを思い設けて
いただきまひょいうことで、儂の選ぶ『京都の桜ベスト10』を発表したいと思います。それぞれの場所からほど近い「うまいもん」も一緒にご紹介。
まず10位は『立本寺』。
鎌倉時代の創建やけど何度か燃えたりして現在の伽藍は江戸初期の造築。吉宗公の時代やね。ここの桜はさほど大規模というわけやないけど満開の時期には花の雲間に御堂が見え隠れする絵巻物めいた風情があります。浮遊感てゆうたらええやろか。漫ろ歩けばなんともいえんええ心地。
このお寺とコンビゆうたら『凡蔵』さんやろね。儂が京都で一番好きなロールケーキがある洋菓子屋さん。ただ、恵方巻きやあるまいしロール一本喰いは難しゅうございますんで、ここは焼きドーナツとかいかがですやろ。そもそも立本寺は酒宴に向いた場所やおへんので。
9位。『原谷苑』。
なんちゅうか桜の楽園。もともとは樹木農園だったのが、いつしか名所として評判を呼び一般公開されるようになった場所。鷹峯を借景に高低差のある園内に桜以外の花木も混ぜ植えされてて、あたかも和製ランドスケープガーデンのごとし。開花率に合わせた入園料時価てゆうのが、なんかすごいでしょ?
一応、園内には飲食施設はあるけれど、特別に美味いゆうわけやない。もちろん周りにはなにもない。シャトルバスも走ってるけど、たいがいの人らはタクシー使わはりますわ。仁和寺の辺で拾うか金閣寺前の西大路で捉まえるかなんやけど、少々遠回りでも後者が楽え。食べもん屋もなんやかやあるし。持ち込むんやったら和菓子の『満月』さんがあるし阿闍梨餅とかええんちゃう。
8位。『竜安寺』。
すぐそばに御室の桜があって、みんなそっちに目が行きがちやけど、石庭で有名なこの古刹にもかなりの数の桜が植わってます。境内には桜園もある。実はここが凄い。桜がメインではあるんやけど、梅や桃が混ぜ植えされてて、ちょうど桜が満開の時期に晩生の梅と早咲きの桃が咲き揃い、ちょっとした桃源郷の眺めが出現しますねん。こてこて。
ちょっと距離あるけど白梅町から嵐電に乗って竜安寺駅から参らはるんやったら一も二もなく『笑福亭』のおうどん。めっちゃ〝京都のうどん〟ですねん。おだしがきいてて、柔らかいめぇで。塩梅ようおなかが温まる。「ほっとする味」て手垢のついた表現やけど、この形容がほんまに似合う店てここくらいしか知らん。
7位。『雨宝院』。
元実家から歩いて5分の地元寺。全然知られてへんかったのに、いつの間にか狭い狭い路地に観光バスが無理くり横付けするような人気寺になってしもた。ささやかな境内に花木と御堂がぎっしり詰まった箱庭のように愛らしい小寺。緑の桜「
食べもん屋は『西陣ゑびや』さんにしよかな。宇治川さんという名前やったころから、ものごころつく前からここの「てんやもん」喰うて育ったので、いつのまにか街場の隠れた名店みたいな扱いになってた驚いた。こんど帰った
らよせてもらわなあかんな。
6位。『御所』。
いくつもの銘木が御苑内に咲き誇るけど、やっぱり「近衛邸跡」の糸桜は特別やと思うわー。2018年の台風でかなり被害があったそうやけど、写真を見せてもろた感じでは。まだあのしっとりと
ここいらへんは学生街なんで、食べるとこはもうよりどりみどりなんやけど最寄りの地下鉄今出川駅周辺はカフェの激戦区になってて、しゅっとした店がようさんある。ちょっと青臭いけど儂が好きなんは『バザールカフェ』。食事も珈琲も平均点なんやけど、こちらの最高のご馳走は〝空間〟。安易にお洒落に走ってしまいそうなところをぐっと抑えた肩の力の抜け具合がええ。
5位。『竹中稲荷』。
神楽岡/吉田山の天辺、東側にあるお稲荷さん。かつて
はアメノウズメが祀られる神社やった。そこここにお塚信仰や稲荷講の名残り。一種異様なアトモスフィアが漂う。とりわけ桜の時期は参道に連なる鳥居の合間に花影が落ちてこの世ではないどこかへ続いているような気配がしますにゃわ。あんまし大きな声で好きとは言い難いけど好き(笑)。
すでに非常な人気店なので席の確保が難しいにゃけど、やっぱり『茂庵』はええカフェやな。突き抜けてレベルが高いわけやないけどお花見の前後に食事するのはそういう店のほうがええんちゃうやろか。あくまで主役は桜なんで。かといって、あまりにしょうもないもんでは肝心の花までが色褪せてしまいそうやし。茂庵のランチはまさに花見弁当ぽい佳さがありますわ。
4位。『佐野園』。
正式名称は『植藤造園』。〝桜守〟として円山公園の枝垂れを丹精した十六代佐野藤右衛門氏の私宅。個人的なコレクションとして全国から集めた200種余りの桜を花の季節には無料で公開してくださってます。宵闇が迫れば篝火まで焚いて。こんな有り難いことあるやろか。山奥やないけど民家さえ少ないエリアなんで行くにはちょっと根性
いりまっけどな。
別にタクでもいいんですが桜の時期に仁和寺から
3位。『松ヶ崎疎水(疎水分線)』。
洛北高校の脇を高野川まで続く桜並木なんやけど、そらもう麗しい場所ですよ。後半になって堤防が低くなってくると仙界にでも迷い込んだような気分。だいぶ観桜のお客さんも増えてきたそうですが、2018年時点では花真っ盛りにもかかわらず歩いているのは儂らだけでした。
住宅街なんでなんか食べよと思たら下賀茂本通りまで戻らなあきません。北大路との交差点にあるケーキ屋さん『パウンドハウス』なんかどうでしょう。ここの苺ショー
トはちょっと格別なケーキです。長めの散歩で疲れた足まで癒してくれるような味わい。珈琲や紅茶がいまひとつなのが玉に瑕。いつも儂はミネラルウォーターを注文していました。
2位。『平野神社』。
入江にしてはメジャーなとこ持ってきはったなーて思われるかもしれませんが、地元やということを差っ引いてもここの夜桜はすごい。聖俗が混沌と混在する。「陰陽和合すれば楽みのうちにも必ず孕むなるべし」というが、まさにその有様を目の当たりにします。こちらも2018年の災害でダメージをうけたけど、京都人が京都に住む限り、ここはきっと蘇る。桜はね、ああ見えてものごっつ生命力の強い樹ぃやし。
西大路通りを挟んで斜め向かいにあるフルーツパーラー『クリケット』さんが儂にとっては平野さんの対になる店。窯に仕立てたフルーツにフレッシュなゼリーを込めたこちらの名代は
昔ながらの京の「おもたせ」。みんな大好きですねん。とりわけ桜の季節ほぼ限定で並ぶデコポンのゼリーはたまりまへんのえ。
そうゆうたらデコポンゼリーの写真も以前に千くん送ってくれはったけなあ。
1位。『半木の道』。
件の佐野藤右衛さんも同意見。賀茂川に架かる葵橋から北山を振り仰ぐ風景は古雅玲瓏。さしかけられた花笠の下を歩けば、この世の憂さなどたちまち忘れ去る。平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば本来桜というのは陰の木やという話。そういわれれば名所といわれるところはどこも昏い。ここみたいにハレの桜はほんまに珍しいと思う。
で、ここのハレ桜を観る前でも観た後でも、その両方でも最高のご馳走にありつけるのが『FACTORY KAFE 工船』。カリスマ焙煎師オオヤミノルさん率いる珈琲の名店、いや、名店ゆう言葉は似合わへんな、巣窟とか魔窟とか「虎の穴」とかが相応しい店。珈琲のアテとして整えられた喰いもんもどれも素晴らしく行き届いている。儂の人生に美味い珈琲は必須アイテムなので「京都に
