2023年1月27日・本渡章より
【今回の見出し】
■1月の古地図サロンレポートと次回予定
- 最近と今後の古地図活動★ナカノシマ大学2月18日(土)開催!
- 古地図ギャラリー第15回
東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その15〉
■古地図サロンのレポート
開催日:1月27日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。
皆さま、お元気でいらっしゃいますか。2023年最初のサロンレポートをお送りします。早いもので2018年1月のサロン誕生からまる5年が経ちました。最初の1年は毎月開催で、2年目からは隔月になりました。コロナ禍初期の頃に一度だけお休みしましたが、あとはマイペースで継続。少なくとも今年いっぱいは、この調子で続けていくつもりです。
この日、注目を集めたのは1枚の展示古地図に載っていた「ラサ」の2文字でした。ラサといえばラサスケートリンク。来場のみなさんも同じ連想をした方が多く、大阪市内にかつてあった巨大スケート場の思い出が次々と出て、盛り上がりました。そのわりに、そのラサスケートリンクの最寄り駅がどこだったかなどの記憶は曖昧で、過ぎた年月の長さをあらためて知ったという次第。歴史をたどると、此花区にあったラサ工業大阪工場の跡地に昭和38年(1963)オープンしたラサスポーツセンター内の施設として、ラサ国際スケートリンクがあったんですね。その名のとおり国際試合ができる本格派で、屋内アイススケート場としては当時の世界最大級だったとか。私も小さい頃にラサで滑って転んだのをおぼろげに覚えています。
サロン終了後、同じ会場で初の懇親会を催しました。10人の方が参加。1時間だけの会食でしたが、ふだん聞けないお話など聞けて面白かったです。カフェ「feufeu」名物のスープも美味しくいただきました。
というわけで6年目もサロンをよろしくお願いいたします。これまでお越しになった方も、新しい方もお気軽にご参加くださいませ。
◉今回のサロンで展示した古地図
地図(原図)
市区改正設計入・大阪市街新地図 大正13年(1924) 駸々堂
里程・町名早わかり大大阪実測地図 大正15年(1926) 文進堂
大阪市区分地図「東成区地図」 昭和15年(1940)頃 和楽路屋
交通明細・大阪市街地図 昭和25年(1950) 日地出版
最新大阪市案内図 昭和31年(1956) 和楽路屋
大日本大阪名所双六 大阪城天守閣特製
嘉永改正堺大絵図 河内屋清七他
復刻
新改正摂津国名所旧跡細見大絵図 天保7年(1837) 河内屋喜兵
★次回は2023年3月24日(金)午後3~5時開催予定
会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは基本、奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)
★コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。
【最近と今後の古地図活動】
●「大阪の地名に聞いてみた」ブログ連載、全12回24編が完結!
誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い、ついに一年間の連載が完結です。
(題字と似顔絵・奈路道程)
第12回ここは水惑星サンズイ圏【前編・後編】
第11回島の国の島々の街【前編・後編】
第10回仏地名は難波(なにわ)から大坂、大阪へ【前編・後編】
第9回人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】
第8回語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第7回古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第6回街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】(仕事地名・大阪市中編)
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
●ABCラジオ「おはようパーソナリティ 小縣裕介です」に出演決定!
2月15日(水)ABCラジオ「おはようパーソナリティ小縣裕介です」、朝8時~8時半の間の15分間、生出演予定です。
「大阪の地名」、ブログ、ナカノシマ大学2月講座などの話をしてみたいと思います。
●ブログ「大阪の地名に聞いてみた」がナカノシマ大学講座に。
誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い……ブログには書けなかった話を新たな現地調査の報告も加えて、たっぷりお聞かせします。テーマは「梅と桜」。訪ねるエリアは梅地名尽くしの梅田、朝ドラで話題の東大阪(桜井)など。当日、会場でお会いしましょう。
ナカノシマ大学2月講座「梅地名VS桜地名、実はここが一番多かった!」
日時:2023年2月18日(土)午前10時~11時30分(開場9時30分)
開場:大阪府立中之島図書館・多目的ホール
●朝日カルチャーセンター中之島での講座予定
「春の世界遺産古墳」
「道明寺天満宮と世界遺産古市古墳」2023年4月24日(月)/5月8日(月)午前10時~12時
中之島での教室講座と近鉄道明寺駅(藤井寺市)集合の町歩きがセットになった2回講座。
世界遺産の古墳群と埴輪づくりの土師氏(菅原道真の祖)ゆかりの道明寺天満宮を訪ねます。
●動画「古地図でたどる大阪の歴史」続編、作成中
江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。「此花区・港区・大正区」の動画も作成中。
制作・大阪コミュニティ通信社
|古地図ギャラリー|
1.【摂津大坂図鑑綱目大成】宝永4年(1707)刊 ・絵師長谷川圖書
東畑建築事務所「清林文庫」より〈その15〉
「摂津大坂図鑑綱目大成」が刊行された宝永年間、地図出版は転機を迎えていました。江戸・京都と並んで地図出版が盛んだった大坂では、大絵図などの名で呼ばれる市街地図が元禄期に一定の完成度を達成。後発の地図が注目されるためには、先行作にはない何かを加えなければなりませんでした。時代の空気が掲載図の題名にもうかがえます。「図鑑」とは図版を用いた解説書、「綱目」は概要と細目、大成は蒐集し構築すること。「摂津大坂図鑑綱目大成」は、題名にふさわしく武家屋敷群、蔵屋敷群を網羅し、寺院群についてはひとつひとつの寺の宗派まで区別できる凡例付き。
奥付欄(写真参照)に、宗派の別まで明記した一文を併記してあることからも情報量による差別化の意図が汲みとれます。掲載図の左下には住吉大社の境内も描かれました。正確な位置関係に基づくなら、この図に住吉大社を載せる場所はありません。あえて挿入したのは、大名所の住吉大社が載っている絵図として売り出したい版元の意向の反映でしょう。この図は正徳5年(1715)に再版されており、苦心の甲斐はあったようです。絵師の名は長谷川圖書(はせがわずしょ)。版元は万屋彦太郎でした。
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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。
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★過去の古地図ギャラリー公開作品
第14回(2022年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より久野恒倫「嘉永改正堺大絵図」
②鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「私たちの和田山町」
第13回(2022年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」
第12回(2022年7月)
①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」
第11回(2022年5月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」
第10回(2022年3月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」
第9回(2022年1月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」
②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」
第8回(2021年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」
②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」
第7回(2021年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」
②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」
第6回(2021年7月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」
②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」
第5回(2021年5月)
①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ
②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」
③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」
第4回(2021年3月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」
②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」
④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」
第3回(2021年1月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」
②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」
③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」
第2回(2020年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」
②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」
③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」
第1回(2020年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」
②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」
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●電子書籍のお知らせ
本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)
【『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)
思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。
『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)
梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。
*上記2冊は各電子書籍ストアでお求めください
*下記8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます
『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)
大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。
『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)
姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。
『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)
記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。
『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)
著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。
『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)
井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。
『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)
江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。
『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)
名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。
『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)
名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。
※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧
『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)
『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)
『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)
『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)
『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)
『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)