大阪・京都・神戸 街をよく知るからこそできる出版物&オリジナルメディアづくり
拝啓・古地図サロンから⑤

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年5月25日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

ゆっくり歩く御堂筋、今日は何のイベントか、ゆるゆる走るゴーカートを見かけました。みなさま、お元気でいらっしゃいますか。

本日、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、午後3~6時、第5回目の古地図サロンをひらきました。1年間の予定で始めたサロンですが、月日が経つのは早いものです。そう思いつつカレンダーを見ていると、重大事に気がつきました。サロンは毎月第4金曜開催なのですが、なんと11月のその日は祝日でカフェはお休み。さらに12月のその日も年末休みに入るとのこと。どうしたものかと考えましたが、今のところわかりません。とりあえず、11月のサロンはお休みにして、12月の初めか中旬に最終回を催そうかと、そこまで思案したところです。ちゃんと決まりましたら、あらためてお知らせいたします。しばしお待ちを。

さて、本日は静かな一日になりました。ぽつぽつとお客さんはお見えになりましたが、私一人の時間帯もあり、その間は古地図を眺めたり、文庫本を読んだりしました。じつを言うと、こういうのが、サロンを始める前に頭に描いていたイメージで、今までが予想外の展開でした。こんなに来会者があるとは思わなかったというのが正直な感想です。そういうわけで、今回はのんびりしたペースで時が経ち、そのぶんお話もいろいろとできました。

いつも思うことですが、何を面白いと感じるかは人によってまちまちです。しかし、まったくバラバラなのかと言うと、そうでもなく共通しているところがある。矛盾するようですが、本当です。サロンでは毎回、古地図を展示していますが、どれに興味を持つかは人によって違います。それでも、話をしてみると、古地図を通して感じとっている面白さには共通したものがあるのです。

例えば、今日の来会者から耳にした言葉の中に、「あの頃はこうだったんですね」という一言がありました。明治時代のある古地図に見入りつつ、とてもしみじみとした口調で言われたのです。それがその方の面白がり方だったわけです。来会のみなさんは昭和から平成の生まれだと思うのですが、明治の古地図が示している「あの頃」をじっさいに見たわけではないのに、まるで思い出を懐かしむかのように愛でている。不思議なことですが、人にはどうも、自分が知らない過去の記憶を楽しむ能力があるのですね。古地図が、それを引き出してくれる。耳を傾けていると、具体的な話の内容は人によって異なりますが、結局はみなさん、自分の知らない「あの頃」を楽しんでいるのです。

変なことを書いてしまいました。でも、こういう話はこの場以外に書く機会がなさそうなので、とりあえず書いておきます。これを読まれているあなたは、どう思われますか。静かな一日もいいものです。今日のサロンの空気が、これを書かせてくれたのだと思います。

本日のジャンケン地図は、なんと私の全勝でした。申し訳ないので、挑戦してこられた方には、その意欲にお応えして、ジャンケン地図をお見せしました。本日の挑戦者はラッキーでした。

サロンが終了しても、まだ明るい御堂筋でした。だんだん日が長くなってきます。駅に向かって歩いている間に少しずつ灯がともりはじめました。この感じ、好きです。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。

●鳥瞰図ミニ特集(第2弾)
「第5回内国勧業博覧会」明治36年(1903)
「大日本大阪名所廻双六」明治31年(1898)
「東京日日新聞日露戦争地図」明治37年(1904)
「御本山御遠忌記念京都明細地図」大正元年(1912)
「神戸市案内絵図」しんび堂・作 昭和初期
「吉野山名所図絵」香陽・作 昭和2年(1927)
「三朝温泉案内図絵」金子常光・作 昭和3年(1928)
「西国三十三所御開扉」昭和3年(1928)
「摂州箕面山瀧安寺全図」昭和4年(1929)
「小豆島八十八箇所霊場案内絵図」昭和17年(1942)

 

以上10点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

★「御本山御遠忌記念京都明細地図 大正元年(1912)・大丸呉服店発行」のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

なお、本も3冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
(オールカラー・図版多数の最新刊です)
『大阪古地図パラダイス』本渡章
(吉田初三郎作の鳥瞰図が付録です)
『地図集』董啓章
(どこにもない街、どこにもある街。地図による奇想小説集)

 

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、毎月第4金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(6月22日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年5月25日
本渡章

★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第6回は6月22日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。