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拝啓・古地図サロンから33

2022年10月20日 木曜日

2022年9月30日・本渡章より

【今回の見出し】

■9月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第13回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その13〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:9月30日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。サロン開催から日が経ち、すっかり秋になりました。ブログの更新、ぼちぼち進めてまいります、

いつもは大阪の古地図を中心にご覧いただいていますが、今回はそれに加えて古い世界地図や戦争写真集、京都・奈良・神戸の各観光案内、全国版の旅行地図なども並べてみました。いつもとちょっと違う雰囲気になったかと思います。それぞれ時代を感じさせますが、婦人雑誌付録の旅行地図に載っている「旅の心得」メモが特に目を惹きました。男女の役割分担の話なのですが、かつ「~すべきでしょう」という口調で語られる項目のほとんどが女性向け。この数十年の意識の変化をあらためて思い起こさせる内容でした。昭和30年頃の婦人雑誌の傾向がわかります。そういう目で、大正から昭和にかけての地図に記された観光案内の文言を見なおすと、おおむね男性の読み手を意識した内容だったと気づきます。地図は作り手も読み手も男性という時代が長かったのですね。「今だと、こういう表現はペケ」という声が多く出ました。地図を作る現場は今どうなっているのか、その種の情報は少ないですが、そちらの方がちょっと気になります。

大阪の地図では昭和21年の「大阪府管内図」が謎を残しました。地図の前の持ち主が手描きで地図中の数か所にマーキングしてあり、その意味をみなさんに推理してもらったのですが、正解らしきものは見つからず。緑地と何か関係があるかもしれないと思われましたが、決め手に欠けました。サロンでは、いろいろ推理を出し合うことに楽しみと意義がある、ということですね。

世界地図(1953年)は、今はない国名、変わってしまった国境線などがかなりあり、やはりこの数十年の変遷を感じました。

こんな感じで古地図を囲んで、参加者のみなさんと歓談しております。新規のご参加、いつでも歓迎。初めて古地図を見るという方もお気軽にお越しください。というわけで、次回もまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

◉今回のサロンで展示した古地図
地図(原図)
花の吉野山 昭和初期 サクラ花壇
大阪京都遊覧御案内 昭和10年代 京阪電車
全国旅行案内地図 昭和30年頃 婦人倶楽部新年号付録
大演習枢要地図 明治31年(1898) 中村鐘美堂
大阪府管内図 昭和21年(1946)和楽路屋
新世界地図 昭和28年(1953) 京都新聞
◆写真集
旅順記念写真帖 大正16年(1927)東京堂
◆観光案内
鴨川おどり 昭和10年代 大阪毎日新聞社
神戸観光 昭和20年代 神戸国際観光協会
阪神地方 昭和15年(1940) 日本旅行協会

●サロンレポート追記

前回のサロンで紹介した絵師・井沢元晴が残した戦災画スケッチの記事が、神戸新聞9月15日付夕刊の一面に載りました。本日のサロン参加者のお一人が掲載紙を持参され、みなさんで回覧。井沢元晴の遺族で神戸新聞の取材を受けた足立さんも来場しておられ、話が盛り上がりました。足立さんは、井沢元晴33回忌に合わせた戦災画スケッチ展を神戸の安養寺で開催されたとのこと(写真参照)。神戸新聞の記事の反響が大きく、安養寺での展示を150人近い方がご覧になったそうです。井沢元晴は記事にも紹介されたとおり、日本各地を訪ね鳥観図を描いて昭和の伊能忠敬と呼ばれた絵師。今後の再評価が期待されます。

 

次回は2022年11月25日(金)午後3~5時開催予定

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは基本、奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

●「大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで一年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

第1回 大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回 続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回 桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回 花も緑もある大阪【前編・後編】
第5回 場所が仕事をつくった【前編・後編】
第6回 街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第7回 古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第8回 語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第9回 人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】

●電子書籍のお知らせ

これまで電子書籍の案内をしてきませんでしたが、現時点で電子化された本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)を順不同でご紹介します。記載の刊行年はリアル書籍のデータです。

【次の2冊は各電子書籍ストアでお求めください】

『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)

思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。

『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)

梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。

【次の8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます】

『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。

『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。

『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)

記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。

『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)

著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。

『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)

井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。

『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)

江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。

『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)

名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。

『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)

名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。

※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧

『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)

『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)

『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)

『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)

『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)

『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)

●東畑建築事務所にて「プトレマイオス世界地図」公開

当ブログでの連載「古地図ギャラリー」でおなじみの世界的コレクション「清林文庫」を所蔵する東畑建築事務所さんが、10月29日(土)・30日(日)、日本最大の建築イベント「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2022に参加大阪オフィス(中央区)で秘蔵の「プトレマイオス世界地図」を特別公開予定。プトレマイオス世界地図の他にも約20点の西洋・日本の古地図展示があります。この貴重な機会をお見逃しなく。

●大阪府立中之島図書館で京阪電車展

10月3日(月)~29日(土)中之島図書館3階特別展示室にて「路線図で見る京阪電車の半世紀」展を開催中。企画・構成を本渡章が担当しました。展示の中心は明治43年(1910)の創業から昭和38年(1963)の淀屋橋駅開設までのおよそ半世紀にわたる京阪電車の変遷を物語る路線図と沿線観光案内図。奈良、和歌山、琵琶湖にまで路線が延びた拡大期、日本一大菊人形、ひらパー誕生の時代など、京阪電車の足跡を一望。その他、記念絵葉書、記念乗車券、PR誌、記念冊子、さらに電車模型、電車ヘッドマーク、京阪電車が募集した電車の児童画などもご覧になれます。

