大阪・京都・神戸 街をよく知るからこそできる出版物&オリジナルメディアづくり
拝啓・古地図サロンから40

2023年11月24日・本渡章より

【今回の見出し】

■2023年11月の古地図サロンレポートと2024年1月の予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー
    東畑建築事務所「清林文庫」コレクションより

■古地図サロンのレポート

開催日:11月24日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。

今年最後の古地図サロンになりました。来年後半は既報のとおり、大阪ガスビルの大改修が始まるため、会場のカフェ閉店の時点でサロンも終了となります。改修工事の開始時期はまだ決まっていませんが、おそらく来年の7月頃までは、これまでどおりサロンを継続できると思います。詳細はあらためて、この場で報告いたします。
今回は東京の市制時代の地図、京都・神戸が大京都・大神戸と名乗っていた頃の地図など、公開しました。明治30年代の「大阪市新地図」は副題が英語です。戦前の「近畿遊覧疼痛略図」の主役は近鉄の路線網でした。それぞれの時代の色が出ています。併せて11月2日付・朝日新聞(鳥取版)に載った井沢元晴・作の鳥観図、戦災画の記事もサロンでご紹介。絵師・井沢元晴の作品はこのブログでも古地図ギャラリーなどで度々とりあげてきました。今後さらに多くの方に知っていただきたい作者です。
というわけで、2024年1月のサロンでまたお会いいたしましょう。

 

 

◉今回のサロンで展示した地図

◆原図
東京市全図 大正11年(1936)龍王堂出版部
大京都市街地図 昭和16年(1941)日本統制地図
大神戸市街地図 昭和16年(1941)和楽路屋
新制東京全図 昭和23年(1948)日本観光
大阪市新地図 NEW MAP OF OSAKA-CITY 明治35年(1902)駸々堂
近畿遊覧交通略図 昭和10年頃 発行者不明

★次回は2024年1月26日(金)午後3~5時開催予定

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーしてください)。途中参加・退出OK。勉強会でもなく会員制でもありませんので、どなたでも気軽にご参加ください。

諸事情により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

 

【最近と今後の古地図活動】12月以降

●朝日カルチャーセンター中之島での講座 12月~3月

12月15日(金)午前10時30分~12時「大正の広重・吉田初三郎の世界」

日本全国の名所鳥瞰図で一世を風靡した吉田初三郎の大ベストセラー、鉄道開通50周年記念『鉄道旅行案内』を読み解き、観光ブームに湧いた大正時代の旅を再現。

1月26日・2月24日・3月23日「古地図地名物語」

東住吉区・住吉区・住之江区の3区の地名について、3回講座でお話します。

 

OCU主催「古地図さんぽ」

2024年1月21日(日)午後1~4時。「大阪湾岸の歴史を深堀り・此花区編」

伝法駅周辺エリアのウォーク&此花区民ホールでの講座をセットで実施。ウォークでは船形と社伝が一体になった鴉之宮などめぐります。講座は伝法と海の向こうの文化伝来の歴史について。

 

サロン「東風(こち)」第3回

2024年2月9日(金)午後2~4時 豆玩舎ZUNZO(宮本順三記念館)/近鉄八戸ノ里駅前

前回(11月10日)は「東大阪の七不思議」続編は、本当にあった「謎の瓢箪山遊園」、その街の中心を意味する地名の「本町」が東大阪市にはいくつもある……など古地図を囲んで街の話題。併せておまけになった古地図の話も。次回も古地図とともに大阪の話題を楽しみましょう。会場はグリコのおまけデザイナーで洋画家の宮本順三のコレクション展示で知られる豆玩舎(おまけや)。

東大阪散策MAP完成

東大阪市の旧街道、旧川筋、地蔵と祠、古社寺、お勧め店など情報満載のイラストマップに名所絵・見どころ解説を添えて、2つの推奨コース「河内永和~布施」「吉田~河内花園」をご紹介。案内役・本渡章。このマップ1枚あれば街歩きの楽しみ2倍。東大阪観光協会発行(東大阪市役所で入手できます)

 

雑誌「歴史人」12月号に執筆

京の都の大通り、「丸太町通・綾小路通」2頁を執筆。歴史人×お通り男史タイアップ企画。

 

