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第6回 牡蠣を食いにわざわざ池田へ行った。書こうとして突然、ブロガーについて思ったこと。(かき峰/阪急池田)

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 淀屋橋の南詰めに[かき広]という店がある。
 正確には土佐堀川に浮かぶ牡蠣舟の店だ。

 『あまから手帖』の10月号の「京阪電車の始点・終点」というエリアコラムでこう書いた。IMG_0196

 京阪淀屋橋駅の1番出口、淀屋橋の南詰東側から地上へ上がると「季節料理 かき広」という看板が目に入る。すぐ右側下に土佐堀川の流れが見え、川に張り出した建物の屋根に看板が出ている。「椅子席 鰻まむし 天丼 一品料理」「川魚料理 鮮魚 天ぷら」。かと思えば「出入口につきお立ちにならぬよう」という表記もある。 
 ある夕刻、東京の物書きの先輩と「淀屋橋駅の1番出口で」と待ち合わせをしたことがあった。彼はわたしより5分ぐらい早く着いて、まわりをきょろきょろしていたが、わたしが到着するや開口一番「これ屋形船の店だよね。大阪ってやっぱりすごいわ」と言う。わたしは淀屋橋駅のこの出入口をそれこそ何百回も使っているが、それまでこの店の様子や看板の文句をしっかり見たことがない。淀屋橋を形成しているいつもの風景のなかの一つだからだ。

 大阪は河口に発達した街で、かつては秋から冬になると川筋には牡蠣料理を提供する牡蠣舟が留まる風景がよく見られたらしい。
 今では大正9年(1920)創業のこの[かき広]のみになったということを『あまから手帖』が書いている。

 牡蠣舟ではないが、震災前まで神戸の元町山手のコープの山側に[かき十]という牡蠣料理専門の店があった。

 旅館みたいな2階建て日本建築の店で、いくつも大部屋があって、そこで鍋やらコキールやらかき飯やら、牡蠣づくしの料理を出していた。牡蠣のおからまぶしというのが、へえ面白い食べ方だな、と思っていた。

 この店は10月から3月頃までしか営業してなく、シーズンになると必ず2〜3回は行っていた。わたしはこの季節営業の店の近くに住んでいて毎日前を通っていたから、黒光りした木造の立派な建物ははっきり覚えている。

 自分が編集担当した古い『ミーツ』誌を引っ張り出してきて[かき十]の記事を見つけた。創刊号(90年1月)の最後の方の「今、食べ頃主義」というレギュラーページだ。

 書き出しはこうだ。

  明治6年創業当時、かき十の当主は10月になると、広島からかき船に乗ってやって来た。当時の店は兵庫の弁天浜。戦後、店は現在の場所に移ったが、かきづくしの料理は、そのまましっかり受け継がれている。

 何の変哲もない店紹介のベタ記事だが、大阪でも神戸でももう見かけない牡蠣のシーズンしかやってない池田の[かき峰]に行って、牡蠣を食いまくっている最中に思い出し、帰ったらミーツ見てみよ、そう思ったのだ。

 しかしながら明治6年(1873)はすごい古いな。間違いだということはないと思うが、文明開化の時期、神戸でもまだ電気なんかなかったんちゃうか。

 

 さて。[かき峰]は阪急池田駅からすぐそばにある。

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 2回行った記憶がある。どちらももう10年以上前のことだが、1回はダイハツ工業の宣伝担当の人に連れられて行った。2回目は取材だったが、いつの号で何を書いたかは忘れてしまった。

 「十」と「峰」とどっちがうまいとかまずいとかではない。よく行ってた店のことは、書いたことまで覚えている。
 普段行ってない店の取材で聞いて帰って書けることというのはその程度のことだ。

 ブロガーが決定的にダメなところはそこのところで、写真に撮るため、評価するために店に行くというのは、倒錯であり変態じみている。
 この[かき峰]などは季節営業のユニークな店だけに、食べログの餌食になりやすい。