 

●動画古地図でたどる大阪の歴史」続編、 現在作成中(制作:大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。
7月16日(土)「此花区・港区・大正区」をテーマにリアル講座(OCU主催)を開催。編集後、動画として公開を予定しています。

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

10月24日(月)、11月21日(月)午前10~12時
「大阪古地図むかし案内 ~島之内から道頓堀へ、新旧ミナミの変遷」(教室講座と現地街歩き)
12月16日(金)午後1時~2時30分「古地図で訪ねる大阪の60年代と万博」

 

|古地図ギャラリー|

【淀川勝竜寺城跡全図】嘉永5年写・久野恒倫

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その13〉

『淀川勝竜寺城跡全図』に描かれた勝竜寺城は、長岡京市の史跡です。有名になったのは戦国時代。本能寺の変の後、中国から羽柴秀吉が大返りをし、天下分け目の戦いといわれた山崎の合戦で明智光秀が討たれます。この時、光秀が拠点としたのが勝竜寺城でした。平地の小城で、守るには不向きだったため、実際の戦いは城外で展開。軍勢の人数で劣勢に立たされた光秀は、山崎の狭隘な地勢を生かし、秀吉に数の優位を発揮させない作戦をとりました。それでも及ばず敗れたのは、時の運です。

勝竜寺城は石垣と天守を持ち、周囲には空堀をめぐらせて、安土城に先立つ近世城郭のモデル的存在とされています。光秀の娘の玉(後の細川ガラシャ)が細川家に輿入れした城としても歴史に名を残しました。図の題名に「淀川」の2文字が入っているのは、淀川支流の合流地点に建っているからです。当地は西国街道の筋道にもあたり、交通の要所でもありました。

城郭図は古地図のジャンルのひとつで、城郭の愛好家には人気があります。図は嘉永5年(1859)に原本から写して作成されたもの。筆写した久野恒倫のプロフィルは不明ですが、幕末の不穏な空気を背景に、城郭と合戦の歴史を振り返ろうとしたのでしょうか。

図の淀川の畔に淀城も見えます。淀君もまた戦国の世に名を残した一人。よく見ると、川筋の流れなど地形が現在とは変わっています。勝竜寺城も実際よりは大きく描かれているようです。城郭図には物語がつきもの。「淀川勝竜寺城跡全図」は明智光秀、細川ガラシャ、淀君の数奇な生涯を思い起こさせ、歴史のイメージをかきたてる魅力を持っています。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

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過去の古地図ギャラリー公開作品

第12回(2022年7月)

①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」

 

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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10/14(金)〜18(火)「天神さんの古本まつり」に参加しています

2022年10月13日 木曜日

担当/中島 淳

大阪天満宮の境内で毎年10月開催されている「天神さんの古本まつり」(大阪古書店研究会主催 http://osaka-koshoken.com/?cat=6 )に、主催者さんからお声がけいただき、140Bも参加させていただきます。
天神さんの古本まつり

出店は、同研究会の会員6店と、ゲスト参加店の8店、そして特別参加1店の計15店。そこに、古書店でもない地元出版社の弊社が参加できるのか。そのココロはこの6月に発刊した松井宏員(ひろかず)さんの著書『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』が大いに関係しています。

この本を読まれた方には説明不要ですが、念のためにおさらいを。「盛り場」でも「メガターミナル」でも「大オフィス街」でもある大阪市北区内には、実は古代から近・現代に至るまでの、「歴史の現場」と言える場所が各地に点在しています。その60箇所を松井さんが街案内人の西俣稔さんと訪ね、一つひとつを掘り起こしながら大阪の「成り立ち」を知る、というもの。

「現場」は「天満の天神さん」からはじまって、中之島の西端、『泥の河』の文学碑まで……と超バラエティに富んでいますが、「天満の天神さん」で古本市を開催していた大阪古書店研究会の方々がこの本をいたく気に入っていただき、「天神さんの古本市」に出店を、とお声がけいただきました。

140Bの本

先ほど、タクシーに乗せて会場に搬入しました

お言葉に甘えまして、当日は『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』だけでなく、大阪天満宮にちなんだ本であり『上方落語史観』『大阪の神さん仏さん』『大阪名所図解』をはじめ、本渡章さんの「大阪の古地図」シリーズ、新之介さんの『ぶらり大阪「高低差」地形さんぽ』、江弘毅『いっとかなあかん店 大阪』などを販売します。

このラインアップに加え、いよいよ10/29(土)・30(日)に迫ったイケフェス大阪(OPEN HOUSE OSAKA 2022)のガイドブックや、髙岡伸一・倉方俊輔さんたちが書かれた「生きた建築 大阪」のシリーズも販売します。本部ブースまでお越しください。

神さんの古本まつり会場

明日からに備える各ブース。当日は人がぎっしりかと……

10/16(日)の13時からは、『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』の本文にも度々登場する、髙島幸次先生の講演「菅原道真公の鬼退治」もあります。髙島先生は大阪天満宮文化研究所の研究員で天神寄席のホスト兼プロデューサーでもあるので、サービス精神旺盛というか、「ためになる」だけではなくしっかりと楽しませてくれるので、ぜひご期待ください。

中島は10/15(土)にブースにいます。とにかく目移りするぐらいの本、本、本……なので、主催者側はみなさんが重たい思いをせずに済むように「手荷物一時預かり」や「宅配便荷造り」コーナーも用意しているそうです。ぜひ週末は大阪天満宮へ!