KAFE 工船があってよかった!」としみじみ。
京都には「饅頭喰い」という伏見人形や御所人形があります。小さい子供が二つにした饅頭を持って佇んでいるモチーフ。これはね、仲が悪うて喧嘩ばかりしている両親がある日我が子に「パパとママとどっちが好きや!」と迫ったところ、その子は饅頭を割って「どっちも好き」と答えたという逸話からきています。まあ、夫婦仲ようみたいなおまじないゆうか縁起もんやね。
儂は思うんですわ。「花より団子」と世間のひと様は申されますが、少なくとも京都においては花も団子も同じに美味しい。同じに綺麗で。同じに愉しい。そう。饅頭喰いみたいなもんやあらしませんかいなあ。
『今宮神社』
京都市北区紫野今宮町21
『
京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町107
『菓子工房凡蔵 七本松店』
京都市上京区二番町209
『原谷苑』
京都市北区大北山原谷乾町36
『阿闍梨餅本舗満月 金閣寺店』
京都市北区衣笠御所ノ内町30ー1
『龍安寺』
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
『笑福亭』
京都市右京区谷口垣ノ内町8
『
上京区智恵光院通上立売通上ル聖天町9ー3
『西陣ゑびや』
京都市上京区大宮通五辻上る芝大宮町21
『京都御所』
『バザールカフェ』
京都市上京区岡松町258
『茂庵』
京都市左京区吉田神楽岡町8
『植藤造園』
京都市右京区山越中町13
『ファミリーキッチン Pu』
京都市右京区御室小松野町25ー21
『パウンドハウス』
京都市左京区下鴨梅ノ木町71ー9
『平野神社』
京都市北区平野宮本町1
『クリケット』
京都市北区平野八丁柳町68ー1 サニーハイム金閣寺1F
『FACTORY KAFE 工船』
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448
第07回
「饅頭喰い」
友人である武者小路千家家元後嗣の千(宗屋)くんからFBにメッセージが届きました。西陣の産土さんで、厄除け疫病封じの神さんである『今宮神社』と、その境内の桜の写真。今年はコロナでどこの桜も観にいけへんかったし、とても心が和みました。こちらの神社のご利益を知っていれば時節柄ほんまに嬉しいお心遣い。
神仏の有り難さは、ここに詣でれば病気にかからへんとか、そういう即物的なご利益の効能ではなく、よしんばかかったとしてもご加護があるという安寧をいただけることに他なりません。千くんのメッセージはそのまま神さんからの優しいひとことにも似てる。
かつて社寺の参詣は庶民の娯楽だったから、名刹・古刹の傍には名物があります。今宮さんの場合は参道に向かい合う二軒の「あぶり餅」。香ばしく焼かれたひと口大のお餅に白味噌あんを絡めた一束は、今宮さんの
ここに載せた写真は昔に
はこのことやろか。
というわけで今年はお国の自粛要請もあってお花見でけへんかった人も多いやろし、来年のお楽しみを思い設けていただきまひょいうことで、儂の選ぶ『京都の桜ベスト10』を発表したいと思います。それぞれの場所からほど近い「うまいもん」も一緒にご紹介。
まず10位は『立本寺』。
鎌倉時代の創建やけど何度か燃えたりして現在の伽藍は江戸初期の造築。吉宗公の時代やね。ここの桜はさほど大規模というわけやないけど満開の時期には花の雲間に御堂が見え隠れする絵巻物めいた風情があります。浮遊感てゆうたらええやろか。漫ろ歩けばなんともいえんええ心地。
このお寺とコンビゆうたら『凡蔵』さんやろね。儂が京都で一番好きなロールケーキがある洋菓子屋さん。ただ、恵方巻きやあるまいしロール一本喰いは難しゅうございますんで、ここは焼きドーナツとかいかがですやろ。そもそも立本寺は酒宴に向いた場所やおへんので。
9位。『原谷苑』。
なんちゅうか桜の楽園。もともとは樹木農園だったのが、いつしか名所として評判を呼び一般公開されるようになった場所。鷹峯を借景に高低差のある園内に桜以外の花木も混ぜ植えされてて、あたかも和製ランドスケープガーデンのごとし。開花率に合わせた入園料時価てゆうのが、なんかすごいでしょ?
一応、園内には飲食施設はあるけれど、特別に美味いゆうわけやない。もちろん周りにはなにもない。シャトルバスも走ってるけど、たいがいの人らはタクシー使わはりますわ。仁和寺の辺で拾うか金閣寺前の西大路で捉まえるかなんやけど、少々遠回りでも後者が楽え。食べもん屋もなんやかやあるし。持ち込むんやったら和菓子の『満月』さんがあるし阿闍梨餅とかええんちゃう。
8位。『竜安寺』。
すぐそばに御室の桜があって、みんなそっちに目が行きがちやけど、石庭で有名なこの古刹にもかなりの数の桜が植わってます。境内には桜園もある。実はここが凄い。桜がメインではあるんやけど、梅や桃が混ぜ植えされてて、ちょうど桜が満開の時期に晩生の梅と早咲きの桃が咲き揃い、ちょっとした桃源郷の眺めが出現しますねん。こてこて。
ちょっと距離あるけど白梅町から嵐電に乗って竜安寺駅から参らはるんやったら一も二もなく『笑福亭』のおうどん。めっちゃ〝京都のうどん〟ですねん。おだしがきいてて、柔らかいめぇで。塩梅ようおなかが温まる。「ほっとする味」て手垢のついた表現やけど、この形容がほんまに似合う店てここくらいしか知らん。
7位。『雨宝院』。
元実家から歩いて5分の地元寺。全然知られてへんかったのに、いつの間にか狭い狭い路地に観光バスが無理くり横付けするような人気寺になってしもた。ささやかな境内に花木と御堂がぎっしり詰まった箱庭のように愛らしい小寺。緑の桜「
食べもん屋は『西陣ゑびや』さんにしよかな。宇治川さんという名前やったころから、ものごころつく前からここの「てんやもん」喰うて育ったので、いつのまにか街場の隠れた名店みたいな扱いになってた驚いた。こんど帰ったらよせ
てもらわなあかんな。
6位。『御所』。
いくつもの銘木が御苑内に咲き誇るけど、やっぱり「近衛邸跡」の糸桜は特別やと思うわー。2018年の台風でかなり被害があったそうやけど、写真を見せてもろた感じでは。まだあのしっとりと
ここいらへんは学生街なんで、食べるとこはもうよりどりみどりなんやけど最寄りの地下鉄今出川駅周辺はカフェの激戦区になってて、しゅっとした店がようさんある。ちょっと青臭いけど儂が好きなんは『バザールカフェ』。食事も珈琲も平均点なんやけど、こちらの最高のご馳走は〝空間〟。安易にお洒落に走ってしまいそうなところをぐっと抑えた肩の力の抜け具合がええ。
5位。『竹中稲荷』。
神楽岡/吉田山の天辺、東側にあるお稲荷さん。かつては
アメノウズメが祀られる神社やった。そこここにお塚信仰や稲荷講の名残り。一種異様なアトモスフィアが漂う。とりわけ桜の時期は参道に連なる鳥居の合間に花影が落ちてこの世ではないどこかへ続いているような気配がしますにゃわ。あんまし大きな声で好きとは言い難いけど好き(笑)。
すでに非常な人気店なので席の確保が難しいにゃけど、やっぱり『茂庵』はええカフェやな。突き抜けてレベルが高いわけやないけどお花見の前後に食事するのはそういう店のほうがええんちゃうやろか。あくまで主役は桜なんで。かといって、あまりにしょうもないもんでは肝心の花までが色褪せてしまいそうやし。茂庵のランチはまさに花見弁当ぽい佳さがありますわ。
