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山崎豊子を語る4人の女性(2・小八木利子さんと香西順子さん)

担当/中島 淳

このほど、文藝春秋から発売された山崎豊子の最新刊『作家・山崎豊子』には、「1」でご紹介したように相愛大学人文学部教授の荒井真理亜先生が図書館で発見した、相愛女学校時代(12〜17歳)に山崎豊子が書いた5篇の作文が全文掲載されている。

山崎豊子『作家・山崎豊子』文藝春秋

『作家・山崎豊子』(文藝春秋)はナカノシマ大学会場でも販売

『作家・山崎豊子』には「よくもこれだけたくさんあったもんだ」と驚くほどの未発表原稿がてんこ盛りであるが、読んでいて一番楽しかったのは、本のトリを飾る親族による座談会「山崎豊子生誕100年『おばは妖怪でした』」である(初出は『文藝春秋2024年11月号』)。

出席者は以下の通り

⚫︎山崎定樹さん(山崎豊子の甥=兄・定彦の息子)

⚫︎小八木利子さんと香西順子さん(山崎豊子の姪=長兄・正三の長女と次女)

⚫︎山﨑泰さん(山崎豊子の甥=弟・武の長男)

定樹さん、利子さん、順子さんにとって山崎豊子は「叔母」で、泰さんにとっては「伯母」。それで「おば」とひらがなで書かれている。

定樹さんにとって、私生活での山崎豊子は

「とても愛情深い人でした。特に、兄弟愛および甥っ子姪っ子に対する愛情というのは、人の三倍も四倍も、下手したら五倍ぐらい強い人で、だからみんな強烈な体験をしています。」

 

(太字は文藝春秋『作家・山崎豊子』から)だったそうで、順子さんによると

香西順子さん(文藝春秋提供)

「山崎家は祖母のます(豊子の母)が祖父よりも強かったんですね。祖母がゴッドマザーで、戦後は、おばが父親代わりみたいに弟たちの進学や就職を気にしていた。」

 

という。要は「山崎家の中心」で、それを支えていたのが豊子の母で彼らの祖母・ますだった。順子さんが続ける。

「おばがあの時代にしては珍しい、いわゆる良妻賢母型に収まらない生き方ができたのは、祖母がそれを許容したからだと思います。おばは若い頃から、家の中でも女性としての責務からは全部解放されていましたから。」

 

豊子が新聞記者から作家へと飛躍するにつれ、山崎家では完全に「別格」扱いされていた。利子さんは

「私たちの母が、祖母に小言をいろいろ言われて、『豊子さんもそうですがな』って言い返したら、『豊子は別や』。それが祖母の決め台詞でした。」

 

彼女たちの母親にとって豊子を守るますは「強大な壁のようなお姑さん」だったのだ。

そして定樹さんの記憶では

「台所に立っているのはいっぺんも見たことがない。」

 

だった。そして順子さんは

「あの時代にそういう生き方をさせた明治生まれの母親がいたことが大きかったと思う。」

 

と半ばリスペクトを込めて語っている。

豊子の母で彼らの祖母であるますはきっと、自分たちの世代が逆立ちしても手が届かなかった「スーパーキャリアウーマン」の娘が誇らしかったのではなかろうか。

豊子おばちゃんは家事はしない代わりに甥や姪たちに注ぐ愛情は桁外れだった。順子さんの記憶では

「私が高校に入学した時に、お祝いといって、その頃流行していた日本文学全集と世界文学全集を本棚ごと突然送ってきたんです。」

 

なかなかトゥーマッチな叔母だったことが分かる。

最年少の泰さんにとっては、伯母の豊子は物心ついた時はすでに人気作家。「いつもオーバーアクションで、笑顔で大きな声で話しかけてくれる人」だったらしい。

「『泰、おばちゃんの仕事何か知ってるか?』って聞かれて、そのたびに『作家』って答えるやり取りが何回もあって、ちょっと苦手やなと思いました。(中略)これまた言うの? と思って。」

 

「おばちゃん」が人気作家になってからの社会的プレッシャーは相当のものだっただろうから、馬鹿話ができる甥や姪との時間は何よりもかけがえのないものだったはず。泰さんがそのおばちゃんを本当に有名人だと実感したのは、年末おなじみの番組でテレビに映った伯母を観た時だった。

「確か、平成三(一九九一)年にNHKの紅白歌合戦の審査員でテレビに出たんですよね。それを見て、これは本当にすごい人なんやと思ったのは覚えています。」

 

すると、たたみかけるように利子さんが

「その前の昭和四十一(一九六六)年に紅白の審査員をやったときは、尾上菊之助(現・七代目尾上菊五郎)が隣の隣の席だったそうで、『メッチャ男前で色気があった』と、うっとりした顔をしてました。」

小八木利子さん(文藝春秋提供)

 

すかさず順子さんが

「イケメンが大好きだったからね(笑)。」

たしかに。

『白い巨塔』の財前五郎は田宮二郎、唐沢寿明、岡田准一が演じているし、『華麗なる一族』の万俵鉄平は仲代達矢、加山雄三、木村拓哉。『不毛地帯』の壱岐正は仲代達矢、平幹二朗。『二つの祖国(大河ドラマは「山河燃ゆ」)』の天羽賢治は九代目松本幸四郎(現・二代目松本白鸚)。『大地の子』の陸一心は上川隆也。『沈まぬ太陽』の恩地元は渡辺謙、上川隆也。『運命の人』の弓成亮太は本木雅弘……。

「どんだけイケメンが出るんや!?」と誰もが思ってしまう。それはそれで豊子おばちゃんの「書く力」の原動力になったのではなかろうか……。

彼女が阪神ファンだったかどうかは分からないが、「世界一美しいワインドアップ」と言われたあの左投手も大作家のお気に入りだったそうです。

9月26日(土)のナカノシマ大学では、姪の小八木利子さんと妹の香西順子さんのお二人が第2部に登壇して、「魅力的、でも大変なおば・山崎豊子」のお話をしていただけます。本の中でも利子さんが

「作品を読んでも、やっぱり自分の力で生きてる女性にものすごい敬意を表しているよね。」

とリスペクトしたら、すかさず妹の順子さんが

「その分、専業主婦には少し冷たかったと思うけど(笑)」

いけずで返しておられる。活字にはならなかったお話も含めて(絶対たくさん出そう)お楽しみください。

聞き手はこの本の編集者である文藝春秋の田中光子さん。次回はその田中さんのことを書かせていただきます。

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