「第25回 天神さんの古本まつり」

10/14(金)〜18(火) 大阪天満宮境内(地下鉄南森町駅・JR大阪天満宮駅から徒歩5分)
10:00〜17:00(18日は〜16:00)

参加店

  1. 〈大阪古書研究会会員店〉
    ●キトラ文庫(奈良県生駒市)
    ●厚生書店(中央区)
    ●古書からすうり(三重県名張市)
    ●古書肆 梁山泊(北区)
    ●杉本梁江堂 天神橋店(北区)
    ●寸心堂書店(交野市)
  2. 〈ゲスト参加店〉
    ●郁書店(住之江区)
    ●古書ダンデライオン(京都市中京区)
    ●小町書店(東淀川区)
    ●汎書店(北区)
    ●フォルモサ書院(北区)
    ●古本屋ぽらん(三重県伊勢市)
    ●光国屋書店(豊中市)
    ●古本屋ワールドエンズ・ガーデン(神戸市灘区)
  3. 〈特別参加店〉
    ●豊能障害者労働センター(箕面市)

髙島幸次氏 特別講演
「菅原道真公の鬼退治」
10/16(日)12時半開場、13時開演
菅原道真公の鬼退治

10/19(水)ナカノシマ大学「村野藤吾」のこと

2022年10月6日 木曜日

講座担当/中島 淳

まだ「昭和」だった頃のこと。
筆者は当時いた月刊誌のLmagazineで梅田ターミナル特集の取材をしていた。乗り換えが大変な6つの鉄道駅(JR・阪急・阪神と地下鉄が3つ)を結ぶ地下街のことが分からんかったら、梅田は歩けない。地下街の事務所にお邪魔して精巧な地図をいただき、ひと通り説明を聞いて、「梅田地下センター(取材時はもう「ホワイティうめだ」だったが)」が誕生した昭和38年(1963)11月の新聞記事などを見せてもらった。

梅田吸気塔

梅田吸気塔は観る場所でシルエットがぜんぜん変わる。最もグラマラスに見えるのは御堂筋西側、阪神百貨店あたりからで、手塚治虫も『ブラック・ジャック』でこれに近いアングルから描いている

ウメチカは開業初日から1日100万人が通行するような密集空間だったという。それじゃ換気も大変やろな……と思っていたら、「地下街中心の地上部分に大きな塔が何本か建っているでしょ? あの吸気塔が新鮮な空気を地下街に入れてくれるんです」と担当の人が説明してくれた。吸気塔かぁ……その建物には見覚えがあった。というより、初めて梅田に来た日から目に焼き付いていた(手塚治虫の『ブラック・ジャック』にも登場 http://mushimap.com/umedakyukito/ )。でも「吸気塔」って、いわば「変電所」とか「浄水場」のような素っ気ないもののはずなのに、アレはかなりユニークですね、と言ったら担当者さん曰く「ムラノトウゴの建築やからね」「は?」。駆け出しの編集者(にしても不勉強ですな)には初めて聞く名前だった。

輸出繊維会館の階段

輸出繊維会館の階段。髙岡伸一先生は村野藤吾の階段を「エロい」と評した。むべなるかな。髙岡伸一・倉方俊輔ほか『生きた建築 大阪』(140B)より ©西岡潔

図書館で調べたら、村野藤吾(1891〜1984)という建築家は、だれもが知る建物を戦前から戦後にかけて次々と設計し、昭和50年代まで存命していた、ということが分かった。心斎橋のそごう大阪店(1935・現存せず)、心斎橋筋の喫茶プランタン(1956・現存せず)、難波の新歌舞伎座(1958・現存せず)、備後町の輸出繊維会館(1960)、京都蹴上のウェスティン都ホテル(1960)、東京・日比谷の日生劇場(1963)などの有名どころはもとより、広島の世界平和記念聖堂(1954)や山口県の宇部市渡辺翁記念会館(1937)は重要文化財になっている。

大成閣

心斎橋の、大丸とパルコの間を東に行くと、紅い店名サインと印象的なアルミのファサードの[大成閣]が見えてくる。ミナミでは半世紀以上おなじみの景色だ

建物公開イベントとしてはここ数年で日本最大級のスケールに育ち、全国からファンが集まるだけでなく、海外にまでその名が知られるようになった生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪=OPEN HOUSE OSAKA)が、ここまでのものになった大きな理由の一つは、やはり村野作品の力ではないかと多くの人が思うことだろう。前述の建物に加え、心斎橋の中国料理店[大成閣](1964)や東心斎橋の浪花組本社ビル(同)なども毎年参加しているが、階段などの細部に至るまで「華」や「艶」が感じられ、素人でも村野ファンになってしまう。

半世紀の時間差を飛び越えたもの

庚申(こうしん)街道沿いに建つ教会塔

南北に走る庚申(こうしん)街道沿いに建つ教会塔。戦禍を超えて信者や園児たちを見守り、地元のかけがえのないシンボルとなっている

10/29(土)・30(日)のイケフェス大阪2022には、その村野藤吾が設計した阿倍野区の「日本基督教団南大阪教会」が新たに参加する。

教会塔と旧礼拝堂の竣工は94年前の昭和3年(1928)。隣には同じ村野の手で、教会付属の「南大阪幼稚園」が昭和5年(1930)に誕生した。創立したての南大阪幼稚園で学んだ園児に、詩人で芥川賞作家の阪田寛夫(1925〜2005)がいる。阪田の名前を知らない人でも彼が作詞した童謡「サッちゃん」は、知らない人のほうが少ない名曲だ。歌は阪田の幼稚園時代の女友達をモデルにしたものだという。

