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「カフェ付きおしゃれ系」ではない強み[正和堂書店]

担当/中島 淳

11月27日(木)のナカノシマ大学に登壇する小西康裕さんの[正和堂書店]は、大阪市鶴見区鶴見3丁目にある。地下鉄長堀鶴見緑地線「今福鶴見駅」から徒歩3分ほどの幹線通り沿いなので、見つけやすい。

ソフトドリンクの自販機を模した、お薦め文庫本の棚。小西康裕さんは印刷会社にいた頃、販促ツールをたくさん作っていたそうだが、これにはマイった

最近、正和堂書店は「遊び心満載のブックカバー」で注目されているが、この店の強みは「どんな時にも頼りになる、品揃えオールジャンルの街の書店」だ。55年間続いているのはダテじゃない。

4年前に筆者がブログ「街と書店、大阪の場合」で紹介した店内風景は、ほぼそのまんま。180坪の店なのでゆったりしている。

そのココロは、「用事がなくてもふらっと入って時間を過ごし、目についた本があれば買って帰れる」というもの。通路は広いし、車椅子でもベビーカーでもストレスなく回れる。

最近は入り口近くにこのような棚がお目見えして、目を引いている。

一つひとつのパッケージに書かれたコピーにも注目

こちらは珈琲専門店や紅茶専門店とコラボした商品で、お薦めの1冊とカバー、そして「読書の友」であるドリップパックコーヒーまたはティーバッグの紅茶付き。

そして、最近メディアの注目を一手に集めるこちらの「牛乳石鹸カバー」は、レジ横に必ずあるだけでなく、こんな仕掛けもしているから侮れない。

牛乳石鹸共進社の本社は、ここから1kmほど西の城東区今福西2丁目にある。ご当地の地場産業同士のコラボなのだ

 

ここまで用意してもらったら、デカい箱を持ってポーズの一つもしようかな……という気になる。

こうやって写真を並べてみたが、大事なことはやっぱり「本」にまつわる商品ばかり。読書を楽しむ雑貨は増えたけど、雑貨屋さんではなく「街の本屋さん」なのだ。

休日になるとどっとやって来る遠方からのお客さんも、そのことをよく分かってくださっている、と小西さんは言う。

「『親戚の家に行ったような感じ』だとおっしゃるんです」

親戚の家って、おしゃれではないだろうけど安心感が半端ない。テンションも爆上がりはしないだろうけど、ずっとまったりしていたくなる。

康裕さんの弟、店長の悠哉さん。キーストーンの場所にこの人がいるからこそ、常連も一見客も「また来よう」と思うのである

そんな感想を、鶴見区か150m西の城東区に長いこと住んでいる人が言うのならともかく、新幹線や地下鉄を乗り継いでここまでやって来た遠方のお客さんが言う。なかなかおもしろいことだと思う。

そんな本好きたちと接していて、小西さんもお店に対して思うことがちょっと変わってきたという。

「カフェのある書店もいいんですが、あれはTSUTAYAさんの歴史の中でつくりあげられたものですから、ウチがその真似をしてもしょうがないかと。それより、街の本屋にしかできないことをもっともっとやっていきたいですね」

たしかに。

もし弊社が貢献できるとしたら、『大阪市鶴見区の本』とか作れたら、このお店でドカ〜ンと売ってもらえるかもしれない。「街の書店発の本」の可能性は、流行りの独立系書店だけでなく、正和堂書店のようなお店でもきっと有効な商品ではなかろうか。

大阪シティバス「鶴見西口」が目の前! 大阪駅行の36系統は便利です

などと考えつつ、お店を後にして、いつもの36系統のバスに乗ったが……

蒲生四丁目でええ感じの商店街の明かりに心変わりして途中下車し、肉屋さんでコロッケとミンチカツ、玉ねぎフライを、八百屋さんで大根、ししとう、茗荷、アボカド3個を買って(合計で1,000円ちょっと)買い物袋をいっぱいにして再びバスに。

酒場の明かりにめいっぱい後ろ髪引かれたが、それは次のお楽しみにしよう。

ナカノシマ大学で、小西康裕さんがどんな話をしてくれるか、ほんまに楽しみです。

選りすぐりのブックカバーも会場で販売しますので、どうぞお楽しみに! →https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20251127