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拝啓・古地図サロンから32

2022年7月22日・本渡章より

【今回の見出し】

■7月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第12回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その12〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:7月22日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。猛暑の夏です。さらに新型コロナの感染急拡大も重なって、今回のサロンは私を入れて参加者5人のこじんまりした会になりました。そのぶん、ゆったりと地図を見たり、歓談したりできたようで、少人数も時にはわるくないと思いました。

「ブログを見て来ました」という初参加の方がおられ、大阪市電の65年間にわたる歴史をまとめた記念誌『市電』(昭和44年・大阪市交通局発行)をサロンに御寄贈いただきました。ありがとうございます。市電誕生から廃止までの経緯が多数の写真とともに掲載された貴重な記録です。市電唱歌のソノシートが付録に付いていて、これもたいへん珍しく、他の参加者といっしょに楽しく拝見しました。

市電は私の子供の頃、日常の風景でした。外の景色が見えるのが面白く、遊園地のアトラクションみたいな感覚で乗っていた記憶があります。私より少し若い世代の方には、実際に街を走っている市電を見た記憶がないとのことで、これも世代ごとに見ている風景が違うという実例のひとつ。時代の流れを感じさせられます。

5月に開催した中之島図書館での鳥観図展に、井沢元晴作の鳥観図を出展していただいた足立恵美子さんに戦災画のファイルを2冊持参していただいたのが本日のトピックでした。終戦まもない大阪の焼跡を訪ね歩いた井沢元晴が筆で描き残したものです。瓦礫の野原になった市内にぽつぽつと立ちつくす焼け残りの建物や橋。モノクロの画面は静かですが、無言ではありません。足立さんは絵師・井沢元晴の御遺族。大阪以外の街を描いた戦災画もあるとのことで、この夏に他の場所でも公開をしていきたいとお話されました。ぜひ、多くの方に見ていただきたいと思います。

公開地図では日本統制地図(戦時体制期の地図会社の名前)発行の旭区の市街図について主に話をしました。あるはずの橋が描かれていないなど、戦時体制下の地図の特徴を確認。戦後に大発展する千林エリアなど、旭区がたどった足跡を地図からイメージしてみました。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

◉今回のサロンで展示した古地図

《原図》
最新大日本鉄道地図 昭和11年(1936) 大阪毎日新聞社
大大阪市街新地図 イロハ引早わかり 昭和12年(1937) 駸々堂旅行案内部
大阪市区分地図・旭区地図 昭和17年(1942) 日本統制地図
大阪市案内図 昭和39年(1964) 大阪市交通局

《復刻図》
畿内紀州掌覧図 慶応2年(1866) 三都発行書林

次回9月は第4金曜が祝日のため、30日(金)午後3~5時開催予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは基本、奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで一年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】
第6回街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第7回古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)

 

●動画古地図でたどる大阪の歴史」続編、作成中(制作:大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。
7月16日(土)「此花区・港区・大正区」をテーマにリアル講座(OCU主催)を開催。編集後、動画として公開を予定しています。

●最後の「なにわなんでも大阪検定」は12月実施!

初回からずっと私も運営に関わってきたので、13回目の今年が最後の検定試験になったのは残念。これまで挑戦しそびれていた方、この12月が受験の最後のチャンスです。初級と上級の2種あり。試験は12月11日(日)実施。申込受付中で、締切は10月18日です

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

8月17日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・都島区編」
9月22日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・鶴見区編」
10月24日・11月21日に「大阪古地図むかし案内 ~島之内から道頓堀へ、新旧ミナミの変遷」(教室講座と現地街歩き)を予定しています。

|古地図ギャラリー|

秋山永年【富士見十三州輿地全図

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その12〉

『富士見十三州輿地全図』は題名のとおり、富士山が見える13州のエリアを描いた図。13州とは武蔵・安房(あわ)・上総(かずさ)・下総(しもうさ)・常陸(ひたち)・上野・下野・相模・駿河・甲斐・伊豆・信濃・遠江(とおとうみ)で、現在の東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・茨城県・静岡県・山梨県・長野県にまたがる広域。富士山を主題にした関東一円図です。

富士山が絵画や詩歌の題材として人気を得るようになった江戸時代後期には、地図の世界でも居ながらにして「富士見」が楽しめる図が現れるようになりました。本図はその一例です。凡例には国名・道の他、神社、温泉などの名所、さらには関所も記入され、旅の気分を高めています。

作者の秋山永年は江戸の人。初版は天保13年(1842)で、作者が嘉永6年(1853)没した後の安政の頃にも再版され、本図は明治18年(1885)発行。半世紀近くにわたって出回ったことから、人気のある図だったのがうかがえます。

富士山を真上から見た平面図で描いているのが、江戸時代の作としては異色。葛飾北斎が空から鳥瞰した日本図を描いていますが、この図は富士山だけが平面図で、13州の地図中に富士山だけがぽっかりと火口を見せて仰向いていて、鳥瞰図とも異なる地図世界を生み出しました。秋山永年がどこからこのユニークなアイデアを得たのかは不明です。

ともかく、平面図にしたのが富士山でなかったら、こんなにインパクトのある図にならなかったのは確かです。世界文化遺産になった富士山の存在感の大きさにも、あらためて気づかされます。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

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過去の古地図ギャラリー公開作品

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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