「サッちゃん」の歌碑

教会敷地の南端に建つ「サッちゃん」の歌碑。村野藤吾は教会の建築委員だった阪田素夫だけでなく、息子の阪田寛夫とも懇意にしていて、南大阪教会の周年本には2人の写真が掲載されている


礼拝堂

昭和56年(1981)竣工の新しい礼拝堂。竣工時に村野藤吾は90歳だった。イケフェス大阪2022では、日曜の礼拝時間以外は自由に見学できるという

今回のイケフェス大阪2022に参加するのは「昭和初期に竣工した南大阪教会の教会塔」だけではない。昭和56年(1981)に建て替えられた礼拝堂も参加するが、こちらも同じ村野藤吾の設計である。ひとりの建築家が30代で設計した建物を改築するにあたり、50年以上の時を超えて80代で新たに設計し直すとは、日本どころか世界でも例がないのではなかろうか。

旧村野・森建築事務所

南大阪教会から徒歩15分の場所にある、かつての村野・森建築事務所(1966年竣工)。現在は[友安製作所Cafe&Bar阿倍野]として大人気。阿倍野は村野の「地元」だった https://tomoyasucafe.com/abeno/

それは村野藤吾という「稀有な才能に溢れた建築家」の努力とパッションだけでは説明できない。彼を支えた南大阪教会の人びとと、阿倍野という地域の力があってこその話なのではないかと思う。
大正末期から昭和、そして現代につながる南大阪教会の壮大な百年物語を、教会伝道師である関谷共美さんがご紹介します。ゲストには、建築家でイケフェス大阪の「顔」である実行委員会事務局長の髙岡伸一先生を招き、村野建築の名作も、思い入れたっぷりにご紹介します。

『アルキメトロ』2022秋号

OsakaMetroのPR誌『アルキメトロ』2022秋号。特集は「大阪ヒーロー推しの旅」

村野藤吾と南大阪教会のことは、OsakaMetroのPR誌『アルキメトロ』2022秋号(地下鉄全駅と大阪シティバス主要ターミナル、公共施設、飲食店・物販店で配布中)にも拙文を書いているので、よろしかったらお目通しください(当日は全員に配布します)。

大阪府立中之島図書館

大阪府立中之島図書館。右側、日の当たっている部分の3階が会場の多目的スペース

会場はおなじみ、大阪府立中之島図書館3階多目的ホール。明治37年(1904)竣工の重要文化財で村野藤吾の夕べとは、なかなかお誂え向きではありませんか。お楽しみに!

ナカノシマ大学「村野藤吾と、ふたつの南大阪教会」お申し込みは下記のサイトへ

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20221019

10月8日・9日イベント出展のお知らせ

2022年10月4日 火曜日

10月8日・9日の京都府立京都学・歴彩館さんでの「下鴨中通りブックフェア2022」に出展致します。

 

 

 

 

 

 

 

昨年はお客として楽しませてもらったイベントですが今年はまさかのお声がけで出展が実現し、みなさまとお会い出来ること楽しみで仕方ありません。

京都での大きなブックフェアは初参加です。せっかくなので在庫僅少の蔵出し『京都店特撰』『せやし だし巻 京そだち』、それに『京都観光生活』『京都喰らい』『いっとかなあかん店 京都』の京都本中心に140Bの在庫ほぼ全点LINE UPをご用意する予定です。

 

 

 

 

 

さらに10月11日発売予定の『OPEN HOUSE OSAKA 2022』もイケフェス大阪シリーズと一緒に先行発売致します。

会場に隣接する「京都府立植物園」や賀茂川も散歩には最高のロケーションです、ぜひ秋の京都に遊びに来てください。(青木)

 

 

 

 

 

(会場の画像は昨年の様子です)

松井宏員『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』重版となりました!

2022年8月29日 月曜日

編集担当/中島 淳

おかげさまで、2022年6月上旬の発売からまだ3カ月も経っていませんが、「この本ええで」といろんな方が広めていただき、めでたく重版となりました。

お買い上げいただいた読者のみなさま、この本を平台の前に出してど〜んと販売していただいた書店の方々、このブログを見て「そんなに人気なら1冊買おうか(笑)」と思っていただいたあなたに、心から感謝申し上げます。

あらためてこの本のことをご紹介すると……
著者である毎日新聞大阪本社夕刊編集長・松井宏員(ひろかず)さんが2005年の4月から、なんと17年以上にわたって「大阪版」の朝刊に連載を続けている「わが町にも歴史あり〜知られざる大阪」の原稿がベースになっています。

「現役記者による大阪の街についての連載」というと、「文化度が低い」みたいな上から目線になったり、難解な熟語をたくさん使っていたり、かと思えば逆に「大阪=ベタベタ」みたいな表現のオンパレードであったり……ということを想像されるかもしれませんが、ぜんぜん違っていました。松井さんの原稿は、綿密な取材を経た確かな内容を短くわかりやすい文章で表現していて、「手練れで読む人を飽きさせない」というプロの芸。そして何より、「普通の、弱い人間のスタンスを大事にする」というものです。

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本書p18〜23に掲載された「天満堀川跡をたどる」より。大川からの分岐点にあった太平橋(たいへいばし)の親柱が置かれた北村商店の前で松井宏員さん(2020年7月15日撮影・大阪市北区菅原町)

