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6/30(日)、イベント出展のお知らせ

2024年6月19日 水曜日

【急告】
140Bは、6月30日(日)の「ふたばZINEフェス2024」に出展します。

10:30-15:30
ふたば学舎(神戸市長田区二葉町7-1-18)

ZINEを中心とした「フェス」です。140Bは『いっとかなあかん 神戸』などの自社書籍の一部と「月間島民」のバックナンバーの特別販売をいたします。

神戸でのイベントは初出展です、神戸のお客さんとの出会いを楽しみにしてお待ちしています。よろしくお願いします(青木)。

 

記憶の本屋[定有堂書店]の記憶を呼び覚ました人

2024年6月11日 火曜日
ちょっと長くなりますが、筆者の昔ばなしを少し。
140Bを設立する前は、京阪神エルマガジン社に23年間(1983〜2006年)在籍していた。
LmagazineやSAVVY、Meets Regionalなどの編集に17年半、広告に1年半、そして最後の4年間は販売部に在籍していたが、自分の会社員生活では販売部での日々が最も充実していた時期だったように思う。
「出版社のカンバンを背負って、世の中に1冊でも多く届くように知恵を絞って、走り回った」という実感がすごくある。「ああしろ、こうしろ」とは言われずにのびのびと仕事させていただいたことは、ほんまに感謝している。
エルマガジン社は関西の雑誌業界ではそこそこ有名だと思っていたが、「日本の出版界」から見ると大海の小舟のような、ほんまにちっぽけな存在だと分かったのは販売部に移ってからだった。
そんな出版社が自社本を不特定多数の人に1冊でも多く届けるためには、本が売られている現場に行く必要がある。
「現場」はホームグラウンドの京阪神以外に、奈良も淡路も南紀もあったし、東京、名古屋、福岡……そして山陽・山陰路もあった。
JR西日本とのタッグで2004年にスタートした『西の旅』というシリーズMOOK(〜2008年)を売るにあたって、東京や、馴染みのなかった中国地方の書店や取次にお邪魔して、「平台のええとこになんとか置いたってください」と働きかける。こういう仕事は楽しかった。

初めて山陰エリアをメイン特集に打ち出した『西の旅』第4号(2004年11月10日発売)

その理由は、初めてお邪魔した島根・鳥取両県とも、書店の人たちが実にハートウォームな対応をしてくれたからである。
先方からすれば「大阪の雑誌社が私らの地元を紹介する? ふ〜ん……」というところだろうが、大昔からの親しい友人のような感じで接してくれて、少しでも実売が伸びるようにと注文書や表紙などに対して親身になってアドバイスしてくださった。今でも本当に感謝している。
販促ルートは、西は出雲市からスタートして、松江、米子、倉吉と東進し、最後は鳥取で終わって大阪に戻る、というもの。米子の、というより今井書店グループのシンボル的拠点[本の学校]の方にそのコースを説明すると、「じゃあ、帰りは必ず鳥取で定有堂書店」に寄らないとね」。
「テイユウドウ?」耳慣れない単語に面食らっていたら、その彼は「本好きの人が必ず寄る店ですよ」とうれしそうに言った。
「本好きが寄る店」という魔法のワードを聞いて、「それなら定有堂さんを鳥取の、いや今回の大トリにしよう」と、先に鳥取市内の他の書店をぐるぐる回った。

鳥取駅まで徒歩10分ほどの、若桜街道沿いにある定有堂書店(撮影/萱原健一)

夕暮れの鳥取駅前商店街に、この本屋さんはよく映えていた。
さして広くない店内の書棚からは「ええ匂い」が漂っていた。
店主は配達でまだ戻っていなかったが、「もうじき帰って来ますから、本でも見とってください」とおっしゃる奥さま(だったと思う)に従って、待たせていただく。
棚に付けられたタイトル(テーマ)を見ていたら退屈しない。
「小さな1冊の衝撃」という大タイトルの下に、棚の各区画にこんな小タイトルがぶら下がっていた。
「たった一人でも共同体」「ここから予見」「減速して自由に」
「名辞の虚妄」「ちいさな道しるべと自己肯定」「過剰適応をやめる」
「記憶は重荷ですから」……そういったコピーに、店の商品である本が並んでいる。

定有堂書店の棚。「穴が空くほど見た」人は多かったはずである(撮影/堀内菜摘)

ここに来た用事は、『西の旅』の注文書を渡して、できれば二桁仕入れてもらわんとアカンのだが、そのことをすっかり忘れてしまい、「さぁて、何買うて帰ろかな」にアタマが行ってしまう。
15分もした頃か、店主の奈良敏行さんが戻ってこられた。
腰の低い、穏やかでフレンドリーな人である。
奈良さんとはその後、こちらの書店に一度か二度ほど訪れて少しお話しした程度のことだったが、「何がどうというのはわからないけど、風通しがいい人だなぁ」という第一印象はずっと変わらなかった。
「本好きが集まる書店」というのは楽しそうだけど、「そうでない人間にとっては居心地が悪い」みたいなことがあったりする。けど、この店からはそんな匂いは全くしなかった。
子どもの頃からこんな本屋さんに通っていたら、さぞかしもっと人生楽しかったであろう。
鳥取駅に向かう帰り道の足取りは軽く、「スーパーはくと」の車中もゴキゲンだった。
……にもかかわらずズボラな筆者は、二度目か三度目の訪問のあと、会社を辞めて140Bという新しい仕事場を立ち上げたはいいが、鳥取で(というより定有堂書店で)売ってもらえそうな本を作っていないことを言い訳に、この店に立ち寄ることはなく、最後にお邪魔してから20年近くが過ぎてしまった、という次第である。
今年の3月9日(土)に摂南大学で、企業やら行政やら大学やらクリエイターやらいろんな現場に携わる人間が200人ほど集まる会合に出席した。この会合の名物は、あちこちの教室で同時に行われる「8分間のプレゼン大会」である。
同じ時間帯に、5つの教室でそれぞれ違う人間が違うテーマの発表をするプレゼンテーションが順繰りに行われる。
プログラムを見ても目移り必至だったけど、「なぜ人生には本が必要なのか?   三砂慶明」というタイトルを見て、「知らん人やけどここにしょうか」と教室に入った。
わずか3か月前なのに、彼が何を話していたかをほとんど覚えていないが(あかんやろ)、それまでざわざわしていた教室の空気が急に鎮まって、話者の言葉に場内が耳を澄ませていことだけは鮮明に覚えている。
プレゼンの最後に、この三砂氏が編集した『町の書店の物語 定有堂書店の43年』(作品社)という本が紹介された時に、懐かしさと、「あの、居心地のいい本屋がなくなってしまったのか……」という衝撃が一緒になってやって来た。

