2012年11月 のアーカイブ

本の「届け方」〜ナカノシマ大学 大阪天満宮ツアーを終えて

2012年11月26日 月曜日

大阪天満宮で行われた、ナカノシマ大学のツアー。

昨日はナカノシマ大学11月講座「大阪の神さん仏さんを歩く〔神さん編〕」が行われた。大阪天満宮を舞台に、天神祭や大阪天満宮研究のエキスパート中のエキスパートである高島幸次先生の講義と、「七不思議ツアー」と題した境内案内ツアーがセットになっている講座で、これはなかなか豪華なツアーである。月刊島民の読者もさすがにそこのところはよく理解しておられ、受講の申し込みが始まるやあっという間に定員に達し、急きょ定員を増やすほどの人気。3連休の最終日ということで歩留まりを心配したが(料金後払いのため、申し込んでも来ない人がけっこういる)、それも杞憂。大盛況のうちに終了した。

というような手前味噌な話はほどほどにして、ちょっと面白い現象があって、現在の出版界の状況をよく表している気がしたので、まとめてみることにする。

今回の講座では、いつもと違って料金を2パターン設定した。受講料は2,000円だが、講座名からわかるように『大阪の神さん仏さん』のスピンオフ企画でもあるので、本が売れるようにと「本付きチケット」というのを用意したのだ。本付きチケットは2,500円。本が税抜き1,500円なので、受講料が1,000円、要するに通常の半額になるような形だ。販売担当の青木や高島先生と相談していると、「きっと本を買って読んで来る人が多いだろう」という声が強く、それならばとまだ買っていない人の背中を押すために考えたのだった。

ナカノシマ大学のメインの告知媒体である月刊島民でも、これまで何度も本の紹介はしている。この本付きチケットも、少しでも多くの人に買ってもらおうという、あくまでも「新しい読者の開拓」的な意味合いの強いものだった。ところが、申し込みが始まってみると、この予想は見事に外れた。

販売用の本をどれくらい持って行けばよいか読めるように、申し込み時にチケットのみか、本付きチケットかをチェックしてもらうようにしたのだが、申し込んだ人のうち約7割が本付きチケットを希望したのである。

もちろんこれは嬉しい誤算。中にはチケットのみで申し込んでいたが、当日になって「やっぱり本がほしい」という人もけっこういた。『大阪の神さん仏さん』は、その元になった高島先生と釈徹宗先生との対談講座時からのリピーターも多かった。だから、今回の参加者もそうした「常連さん」ばかりで、本もそうたくさん売れないのではと思っていたので、これは本当に嬉しかった。この日の売り上げはなんと40冊!

熱心にガイドの話を聞く受講生たち。やっぱり「ライブ」は強い。

…と、ここで話を終えてしまうと、「ふーん。良かったね」というだけの話である。実は肝心なのはこの先で、「これからの本の売り方」について、とても学ぶことが多いと感じたのだ。

というのも、よく思い出してみると、ナカノシマ大学受講生というのはほぼイコールで「月刊島民読者」である。であれば、今回我々の予想に反して本付きチケットを買って下さったのも、月刊島民の読者であり、ナカノシマ大学のファンの人たちである。これをどう捉えるか? つまり、それだけ月刊島民やナカノシマ大学がやっていることに興味関心を示し、面白いと感じてくれている人たち、もっと言えば140Bのファンであろう人たちでも、まだ本を買っていなかった人が大勢いたということになる。これってけっこう大事なことを含んでいるのではないだろうか?

当然、値段が安いというメリットは大きいだろう。講座が聴けて、ツアーに参加できて、本も付いてきて2,500円なら、「むっちゃお得やんか」である。実際、参加して下さった某自治体職員の方と話していたところ、「やっぱり安いですよ。もちろん本はもう持ってますから買うのは2冊目です。知り合いの方にあげようと思って」とのこと。だから料金的な「値頃感」みたいなものが強く作用したことも考えられる。

ただ、やっているこちらとしては、「こういう風な機会を作っていかないと、今や本はなかなか売れない」という実感もまたそれ以上に強い。「面白い本ですよ」ということを、あの手この手で具体的にわかりやすく提示していかないと、振り向いてはくれない。書店に並べてもらっているだけでは思うように売れないことは、出版に関わる方なら誰でも痛感しているところだろう。念のために言っておくが、なにも「書店があかん」ということではない。売れないとかなんとか言っているばかりではなく、工夫の余地はいくらでもありますよ、ということ。今回のような講座だって、当然、書店さんとの連携も考えているところだ。