どうもコロナになってから、経団連会長アバターのような「経済を回さないと」的な言葉遣いをする人があちこちで増えました。そんな中でも松井さんの「弱い人間目線」スタンスは不変で、この道35年、百戦錬磨のスター記者になっても取材対象に対しては「いつも真面目で、労を惜しまない」人です。そのくせ酒飲みでちょっとヘタレな自分の弱さも原稿には隠さず書く。そういう松井さんの人柄にファンが増え、この本が支持されたのではないかと思っています。

著者も編集者も「意外だった」表紙のこと

松井さんの文章が醸し出す「“大文字”ではない、普通のひとびとが紡いできた大阪の歴史」をどうやって本というパッケージに表現するか……ということであれこれ考えた結果、画家・イラストレーターの須飼秀和(すがい・ひでかず)さんに表紙絵を描いてもらうことにしました。

須飼さんは八尾市観光協会の『Yaomania』(2014〜17年)、明石観光協会の『ひるあみ』(2019年〜)の表紙を描いてくれた人で、美しい色彩の中に「自然と街、人間」が見事に調和していて、かつ「なつかしい」気持ちを抱かせてくれる稀有な才能の持ち主。田舎道に置かれた自動販売機を描いても「人の匂い」を感じさせる画家です。
表紙のモチーフについては須飼さんのイメージする世界も大事にしたかったので、特に指定をせず、1冊分の原稿を読んでもらって、「描いてみたい場所を一緒に回りましょう」ということに。それが2021年の夏でした。

赤レンガの中央公会堂、重厚な中之島図書館、難波橋のライオン像、天満堀川合流点の蔵、大阪天満宮、天神橋筋商店街、天満駅界隈、扇町公園、太融寺、曽根崎警察署裏のごて地蔵、北新地の蜆橋跡、ダイビル……とたくさん回りましたが、須飼さんが長い間足を止めて、念入りに撮影していたのが「歯神社(はじんじゃ)」です。

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©須飼秀和

「ここが表紙に……!?」
正直、松井さんの原稿を読むまでは行ったことのなかった場所で(というより、前に何度も通ったけどそこが「歯神社」だとも知らなかった)とても意外でしたが、あまり感情を顔に出さないシャイな須飼さんが、歯神社前の雑踏風景を楽しそうにずっと見ていたのが印象的で、そう考えるとたしかに「これまでにない表紙にはなるなぁ」とは思いました。

3週間ほどして届いたのがこちらの下描き。

「歴史の本」にもかかわらず、「歴史の名所」的なたたずまいでは全くないし、登場人物も「梅田エストの入り口近くにいる人たち」ばかりですが、今から考えたら、「歴史はだれのものでもある」「それはいつもの街に横たわっている」ということを伝えるのがこの本の目指すところなので、この絵で大正解だったと思います。


大阪キタと中之島  歴史の現場 読み歩き。著者の松井さんがこの表紙を初めて見た感想を「あとがき」に書いているので、まだこの本をお手に取っていない方は、よろしかったらそこからお読みいただいてもきっと楽しいと思います。
最後になりましたが、表紙に描かれたみなさま(名前は存じ上げませんが)にも、心から重版のお礼を申し上げます。

拝啓・古地図サロンから32

2022年8月12日 金曜日

2022年7月22日・本渡章より

【今回の見出し】

■7月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第12回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その12〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:7月22日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。猛暑の夏です。さらに新型コロナの感染急拡大も重なって、今回のサロンは私を入れて参加者5人のこじんまりした会になりました。そのぶん、ゆったりと地図を見たり、歓談したりできたようで、少人数も時にはわるくないと思いました。

「ブログを見て来ました」という初参加の方がおられ、大阪市電の65年間にわたる歴史をまとめた記念誌『市電』(昭和44年・大阪市交通局発行)をサロンに御寄贈いただきました。ありがとうございます。市電誕生から廃止までの経緯が多数の写真とともに掲載された貴重な記録です。市電唱歌のソノシートが付録に付いていて、これもたいへん珍しく、他の参加者といっしょに楽しく拝見しました。

市電は私の子供の頃、日常の風景でした。外の景色が見えるのが面白く、遊園地のアトラクションみたいな感覚で乗っていた記憶があります。私より少し若い世代の方には、実際に街を走っている市電を見た記憶がないとのことで、これも世代ごとに見ている風景が違うという実例のひとつ。時代の流れを感じさせられます。

5月に開催した中之島図書館での鳥観図展に、井沢元晴作の鳥観図を出展していただいた足立恵美子さんに戦災画のファイルを2冊持参していただいたのが本日のトピックでした。終戦まもない大阪の焼跡を訪ね歩いた井沢元晴が筆で描き残したものです。瓦礫の野原になった市内にぽつぽつと立ちつくす焼け残りの建物や橋。モノクロの画面は静かですが、無言ではありません。足立さんは絵師・井沢元晴の御遺族。大阪以外の街を描いた戦災画もあるとのことで、この夏に他の場所でも公開をしていきたいとお話されました。ぜひ、多くの方に見ていただきたいと思います。

公開地図では日本統制地図(戦時体制期の地図会社の名前)発行の旭区の市街図について主に話をしました。あるはずの橋が描かれていないなど、戦時体制下の地図の特徴を確認。戦後に大発展する千林エリアなど、旭区がたどった足跡を地図からイメージしてみました。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

◉今回のサロンで展示した古地図

《原図》
最新大日本鉄道地図 昭和11年(1936) 大阪毎日新聞社
大大阪市街新地図 イロハ引早わかり 昭和12年(1937) 駸々堂旅行案内部
大阪市区分地図・旭区地図 昭和17年(1942) 日本統制地図
大阪市案内図 昭和39年(1964) 大阪市交通局

《復刻図》
畿内紀州掌覧図 慶応2年(1866) 三都発行書林

次回9月は第4金曜が祝日のため、30日(金)午後3~5時開催予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは基本、奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで一年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】
第6回街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第7回古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)

 

●動画古地図でたどる大阪の歴史」続編、作成中(制作:大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。
7月16日(土)「此花区・港区・大正区」をテーマにリアル講座(OCU主催)を開催。編集後、動画として公開を予定しています。

●最後の「なにわなんでも大阪検定」は12月実施!