4位。『佐野園』。
正式名称は『植藤造園』。〝桜守〟として円山公園の枝垂れを丹精した十六代佐野藤右衛門氏の私宅。個人的なコレクションとして全国から集めた200種余りの桜を花の季節には無料で公開してくださってま
す。宵闇が迫れば篝火まで焚いて。こんな有り難いことあるやろか。山奥やないけど民家さえ少ないエリアなんで行くにはちょっと根性いりまっけどな。
別にタクでもいいんですが桜の時期に仁和寺から
3位。『松ヶ崎疎水(疎水分線)』。
洛北高校の脇を高野川まで続く桜並木なんやけど、そらもう麗しい場所ですよ。後半になって堤防が低くなってくると仙界にでも迷い込んだような気分。だいぶ観桜のお客さんも増えてきたそうですが、2018年時点では花真っ盛りにもかかわらず歩いているのは儂らだけでした。
住宅街なんでなんか食べよと思たら下賀茂本通りまで戻らなあきません。北大路との交差点にあるケーキ屋さん『パウンドハウス』なんかどうでしょう。ここの苺ショートはちょっと格別なケーキで
す。長めの散歩で疲れた足まで癒してくれるような味わい。珈琲や紅茶がいまひとつなのが玉に瑕。いつも儂はミネラルウォーターを注文していました。
2位。『平野神社』。
入江にしてはメジャーなとこ持ってきはったなーて思われるかもしれませんが、地元やということを差っ引いてもここの夜桜はすごい。聖俗が混沌と混在する。「陰陽和合すれば楽みのうちにも必ず孕むなるべし」というが、まさにその有様を目の当たりにします。こちらも2018年の災害でダメージをうけたけど、京都人が京都に住む限り、ここはきっと蘇る。桜はね、ああ見えてものごっつ生命力の強い樹ぃやし。
西大路通りを挟んで斜め向かいにあるフルーツパーラー『クリケット』さんが儂にとっては平野さんの対になる店。窯に仕立てたフルーツにフレッシュなゼリーを込めたこちらの名代は昔ながらの京の「おもたせ」。みんな大好きですねん。とり
わけ桜の季節ほぼ限定で並ぶデコポンのゼリーはたまりまへんのえ。
そうゆうたらデコポンゼリーの写真も以前に千くん送ってくれはったけなあ。
1位。『半木の道』。
件の佐野藤右衛さんも同意見。賀茂川に架かる葵橋から北山を振り仰ぐ風景は古雅玲瓏。さしかけられた花笠の下を歩けば、この世の憂さなどたちまち忘れ去る。平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば本来桜というのは陰の木やという話。そういわれれば名所といわれるところはどこも昏い。ここみたいにハレの桜はほんまに珍しいと思う。
で、ここのハレ桜を観る前でも観た後でも、その両方でも最高のご馳走にありつけるのが『FACTORY KAFE 工船』。カリスマ焙煎師オオヤミノルさん率いる珈琲の名店、いや、名店ゆう言葉は似合わへんな、巣窟とか魔窟とか「虎の穴」とかが相応しい店。珈琲のアテとして整えられた喰いもんもどれも素晴らしく行き届いている。儂の人生に美味い珈琲は必須アイテムなので「京都にKAFE 工船があってよかった!」としみじみ。
京都には「饅頭喰い」という伏見人形や御所人形があります。小さい子供が二つにした饅頭を持って佇んでいるモチーフ。これはね、仲が悪うて喧嘩ばかりしている両親がある日我が子に「パパとママとどっちが好きや!」と迫ったところ、その子は饅頭を割って「どっちも好き」と答えたという逸話からきています。まあ、夫婦仲ようみたいなおまじないゆうか縁起もんやね。
儂は思うんですわ。「花より団子」と世間のひと様は申されますが、少なくとも京都においては花も団子も同じに美味しい。同じに綺麗で。同じに愉しい。そう。饅頭喰いみたいなもんやあらしませんかいなあ。
『今宮神社』
京都市北区紫野今宮町21
『
京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町107
『菓子工房凡蔵 七本松店』
京都市上京区二番町209
『原谷苑』
京都市北区大北山原谷乾町36
『阿闍梨餅本舗満月 金閣寺店』
京都市北区衣笠御所ノ内町30ー1
『龍安寺』
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
『笑福亭』
京都市右京区谷口垣ノ内町8
『
上京区智恵光院通上立売通上ル聖天町9ー3
『西陣ゑびや』
京都市上京区大宮通五辻上る芝大宮町21
『京都御所』
『バザールカフェ』
京都市上京区岡松町258
『茂庵』
京都市左京区吉田神楽岡町8
『植藤造園』
京都市右京区山越中町13
『ファミリーキッチン Pu』
京都市右京区御室小松野町25ー21
『パウンドハウス』
京都市左京区下鴨梅ノ木町71ー9
『平野神社』
京都市北区平野宮本町1
『クリケット』
京都市北区平野八丁柳町68ー1 サニーハイム金閣寺1F
『FACTORY KAFE 工船』
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448
第07回
「饅頭喰い」
友人である武者小路千家家元後嗣の千(宗屋)くんからFBにメッセージが届きました。西陣の産土さんで、厄除け疫病封じの神さんである『今宮神社』と、その境内の桜の写真。今年はコロナでどこの桜も観にいけへんかったし、とても心が和みました。こちらの神社のご利益を知っていれば時節柄ほんまに嬉しいお心遣い。
神仏の有り難さは、ここに詣でれば病気にかからへんとか、そういう即物的なご利益の効能ではなく、よしんばかかったとしてもご加護があるという安寧をいただけることに他なりません。千くんのメッセージはそのまま神さんからの優しいひとことにも似てる。
かつて社寺の参詣は庶民の娯楽だったから、名刹・古刹の傍には名物があります。今宮さんの場合は参道に向かい合う二軒の「あぶり餅」。香ばしく焼かれたひと口大のお餅に白味噌あんを絡めた一束は、今宮さんの
ここに載せた写真は昔に
のことやろか。
というわけで今年はお国の自粛要請もあってお花見でけへんかった人も多いやろし、来年のお楽しみを思い設けていた
だきまひょいうことで、儂の選ぶ『京都の桜ベスト10』を発表したいと思います。それぞれの場所からほど近い「うまいもん」も一緒にご紹介。
まず10位は『立本寺』。
鎌倉時代の創建やけど何度か燃えたりして現在の伽藍は江戸初期の造築。吉宗公の時代やね。ここの桜はさほど大規模というわけやないけど満開の時期には花の雲間に御堂が見え隠れする絵巻物めいた風情があります。浮遊感てゆうたらええやろか。漫ろ歩けばなんともいえんええ心地。
このお寺とコンビゆうたら『凡蔵』さんやろね。儂が京都で一番好きなロールケーキがある洋菓子屋さん。ただ、恵方巻きやあるまいしロール一本喰いは難しゅうございますんで、ここは焼きドーナツとかいかがですやろ。そもそも立本寺は酒宴に向いた場所やおへんので。
9位。『原谷苑』。
なんちゅうか桜の楽園。もともとは樹木農園だったのが、いつしか名所として評判を呼び一般公開されるようになった場所。鷹峯を借景に高低差のある園内に桜以外の花木も混ぜ植えされてて、あたかも和製ランドスケープガーデンのごとし。開花率に合わせた入園料時価てゆうのが、なんかすごいでしょ?
