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百舌鳥古墳群とともにある古民家「髙林家住宅」のこと

担当/中島 淳

昨年12月、大阪府文化財保護課の仕事で堺市北区百舌鳥赤畑町にある重要文化財の古民家、「髙林家住宅」の公開イベントにお邪魔し、髙林家に代々伝わる滋味たっぷりの料理をいただいた。

詳しくはこちらの取材記をご一読いただきたいが、都市型住宅の中に点在している百舌鳥古墳群の中でも、百舌鳥八幡宮周辺のエリアだけは「別格」の趣があるのは、この界隈の「へそ」の位置にある髙林家が16世紀末から、古墳や地域の「世話人」の役割を果たしてきたことが大きな理由ではないだろうか。「地域の責任を引き受ける」とか「周囲の自然と折り合いをつける」ということを400年以上担ってきたことが、周囲の景観になんとも言えない「重し」を与えているように思う。

その髙林家では最近、敷地内にある建造物の老朽化と損傷が顕著になって、大幅な修繕の必要性に迫られている。現場もはっきりと確認できた。これについては微力ながら協力したいと思っているのだが、問題は行政の補助金が当てにできないことである。

17世紀前半に建てられた現役の古民家なんて、国内にもほとんど残っていない。大阪府文化財保護課のみなさんはこのようなイベントを通じて地域の文化財保護への関心を高めようとしていてほんまに頭が下がるが、肝心の大阪府のトップがなんちゃら博覧会や賭場づくりばかりに力を入れて(コロナ死者数は全国一ときている)、「それで世界に大阪が誇れるんかい?」と思ってしまう。

そんなことも少しだけ書かせてもらったが、文化財保護課の担当者さんも「このくだりはちょっと……」などとは決して言わず、スルーしてくれた。やっぱり現場の人たちも分かっているんだと思う。

代々伝わるかまどで雑煮を作る26代目当主の髙林永統(ながつね)さん