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拝啓・古地図サロンから⑪

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」
毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。2018年最後のサロンの様子を、本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。


☆2018年12月7日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

あっというまに冬が来ました。御堂筋はイルミネーションきらきらの季節です。皆様、いかがお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、12月7日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。2018年1月からほぼ毎月続けて、これで11回目。最終回のつもりでしたが、季節とともにうつろう心、いろいろあって来年からの新バージョン古地図サロン(詳細後述)へのバトンタッチの会となりました。

本日は江戸時代の古地図がメインテーマです。公開した中でいちばん古い図は、刊行日が天明年間の日付で、今からざっと230年前に作られたものです。よく生き残ってくれました。虫食いもあって、かなり傷んでいますが、隣に並べた現代の復刻版と比べると、色合いの深さといい、紙のしっとりした質感といい、味わいに明らかな差があります。年代を経たものが持つ風格です。

表紙のある図は、みなさんに指で表紙に触れてもらいました。見た目には目立ちませんが、花や草木の浮彫りがほどこされていて、指先でその奥ゆかしい美しさを感じ取ることができます。江戸時代の地図の復刻版の中には、色をかすれさせるなど古びた感じを再現した一見本物風のものもあるのですが、和紙の趣きや、こうした繊細な浮彫りまでは真似できないようです。

天明年間の図には裏面に、もとの持ち主が筆で描いたと思われる江戸時代の家の間取り図が載っています。地図として古くなっても、紙が貴重な時代なので裏面を有効利用したのでしょう。大きな蔵を併設した商家の間取りに、当時の暮らしの一コマが想像されます。

色刷り、モノクロを問わず、原図の味わいは格別です。江戸時代の原図は観る機会が少ないので、本日お越しのみなさんには喜んでいただけたと思います。

復刻版の江戸時代地図にトレース紙に描いた昭和地図を重ねた、ちょっと変わった大阪の図があり、これを広げた時も盛り上がりました。トレースには難波にあった大阪球場が載っていたり、少し前の昔と江戸時代の昔が地図の中で折り重なって見えます。建築事務所に勤めていた方からもらい受けた図で、トレース図は精度の高い本格的なもの。公開する機会がほとんどなかったのですが、大勢で囲んでわいわいと観るには楽しい図でした。

途中までご参加の方も、最後まで残られた方も、常連の方も、本日初参加の方も、どなたさまもおつきあいありがとうございました。サロンからの帰りはイルミネーションたけなわの御堂筋が夜を照らしていました。

というわけで、大事なお知らせ

さて、本日2018年の古地図サロンは終了です。当初は1年間の予定で、これが最終回のつもりだったのですが、続けてほしいとの声があり、会場のお店からも快諾が得られましたので、来年も継続することにしました。

2019年の新・古地図サロンの日程は次のとおりです。いずれも第4金曜日。会場はこれまでと同じく御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて。

3月22日(金)午後3~6時
5月24日(金)午後3~6時
7月26日(金)午後3~6時
9月27日(金)午後3~6時
11月22日(金)午後3~6時

 

各回とも4時以降に、私の30分程度のトークあり。その日の公開地図にちなんだ話をします。どなたでも参加できます。途中参加・途中退場オーケーです。

その他のお知らせ

☆2019年1月30日(水)ナカノシマ大学「大阪24区物語①上町台地編」を開催します。
会場は大阪市中央公会堂。すでに満員御礼となってしまったのですが、現在、大阪24区の本のための原稿を執筆中。並行してシリーズ講座をひらきます。

☆最新刊『カラー版・大阪古地図むかし案内』(創元社)が12月10日刊行されました。
旧版(モノクロ)のリニューアル版。大坂大絵図(元禄時代)のカラー拡大図版を多数収録。

今後、古地図サロンがない月も、このブログで毎月の予定など、まとめてご紹介します。お見逃しなく。

なお、本日の展示古地図は次の12点でした。

【原図】7点

★「増補大坂図」天明7年(1787)
「文久改正大坂図」文久3年(1863)
「改正大坂細見図」弘化2年(1845)
「改正摂津大坂図」天保13年(1842)
「文久改正京都指掌図」文久2年(1862)
「摂津国大阪府区分新細図」明治12年(1879)
「改正新改大阪市街地図」明治初期

【復刻】5点

「慶応改正大阪細見全図」慶応元年(1865)
「増補大坂図」天明7年(1787)
「改正大坂細見図」弘化2年(1845)
「摂州大坂大絵図」(昭和地図トレース付)宝暦年間
「摂津国大阪府区分新細図」明治12年(1879)

 

いつもはすべて原図を展示していますが、今回は同じ内容の原図と復刻を並べたり、特徴のある復刻を観てもらいました。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。また、復刻は原図をもとに近年になって作られたものを指します。

今回のセレクト地図は★増補大坂図(原図)でした。天明7年(1787)刊行。かなり虫食いありですが、そこが味わい深い。虫もおいしかったのでしょう。裏面は江戸時代の商家の間取り図面が筆で描かれています。

なお、本も2冊展示しました。

 『鳥瞰図!』本渡章(私の近刊。吉田初三郎はじめ古今の鳥観図約100点がオンパレード)

 『燃えつきた地図』安部公房(都市という迷宮に地図はない。迷える者こそ幸いあれ)

それでは、どなたさまも、よいお年をお迎えください。

再び、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

                                                                          敬具
平成30年12月14日
本渡章