2024年3月発刊だが、すでに3刷。日本全国の「本好きが集まる書店」には必ずと言っていいほど置いてある

2日後にこの本を肥後橋の[Calo Bookshop and Cafe]で購入し、かつて「穴が空くほど見た」定有堂書店の棚のタイトルのように刺さりまくる、著者・奈良敏行さんの言葉(これを一つひとつ書いていたら夜が明ける)に何度もうなずいて、三砂慶明さんに「ナカノシマ大学で話してもらえませんか?」と頼んだ次第である。
2023年4月18日に43年の歴史を閉じた定有堂書店は、もう「記憶の中の書店」でしかないが、その「記憶を留めて呼び覚ます」人がいて、その人が編集した本が発刊された直後に偶然にも会うことができたのは、ラッキーだったという他にない。
そして、ここまで定有堂書店店主の奈良敏行さんの良さを引き出し、彼の哲学や思想を分かりやすい言葉で伝えた編集者(彼は、梅田鶴野町の関大ミライズにあるTSUTAYAの書店員でもある)には、「やりやがったな」というリスペクトである。
三砂氏は6月22日(金)のナカノシマ大学では、自らが編集した定有堂書店のことにはもちろん触れるが、大阪の本好きとしては、「定有堂のような書店が、大阪にはないんかいな?」ということを知りたいところである。
それで彼は今、大阪市内・府下にあるあちこちの書店を改めて訪れている。
どんな「大阪の本屋」の話が出るのか?
そして三砂氏が奈良敏行さんから直接聞いた、「人生に効くであろうお薦めの本」についても、当日のお楽しみにしてくだされ。
現在は75%まで埋まったいて、満席必至です。どうぞよろしく。

5月31日(金)、丸福珈琲店心斎橋PARCO店で行われた中川和彦氏(スタンダードブックストア店主・左)と三砂氏のトークイベント。定有堂書店をよく知る中川氏だけに、対話の呼吸とテンポがよく、みなさんどんどん引き込まれていきました

拝啓・古地図サロンから43

2024年6月7日 金曜日

2024年5月24日・本渡章より

【今回の見出し】

  • 2024年5の古地図サロンレポートと次回(7月)の予定
  • お知らせ・電子書籍のご案内・プロフィール

■古地図サロンのレポート

開催日:5月24日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

 

この日の参加は12名でした。展示地図のいちばん人気は大正時代の「近畿名勝遊覧・大阪市街地図」。市街地は地図、近郊は趣向を凝らした絵図というスタイルが見て楽しく、自然と会話が弾みます。日本交通分県地図シリーズは今から百年前の都道府県の姿。これまでとりあげてこなかった地形図も見ていただきました。地図にはいろんな種類があり、時代によって表現も変わります。そんなうつろいが垣間見えるのも地図の面白さです。

さて、前々からお知らせしてきたガスビル大改修工事ですが、予定がまだ定まらないとのことで、7月も通常通り第4金曜日に開催します。以後も工事開始が延びるようなら9月、11月も開催できるかもしれませんが、その場合でも11月がサロンの最終回になります。詳細はこのレポートで毎回お知らせします。とりあえず、7月のサロンでよければお会いいたしましょう。地図がお好きな方、方向音痴(私も同類)の方、どなた様もお気軽にご参加を。


◉今回のサロンで展示した地図

◆原図
近畿名勝遊覧・大阪市街地図 大正7年(1918)林金礼堂
日本交通分県地図・大阪府 大正12年(1923)大阪毎日新聞社
日本交通分県地図・京都府 大正13年(1924)大阪毎日新聞社
日本交通分県地図・愛知県 大正13年(1924)大阪毎日新聞社
日本交通分県地図・福島県 大正14年(1925)大阪毎日新聞社
大阪東北部(地形図) 大正6年(1917) 大日本帝国陸地測量部
大阪西北部(地形図) 昭和7年(1932) 大日本帝国陸地測量部
大阪近郊(地形図) 昭和2年(1927) 大日本帝国陸地測量部
大阪西北部(地形図) 昭和57年(1982) 国土地理
古市・大阪東南部(地形図) 昭和59年(1984) 国土地理院

★次回は2024年7月26日(金)午後3~5時開催予定

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーしてください)。予約不要、途中参加・退出OK。

諸事情により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

 

【お知らせ】

●文学歴史ウォーク・講演

6月2日(日)10時~14時

「此花区伝法。仏教伝来と川湊の歴史、明治の近代化遺産を訪ねて」講演とウォーク。

●まちライブラリー北勝堂にて講座と天満ウォーク

6月9日(日)午前10時~11時30分 主催:まちライブラリー北勝堂
「西天満のむかしと菅原町の古くて新しい蔵めぐり」

旧町名が語る街の歴史と今も残る蔵を訪ねて。30分のレクチャーと1時間の天満ウォーク。
親子参加歓迎。大人または子供一人でのご参加も可能です。

●朝日カルチャーセンター中之島での講座 7月~9月

6月17日(月)午前10時30分~12時
特別講座「大阪の路面電車」(写真は朝日新聞掲載の案内)

年間5億1千万人を乗せて走った大阪市電と今も走り続ける阪堺電軌の物語

 

