本渡章のサロン
「古地図ものがたり」
毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。
■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催
☆2018年4月27日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
拝啓
ぽかぽか陽気の午後、かすかな風が心地よい御堂筋です。みなさま、お元気でいらしゃいますか。
本日、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、第4回目の古地図サロンをひらきました。2回目以降はリピーターの方の来場がほとんどなのですが、今日は新しい参加者がお一人のみで、ぼちぼち何かPRを考えたほうがいいのかな、という感じになってきました。ただ、少人数になるのは悪いことばかりではなくて、落ち着いてゆったり過ごしていただける一面もあるので、もうしばらく、様子を見ようかなと思っています。
4回目になって、気のついたことがあります。これまでのところ、サロンに来られる方は全員がお一人さまなのですね。不思議といえば不思議ですが、それはそうかもしれないと妙に納得してしまうところもあります。古地図とは孤独を愛する人の趣味なのか。同好の人が周りにいないだけなのか。あるいは、これまでが単なる偶然で、次回は同伴、団体の来場がどっと増えるのか(なさそうな話ですが)。私としては、お一人さまで気ままに来られて、自由にくつろいで、好きなだけ居て、気がすんだら帰るという利用の仕方が、サロンの基本イメージだったので、予想どおりの経過です。気にしていません。来場者数の多い少ないも、実はあまり気にしていません。たくさん来ていただければ、もちろんうれしいのですが、サロンという場では大事なことがほかにある気がするのです。
今日は、サロンのオープン前から来られて、私が地図の展示など準備しているのを見て手伝ってくださる方がいました。3時間のサロン開催中、いつもにも増して熱心に古地図を見ていく方が多く、もうひとつ言えば、珍しいことに女性の来場が男性を上回った日でもありました。同じことをやっていても、その日によって空気は少しずつちがっています。今日の空気は今日だけのもの。その日に来られた方たちとのあいだで自然にできあがったもので、再現は二度とできません。文章でお伝えしようとしても、限りがあります。このブログの読者で、まだサロンにお越しでない方も、よければ一度、空気を吸いに来てみませんか。別に古地図の話をしなくてもかまいません。サロンはマニアの集まりではありません。私はいつも本の中で、古地図はとても人間的なメディアだと書いていますが、サロンもそのような場だと考えています。
とはいえ、古地図の話ももちろんいたします。今回の展示の中心は「鳥瞰図」でした。じっくり覗きこんでいく方が多かったのは、各地の美しい風景を絵画のように描いた作品の力でしょう。鳥瞰図はすべて原図(オリジナル原版の地図)で、特に色合いの鮮やかな図には立ち止まって見入る方が目立ちました。次回(5月25日)の展示も鳥瞰図を特集する予定です。今回とはまたちがう趣きの作品を用意いたします。一方で、常設の復刻地図の方も時間をかけて見ていかれる方が多かったのですが、それは展示の仕方を変えたからでしょう。復刻地図は台紙入りのビニールに入れるようにしましたので、手にとって見やすくなりました。
恒例のジャンケン地図は、円山応挙原画の「大坂旧城之図」でした。内容が少し異なる2種類の図があって、一方は大正時代発行、もう一方は昭和の天守閣復興記念阪です。これも好評でした。ほかにも大正時代の平和記念東京博覧会の会場鳥瞰図2点が、「ウォーリーを探せ」的な面白さで、みなさんで輪になって囲んで見入る場面がありました。お一人さまで来られても、会話が自然にはじまるのも、古地図があいだをとりもってくれるからでしょう。
終了はいつもよりちょっと遅くなりました。片づけを終えて大阪ガスビルを出ると、黄昏の御堂筋でした。この時間帯は、街角が一番きれいに見えるマジック・アワーです。
というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。
●鳥瞰図ミニ特集
「実用新案・日本鉄道パノラマ地図(大正12年・1922)
「日光山両社真図(明治33年・1900)
「大阪旧城之図」円山応挙原画・林基春筆写(昭和6年・1931)
「大阪旧城之図」円山応挙原画・福島豊次郎編(大正11年・1922)
「最新式大東京地図」裏面「平和記念東京博覧会会場鳥瞰図」(大正11年・1922)
「平和記念東京博覧会会場全景」(大正11年・1922)
「箱根名所図絵」吉田初三郎作(大正6年・1917)
「UNZEN」吉田初三郎作(大正10年・1921)
「比叡山御遊覧のしほり」吉田義人作 昭和初期
「近畿名勝遊覧・最新実測大阪市街地図」(大正7年・1918)
以上10点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。
★「大阪旧城之図」2点のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。
☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。
なお、本も4冊展示しました。
『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
(オールカラー・図版多数の最新刊です)
『大阪古地図パラダイス』本渡章
(吉田初三郎作の鳥瞰図が付録です)
『烏有此譚』円城塔
(言葉に羽根が生えた小説。鳥瞰図を連想)
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』川上未映子
(鳥瞰を音にしたらすこん、かも。頭の中で鳥が羽ばたくエッセイ集)
古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、毎月第4金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。
では、次回サロン(5月25日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。
敬具
平成30年4月27日
本渡章
★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第5回は5月25日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。