歴史発掘・小冊子「玉野市」に執筆

鳥人幸吉の古里・岡山県玉野市の小冊子に「塩の歴史話」など執筆。日本各地の歴史発掘プログラムを展開しているABCアーク制作。2024年初春発行予定。

●「大阪の地名に聞いてみた」ブログ連載、全12回24編

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。一年間の連載が2023年1月に完結(題字と似顔絵・奈路道程)し、書籍化が決定! 追加取材を加え、ブログの内容を大幅に再構成し、刊行されます。
それまではブログ「大阪の地名に聞いてみた」でお楽しみください。

第12回 ここは水惑星サンズイ圏【前編・後編】
第11回 島の国の島々の街【前編・後編】
第10回 仏地名は難波(なにわ)から大坂、大阪へ【前編・後編】
第9回  人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】
第8回 語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第7回 古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第6回 街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第5回 場所が仕事をつくった【前編・後編】(仕事地名・大阪市中編)
第4回 花も緑もある大阪【前編・後編】
第3回 桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第2回 続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第1回 大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】

 

動画シリーズ継続中!
  本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み

大阪市のたどった道のりを、それぞれの土地の成り立ちと経済、文化など多様な要素を持つ24の「区」から見つめなおすシリーズ。続編はしばらくお待ちを。(制作・大阪コミュニティ通信社)

第2回番外編 府と区と市の関係について再考

第2回その2 西へ西へと流れた街のエネルギーと水都の原風景…西区

第2回その1 「江戸時代の大坂」と「明治以後の大阪」の架け橋となった巨大区…西区

第1回その3 平成の減区・合区が時代のターニングポイント

第1回その2 大正~昭和は人口爆発、増区・分区の4段跳び時代

第1回その1 大坂三郷プラスワン、4つの区の誕生

|古地図ギャラリー|

【大阪新町夕陽廊の賑】安政5年(1859)
松屋喜兵衛・石川屋和助・河内屋平七

新町は大坂夏の陣の後に設けられた幕府公認の遊里。江戸の吉原、京都の島原とともに三大遊廓と称され、江戸時代を通して大坂最大の廓として繁栄しました。「大阪新町夕陽廊の賑」は新町の賑わいを生き生きと伝える俯瞰図です。題名に「夕陽」とあるとおり、この風景は夕暮れ時。図中に提灯を手に持つ人がいます。右下隅に見えるのは、現在は埋め立てられた西横堀川に架かる新町橋で、船場から新町への通り道になっていました。新町橋を渡った人が遊廓の東大門を通り、遊廓に入っていく光景の中に刀をさした武士の姿も見られます。道筋に沿って桜の並木が続きます。新町は桜の名所でもありました。
図の発行は、安政の大獄で世情が不穏になった幕末期と重なっています。明治維新の激動は目の前。図に描かれた夜桜に彩られた遊廓の賑わいは、江戸時代の最後に開いた花のようです。新町遊廓の跡を示す碑は今、西区の新町公園に建っています。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。
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過去の古地図ギャラリー公開作品

第19回(2023年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より黄華山・画「花洛一覧図」文化5年頃(1808)

 

第18回(2023年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より池田奉膳蔵「内裏図」

 

第17回(2023年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「地球萬國山海輿地全図」

②青山大介作品展2023

 

第16回(2023年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「天王寺・石山古城図」

 

第15回(2023年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より長谷川圖書「摂津大坂図鑑綱目大成」

 

第14回(2022年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より久野恒倫「嘉永改正堺大絵図」

②鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「私たちの和田山町」

 

第13回(2022年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」

 

第12回(2022年7月)

①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」

 

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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●電子書籍のお知らせ

本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)

『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)

思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。

『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)

梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。

*上記2冊は各電子書籍ストアでお求めください

*下記8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます

『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。

『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。

『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)

記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。

『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)

著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。

『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)

井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。

『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)

江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。

『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)

名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。

『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)

名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。

※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧

『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)

『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)

『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)

『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)

『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)

『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)

 

●本渡章(ほんど・あきら)プロフィール

1952年大阪市生まれ。作家。(財)大阪都市協会発行時の「大阪人」編集などを経て文筆業に。1996年第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。短編が新聞連載され『飛翔への夢』(集英社)などに収録。編著に『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)がある。その後、古地図・地誌をテーマに執筆。
著書『鳥瞰図!』『古地図でたどる大阪24区の履歴書』『古地図で歩く大阪 ザ・ベスト10』『大阪古地図パラダイス』(140B)『古地図が語る大災害』『カラー版大阪古地図むかし案内』『図典「摂津名所図会」を読む』『大阪暮らしむかし案内』(創元社)など多数。共著に『大阪の教科書』(創元社)がある。