連続講座「古地図地名物語」 各10時30分~12時
7月26日(金)桜と梅の地名
8月23日(金)花と緑の地名
9月27日(金)地名と植物の風物詩・民俗誌

サロン「東風(こち)」第5回

2024年7月5日(金)午後2~4時 豆玩舎ZUNZO(宮本順三記念館)/近鉄八戸ノ里駅前
古地図を囲んでのおしゃべり会。

会場はグリコのおまけデザイナーで洋画家の宮本順三さんの作品&コレクションを集めたミュージアム・豆玩舎(宮本順三記念館)。近鉄八戸ノ里駅前。

 

●夏休みキッズ大冒険! 地図イベント

7月28日(日)時間帯未定 枚方市さだ生涯教育市民センター

枚方のユニーク地名といろいろな地図の話、自分だけの地図づくり体験ワークショップも。
子供と子供の心を持った大人向けのエンターテインメント講座。

dav

●「玉野人」「泉州人Vol.3」に執筆

月刊「歴史人」発行のABCアークが企画・制作した歴史探訪冊子に執筆。

「玉野人」(岡山県玉野市の歴史再発見)海と食の歴史の話
「泉州人Vol.3」(大阪府堺市・高石市・和泉市の歴史再発見)の高石市・和泉市の文芸の話

●紀伊国屋書店梅田本店「出張古地図サロン」

紀伊國屋書店梅田さんでの「今年もやります!あの、 #関西の出版社合同フェア 」店内イベントととして「出張古地図サロン」開催します。
大阪ガスビルカフェでの「古地図サロン」同様、私物の古地図をご覧いただき、ミニトークもご用意しています。入場無料(申込制)です、詳細は紀伊國屋書店梅田HPまで。

X(ツィッター)その他

 

X(ツィッター)始めました。本渡章 @hondo_akira1113
古地図以外の話題もいろいろ。その他まだ公開できませんが、進行中の案件あり。いずれご報告いたします。

●「大阪の地名に聞いてみた」ブログ連載、全12回24編

一年間の連載(題字と似顔絵・奈路道程)に追加取材を加え、ブログの内容を大幅に刷新して書籍化が進行中です。刊行までブログ「大阪の地名に聞いてみた」をお楽しみください。

第12回 ここは水惑星サンズイ圏【前編・後編】
第11回 島の国の島々の街【前編・後編】
第10回 仏地名は難波(なにわ)から大坂、大阪へ【前編・後編】
第9回  人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】
第8回 語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第7回 古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第6回 街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第5回 場所が仕事をつくった【前編・後編】(仕事地名・大阪市中編)
第4回 花も緑もある大阪【前編・後編】
第3回 桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第2回 続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第1回 大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】

 

大阪古地図さんぽ

大阪24区を順番に歩いてめぐる「古地図さんぽ」講座を年数回開催しています。5月のテーマは淀川区。

詳細は大阪コミュニティ通信社(まで。

動画シリーズ継続中! 本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み

大阪市のたどった道のりを、それぞれの土地の成り立ちと経済、文化など多様な要素を持つ24の「区」から見つめなおすシリーズ。続編はしばらくお待ちを。詳細は大阪コミュニティ通信社まで。

第2回番外編 府と区と市の関係について再考

第2回その2 西へ西へと流れた街のエネルギーと水都の原風景…西区

第2回その1 「江戸時代の大坂」と「明治以後の大阪」の架け橋となった巨大区…西区

第1回その3 平成の減区・合区が時代のターニングポイント

第1回その2 大正~昭和は人口爆発、増区・分区の4段跳び時代

第1回その1 大坂三郷プラスワン、4つの区の誕生

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【古地図ギャラリー休眠のお知らせ】

 

2020年9月から202311月まで、東畑建築事務所・清林文庫の所蔵地図、鳥瞰図絵師の故・井沢元晴氏の作品を中心に紹介してきた古地図ギャラリーは休眠期間に入りました。過去20回の公開作品には現役の鳥瞰図絵師、青山大介氏の作品や本渡章所蔵の古地図も含まれています。ラインアップは下記の通りです。
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過去20回の古地図ギャラリーで公開した全40作品

20(2023年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪新町夕陽廊の賑」安政5年(1859)

第19回(2023年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より黄華山・画「花洛一覧図」文化5年頃(1808)

 

第18回(2023年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より池田奉膳蔵「内裏図」

 

第17回(2023年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「地球萬國山海輿地全図」

②青山大介作品展2023

 

第16回(2023年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「天王寺・石山古城図」

 

第15回(2023年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より長谷川圖書「摂津大坂図鑑綱目大成」

 

第14回(2022年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より久野恒倫「嘉永改正堺大絵図」

②鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「私たちの和田山町」

 

第13回(2022年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」

 

第12回(2022年7月)

①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」

 

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介された。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られた。学校のエリアは主に西日本。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられた。

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鳥観図絵師・青山大介(1976~)神戸生まれ。高校時代に都市鳥瞰図絵師の第一人者、故・石原正氏の鳥観図に出会い、感銘を受け、独学で鳥瞰図絵師を志す。2011年、制作に3年半をかけた「みなと神戸バーズアイマップ2008」を完成。2013年発行の「港町神戸鳥瞰図2008」は神戸市の津波避難情報板に採用された。以後、多数の作品を発表し、都市鳥瞰図の魅力を発信。2022年の「古の港都 兵庫津鳥瞰図1868」は同年開館の兵庫津ミュージアムのエントランス展示作品となる。2023年、神戸市文化奨励賞受賞。

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●電子書籍のお知らせ

本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)

『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)

思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。

『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)

梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。

*上記2冊は各電子書籍ストアでお求めください

*下記8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます

『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。

『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。

『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)

記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。

『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)

著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。

『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)

井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。

『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)

江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。

『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)

名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。

『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)

名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。

※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧

『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)

『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)

『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)

『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)

『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)

『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)

 

