担当/中島 淳
9月12日(土)に迫ったナカノシマ大学9月講座「本を作って売ろう 実践的! 出版講座」の講師、北尾修一さん(編集者・百万年書房代表)のことを知ったのは昨年3月。たまたま観ていた NHKニュース「おはよう日本」で、「新しい出版の形“ZINE”が若い世代の心を捉えている」みたいな内容だった。

2025年3月24日(月)NHKニュース「おはよう日本」より
ニュースではZINEを売り場の目玉として積極的に品揃えしている[有隣堂グラングリーン大阪店]を紹介するほか、ビルの屋上などで開かれている「ZINEフェア」の熱気を取材していた。
そのフェアに足繁く通い、新しい書き手を発掘しては本にして実績を挙げている編集者兼出版社の社長として、北尾修一さんをクローズアップしていた。
面白そうな内容だったので急いで録画し、何かの機会でお目にかかりたいなと思っていたが……「自分がやっている研究会に来てもらったらええんや」と思い、有志による出版の研究会をお江戸でやっていたので、百万年書房のHPでアドレスを調べ「東京でこんな研究会をやっていますが、よろしかったらお話しいただけますか?」とメールを送ったら、なんと6分後に快諾の返信が来た。早い!
研究会は彼自身の歯切れの良い「ZINEばなし」で大盛り上がり。その後の懇親会で、「大阪で『ナカノシマ大学』という市民講座をやっていますが、来阪のご予定があればぜひご登壇を」とお願いしたら、
「大阪はブックフェアや文学フリマでよく行っているので、ぜひお声がけください」とこれまたご快諾いただいて、12日(土)当日を迎えるに至っている。
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9月12日(土)は、百万年書房の本も含めて販売する予定ですが、白瀬世奈の本は2刷も完売して10,000部を突破したそうで、3刷は間に合わず。残念(涙)
ナカノシマ大学を前に、北尾さんの著書や作った本を読んでいると、この人の持論である「出版はもっと自由なものだ」を体現していて、興味が尽きない。
『いつもより具体的な本づくりの話を。』(イースト・プレス)はナカノシマ大学当日にも会場で販売するので、ぜひ手に取ってページをめくり、この人の本づくりのスタンスに触れてほしい。
結構分厚い本だが、フォントが読みやすく行間もゆったりしている上に、新しい発見がてんこ盛りでかつ「腑に落ちる」文章なので、読み進むのが楽しみな1冊である。
とくにグッと刺さったのは、第2章(企画を立てる)の冒頭「企画と『企画っぽいもの』」の項。
百万年書房を立ち上げてから、私は企画を考えたことがありません。
はじめましての著者に、企画提案の手紙を書いたことも、数えるほど。
そもそも仕事とプライベートの境目を見失っているので、普通に生活している中で、目の前をいろんな人や情報が通り過ぎるのを、マンボウみたいに揺れながらぼーっと眺めていて、「あ」と感じたものをつかまえて「これ本にしよう」と思い、粛々と本にするだけです。
ひとりなので編集会議もありませんし、企画書を書くこともほとんどありません。
「もっと背伸びをして、日々の生活では遭遇しない人や情報を貪欲に吸収せなあかん」と思う人もいるかもしれませんが、無理するとなんか疲れちゃうんです。今のところ百万年書房は私ひとりなので、私が本をつくるのにイヤになってしまうと困るのです。
それに、そもそも自分のキャパシティなんてたかが知れているので、少しくらい背伸びをしたところで大した企画が生まれるわけでもない、と思っています。
(北尾修一『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』より)
さらに第9章(つくった本を育てる)の「編集者と消火活動」にはこんなことが書かれていて、目から鱗が落ちた。本が売れているとたまにトラブルを抱えることもある。そんな時にどうするかという一文だ。
言い方を変えると、いつどこで問題が起きてもすぐ現場に駆けつけられるように、いかに自分をひまな状態に保つかが、編集者(と消防士)が普段心がけるべきことです。そう考えると、近頃の編集者はみんな忙しすぎ、本をつくりすぎ、たくさん企画を抱えすぎです。そんな生活だと、いざという時に本と著者を守れないのでは……?と思ってしまいます。
編集者という仕事をこのように捉える人は昨今では珍しいかもしれませんが、でも原則的に考えるとそうなんです。いかに自分をひまにさせるかに知恵を絞る。それが自分の心身の健康だけでなく、良い本づくり、さらには天下泰平につながるのです。
(同)
あれもこれもやってて忙しいわ……なんて言うとるからいつまで経ってもあかん、という戒めとして読んだ。

タイトルはポップだが「好きなことして生きていく」ための方策はお金の管理も含めて緻密なのがエラい
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そして実際に北尾さんが編集した、二人の女性が書いた百万年書房の本。白瀬世奈『良い子でいたら幸せになれるんじゃなかったのかよ』と、平城さやか『ふつうに働けないからさ、好きなことして生きています。』
細かい感想はまたどこかで書きたいけど、両方とも今の時代の「リアル」がありありと浮かび上がってくる内容で、著者に共感して感情移入してしまい、夢中で読み終えてしまった。この二人はそれぞれ自費出版の本を出していて、それを北尾さんが見つけて、著書に結実されたのだろう。
いずれの本も、著者がブックデザインにまで関わっていることにも注目したい。
二人とも、SNSで「バズってる」ようなインフルエンサーでもなんでもない。大手出版社の編集会議では「知名度」というモノサシで真っ先に外される書き手だろう。東京の、何冊も本を出している知り合いの書き手が話していたことを思い出した。
「出版社の編集会議では、『その人のフォロワー数は何人? 本にするなら最低15万はほしいよね』みたいなことを必ず言われると聞きました」

お忙しいのをお構いなしに世田谷区の百万年書房代表にお邪魔したら、ええポーズを取ってくださった。感謝
他人がつくった指標ではなく、自分の肌感覚で「この人の原稿はおもしろいかどうか」。
北尾さんはそんな編集者としての「あたりまえ」をあらためて私たちに問うてくる。
当日が本当に楽しみであるが、質問が多すぎるだろうから、時間通りに終わるだろうか?
あと10人で締め切りますので、この機会をお見逃しなく→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20260912
