では順を追って、フルコースの中身を紹介していこう。

●酢がき 
いわゆる”突き出し”だ。
根本的に酢の物が苦手なので、特段の感想はない。

●かきフライ 
かなり大きめのもの。 非常に硬めで、かきのジューシーさはあまり感じられない。
(かずひこにゃん 40代前半・男性・兵庫県)

結果、ちょっと残念な感じで終わってしまいました。

まず、あんまりジューシーな牡蠣じゃなかった。

そして、めちゃ小ぶり。

とはいえ、たくさんの牡蠣を食べれて満足はしました。
(☆AKIKO☆ 大阪府)

昔ながらのという感じの調理が多いように感じるのは事実。逆に言うと、年配の人だと安心感を感じると思うので、年配者への接待には良いと思う。具体的に言うと、酢牡蠣が締められすぎ、カキフライの衣が厚すぎ&冷めてる&火が通りすぎ。

超老舗なので、一回行ってその雰囲気を知っておくのは吉。行かないで文句を言うのはね!
(sakanasakelove 女性)

しっかりとしたワインがあるともっとよいのに… 残念です。
シャブリだけでも 置いてもらえたら 高評価になりますし
(チョコ・バナナ 30代前半・女性・大阪府)

 そう書くことの何が目的かは知らないが、こんなことばかり脱糞するように書いてある。
 匿名やったらなんでも書けると思てるのがあまりにもアレで気分悪い。店はホンマに気の毒だ。

 これ以上読むと、たまたまカキフライとかを食うときに思い出してメシがまずくなるからやめておくし、ツッコミはこれを読んでいただいてる人にお任せする。

 というより、食べログの「レビュー」(なあにがレビューじゃ)を「チェック」してから[かき峰]に行かなかったのが何よりも幸運だ。

 酢牡蠣から順番に出てくる。
 今年は温(ぬく)いから、まだ牡蠣は小ぶりやんなあ。オレはそう思った。
 この日は、わがラテンバンド「ワンドロップ」の仲間と行ったのだが、バンマスはライターの堀埜コージくんで、かれによると「ここのは広島のやから、ちっさいし余計な水分抜いてある。そこがうまいんや」とのこと。

 鍋に入る。

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 仲居さんが丁寧に「して」くれる。

 おっと、カメラを持っていた。それを出すと、仲居さんは撮りやすいように置いてくれる。コージくんは笑っている。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA オレは途中から仲居さんから卵をもらって食べる。

 すき焼きみたいでうまい、そう言うと、コージくんは、「その感じ、その感じ。味噌の具合がええんですわ」。

 確か讃岐の白味噌だったと思う。

 

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 続いてのカキフライはどかんと3人分一皿で出てくる。

 ウスターソースのみで出てくる。余計なことを考えずにがんがん楽しく食えるな。うちのメンバーは趣味の悪いブロガーみたいに「タルタルソースがあれば」なんて誰も言わない。

 なるほど小ぶりで味の密度が詰まった感じだ。

 コージくんが言うように、1斗缶を横切りしたのに丸い蓋をつけたような緑色の四角い缶に入ってた「広島かき」は、昔からずっとこんなだった。

 オレらやコージくんが育った大阪の街場の串カツ屋ではカキを「ひろしま」と言うていた。ちなみに「牛」は「カツ」や。

 「カキをジューシーとか言いだしたん、誰や」「ウォーカーとかのライターちゃうか。あいつらマグロの造りでもなんでもジューシーやんけ」
 などと二人で言って皆を笑わせる。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA 牡蠣からいいダシがどっさり出ている。それを食べたれとばかり豆腐を追加注文すると、菊菜がついてきた。やっぱりすき焼きや。

 

 

 

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 ダシを注いでワサビと食べる牡蠣飯はこの店 独特の料理だといってよい。とくに焦げがうまい。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 仲居さんは漬物を出すときに「広島菜です」と言った。

 この店は創業大正13年。ご主人は広島ご出身だったとはるか昔の取材を一気に思い出した。
 取材では「広島菜です」は聞けなかったと思う。
 そこらへんを分からんとな。

 

 

かき峰
池田市呉服町2-10
072-751-3735

 

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