●本渡章(ほんど・あきら)プロフィール

1952年大阪市生まれ。作家。(財)大阪都市協会発行時の「大阪人」編集などを経て文筆業に。1996年第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。短編が新聞連載され『飛翔への夢』(集英社)などに収録。編著に『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)がある。その後、古地図・地誌をテーマに執筆。
著書『鳥瞰図!』『古地図でたどる大阪24区の履歴書』『古地図で歩く大阪 ザ・ベスト10』『大阪古地図パラダイス』(140B)『古地図が語る大災害』『カラー版大阪古地図むかし案内』『図典「摂津名所図会」を読む』『大阪暮らしむかし案内』(創元社)など多数。共著に『大阪の教科書』(創元社)がある。

6/8-9本のイベント出展のお知らせ

2024年5月25日 土曜日

140Bは奈良市でのブックマーケットに出展します。

6/8-9(土・日)10:00~16:00
ブックマーケット

会場はかつて2010年に『読み歩き 奈良の本』を一緒に作った奈良県立図書情報館さん。

 

当日は、二日間にわたり奈良、大阪、京都、兵庫、三重、滋賀、広島、東京から古書店、出版社など各日約40店舗が出展します。
同時開催の「栞のマーケット」では、飲食や雑貨が各日約20店舗が出展、ブックマーケットとあわせてお楽しみください。

約一年ぶりの奈良でのイベント、たくさんのお運びお待ちしています(青木)

 

田中慶一さんから5/17(金)ナカノシマ大学の資料が到着!

2024年5月10日 金曜日

担当/中島 淳

その前にまず急ぎの業務連絡から。

ナカノシマ大学講師の田中慶一さんが5/8(水)にABCラジオ「ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です」に出演されて、著書『大阪 喫茶店クロニクル〜個性に満ちた憩いのワンダーランド』と、5/17(金)ナカノシマ大学のことを話をしておられたのですが、三代澤アナがおっしゃるこの番組のコンセプト「商店街の喫茶店での会話」と、田中さんの受け答えが何ともマッチしてええ味わいでした。ぜひお聴きください。→ https://radiko.jp/#!/ts/ABC/20240508100000

上記のURLをクリックしたら左の画面が出てきます。

田中さんの登場は30分過ぎから15分間、たっぷりと聴けます。5/11(土)朝9:22までなので悪しからず💦

以上、急ぎのご連絡でした。

7部構成・投影画像63枚のスーパーボリューム

開催まで まだ1週間あるのに、田中さんから送られてきた投影画像がなんと63枚!

当日は7部構成でお届けします。

1 大阪で最初に出来た喫茶店は?

2 欧州への憧れを体現したカフェー

3 大衆娯楽として広がるカフェー

ここまでが戦前編。川口の[カフェーキサラギ]、道頓堀の[カフェーパウリスタ]などのレジェンド店が登場。そして大正10年(1921)に[平岡珈琲店]が船場に登場し、いまも現役バリバリなのがスゴい。そして

4「数」と「幅」から生まれた戦後の個性派

5 商店街黄金期と大阪万博

6 喫茶店からカフェへ

7 サードウェーブと継承喫茶

戦後は、昭和21年(1946)にオープンした千日前の[純喫茶アメリカン]も、2020年にオープンした本町の[aoma coffee]も登場する。そのバリエーションというか、幅の広さはほんまに驚くほど広いけれど、「どれも大阪の喫茶店らしい」ということは共通している。

そして、残念ながら現存しないけれど人の心に残っている「あの店」のことももちろん出てきます。

“七色の珈琲”でコーヒー好きを毎日通わせた[MJB珈琲]、“歌声喫茶”のシンボルだった[コーラス喫茶こだま]、村野藤吾の傑作建築[心斎橋プランタン(赤プラ)][戎橋プランタン(白プラ)]、アメリカ村のはじまりとなった日限(ひぎり)萬里子さんの[LOOP]、同じ日限さんの南堀江[ミュゼ大阪]などのことも田中さんは話をされると思うので、どうぞお楽しみに。

こうやってレジュメを読んでいると、改めて、大阪の喫茶店の持つとてつもない「とんがった個性とそれを形にするパワー」を感じずにはいられない。

私ら編集者は、150年の歴史をつくってきた店主たちのような「熱」を持って誌面をつくっているのだろうか。改めて自問自答せずにはいられない。ちょっと気合入れんとあきませんな。

写真は2016年に大阪天満宮の西、天神橋筋の車道沿いにオープンした[LONG WALK COFFEE]。繁昌亭に行くときに、まずここに寄る楽しみができてめでたし。もちろん『大阪 喫茶店クロニクル』にも載っています。

では、5月17日(金)のナカノシマ大学をどうぞお楽しみに。定員締切御免です!

南森町交差点から南へ300mほど。歩道から見るとぜんぜん普通の「オフィスビルの1階にあるカフェ」なんですが……

ジャズの音とコーヒーの美味さに驚く。店主の愛知アンディー有さんの神経が行き届いた店で、くつろぎました

毎月25日の「天神寄席」を応援して早や10年。そして5月25日は?

2024年5月7日 火曜日

担当/中島 淳

140Bではナカノシマ大学のWEBを通じて、天満天神繁昌亭で毎月25日(7月を除く)に開催される「天神寄席」の告知を行い、申込受付もしている。当日は繁昌亭に「ナカノシマ大学受付窓口」も用意して、ご来場の皆さんをお迎えしています。

初夏の夕方、にぎわう繁昌亭前

25日というのは菅原道真(菅公)の誕生日が6月25日、命日が2月25日にちなんだもの。新暦に変わってからも大阪天満宮をはじめ全国各地の天満宮では毎月25日は「天神さん」の縁日でにぎわう。

そんなめでたい日ゆえ、大阪天満宮の境内に位置する繁昌亭では2006年の開席以来、毎月のように25日に「天神寄席」を開催していた。

そして2014年5月25日からは、『大阪の神さん仏さん』『上方落語史観』(いずれも弊社刊)の著者でもある髙島幸次先生が、プロデューサー、ブッキングマネージャー、鼎談ホストの一人三役を兼ねる現在のスタイルがスタートし、ナカノシマ大学のWEBから申込ができるようになりました。