一応、園内には飲食施設はあるけれど、特別に美味いゆうわけやない。もちろん周りにはなにもない。シャトルバスも走ってるけど、たいがいの人らはタクシー使わはりますわ。仁和寺の辺で拾うか金閣寺前の西大路で捉まえるかなんやけど、少々遠回りでも後者が楽え。食べもん屋もなんやかやあるし。持ち込むんやったら和菓子の『満月』さんがあるし阿闍梨餅とかええんちゃう。
8位。『竜安寺』。
すぐそばに御室の桜があって、みんなそっちに目が行きがちやけど、石庭で有名なこの古刹にもかなりの数の桜が植わってます。境内には桜園もある。実はここが凄い。桜がメインではあるんやけど、梅や桃が混ぜ植えされてて、ちょうど桜が満開の時期に晩生の梅と早咲きの桃が咲き揃い、ちょっとした桃源郷の眺めが出現しますねん。こてこて。
ちょっと距離あるけど白梅町から嵐電に乗って竜安寺駅から参らはるんやったら一も二もなく『笑福亭』のおうどん。めっちゃ〝京都のうどん〟ですねん。おだしがきいてて、柔らかいめぇで。塩梅ようおなかが温まる。「ほっとする味」て手垢のついた表現やけど、この形容がほんまに似合う店てここくらいしか知らん。
7位。『雨宝院』。
元実家から歩いて5分の地元寺。全然知られてへんかったのに、いつの間にか狭い狭い路地に観光バスが無理くり横付けするような人気寺になってしもた。ささやかな境内に花木と御堂がぎっしり詰まった箱庭のように愛らしい小寺。緑の桜「
食べもん屋は『西陣ゑびや』さんにしよかな。宇治川さんという名前やったころから、ものごころつく前からここの「てんやもん」喰うて育ったので、いつのまにか街場の隠れた名店みたいな扱いになってた驚いた。こんど帰ったらよせてもらわなあかんな。
6位。『御所』。
いくつもの銘木が御苑内に咲き誇るけど、やっぱり「近衛邸跡」の糸桜は特別やと思うわー。2018年の台風でかなり被害があったそうやけど、写真を見せてもろた感じでは。まだあのしっとりと
ここいらへんは学生街なんで、食べるとこはもうよりどりみどりなんやけど最寄りの地下鉄今出川駅周辺はカフェの激戦区になってて、しゅっとした店がようさんある。ちょっと青臭いけど儂が好きなんは『バザールカフェ』。食事も珈琲も平均点なんやけど、こちらの最高のご馳走は〝空間〟。安易にお洒落に走ってしまいそうなところをぐっと抑えた肩の力の抜け具合がええ。
5位。『竹中稲荷』。
神楽岡/吉田山の天辺、東側にあるお稲荷さん。かつてはアメノウズメが祀られる神社やった。そこここにお塚信仰や稲荷講の名残り。一種異様なアトモスフィアが漂う。とりわけ桜の時期は参道に連なる鳥居の合間に花影が落ちてこの世
ではないどこかへ続いているような気配がしますにゃわ。あんまし大きな声で好きとは言い難いけど好き(笑)。
すでに非常な人気店なので席の確保が難しいにゃけど、やっぱり『茂庵』はええカフェやな。突き抜けてレベルが高いわけやないけどお花見の前後に食事するのはそういう店のほうがええんちゃうやろか。あくまで主役は桜なんで。かといって、あまりにしょうもないもんでは肝心の花までが色褪せてしまいそうやし。茂庵のランチはまさに花見弁当ぽい佳さがありますわ。
4位。『佐野園』。
正式名称は『植藤造園』。〝桜守〟として円山公園の枝垂れを丹精した十六代佐野藤右衛門氏の私宅。個人的なコレクションとして全国から集めた200種余りの桜を花の季節には無料で公開してくださってます。宵闇が迫れば篝火まで焚いて。こんな有り難いことあるやろか。山奥やないけど民家さえ少ないエリアなんで行くに
はちょっと根性いりまっけどな。
別にタクでもいいんですが桜の時期に仁和寺から
3位。『松ヶ崎疎水(疎水分線)』。
洛北高校の脇を高野川まで続く桜並木なんやけど、そらもう麗しい場所ですよ。後半になって堤防が低くなってくると仙界にでも迷い込んだような気分。だいぶ観桜のお客さんも増えてきたそうですが、2018年時点では花真っ盛りにもかかわらず歩いているのは儂らだけでした。
住宅街なんでなんか食べよと思たら下賀茂本通りまで戻らなあきません。北大路との交差点にあるケーキ屋さん『パウンドハウス』なんかどうでしょう。ここの苺ショートはちょっと格別なケーキです。長めの散歩で疲れた足まで癒してくれるような味わい。珈琲や紅茶がいまひとつなのが玉に瑕。いつも儂はミネラルウォーターを注文していました。
2位。『平野神社』。
入江にしてはメジャーなとこ持ってきはったなーて思われるかもしれませんが、地元やということを差っ引いてもここの夜桜はすごい。聖俗が混沌と混在する。「陰陽和合すれば楽みのうちにも必ず孕むなるべし」というが、まさにその有様を目の当たりにします。こちらも2018年の災害でダメージをうけたけど、京都人が京都に住む限り、ここはきっと蘇る。桜はね、ああ見えてものごっつ生命力の強い樹ぃやし。
西大路通りを挟んで斜め向かいにあるフルーツパーラー『クリケット』さんが儂にとっては平野さんの対になる店。窯に仕立てたフルーツにフレッシュなゼリーを込めたこちらの名代は昔ながらの京の「おもたせ」。みんな大好きですねん。とりわけ桜の季節ほぼ限定で並ぶデコポンのゼリーはたまりまへんのえ。
そうゆうたらデコポンゼリーの写真も以前に千くん送ってくれはったけなあ。
1位。『半木の道』。
件の佐野藤右衛さんも同意見。賀茂川に架かる葵橋から北山を振り仰ぐ風景は古雅玲瓏。さしかけられた花笠の下を歩けば、この世の憂さなどたちまち忘れ去る。平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば本来桜というのは陰の木やという話。そういわれれば名所といわれるところはどこも昏い。ここみたいにハレの桜はほんまに珍しいと思う。
で、ここのハレ桜を観る前でも観た後でも、その両方でも最高のご馳走にありつけるのが『FACTORY KAFE 工船』。カリスマ焙煎師オオヤミノルさん率いる珈琲の名店、いや、名店ゆう言葉は似合わへんな、巣窟とか魔窟とか「虎の穴」とかが相応しい店。珈琲のアテとして整えられた喰いもんもどれも素晴らしく行き届いている。儂の人生に美味い珈琲は必須アイテムなので「京都にKAFE 工船があってよかった!」としみじみ。
京都には「饅頭喰い」という伏見人形や御所人形があります。小さい子供が二つにした饅頭を持って佇んでいるモチーフ。これはね、仲が悪うて喧嘩ばかりしている両親がある日
我が子に「パパとママとどっちが好きや!」と迫ったところ、その子は饅頭を割って「どっちも好き」と答えたという逸話からきています。まあ、夫婦仲ようみたいなおまじないゆうか縁起もんやね。
儂は思うんですわ。「花より団子」と世間のひと様は申されますが、少なくとも京都においては花も団子も同じに美味しい。同じに綺麗で。同じに愉しい。そう。饅頭喰いみたいなもんやあらしませんかいなあ。
『今宮神社』
京都市北区紫野今宮町21
『
京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町107
『菓子工房凡蔵 七本松店』
京都市上京区二番町209
『原谷苑』
京都市北区大北山原谷乾町36
『阿闍梨餅本舗満月 金閣寺店』
京都市北区衣笠御所ノ内町30ー1
『龍安寺』
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
『笑福亭』
京都市右京区谷口垣ノ内町8
『
上京区智恵光院通上立売通上ル聖天町9ー3
『西陣ゑびや』
京都市上京区大宮通五辻上る芝大宮町21
『京都御所』
『バザールカフェ』
京都市上京区岡松町258
『茂庵』
京都市左京区吉田神楽岡町8
『植藤造園』
京都市右京区山越中町13
『ファミリーキッチン Pu』
京都市右京区御室小松野町25ー21
『パウンドハウス』
京都市左京区下鴨梅ノ木町71ー9
『平野神社』
京都市北区平野宮本町1
『クリケット』
京都市北区平野八丁柳町68ー1 サニーハイム金閣寺1F
『FACTORY KAFE 工船』
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448
第07回
「饅頭喰い」
友人である武者小路千家家元後嗣の千(宗屋)くんからFBにメッセージが届きました。西陣の産土さんで、厄除け疫病封じの神さんである『今宮神社』と、その境内の桜の写真。今年はコロナでどこの桜も観にいけへんかったし、とても心が和みました。こちらの神社のご利益を知っていれば時節柄ほんまに嬉しいお心遣い。
神仏の有り難さは、ここに詣でれば病気にかからへんとか、そういう即物的なご利益の効能ではなく、よしんばかかったとしてもご加護があるという安寧をいただけることに他なりません。千くんのメッセージはそのまま神さんからの優しいひとことにも似てる。
かつて社寺の参詣は庶民の娯楽だったから、名刹・古刹の傍には名物があります。今宮さんの場合は参道に向かい合う二軒の「あぶり餅」。香ばしく焼かれたひと口大のお餅に白味噌あんを絡めた一束は、今宮さんの
ここに載せた写真は昔に
るだけでたまらん気持ちになる。「
というわけで今年はお国の自粛要請もあってお花見でけへんかった人も多いやろし、来年のお楽しみを思い設けて
いただきまひょいうことで、儂の選ぶ『京都の桜ベスト10』を発表したいと思います。それぞれの場所からほど近い「うまいもん」も一緒にご紹介。
まず10位は『立本寺』。
鎌倉時代の創建やけど何度か燃えたりして現在の伽藍は江戸初期の造築。吉宗公の時代やね。ここの桜はさほど大規模というわけやないけど満開の時期には花の雲間に御堂が見え隠れする絵巻物めいた風情があります。浮遊感てゆうたらええやろか。漫ろ歩けばなんともいえんええ心地。
このお寺とコンビゆうたら『凡蔵』さんやろね。儂が京都で一番好きなロールケーキがある洋菓子屋さん。ただ、恵方巻きやあるまいしロール一本喰いは難しゅうございますんで、ここは焼きドーナツとかいかがですやろ。そもそも立本寺は酒宴に向いた場所やおへんので。
9位。『原谷苑』。
なんちゅうか桜の楽園。もともとは樹木農園だったのが、いつしか名所として評判を呼び一般公開されるようになった場所。鷹峯を借景に高低差のある園内に桜以外の花木も混ぜ植えされてて、あたかも和製ランドスケープガーデンのごとし。開花率に合わせた入園料時価てゆうのが、なんかすごいでしょ?