初回からずっと私も運営に関わってきたので、13回目の今年が最後の検定試験になったのは残念。これまで挑戦しそびれていた方、この12月が受験の最後のチャンスです。初級と上級の2種あり。試験は12月11日(日)実施。申込受付中で、締切は10月18日です

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

8月17日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・都島区編」
9月22日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・鶴見区編」
10月24日・11月21日に「大阪古地図むかし案内 ~島之内から道頓堀へ、新旧ミナミの変遷」(教室講座と現地街歩き)を予定しています。

|古地図ギャラリー|

秋山永年【富士見十三州輿地全図

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その12〉

『富士見十三州輿地全図』は題名のとおり、富士山が見える13州のエリアを描いた図。13州とは武蔵・安房(あわ)・上総(かずさ)・下総(しもうさ)・常陸(ひたち)・上野・下野・相模・駿河・甲斐・伊豆・信濃・遠江(とおとうみ)で、現在の東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・茨城県・静岡県・山梨県・長野県にまたがる広域。富士山を主題にした関東一円図です。

富士山が絵画や詩歌の題材として人気を得るようになった江戸時代後期には、地図の世界でも居ながらにして「富士見」が楽しめる図が現れるようになりました。本図はその一例です。凡例には国名・道の他、神社、温泉などの名所、さらには関所も記入され、旅の気分を高めています。

作者の秋山永年は江戸の人。初版は天保13年(1842)で、作者が嘉永6年(1853)没した後の安政の頃にも再版され、本図は明治18年(1885)発行。半世紀近くにわたって出回ったことから、人気のある図だったのがうかがえます。

富士山を真上から見た平面図で描いているのが、江戸時代の作としては異色。葛飾北斎が空から鳥瞰した日本図を描いていますが、この図は富士山だけが平面図で、13州の地図中に富士山だけがぽっかりと火口を見せて仰向いていて、鳥瞰図とも異なる地図世界を生み出しました。秋山永年がどこからこのユニークなアイデアを得たのかは不明です。

ともかく、平面図にしたのが富士山でなかったら、こんなにインパクトのある図にならなかったのは確かです。世界文化遺産になった富士山の存在感の大きさにも、あらためて気づかされます。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

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過去の古地図ギャラリー公開作品

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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7月28日(木)のナカノシマ大学では、間宮吉彦さんがこんな内容で講義します。

2022年7月23日 土曜日

お題その1は「つくった店が、街の顔になった」

QOO

間宮さんが独立してInfixを立ち上げた最初の仕事[QOO]は、難波の総合結婚式場「高砂殿」を巨大クラブにするコンバージョン(用途変更)だった

1981年に岸和田の[SAD CAFE]を設計して以来、「街」と切っても切れない関係の店をデザインし続けてきた間宮さんの「街と店の軌跡」について話していただきます。
登場する街は「鰻谷(東心斎橋)」「木屋町三条」「アメリカ村」「南船場」「南堀江」「北浜」などですが、街好き店好きの方には「たぶんあそこかな」とピンときているはず。店主との丁々発止のやりとりから生まれた店誕生の物語です。

その2は「長く生きた建物を別なミッションで再生」

「総合結婚式場がクラブに」「材木問屋が洋書店に」「酒屋の倉庫がバーラウンジに」「外資系銀行がカフェレストランに」「築200年の商家が日本茶カフェに」「築70年の町家がカフェ&ゲストハウスに」という仕事の軌跡は、デザイナーになる前に「ある店」に通った経験あってのこと。その話もお聞き逃しなく。

その3は「ここまで広がる空間デザイナーへの依頼」

21世紀に入ると、間宮さんのInfixには従来の「流行る店」というお題だけでなく、施主から以下のようなリクエストが舞い込んできました。「超高層マンションやオフィスビルの公共空間」「歯科医院」「日本旅館」「伝統産業ミュージアム」、はては「永代供養墓」などなど。私たちが何げなく利用している場所もInfixの仕事かもしれません。

そして最後は「大阪の『川沿い』をふたたび表通りに」

中之島バンクス

堂島川河川敷の遊歩道沿いにカフェやバー、物販店、ウエディング会場をつくった「中之島バンクス」

少なくとも1950年代まで大阪の川や川沿いは「日常の行楽地」でした。ところが60年代後半に阪神高速道路が開通すると、川はいつの間にか「裏側」になり、高速道路で蓋をされた川沿いは「薄暗い場所」になってしまいました。それが2010年代に入ると中之島を中心に新しい動きがはじまります。ラストは会場の大阪府立中之島図書館から徒歩で行ける「身近な行楽地」のデザインワークについてです。

Riverside Sushi Bar TOSA

2022年3月に登場した最も新しい店、北浜の[Riverside Sushi Bar TOSA]のテラス

当日は、「会場から徒歩15分以内で行ける間宮吉彦設計の店」MAPも用意しています。お楽しみに!