高島幸次先生も、ガイドに加わって下さった。

シビアな状況と言えば確かにそうだが、逆に言えば、〔きっかけ〕さえつくってあげれば、どんどん売り伸ばせるチャンスがあるとも考えられる。そしてその〔きっかけ〕となるイベントを、また次の出版へとつなげていくわけだ。

ナカノシマ大学以外でも、講演会などに出張販売へ行くと、「あ、こんな本出てたのね」と言って買って下さる人も多い。ありがたいことではあるのだが、その様子が「買おうと思ってた」というより、純粋に「知らなかったわ」という印象で、講演会に参加するようなタイプの人であっても、講演者の書いた本についてよく知っているわけではないのだなと思ったりした。

こんな風に「読者に出会う」ことの難しさと大切さを知ると、良い本を作ることと同時に、それを読者に(比喩的な意味でなく)「届ける」ところまでが出版社の仕事なのだとあらためて感じる。そして、小さな出版社というのはそういう動きがしやすいのでは、とも思うのだった。

 

【追記あり】『大阪の神さん仏さん』書評まとめ!

2012年11月7日 水曜日


先日、朝日新聞の書評欄で取り上げてもらって以来、たくさんの注文をいただいている『大阪の神さん仏さん』。書評を書いてくれた中島岳志さんもびっくりしているように、実は大阪は知られざる濃密な歴史を持つ宗教都市でした。これまでに大きく取り上げていただいた書評でも、やはり「大阪にこんなお寺や神社があったのか」と驚く声が多いです。というわけで、書評をまとめてみました。 ※クリックしていくと、写真が大きくなって記事を読むことができます。

こちらは9月26日の毎日新聞の夕刊。「ワイド」というだけあって、なんといってもデカい!! 本をきっちりと読んで、釈先生・高島先生それぞれに交互にインタビュー。写真も2人揃って大阪天満宮の境内で撮っていただき、とても丁寧な誌面となっています。記者の松井さん、どうもありがとうございます。

 

続いてこちらは『Meets Regional』の2012年11月号(発売は10月1日でした)。書評家の永江朗さんの長寿連載「本の向こう側」にて、メインで扱ってくださいました。「大阪も京都に負けず劣らずの宗教都市なのでびっくりした。知らなかった」と、やはり永江さんも驚きの声。「神社については髙島が、お寺については釈が。それぞれ相手を聞き手にレクチャーするという趣向である。わかりやすくておもしろい」とお誉めの言葉もいただいております。

そして最後は一番最近の朝日新聞の書評。評者が大阪生まれの中島岳志さんというのも嬉しいところです。「大阪人の気質に宗教的基層を見出す議論は、ユニークかつスリリング。目から鱗の一冊だ」と。博覧強記の中島さんの目からウロコを落とすというのは、なかなかできることではありません。それくらい、新鮮な驚きをもって読んでくださったと思うとまた嬉しくなりますね。

(追加!)このブログをアップしたすぐ後に、今度は「中外日報」で書評を掲載していただきました。釈先生曰く「宗教業界紙の雄」に取り上げていただけるとは光栄です! 硬派な書き方なのも専門紙らしい感じがしますね。

書評と一緒にぜひ『大阪の神さん仏さん』を楽しんで読んでください!

 

『辺境ラジオ』トーク&サイン会を開催しました!

2012年11月1日 木曜日

発売して10日で重版が決定した、大人気の『辺境ラジオ』のトーク&サイン会が、10月31日(水)スタンダードブックストア@心斎橋にて開催されました。大勢のファンでかなりの盛り上がりを見せたイベントの模様を写真でご紹介していきます。残念ながら参加できなかったという方、当日の熱い空気を少しでも感じてみて下さい!

 

お店が大々的にプッシュして下さったようで、なんと250名近くのお申し込みがあったそう。開場してすぐに、お客さんが詰めかけてきます。
 

 

ちなみに、店内へと向かう階段はこんな状態。早くから並んでくださってありがとうございます。

 

内田樹先生、名越康文先生、西靖アナウンサーが登場して、いよいよトークがスタート。書店でのイベントというのはたくさんあると思いますが、コンサートみたいにスクリーンでリアルタイム中継するって、なかなかないのでは!?

 

3人の後ろから見るとこんな感じ。すごい人です!
 

 

会場の後ろからの風景。立ち見の方もかなりいらっしゃいました。スクリーンがあって良かったです。

 

トークが終了すると、3人揃ってお見送り。ほんとうに読者の人たちにやさしいみなさんです。

 

そして、サイン会。申し込み先着順で、50名様限定のサイン会となりました。この3人のサインが揃うというのは、かなりレアですよ。サインをもらえなかったという方、ごめんなさい!
 

 

というわけで、大盛況の内に終了。内田先生、名越先生、西さん、そしてお越しいただいた大勢のみなさん、どうもありがとうございました!