一応、園内には飲食施設はあるけれど、特別に美味いゆうわけやない。もちろん周りにはなにもない。シャトルバスも走ってるけど、たいがいの人らはタクシー使わはりますわ。仁和寺の辺で拾うか金閣寺前の西大路で捉まえるかなんやけど、少々遠回りでも後者が楽え。食べもん屋もなんやかやあるし。持ち込むんやったら和菓子の『満月』さんがあるし阿闍梨餅とかええんちゃう。
8位。『竜安寺』。
すぐそばに御室の桜があって、みんなそっちに目が行きがちやけど、石庭で有名なこの古刹にもかなりの数の桜が植わってます。境内には桜園もある。実はここが凄い。桜がメインではあるんやけど、梅や桃が混ぜ植えさ
れてて、ちょうど桜が満開の時期に晩生の梅と早咲きの桃が咲き揃い、ちょっとした桃源郷の眺めが出現しますねん。こてこて。
ちょっと距離あるけど白梅町から嵐電に乗って竜安寺駅から参らはるんやったら一も二もなく『笑福亭』のおうどん。めっちゃ〝京都のうどん〟ですねん。おだしがきいてて、柔らかいめぇで。塩梅ようおなかが温まる。「ほっとする味」て手垢のついた表現やけど、この形容がほんまに似合う店てここくらいしか知らん。
7位。『雨宝院』。
元実家から歩いて5分の地元寺。全然知られてへんかったのに、いつの間にか狭い狭い路地に観光バスが無理くり横付けするような人気寺になってしもた。ささやかな境内に花木と御堂がぎっしり詰まった箱庭のように愛らしい小寺。緑の桜「
食べもん屋は『西陣ゑびや』さんにしよかな。宇治川
さんという名前やったころから、ものごころつく前からここの「てんやもん」喰うて育ったので、いつのまにか街場の隠れた名店みたいな扱いになってた驚いた。こんど帰ったらよせてもらわなあかんな。
6位。『御所』。
いくつもの銘木が御苑内に咲き誇るけど、やっぱり「近衛邸跡」の糸桜は特別やと思うわー。2018年の台風でかなり被害があったそうやけど、写真を見せてもろた感じでは。まだあのしっとりと
ここいらへんは学生街なんで、食べるとこはもうよりどりみどりなんやけど最寄りの地下鉄今出川駅周辺はカフェの激戦区になってて、しゅっとした店がようさんある。ちょっと青臭いけど儂が好きなんは『バザールカフェ』。食事も珈琲も平均点なんやけど、こちらの最高のご馳走は〝空間〟。安易にお洒落に走ってしまいそうなところをぐっと抑えた肩の力の抜け具合がええ。
5位。『竹中稲荷』。
神楽岡/吉田山の天辺、東側にあるお稲荷さん。かつてはアメノウズメが祀られる神社やった。そこここにお塚信仰や稲荷講の名残り。一種異様なアトモスフィアが漂う。とりわけ桜の時期は参道に連なる鳥居の合間に花影が落ちてこの世ではないどこかへ続いているような気配がしますにゃわ。あんまし大きな声で好きとは言い難いけど好き(笑)。
すでに非常な人気店なので席の確保が難しいにゃけど、やっぱり『茂庵』はええカフェやな。突き抜けてレベルが高いわけやないけどお花見の前後に食事するのはそういう店のほうがええんちゃうやろか。あくまで主役は桜なんで。かといって、あまりにしょうもないもんでは肝心の花までが色褪せてしまいそうやし。茂庵のランチはまさに花見弁当ぽい佳さがありますわ。
4位。『佐野園』。
正式名称は『植藤造園』。〝桜守〟として円山公園の枝垂れを丹精した十六代佐野藤右衛門氏の私宅。個人的
なコレクションとして全国から集めた200種余りの桜を花の季節には無料で公開してくださってます。宵闇が迫れば篝火まで焚いて。こんな有り難いことあるやろか。山奥やないけど民家さえ少ないエリアなんで行くにはちょっと根性いりまっけどな。
別にタクでもいいんですが桜の時期に仁和寺から
3位。『松ヶ崎疎水(疎水分線)』。
洛北高校の脇を高野川まで続く桜並木なんやけど、そらもう麗しい場所ですよ。後半になって堤防が低くなってくると仙界にでも迷い込んだような気分。だいぶ観桜のお客さんも増え
てきたそうですが、2018年時点では花真っ盛りにもかかわらず歩いているのは儂らだけでした。
住宅街なんでなんか食べよと思たら下賀茂本通りまで戻らなあきません。北大路との交差点にあるケーキ屋さん『パウンドハウス』なんかどうでしょう。ここの苺ショートはちょっと格別なケーキです。長めの散歩で疲れた足まで癒してくれるような味わい。珈琲や紅茶がいまひとつなのが玉に瑕。いつも儂はミネラルウォーターを注文していました。
2位。『平野神社』。
入江にしてはメジャーなとこ持ってきはったなーて思われるかもしれませんが、地元やということを差っ引いてもここの夜桜はすごい。聖俗が混沌と混在する。「陰陽和合すれば楽みのうちにも必ず孕むなるべし」というが、まさにその有様を目の当たりにします。こちらも2018年の災害でダメージをうけたけど、京都人が京都に住む限り、ここはきっと蘇る。桜はね、ああ見えてものごっつ生命力の強い樹ぃやし。
西大路通りを挟んで斜め向かいにあるフルーツパーラー『ク
リケット』さんが儂にとっては平野さんの対になる店。窯に仕立てたフルーツにフレッシュなゼリーを込めたこちらの名代は昔ながらの京の「おもたせ」。みん
な大好きですねん。とりわけ桜の季節ほぼ限定で並ぶデコポンのゼリーはたまりまへんのえ。
そうゆうたらデコポンゼリーの写真も以前に千くん送ってくれはったけなあ。
1位。『半木の道』。
件の佐野藤右衛さんも同意見。賀茂川に架かる葵橋から北山を振り仰ぐ風景は古雅玲瓏。さしかけられた花笠の下を歩けば、この世の憂さなどたちまち忘れ去る。平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば本来桜というのは陰の木やという話。そういわれれば名所といわれるところはどこも昏い。ここみたいにハレの桜はほんまに珍しいと思う。
で、ここのハレ桜を観る前でも観た後でも、その両方
でも最高のご馳走にありつけるのが『FACTORY KAFE 工船』。カリスマ焙煎師オオヤミノルさん率いる珈琲の名店、いや、名店ゆう言葉は似合わへんな、巣窟とか魔窟とか「虎の穴」とかが相応しい店。珈琲のアテとして整えられた喰いもんもどれも素晴らしく行き届いている。儂の人生に美味い珈琲は必須アイテムなので「京都にKAFE 工船があってよかった!」としみじみ。
京都には「饅頭喰い」という伏見人形や御所人形があります。小さい子供が二つにした饅頭を持って佇んでいるモチーフ。これはね、仲が悪うて喧嘩ばかりしている両親がある日我が子に「パパとママとどっちが好きや!」と迫ったところ、その子は饅頭を割って「どっちも好き」と答えたという逸話からきています。まあ、夫婦仲ようみたいなおまじないゆうか縁起もんやね。
儂は思うんですわ。「花より団子」と世間のひと様は申されますが、少なくとも京都においては花も団子も同じに美味しい。同じに綺麗で。同じに愉しい。そう。饅頭喰いみたいなもんやあらしませんかいなあ。
『今宮神社』
京都市北区紫野今宮町21
『