受講のお申し込みはこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/site/seminar/article/p20220728

会場では、間宮さんの30数年間の作品を1冊にまとめた『Infix Spaces & Projects 1991-2022 間宮吉彦 クロニクル』も販売します。お楽しみに!

『Infix Spaces & Projects 1991-2022 間宮吉彦 クロニクル』を発売しました!

2022年7月12日 火曜日

編集担当/中島 淳

表紙/ミュゼ大阪(南堀江・1998年)

表紙/ミュゼ大阪(南堀江・1998年)

書名/Infix Spaces & Projects 1991-2022 間宮吉彦 クロニクル
著者/ Infix Spaces & Projects 1991-2022編集委員会
体裁/変形A4判(270×210mm)カバー一体型表紙本文100ページ
定価/2,970円(本体2,700円+税) ISBN978-4-903993-47-8
発売/2022年7月11日(月)

30年以上にわたって大阪に拠点を置き、京阪神・東京・堺などで「人があつまる店」「記憶に残る店」を設計し続けてきた空間デザイナー・間宮吉彦さんの「年代別作品集」と言える1冊が7月11日(月)に発売となりました。

間宮氏がデザインした店はその時代ごとの「街の顔」と言える影響力があり、街好き、店好きが必ずと言っていいほど通っていた店ばかり。
間宮デザインの大きな特徴は、店を容れる建築物が新築であろうと「古くさいもの」であろうと、「街の記憶となっているもの」「街の人から愛されているもの」のエネルギーを取り込んだ形で着地させる……というものでした。

名前を聞くと「あ〜! あの店!?」と多くの人が思い出す

邪魔者だった堂島川沿いの阪神高速高架が「傘」となり、晴れでも雨でも快適に過ごせる遊歩道が誕生。レストランやウエディング施設もでき、裁判所の南側にも人が集まる(中之島LOVE CENTRAL)

邪魔者だった堂島川沿いの阪神高速高架が「傘」となり、晴れでも雨でも快適に過ごせる遊歩道が誕生。レストランやウエディング施設もでき、裁判所の南側にも人が集まる(中之島LOVE CENTRAL)

難波の外れにあった結婚式場をクラブにしたり(QOO)、南船場の材木問屋を洋書店にしたり(ハックネット)、大淀の酒屋の倉庫をレストランバーにしたり(ノー スクラブ)、神戸・旧居留地の外資系銀行をカフェレストランにしたり(E.H.BANK)、本町の真ん中にある巨大オフィスビルにレストランウエディングの店をつくったり(mitte)、堺で築200年の町家を茶房にしたり(つぼ市製茶本舗)、堂島川の遊歩道沿いに店舗の集合体をつくったり(中之島バンクス)、北浜の旧いビルを滞在型ホテルにしたり(THE BOLY OSAKA)……などなど、デザインする店を街の「延長線上」に位置づけつつ、いい意味で「予想をちょっと裏切る」新鮮さを加えることで、間宮デザインの店は常に人気の第一線をキープしてきました。

その時代の街を知る人ならではの「固有名詞」も数多く登場

戦後すぐに建てられた堺の小さな町家。紀州街道に面した通り沿いにはテラスのあるカフェが、奥には和室のゲストルームがあり、海外からのリピーターもいる(サカイノマ 熊)

戦後すぐに建てられた堺の小さな町家。紀州街道に面した通り沿いにはテラスのあるカフェが、奥には和室のゲストルームがあり、海外からのリピーターもいる(サカイノマ 熊)

本の内容は、タイトルが示すように年ごとのいろんな仕事が、店のファンにとっては懐かしい写真と間宮氏のテキストで紹介されていますが、それだけにとどまりません。
DJのMARK’Eさんや中野亮さん(Marble)、松原眞由美さん(IN)、服部滋樹さん(graf)、久住有生さん(左官)、松宮宏さん(作家)など、時代を体現する街や店にかかわった多くの「関係者」「表現者」のインタビューや寄稿は、読み物としての面白さもたっぷり盛り込んでいます(筆者も編集者として寄稿)。

こんな「記憶に残る店」の軌跡をたどる

Bar Marble(鰻谷)、シーラカンス(南堀江)、Quixotic Bar(アメリカ村)、クック・ア・フープ(木屋町三条)、GRAND CAFE(アメリカ村)、クラブ エイジア(渋谷)、ドゥニーム(京都ほか)、ミュゼ大阪(南堀江)、UNDERLOUNGE(アメリカ村)、茉莉花(中目黒)、cor(北堀江)、正弁丹吾亭(法善寺)、ASSEMBLE ON EIGHT(堺)、e’ze(北浜)、Mia via(江坂)、中之島ダイビル、サカイノマ(堺)、中之島LOVE CENTRAL(西天満)、優り草(三条京阪)、Riverside Sushi Bar TOSA(北浜)……etc.