5月25日天神寄席のお題は「とんち」と「機転」

天神寄席では毎月「テーマ」があって、それに見合った落語の演目と演者、そして鼎談のゲストが髙島先生の手で選ばれる。

5月は「頓知頓才・機知機転」という、上方落語にはうってつけのテーマ。

野球で言えば「打ち頃のストレートを“キタ〜!”とフルスイングしたら、フォークボールの餌食になった」みたいなアレです。

オチが分かっていても騙し騙されの妙がたまらない演目5席のほか、「大阪ほんま本大賞」作家の木下昌輝さんをゲストに、日本とんち界のスーパースター「一休さん」をテーマにした鼎談が開催されます。

木下昌輝先生が天神寄席にゲスト出演されるのは2019年の「大阪ほんま本大賞」の受賞以来

木下先生は新作『愚道一休』(集英社)をを書き上げたばかりで、この6月5日(水)に書店に並びます。

以下は髙島先生の木下先生「ご指名」の理由。

私が最初に読んだ木下さんの小説は、大阪落語の祖・米沢彦八が主人公の『天下一の軽口男』(「大阪ほんま本大賞」受賞作品)でした。すごく面白くて「天神寄席」にお招きしました。新作『愚道一休』は、あの一休さんが主人公だというので、きっと頓知話が満載かと思いきや、なんと頓知には触れずに、代わりに禅の「公案(参禅者に出す課題)」を採り上げているそうです。

落語5席の合間の鼎談(ていだん)では、木下さんと桂春若師匠と髙島が「禅問答」を繰り広げます。

ちなみに鼎談とは、髙島先生曰く「3人で話すことを『鼎談』、2人で話すことを『対談』といいます。1人で仏様に向かって話すことは『仏談』です」とのことである。
そしてゲストの木下昌輝先生からは

みなさんは、一休さんと聞いてどんなイメージがありますか? きっとアニメの「とんち小僧」でしょう。しかし、実際の一休さんは女や酒の味を嗜み、官能的な詩をいくつもものにした、規格外のお坊さんでした。

そんな一休が生涯を費やしたのが、腐敗し幕府と結びついた禅宗に対して、本物の禅を残すために戦うことでした。
『愚道一休』はそんな一休さんの八十年の人生を小説として一冊にしたものです。お楽しみいただければ幸いです。

……というメッセージを寄せてくれた。

ちなみに、天神寄席は前売が2,500円。当日3,000円ですが、ナカノシマ大学のWEBで申し込むと2,300円で楽しめてお得なので(当日精算)、スーパーヘビーユーザーの方も少なくありません(笑)。

5月17日(金)ナカノシマ大学と併せて、こちらもご贔屓に!

「いま何どきや?」でうどん屋をダマす 「時うどん」の笑福亭喬龍

ネコ好きにはたまらぬ「猫の茶碗」の笑福亭飛梅

 

「中に落ちた大仏の目を戻せ!」至難の業に挑む父子の活躍を描く「大仏の目」は露乃団姫(まるこ)

「近日」とは便利な日本語だけど、さていつのこと?  中トリで「近日息子」を演じる桂団朝

 

トリは桂枝女太(しめた)「猿後家」。「禁句」を言わぬように意識するほど墓穴を掘ってしまいます、はい

 

 

 

大河のようなカフェ・ヒストリー『大阪 喫茶店クロニクル』と西田辺の名店

2024年4月17日 水曜日

担当/中島 淳

喫茶店やコーヒーのことをさまざまな雑誌に寄稿し、自らも『甘苦一滴』という冊子の編集発行人である田中慶一さんという書き手のことは以前から存じ上げてはいたが、仕事での接点はあまりなく、「遠くから注目している」という感じであった。神戸や京都の喫茶店についての本を書かれていたのも知ってはいた。

この春、満を持してこちらの『大阪 喫茶店クロニクル  個性に満ちた憩いのワンダーランド』を上梓されたとSNSで拝見し、すぐに飛びついた。

4月上旬発売。税込2,200円(淡交社)

二人とも「洒落者やなぁ〜」と思わず唸らせる1枚。内装は現在も変わらない

150年の歴史が300ページに凝縮されたこちらの本を、カタい「150年史」と思っていたら、ぜんぜん違います。もちろん巻末にも年表(18ページもある!)が付いているから史料としても一級品だけど、そんな感じではない。

「珈琲好きの人たちはほんまに昔から、お客さんを喜ばせるために、こんなふうに試行錯誤しながら店やメニューを作っていたんやなぁ……」

先人たちの足跡の一つひとつが愛おしく感じられる。大阪のいろんな街(ほんまにいろんな街が出てくる)が舞台になった「喫茶店主と客の物語」という感じで、美味しいコーヒーのように体に沁みわたってくる本です。

文体がやわらかく、文字組みや紙の感じも品が良く、それでいて親しみも感じさせてくれて、スッスッスッと読める。あなたの好きなあの店この店が、どんな時代の中で、どんな人たちによって生まれ育まれたかを、知ることができる。

著者の田中慶一さんは5/17(金)のナカノシマ大学「カフェから大阪が見える 甘くて苦い、喫茶150年史」に登壇されるが、ナカノシマ大学を告知するために著書に掲載した写真をお借りしたが、その中に気になる1枚があった。

ご覧の通りお二方とも、洒落者であります。いまも内装は当時とほとんど変わらない

キタでもミナミでも天王寺でもない、阿倍野区は地下鉄御堂筋線の西田辺駅の近所にある[珈琲専門店チ・ケ]である。

65年前の1959年5月27日創業。中西俊二さんと泉子(みつこ)さん夫妻がはじめた店で、アルゼンチンタンゴの名曲からその名を取ったらしい。ターンテーブルのプレーヤーからタンゴが流れている。

「チ・ケ」は「名曲喫茶」という切り口でマニア向けの雑誌でも取り上げられ、本場からダンサーたちが来日したら必ず立ち寄るほどの店であるが、「タンゴ」で客を選別したりはしない。