京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町107
『菓子工房凡蔵 七本松店』
京都市上京区二番町209
『原谷苑』
京都市北区大北山原谷乾町36
『阿闍梨餅本舗満月 金閣寺店』
京都市北区衣笠御所ノ内町30ー1
『龍安寺』
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
『笑福亭』
京都市右京区谷口垣ノ内町8
『
上京区智恵光院通上立売通上ル聖天町9ー3
『西陣ゑびや』
京都市上京区大宮通五辻上る芝大宮町21
『京都御所』
『バザールカフェ』
京都市上京区岡松町258
『茂庵』
京都市左京区吉田神楽岡町8
『植藤造園』
京都市右京区山越中町13
『ファミリーキッチン Pu』
京都市右京区御室小松野町25ー21
『パウンドハウス』
京都市左京区下鴨梅ノ木町71ー9
『平野神社』
京都市北区平野宮本町1
『クリケット』
京都市北区平野八丁柳町68ー1 サニーハイム金閣寺1F
『FACTORY KAFE 工船』
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448
第07回
「饅頭喰い」
友人である武者小路千家家元後嗣の千(宗屋)くんからFBにメッセージが届きました。西陣の産土さんで、厄除け疫病封じの神さんである『今宮神社』と、その境内の桜の写真。今年はコロナでどこの桜も観にいけへんかったし、とても心が和みました。こちらの神社のご利益を知っていれば時節柄ほんまに嬉しいお心遣い。
神仏の有り難さは、ここに詣でれば病気にかからへんとか、そういう即物的なご利益の効能ではなく、よしんばかかったとしてもご加護があるという安寧をいただけることに他なりません。千くんのメッセージはそのまま神さんからの優しいひとことにも似てる。
かつて社寺の参詣は庶民の娯楽だったから、名刹・古刹の傍には名物があります。今宮さんの場合は参道に向かい合う二軒の「あぶり餅」。香ばしく焼かれたひと口大のお餅に白味噌あんを絡めた一束は、今宮さんの
ここに載せた写真は昔に
るだけでたまらん気持ちになる。「
というわけで今年はお国の自粛要請もあってお花見でけへんかった人も多いやろし、来年のお楽しみを思い設けていただきまひょいうことで、儂の選ぶ『京都の桜ベスト10』を発表したいと思います。それぞれの場所からほど近い「うまいもん」も一緒にご紹介。
まず10位は『立本寺』。
鎌倉時代の創建やけど何度か燃えたりして現在の伽藍は江戸初期の造築。吉宗公の時代やね。ここの桜はさほど大規模というわけやないけど満開の時期には花の雲間に御堂が見え隠れする絵巻物めいた風情があります。浮遊感てゆうたらええやろか。漫ろ歩けばなんともいえんええ心地。
このお寺とコンビゆうたら『凡蔵』さんやろね。儂が京都で一番好きなロールケーキがある洋菓子屋さん。ただ、恵方巻きやあるまいしロール一本喰いは難しゅうございますんで、ここは焼きドーナツとかいかがですやろ。そもそも立本寺は酒宴に向いた場所やおへんので。
9位。『原谷苑』。
なんちゅうか桜の楽園。もともとは樹木農園だったのが、いつしか名所として評判を呼び一般公開されるようになった場所。鷹峯を借景に高低差のある園内に桜以外の花木も混ぜ植えされてて、あたかも和製ランドスケープガーデンのごとし。開花率に合わせた入園料時価てゆうのが、なんかすごいでしょ?
一応、園内には飲食施設はあるけれど、特別に美味いゆうわけやない。もちろん周りにはなにもない。シャトルバスも走ってるけど、たいがいの人らはタクシー使わはりますわ。仁和寺の辺で拾うか金閣寺前の西大路で捉まえるかなんやけど、少々遠回りでも後者が楽え。食べもん屋もなんやかやあるし。持ち込むんやったら和菓子の『満月』さんがあるし阿闍梨餅とかええんちゃう。
8位。『竜安寺』。
すぐそばに御室の桜があって、みんなそっちに目が行きがちやけど、石庭で有名なこの古刹にもかなりの数の桜が植わってます。境内には桜園もある。実はここが凄い。桜がメインではあるんやけど、梅や桃が混ぜ植えさ
れてて、ちょうど桜が満開の時期に晩生の梅と早咲きの桃が咲き揃い、ちょっとした桃源郷の眺めが出現しますねん。こてこて。
ちょっと距離あるけど白梅町から嵐電に乗って竜安寺駅から参らはるんやったら一も二もなく『笑福亭』のおうどん。めっちゃ〝京都のうどん〟ですねん。おだしがきいてて、柔らかいめぇで。塩梅ようおなかが温まる。「ほっとする味」て手垢のついた表現やけど、この形容がほんまに似合う店てここくらいしか知らん。
7位。『雨宝院』。
元実家から歩いて5分の地元寺。全然知られてへんかったのに、いつの間にか狭い狭い路地に観光バスが無理くり横付けするような人気寺になってしもた。ささやかな境内に花木と御堂がぎっしり詰まった箱庭のように愛らしい小寺。緑の桜「
食べもん屋は『西陣ゑびや』さんにしよかな。宇治川さんという名前やったころから、ものごころつく前から
ここの「てんやもん」喰うて育ったので、いつのまにか街場の隠れた名店みたいな扱いになってた驚いた。こんど帰ったらよせてもらわなあかんな。
6位。『御所』。
いくつもの銘木が御苑内に咲き誇るけど、やっぱり「近衛邸跡」の糸桜は特別やと思うわー。2018年の台風でかなり被害があったそうやけど、写真を見せてもろた感じでは。まだあのしっとりと
ここいらへんは学生街なんで、食べるとこはもうよりどりみどりなんやけど最寄りの地下鉄今出川駅周辺はカフェの激戦区になってて、しゅっとした店がようさんある。ちょっと青臭いけど儂が好きなんは『バザールカフェ』。食事も珈琲も平均点なんやけど、こちらの最高のご馳走は〝空間〟。安易にお洒落に走ってしまいそうなところをぐっと抑えた肩の力の抜け具合がええ。
5位。『竹中稲荷』。
神楽岡/吉田山の天辺、東側にあるお稲荷さん。かつてはアメノウズメが祀られる神社やった。そこここにお塚信仰や稲荷講の名残り。一種異様なアトモスフィアが漂う。とりわけ桜の時期は参道に連なる鳥居の合間に花影が落ちてこの世ではないどこかへ続いているような気配がしますにゃわ。あんまし大きな声で好きとは言い難いけど好き(笑)。
すでに非常な人気店なので席の確保が難しいにゃけど、やっぱり『茂庵』はええカフェやな。突き抜けてレベルが高いわけやないけどお花見の前後に食事するのはそういう店のほうがええんちゃうやろか。あくまで主役は桜なんで。かといって、あまりにしょうもないもんでは肝心の花までが色褪せてしまいそうやし。茂庵のランチはまさに花見弁当ぽい佳さがありますわ。
4位。『佐野園』。
正式名称は『植藤造園』。〝桜守〟として円山公園の枝垂れを丹精した十六代佐野藤右衛門氏の私宅。個人的なコレクションとして全国から集めた200種余りの桜
を花の季節には無料で公開してくださってます。宵闇が迫れば篝火まで焚いて。こんな有り難
