2020.07.05
封鎖一〇四日目
Lockdown Day 104 曇り。【日記最終日】
今日から緩和も最終段階。この日記もいったん閉じることにしました。
けどロックダウン解除でも、ましてコロナ禍が治まったわけでもないんで(あと #BLM も終了してませんので)そこんとこ夜露死苦。パブも再開しましたが、時間が経つにつれソーシャル・ディスタンスなし崩しだったというレポートも聞こえてます。ほんっと気をつけてほしい。
赤き死の仮面が駆けぬけて、あとは沈黙と荒廃だけが残った……なんてことにならないように。
個人的にパブはどうでもいいんですが結婚式が再開されたというのは喜ばしいニュースでした。7万5千カップルが延期を余儀なくされてたとか。今日の0時ちょうどに調印したカップルもいました。お役所の特別措置。レズビアンの婦々。おめでたい報道に飢えてたのでなんだか妙に心温まります。
ここんとこ街角に張り紙を見かけます。大きな白い模造紙で、上部に「みんな終わったあと、この世界がどう変わっててほしい?」と印刷してあるだけ。脇にはマジックペンがぶら下がっています。
平素ならたちまちペンは盗まれ、紙は破られるか、へなちょこなサインで埋め尽くされるかが関の山なんですが、意外や機能しています。やはりこの100日間はいくばくかの変化を人々に及ぼしたとみえます。みんな、ちいさく一言を残していきます。
印象的だったのは、ありがちなシニシズムやニヒリズムがほとんど見当たらなかったこと。もちろんサポートするフットボールチームの優勝祈願なんかも書かれているけどネガティヴな内容がないんです。みんな未来に希望を持っていて、愛とか幸福(とか #BLM )を信じている。驚くほどストレートに。
うちのへんは移民も多いし、トルコ人を中心に人種の坩堝っぽいエリアですが、そこには紛うことなき
こういう実直で地道で愚直なメッセージに皮肉な言葉を返すのはむしろ簡単です。しかし封鎖に耐えたわたしたちは皮肉よりも愚直が強いことを知っている。愚直に家に留まること。愚直にルールに従うこと(そして愚直にデモすること)。エクストリームな行為は必要ない。結局はそれらが自分だけでなく自分の周りの人たちをも護ることになるのです。
日記の初回に書いた『Miel Bakery』のサワードゥブレッド、好きで好きでロックダウン中もしばしばムキーッ! となっていました。実はね、最終回はね、「とうとう買うことができました! 3ヶ月ぶり!」という内容で締められたらなあと計画してたんです。語呂合わせが好きなんで(笑)。けど、まだ地下鉄を利用する気になれず、もうちょいお預け。ムキーッ!
幸いすぐ商店街にあるカフェ『Music & Beans』が仕入れているサワードゥに出会い、これがなかなかのもんなのでお預けはさほど辛くありません。Miel のような超絶技巧や絶妙なバランスはないけれど石窯で焼かれたそれは、まさに愚直な旨味が噛んでいるうちにむっくり立ち上がってきます。
わたしが件の模造紙にヒトコト残すとしたら「愚直なめんな! (Don’t give a f**k with simple honesty)」ってとこでしょうか。
Miel Bakery
57 Warren Street London W1T 5NR
https://mielbakery.co.uk/