田中慶一さんの『大阪 喫茶店クロニクル』で現店主の中西顕子さんが言っておられる通り、「タンゴ喫茶ではなくて、あくまでコーヒー専門店にタンゴがくっついている。タンゴはこっちの押し売りみたいなもんですから」ということで、美味しいコーヒーを飲んでただぼーっと過ごしても、ほんとうに「非日常」の豊かさに包まれるようで心地よい。

[チ・ケ]にお邪魔した日は、桜が散って初夏を思わせる日の午後だった。

長居で用事を済ませ、地下鉄に乗らずに住宅街をちんたら北上し、鶴ヶ丘を越えたあたりで長池公園の南端にたどり着く。

いつも感心するのだけど、大阪の公園で見かけるアオサギくんは人なつっこい。カメラを持って近づいてもお構いなし。

立ち姿が男前であった

「やっぱりコーヒーは食後の一杯にしょう」と、すぐにはお店には行かずに近所のスーパーで弁当を買って、アオサギくんの公園でお昼にした。日差しが眩しいので日陰に入り、スーパーのお弁当を広げてのんびりする。

(居酒屋の名店[スタンドアサヒ]もこの近くやったよなぁ……)現場に行くとあれこれと楽しい想像もわいてくる。

[チ・ケ]には30分ほどしかいなかったけれど、山崎豊子の話題になった瞬間に顕子さんが微笑みながら『ぼんち』の文庫本を取り出されたのを見て、「さすがや」と思いました。

ナカノシマ大学のチラシをお見せしたら、顕子さん曰く

「5月17日って……母(泉子さん)の誕生日じゃないですか!?」

告知のメインビジュアルに[チ・ケ]を選んだのは、偶然のようで偶然ではなかったのかもしれない。

後日、顕子さんと電話で話をしたら、もう一つオマケがあった。

「あの時、5月17日が母の誕生日だって話したでしょ?  実は田中慶一さんがウチの店に取材に来られた9月15日は、父の誕生日だったんです」

店に行くのがおもしろいのは、こういうことがあるからである。田中さんもきっと、その魔力にハマってしまったのだ。

いちばん奥の席でのんびりさせていただきました。次はチラシを持ってこよう

拝啓・古地図サロンから42

2024年4月8日 月曜日

2024年3月22日・本渡章より

【今回の見出し】

■2024年3月の古地図サロンレポートと5月の予定

  • 最近の主な古地図活動
  • お知らせ・電子書籍のご案内・プロフィル

■古地図サロンのレポート

開催日:3月22日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

この日の参加は10名。いつもどおり、古地図を囲んでの歓談でゆるゆると時間が過ぎました。

サロン誕生は2018年1月26日。当初は毎月、翌年からは隔月開催。今月が42回目です。すでにお知らせのとおり、年内にガスビル大改修が始まる予定で、会場のカフェ閉店にともないサロンは終了いたします。もし、このささやかな古地図の集いに興味をお持ちの方がおられましたら、5月のサロンにお越しください。7月はたぶん開催される見込みですが、それ以後の予定は不確かです。大改修後のサロン再開はありませんので、参加の機会はあとわずか。勉強会でもなく会員制でもありませんので、どなた様も気軽にお越しください。

次回のサロンは2024年5月24日(金)開催です。


◉今回のサロンで展示した地図

◆原図
生野 大正8年(1919) 逓信協会大坂支部
京都府・滋賀県交通地図 大正9年(1920) 大阪毎日新聞社
大大阪実測地図 大正15年(1926) 和楽路屋
大阪府中等学校以上分布図 昭和6年(1931) 日下伊兵衛
大阪港案内図 昭和6年(1931) 大阪市役所港湾部
近畿観光地図 昭和36年(1961) 和楽路屋
最新大阪地図 昭和31年(1956) 和楽路屋
丹那隧道開通記念・日本全国鉄道図 昭和10年(1935) 東京日日新聞

★次回は2024年5月24日(金)午後3~5時開催予定

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーしてください)。途中参加・退出OK。勉強会でもなく会員制でもありませんので、どなたでも気軽にご参加ください。

諸事情により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

 

【お知らせ】

●朝日カルチャーセンター中之島での講座 4月~6月

4月22日(月)・5月13日(月)午前10時~12時
此花区エリアをテーマに史跡ウォークと教室での座学による2回講座

「古地図むかし案内」

6月17日(月)午前10時30分~12時
大阪市電と阪堺電軌の追憶と今現在

「大阪の路面電車」

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サロン「東風(こち)」第4回

2024年5月10日(金)午後2~4時 豆玩舎ZUNZO(宮本順三記念館)/近鉄八戸ノ里駅前

古地図を囲んで街の話題を語ります。お茶付き。会場はグリコのおまけデザイナーで洋画家の宮本順三さんの作品&コレクションを集めたミュージアム・豆玩舎(宮本順三記念館)。近鉄八戸ノ里駅前。展示の観覧もかねて、お気軽にご参加を。

 

X(ツィッター)その他

X(ツィッター)始めました。本渡章 @hondo_akira1113
古地図以外の話題もいろいろ。その他まだ公開できませんが、進行中の案件あり。いずれご報告いたします。

●「大阪の地名に聞いてみた」ブログ連載、全12回24編

一年間の連載(題字と似顔絵・奈路道程)に追加取材を加え、ブログの内容を大幅に刷新して書籍化が進行中です。刊行までブログ「大阪の地名に聞いてみた」をお楽しみください。

第12回 ここは水惑星サンズイ圏【前編・後編】
第11回 島の国の島々の街【前編・後編】
第10回 仏地名は難波(なにわ)から大坂、大阪へ【前編・後編】
第9回  人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】
第8回 語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第7回 古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第6回 街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第5回 場所が仕事をつくった【前編・後編】(仕事地名・大阪市中編)
第4回 花も緑もある大阪【前編・後編】
第3回 桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第2回 続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第1回 大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】