いことあるやろか。山奥やないけど民家さえ少ないエリアなんで行くにはちょっと根性いりまっけどな。
別にタクでもいいんですが桜の時期に仁和寺から
3位。『松ヶ崎疎水(疎水分線)』。
洛北高校の脇を高野川まで続く桜並木なんやけど、そらもう麗しい場所ですよ。後半になって堤防が低くなってくると仙界にでも迷い込んだような気分。だいぶ観桜のお客さんも増えてきたそうですが、2018年時点では花真っ盛りにも
かかわらず歩いているのは儂らだけでした。
住宅街なんでなんか食べよと思たら下賀茂本通りまで戻らなあきません。北大路との交差点にあるケーキ屋さん『パウンドハウス』なんかどうでしょう。ここの苺ショートはちょっと格別なケーキです。長めの散歩で疲れた足まで癒してくれるような味わい。珈琲や紅茶がいまひとつなのが玉に瑕。いつも儂はミネラルウォーターを注文していました。
2位。『平野神社』。
入江にしてはメジャーなとこ持ってきはったなーて思われるかもしれませんが、地元やということを差っ引いてもここの夜桜はすごい。聖俗が混沌と混在する。「陰陽和合すれば楽みのうちにも必ず孕むなるべし」というが、まさにその有様を目の当たりにします。こちらも2018年の災害でダメージをうけたけど、京都人が京都に住む限り、ここはきっと蘇る。桜はね、ああ見えてものごっつ生命力の強い樹ぃやし。
西大路通りを挟んで斜め向かいにあるフルーツパーラー『クリケット』さんが儂にとっては平野さんの対に
なる店。窯に仕立てたフルーツにフレッシュなゼリーを込めたこちらの名代は昔ながらの京の「おもたせ」。みんな大好きですねん。とりわけ桜の季節ほぼ限定で並ぶデコポンのゼリーはたまりまへんのえ。
そうゆうたらデコポンゼリーの写真も以前に千くん送ってくれはったけなあ。
1位。『半木の道』。
件の佐野藤右衛さんも同意見。賀茂川に架かる葵橋から北山を振り仰ぐ風景は古雅玲瓏。さしかけられた花笠の下を歩けば、この世の憂さなどたちまち忘れ去る。平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば本来桜というのは陰の木やという話。そういわれれば名所といわれるところはどこも昏い。ここみたいにハレの桜はほんまに珍しいと思う。
で、ここのハレ桜を観る前でも観た後でも、その両方でも最高のご馳走にありつけるのが『FACTORY KAFE 工船』。カ
リスマ焙煎師オオヤミノルさん率いる珈琲の名店、いや、名店ゆう言葉は似合わへんな、巣窟とか魔窟とか「虎の穴」とかが相応しい店。珈琲のアテとして整えられた喰いもんもどれも素晴らしく行き届いている。儂の人生に美味い珈琲は必須アイテムなので「京都にKAFE 工船があってよかった!」としみじみ。
京都には「饅頭喰い」という伏見人形や御所人形があります。小さい子供が二つにした饅頭を持って佇んでいるモチーフ。これはね、仲が悪うて喧嘩ばかりしている両親がある日我が子に「パパとママとどっちが好きや!」と迫ったところ、その子は饅頭を割って「どっちも好き」と答えたという逸話からきています。まあ、夫婦仲ようみたいなおまじないゆうか縁起もんやね。
儂は思うんですわ。「花より団子」と世間のひと様は申されますが、少なくとも京都においては花も団子も同じに美味しい。同じに綺麗で。同じに愉しい。そう。饅頭喰いみたいなもんやあらしませんかいなあ。
『今宮神社』
京都市北区紫野今宮町21
『
京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町107
『菓子工房凡蔵 七本松店』
京都市上京区二番町209
『原谷苑』
京都市北区大北山原谷乾町36
『阿闍梨餅本舗満月 金閣寺店』
京都市北区衣笠御所ノ内町30ー1
『龍安寺』
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
『笑福亭』
京都市右京区谷口垣ノ内町8
『
上京区智恵光院通上立売通上ル聖天町9ー3
『西陣ゑびや』
京都市上京区大宮通五辻上る芝大宮町21
『京都御所』
『バザールカフェ』
京都市上京区岡松町258
『茂庵』
京都市左京区吉田神楽岡町8
『植藤造園』
京都市右京区山越中町13
『ファミリーキッチン Pu』
京都市右京区御室小松野町25ー21
『パウンドハウス』
京都市左京区下鴨梅ノ木町71ー9
『平野神社』
京都市北区平野宮本町1
『クリケット』
京都市北区平野八丁柳町68ー1 サニーハイム金閣寺1F
『FACTORY KAFE 工船』
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448
第07回
「饅頭喰い」
友人である武者小路千家家元後嗣の千(宗屋)くんからFBにメッセージが届きました。西陣の産土さんで、厄除け疫病封じの神さんである『今宮神社』と、その境内の桜の写真。今年はコロナでどこの桜も観にいけへんかったし、とても心が和みました。こちらの神社のご利益を知っていれば時節柄ほんまに嬉しいお心遣い。
神仏の有り難さは、ここに詣でれば病気にかからへんとか、そういう即物的なご利益の効能ではなく、よしんばかかったとしてもご加護があるという安寧をいただけることに他なりません。千くんのメッセージはそのまま神さんからの優しいひとことにも似てる。
かつて社寺の参詣は庶民の娯楽だったから、名刹・古刹の傍には名物があります。今宮さんの場合は参道に向かい合う二軒の「あぶり餅」。香ばしく焼かれたひと口大のお餅に白味噌あんを絡めた一束は、今宮さんの
ここに載せた写真は昔に
このことやろか。
というわけで今年はお国の自粛要請もあってお花見でけへんかった人も多いやろし、来年のお楽しみを思い設けていただきまひょいうことで、儂の選ぶ『京都の桜ベスト10』を発表したいと思います。それぞれの場所からほど近い「うまいもん」も一緒にご紹介。
まず10位は『立本寺』。
鎌倉時代の創建やけど何度か燃えたりして現在の伽藍は江戸初期の造築。吉宗公の時代やね。ここの桜はさほど大規模というわけやないけど満開の時期には花の雲間に御堂が見え隠れする絵巻物めいた風情があります。浮遊感てゆうたらええやろか。漫ろ歩けばなんともいえんええ心地。
このお寺とコンビゆうたら『凡蔵』さんやろね。儂が京都で一番好きなロールケーキがある洋菓子屋さん。ただ、恵方巻きやあるまいしロール一本喰いは難しゅうございますんで、ここは焼きドーナツとかいかがですやろ。そもそも立本寺は酒宴に向いた場所やおへんので。
9位。『原谷苑』。
なんちゅうか桜の楽園。もともとは樹木農園だったのが、いつしか名所として評判を呼び一般公開されるようになった場所。鷹峯を借景に高低差のある園内に桜以外の花木も混ぜ植えされてて、あたかも和製ランドスケープガーデンのごとし。開花率に合わせた入園料時価てゆうのが、なんかすごいでしょ?
一応、園内には飲食施設はあるけれど、特別に美味いゆうわけやない。もちろん周りにはなにもない。シャトルバスも走ってるけど、たいがいの人らはタクシー使わはりますわ。仁和寺の辺で拾うか金閣寺前の西大路で捉まえるかなんやけど、少々遠回りでも後者が楽え。食べもん屋もなんやかやあるし。持ち込むんやったら和菓子の『満月』さんがあるし阿闍梨餅とかええんちゃう。
8位。『竜安寺』。
すぐそばに御室の桜があって、みんなそっちに目が行きがちやけど、石庭で有名なこの古刹にもかなりの数の桜が植わってます。境内には桜園もある。実はここが凄い。桜がメインではあるんやけど、梅や桃が混ぜ植えされてて、ちょうど桜が満開の時期に晩生の梅と早咲きの桃が咲き揃い、ちょっとした桃源郷の眺めが出現しますねん。こてこて。
ちょっと距離あるけど白梅町から嵐電に乗って竜安寺駅から参らはるんやったら一も二もなく『笑福亭』のおうどん。めっちゃ〝京都のうどん〟ですねん。おだしがきいてて、柔らかいめぇで。塩梅ようおなかが温まる。「ほっとする味」て手垢のついた表現やけど、この形容がほんまに似合う店てここくらいしか知らん。
7位。『雨宝院』。
元実家から歩いて5分の地元寺。全然知られてへんかったのに、いつの間にか狭い狭い路地に観光バスが無理くり横付けするような人気寺になってしもた。ささやかな境内に花木と御堂がぎっしり詰まった箱庭のように愛らしい小寺。緑の桜「
食べもん屋は『西陣ゑびや』さんにしよかな。宇治川さんという名前やったころから、ものごころつく前からここの「てんやもん」喰うて育ったので、いつのまにか街場の隠れた名店みたいな扱いになってた驚いた。こんど帰ったらよせ
てもらわなあかんな。
6位。『御所』。
いくつもの銘木が御苑内に咲き誇るけど、やっぱり「近衛邸跡」の糸桜は特別やと思うわー。2018年の台風でかなり被害があったそうやけど、写真を見せてもろた感じでは。まだあのしっとりと
ここいらへんは学生街なんで、食べるとこはもうよりどりみどりなんやけど最寄りの地下鉄今出川駅周辺はカフェの激戦区になってて、しゅっとした店がようさんある。ちょっと青臭いけど儂が好きなんは『バザールカフェ』。食事も珈琲も平均点なんやけど、こちらの最高のご馳走は〝空間〟。安易にお洒落に走ってしまいそうなところをぐっと抑えた肩の力の抜け具合がええ。
5位。『竹中稲荷』。
神楽岡/吉田山の天辺、東側にあるお稲荷さん。かつてはアメノウズメが祀られる神社やった。そこここにお塚信仰や
稲荷講の名残り。一種異様なアトモスフィアが漂う。とりわけ桜の時期は参道に連なる鳥居の合間に花影が落ちてこの世ではないどこかへ続いているような気配がしますにゃわ。あんまし大きな声で好きとは言い難いけど好き(笑)。
すでに非常な人気店なので席の確保が難しいにゃけど、やっぱり『茂庵』はええカフェやな。突き抜けてレベルが高いわけやないけどお花見の前後に食事するのはそういう店のほうがええんちゃうやろか。あくまで主役は桜なんで。かといって、あまりにしょうもないもんでは肝心の花までが色褪せてしまいそうやし。茂庵のランチはまさに花見弁当ぽい佳さがありますわ。
4位。『佐野園』。
正式名称は『植藤造園』。〝桜守〟として円山公園の枝垂れを丹精した十六代佐野藤右衛門氏の私宅。個人的なコレクションとして全国から集めた200種余りの桜を花の季節には無料で公開してくださってます。宵闇が迫れば篝火まで焚いて。こんな有り難いことあるやろか。
山奥やないけど民家さえ少ないエリアなんで行くにはちょっと根性いりまっけどな。
別にタクでもいいんですが桜の時期に仁和寺から
3位。『松ヶ崎疎水(疎水分線)』。
洛北高校の脇を高野川まで続く桜並木なんやけど、そらもう麗しい場所ですよ。後半になって堤防が低くなってくると仙界にでも迷い込んだような気分。だいぶ観桜のお客さんも増えてきたそうですが、2018年時点では花真っ盛りにもかかわらず歩いているのは儂らだけでした。
住宅街なんでなんか食べよと思たら下賀茂本通りまで戻らなあきません。北大路との交差点にあるケーキ屋さん『パウンドハウス』なんかどうでしょう。ここの苺ショートはちょっと格別なケーキです。長めの散歩で疲れた足まで癒してくれるような味わい。珈琲や紅茶がいまひとつなのが玉に
瑕。いつも儂はミネラルウォーターを注文していました。
2位。『平野神社』。
入江にしてはメジャーなとこ持ってきはったなーて思われるかもしれませんが、地元やということを差っ引いてもここの夜桜はすごい。聖俗が混沌と混在する。「陰陽和合すれば楽みのうちにも必ず孕むなるべし」というが、まさにその有様を目の当たりにします。こちらも2018年の災害でダメージをうけたけど、京都人が京都に住む限り、ここはきっと蘇る。桜はね、ああ見えてものごっつ生命力の強い樹ぃやし。
西大路通りを挟んで斜め向かいにあるフルーツパーラー『クリケット』さんが儂にとっては平野さんの対になる店。窯に仕立てたフルーツにフレッシュなゼリーを込めたこちらの名代は昔ながらの京の「おもたせ」。みんな大好きですねん。とりわけ桜の季節ほぼ限定で並ぶデコポンのゼリーはたまりまへんのえ。
そうゆうたらデコポンゼリーの写真も以前に千くん送ってくれはったけなあ。
1位。『半木の道』。
件の佐野藤右衛さんも同意見。賀茂川に架かる葵橋から北山を振り仰ぐ風景は古雅玲瓏。さしかけられた花笠の下を歩けば、この世の憂さなどたちまち忘れ去る。平安時代に書かれた日本最古の庭園書『作庭記』によれば本来桜というのは陰の木やという話。そういわれれば名所といわれるところはどこも昏い。ここみたいにハレの桜はほんまに珍しいと思う。
で、ここのハレ桜を観る前でも観た後でも、その両方でも最高のご馳走にありつけるのが『FACTORY KAFE 工船』。カリスマ焙煎師オオヤミノルさん率いる珈琲の名店、いや、名店ゆう言葉は似合わへんな、巣窟とか魔窟とか「虎の穴」とかが相応しい店。珈琲のアテとして整えられた喰いもんもどれも素晴らしく行き届いている。儂の人生に美味い珈琲は必須アイテムなので「京都にKAFE 工船があってよかった!」としみじみ。
京都には「饅頭喰い」という伏見人形や御所人形がありま
す。小さい子供が二つにした饅頭を持って佇んでいるモチーフ。これはね、仲が悪うて喧嘩ばかりしている両親がある日我が子に「パパとママとどっちが好きや!」と迫ったところ、その子は饅頭を割って「どっちも好き」と答えたという逸話からきています。まあ、夫婦仲ようみたいなおまじないゆうか縁起もんやね。
儂は思うんですわ。「花より団子」と世間のひと様は申されますが、少なくとも京都においては花も団子も同じに美味しい。同じに綺麗で。同じに愉しい。そう。饅頭喰いみたいなもんやあらしませんかいなあ。
『今宮神社』
京都市北区紫野今宮町21
『
京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町107
『菓子工房凡蔵 七本松店』
京都市上京区二番町209
『原谷苑』
京都市北区大北山原谷乾町36
『阿闍梨餅本舗満月 金閣寺店』
京都市北区衣笠御所ノ内町30ー1
『龍安寺』
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
『笑福亭』
京都市右京区谷口垣ノ内町8
『
上京区智恵光院通上立売通上ル聖天町9ー3
『西陣ゑびや』
京都市上京区大宮通五辻上る芝大宮町21
『京都御所』
『バザールカフェ』
京都市上京区岡松町258
『茂庵』
京都市左京区吉田神楽岡町8
『植藤造園』
京都市右京区山越中町13
『ファミリーキッチン Pu』
京都市右京区御室小松野町25ー21
『パウンドハウス』
京都市左京区下鴨梅ノ木町71ー9
『平野神社』
京都市北区平野宮本町1
『クリケット』
京都市北区平野八丁柳町68ー1 サニーハイム金閣寺1F
『FACTORY KAFE 工船』
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448