 

動画シリーズ継続中!
  本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み

大阪24区を順番に歩いてめぐる「古地図さんぽ」講座を年数回開催しています。5月のテーマは淀川区。詳細は大阪コミュニティ通信社まで。

第2回番外編 府と区と市の関係について再考

第2回その2 西へ西へと流れた街のエネルギーと水都の原風景…西区

第2回その1 「江戸時代の大坂」と「明治以後の大阪」の架け橋となった巨大区…西区

第1回その3 平成の減区・合区が時代のターニングポイント

第1回その2 大正~昭和は人口爆発、増区・分区の4段跳び時代

第1回その1 大坂三郷プラスワン、4つの区の誕生

|古地図ギャラリー休眠のお知らせ|

2020年9月から202311月まで、東畑建築事務所・清林文庫の所蔵地図、鳥瞰図絵師の故・井沢元晴氏の作品を中心に紹介してきた古地図ギャラリーは休眠期間に入りました。過去20回の公開作品には現役の鳥瞰図絵師、青山大介氏の作品や本渡章所蔵の古地図も含まれています。ラインアップは下記の通りです。
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過去20回の古地図ギャラリーで公開した全40作品

20(2023年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪新町夕陽廊の賑」安政5年(1859)

第19回(2023年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より黄華山・画「花洛一覧図」文化5年頃(1808)

 

第18回(2023年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より池田奉膳蔵「内裏図」

 

第17回(2023年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「地球萬國山海輿地全図」

②青山大介作品展2023

 

第16回(2023年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「天王寺・石山古城図」

 

第15回(2023年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より長谷川圖書「摂津大坂図鑑綱目大成」

 

第14回(2022年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より久野恒倫「嘉永改正堺大絵図」

②鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「私たちの和田山町」

 

第13回(2022年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」

 

第12回(2022年7月)

①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」

 

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介された。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られた。学校のエリアは主に西日本。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられた。

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鳥観図絵師・青山大介(1976~)神戸生まれ。高校時代に都市鳥瞰図絵師の第一人者、故・石原正氏の鳥観図に出会い、感銘を受け、独学で鳥瞰図絵師を志す。2011年、制作に3年半をかけた「みなと神戸バーズアイマップ2008」を完成。2013年発行の「港町神戸鳥瞰図2008」は神戸市の津波避難情報板に採用された。以後、多数の作品を発表し、都市鳥瞰図の魅力を発信。2022年の「古の港都 兵庫津鳥瞰図1868」は同年開館の兵庫津ミュージアムのエントランス展示作品となる。2023年、神戸市文化奨励賞受賞。

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●電子書籍のお知らせ

本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)

『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)

思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。

『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)

梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。

*上記2冊は各電子書籍ストアでお求めください

*下記8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます

『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。

『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。

『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)

記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。

『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)

著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。

『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)

井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。

『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)

江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。

『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)

名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。

『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)

名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。

※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧

『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)

『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)

『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)

『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)

『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)

『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)

 

●本渡章(ほんど・あきら)プロフィール

1952年大阪市生まれ。作家。(財)大阪都市協会発行時の「大阪人」編集などを経て文筆業に。1996年第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。短編が新聞連載され『飛翔への夢』(集英社)などに収録。編著に『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)がある。その後、古地図・地誌をテーマに執筆。
著書『鳥瞰図!』『古地図でたどる大阪24区の履歴書』『古地図で歩く大阪 ザ・ベスト10』『大阪古地図パラダイス』(140B)『古地図が語る大災害』『カラー版大阪古地図むかし案内』『図典「摂津名所図会」を読む』『大阪暮らしむかし案内』(創元社)など多数。共著に『大阪の教科書』(創元社)がある。

ええ意味で疲れた!『こんだあきこの わたしの偏愛遺跡旅』

2024年4月2日 火曜日

担当/中島 淳

4.12(金)のナカノシマ大学に登壇する譽田亜紀子さんの新刊『こんだあきこの わたしの偏愛遺跡旅』(新泉社)を拝読。

2024年4月上旬発売。一部の書店ではすでに並んでます。1,980円(税込)

自分自身が、遺跡のある土地の自然や大気を浴びながら旅したようで、ええ意味でへとへとに疲れました。

北海道を除く各地に点在する古代遺跡を訪ねる旅が章立てになっていて、ロードムービーの感がある。縄文・弥生・古墳時代の遺跡が主だが、その前後、旧石器時代のサキタリ洞遺跡(沖縄県)や戦国時代の八王子城跡(東京都)まで全部で18章とバラエティ感がすごい。

なかでも世界遺産となった秋田県のストーンサークル(伊勢堂岱遺跡)は前編・後編の2本立て。「日本にもこんな場所があるのか」「これは死ぬまでに一度行かなアカンな」という感を強くした。

古代遺跡の場所は一部を除くと交通至便ではないし、歩く距離や高度差なども半端ではない。翌朝は常に筋肉痛に襲われたことだろう。

行間から、現地の空気の重さ軽さや湿気、臭い(匂いでなくて)まで伝わってくる。千葉市の・加曽利貝塚「北貝塚貝層断面施設」を訪れた章では、実際に積み上げられた約4,000年前の貝がいまなお臭っている訳でもないのに、譽田さんは想像力を駆使してずんずん書く。「臭ったほうがええんか!?」と言いたくなるほどである。

「ただの貝が積み重なっているだけなのに、こんなにもぐるぐると脳内をかき乱される。2メートルの積み重なりに、彼らの生きることへの執念を感じ、おののいていたのかもしれない。そして施設から出てふと思った。これ、当時は相当に臭ったんじゃあるまいか。」(第15章・加曽利貝塚)

写真で見るよりもおぞましさが増幅されるくだりだけど、譽田さんは逆にこう言って締める。

「この臭いがあるからこそわが集落。臭いはアンデンティティ」

それだけでは終わらない。縄文人たちの食生活を追体験しようと、翌日には木更津まで「貝採り」に出かけ、たっぷり採れたイボサキゴ(実際に貝塚に積み上げられていた直径2センチほどの貝)を土器鍋を使って「イボサキゴ汁」にして飲む。うまい!と唸り、縄文人の生命力にひたすら敬服していた。

こんな感じで譽田さんはどの場所を訪れても、遺跡で暮らしていた先人の営みに(若干の狂気を感じつつも)敬意を払い、懐かしい知り合いに話しかけるように、その時代に生きた暮らしのありようを書き綴っている。

海岸沿いに内陸そして沖縄本島。「偏愛」という言葉が実感できる

本文には富士山が何度も登場する。静岡から関東の人には珍しくもなんともないはずだが、先史時代の遺跡と「富士山」の組み合わせが新鮮、というか違和感があった。

しかし普通に考えたら縄文や弥生、古墳時代の人たちだって富士山を見て当たり前のように「ありがたいなぁ」と思っていたのだ。

逆に言うとそれだけ、百人一首(田子の浦に〜)や北斎、広重、横山大観などの絵で刷り込まれた「富士山のイメージ」にガキの頃から囚われていたんだなということが分かった。

譽田さんも「西日本に長く暮らしたわたしにとって、富士山は新幹線のなかから見るもの。」(第13章・三浦半島海蝕洞窟遺跡)と書いている。

この本は、譽田さんが古代を深掘りして訪ねる旅であり、同時に彼女が「かつて抱いていた偏見から自由になる旅」でもあることを、読者は読み進むうちにだんだん発見する。

あのパッション溢れるスタンディングの講演は、遺跡で先人から受けたパワーが源になっているのだということも、この本を読むことで改めて知った。

子ども時代に読んでいたら、きっと人生変わったと思いますわ。小学生にも勧めたい。

ナカノシマ大学当日には、『知られざるマヤ文明ライフ』(誠文堂新光社)と共に会場で販売するので、どうぞお楽しみに!

譽田さんは江弘毅のうまいもんの本も一緒に取材したぐらいだから、もちろん店好き酒好き美味いもん好きです。遺跡取材から帰ってきたら、カウンターでゴキゲンにやってはります(日本経済新聞2023年11月1日「焼酎特集」)

 

 

情熱の古代伝道師、譽田亜紀子さん再び来阪!

2024年3月25日 月曜日

担当/中島 淳

譽田亜紀子(こんだ・あきこ)さんが2022年の12月講座に続いて、ナカノシマ大学に講師として登壇してもらえることになった。4月12日(金)18時からである

当日はこのチラシの写真に写っているTシャツ(スソアキコさんが描いたマヤのサウナの絵柄)を着用して登壇されるそうだ。

譽田さんについては以前にも弊社ブログで紹介した通り、初めて一緒に仕事をした13年前の、雑誌『大阪人』の頃から一貫して変わらず、常に「上機嫌でフレンドリー」な書き手であり編集者であった。

その時は「うまいもん」「鉄道」という2つのテーマで仕事をしてもらったが、「譽田亜紀子の取材チーム」は笑顔が伝染する感じで、同行するカメラマン氏や取材協力してくれたお店の人も顔がユルんでいたのが懐かしい。

しかし当時の譽田さんとしては、「なんとしても土偶の本を出したい」ということが常に頭の片隅にあったのだろう。やがて関西から東京に拠点を移し、全国の遺跡や博物館をめぐって取材を行い、高名な学者から監修を受けて『はじめての土偶』(世界文化社)を上梓したのは2014年の夏のこと。

この本が出版された頃から、「土偶」「縄文」をテーマにした本が世の中に増え、その流れに拍車をかけるように譽田さんの著書も次々と生まれた。

そして「縄文」のみならず、譽田さんならではの視点で「弥生」「古墳」など日本の先史時代についての著書も生まれ、どれも10,000部以上を記録し、いまなお版を重ねている。

先ほど「譽田さんならではの視点」と書いたが、私なりの乱暴な解釈を書くと、縄文時代だろうが弥生だろうが古墳だろうが、そこにあるのは「歴史」というよりまず「ふつうに生きている人間」ということではないかと思っている。

それは博物館のガラスケースに入った「展示物」というよりも、「私よりちょっと前に生活していたあの人」という距離感だ。

「かわいいアクセサリーがうらやましい」「お母さん、子育て大変やったんやろな」みたいな目で古代の「歴史遺産」を見ている。だから著書も分かりやすいし親しみやすい(コンビを組んでいるイラストレーターのスソアキコさんの絵がまた抜群だ)。

ナカノシマ大学は、だいたい30代より上の年齢層の方が受講される多いが、譽田さんの講座には小学生から70代までお越しになる。ナカノシマ大学15年の歴史の中でも「受講年齢層の幅広さ歴代No.1」と言えるでしょう。ということで、今回は初めて「小学生以下の料金」も設定しました。古代好きの子どもさん、お孫さんのいる方はぜひご一緒に。

講座当日は、『知られざる縄文ライフ』『〜弥生ライフ』『〜古墳ライフ』に続く譽田亜紀子&スソアキコの4作目で、現在、中之島の国立国際美術館で開催されている特別展「古代メキシコ」のミュージアムショップでも販売されている『知られざるマヤ文明』(誠文堂新光社)と、4月上旬発売の最新刊『こんだあきこの わたしの偏愛遺跡旅』(新泉社)の2冊を発売します(後者については改めてご紹介します)。

遥か昔にその地で生活していた人間に、知り合いのように話しかけるような文章もさることながら、譽田さんの魅力は、なんと言ってもライブな講演に尽きる。

2022年12月17日、大阪府立中之島図書館でのナカノシマ大学にて

通常、ナカノシマ大学ではプロジェクターに資料を投影しながら着席して話をする講師の方が多いのだが、彼女の場合はオールタイムスタンディングで話し続ける。

2年前の12月も、子どもから人生の先輩まで、譽田トークに目が釘付けになっていた。あのパッション溢れる講演がまた聞けるとは、4月12日(金)が楽しみです。