ぜひ、あなたが特別な時間を過ごしたあの店やこの店の記憶をたどってみてください。

〈お知らせ〉
この本の出版を記念して、7月28日(木)の18時から大阪府立中之島図書館3階多目的スペースで開催されるナカノシマ大学に、間宮吉彦さんが講師として登壇します。テーマは「記憶に残る店、30余年の軌跡をたどる」。
お申し込みはこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20220728

拝啓・古地図サロンから31

2022年6月29日 水曜日

2022年5月27日・本渡章より

【今回の見出し】

■5月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第11回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その11〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:5月27日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。初夏の陽気の御堂筋で、いつものようにサロンが開催されました。

今回は戦前の市街図、府域図の他に、これまでお見せする機会がなかった手描き図を用意しました。手描き図とは文字通り、筆やペンで線を描き、彩色した地図です。もとの図は一枚限りですが、薄紙を重ねて透かし、手描きで写した図を残す場合もあります。展示した「泉州岡田浦」(2枚)も、そうして模写されたと思われる図。海岸線の形は同じですが、浜辺の風景は2枚の図で大きく異なり、明治初期の岡田浦(現・泉南市の地名)の変貌ぶりを伝えています。それぞれの図の作成年は1年違うだけなので、変化のスピードは驚くばかりです。参加のみなさんは、薄紙を重ねて模写し、新たな情報を加えていくという手描き地図の世界に興味しんしん。トレーシングペーパーがあれば、今でも、誰でも手描き地図が作れますので、お試しを。

他には、戦前の大阪市街図と都市計画図、さらに原図と復刻の地形図も展示。昭和初期の原図6枚を張り合わせて手製の大阪府域図にした大判地形図が、思わぬ好評を得ました。モノクロで記号がいっぱい入った地形図は、通常の市街図と比べて見にくいのですが、縮尺が細かくて情報量が豊富。手製の大判地形図は、広げると迫力があります。他では、大阪都市計画地域図の精緻さに、虫眼鏡で見入る参加者が続出。計画目的に沿って色分けされた戦前の大阪市街の姿、今はない旧町名のいろいろに、みなさん、街角の歴史を感じたようすでした。

決して見やすくはなかった地形図と都市計画図が、じっくり見ると面白かったというのが今回の収穫。虫眼鏡の活躍の場も、いつもより多かったです。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

◉今回のサロンで展示した古地図

《原図》
泉州岡田浦 明治12年(1879)手描き図
泉州岡田浦 明治13年(1880)手描き図
日本交通分県地図・大阪府 大正12年(1923)大阪毎日新聞
地形図(大阪市域・府域6枚張り合わせ)昭和7年(1932)大日本帝国陸地測量部
最新西区地図 昭和16年(1941)日本統制地図
大阪都市計画地域図 発行年不明 大阪市

《復刻図》
12枚組・京阪地方仮製貳万分壱地形図 大阪近傍 明治20年(1887)参謀本部陸軍測量局

次回は2022年7月22日(金)午後3~5時開催の予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは今後も奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

9月は第4金曜が祝日のため、30(金)午後3~5時開催!

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで1年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】

新着番組、古地図でたどる大阪の歴史」公開中(制作:大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。
他に「古地図サロン」紹介編、著書「大阪24区の履歴書」紹介編の動画もあります。
現在、大正区編・此花区編を制作中。

大阪府立中之島図書館で「昭和~平成~令和をつなぐ鳥観図絵師列伝」開催

5月16日(月)~28日(土)、鳥観図絵師4人(吉田初三郎・井沢元晴・石原正・青山大介)の作品約30点を集めて中之島図書館3階展示室にて公開。予想を上回る2597人の来場を得て、好評のうちに終了しました
井沢元晴の図はご遺族、石原正・青山大介の図は青山氏より出展。企画・構成と吉田初三郎の図の出展は本渡章が担当。21日には青山大介ワークショップも行われ、参加者は熱心に中之島図書館鳥瞰図作成の手ほどきを受けました。

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

6月17日(金)午前10時30分~12時 「地図で訪ねる昭和30年代の大阪」*終了
7月22日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・旭区編」
8月・9月も「古地図地名物語」都島区編・鶴見区編を予定しています。

いちょうカレッジで4回シリーズ講座開催予定

入門科「大阪のまち探検コース」~古地図のまちをのぞいてみよう~
5月31日(火)、6月7日(火)・14日(火)・21日(火)各午後2時~4時
予約制でしたが、定員30名の募集に過去最高の160人の応募をいただきました。ありがとうございました。
このブログが公開される頃、講座は最終日を迎えていると思います。また、機会がありましたら、大阪駅前第2ビルでお会いしましょう。
大阪駅前第2ビル5階 総合生涯学習センター

|古地図ギャラリー|

1.【橋本玉蘭斎【大日本分境図成 上

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その11〉

『大日本分境図成(だいにほんぶんきょうずせい)』は幕末に刊行された日本地図・地域図集。折りたたむと懐中におさまる小冊子で、上巻に、日本全図及び東北・関東・中部・近畿・四国・九州・琉球の各図。下巻に、富士山・琵琶湖・長崎などの図を収録。作成した橋本玉蘭斎は著名な地図作者で、五雲亭貞秀の名で数多くの鳥瞰図も残した人物。

掲載したのは上巻の表紙と本州・四国の地図の頁。これまで古地図ギャラリーで紹介してきた地図とは、一見して趣が異なります。日本地図には違いないのですが、旧国名と国境が記されているだけで、現代人の目には地図としての情報量が少なすぎます。上巻の他の図も同様の趣で、刊行の意図が読みとりにくいのです。

情報が豊富でデザイン性も高い地図を多数残した橋本玉蘭斎としては異色の本図が、どんな経緯で生まれたのか詳細は不明。手がかりがあるとすれば、ひとつは幕末発行という時代性。もうひとつは携帯可能な小冊子という体裁。この2点です。幕末は開国を控えて、日本人が日本という国を意識した時代でした。横浜開化図をはじめ時代を映した作品群で名高い橋本玉蘭斎(五雲亭貞秀)は、手軽に持ち歩ける地図集を世に出すことで、それまで日本地図など見たことのない多くの人々に、日本国の姿、列島にひしめく国々の姿を知らしめたかったのでしょう。現代の目からは少なすぎる情報量の図に、一目瞭然のパワーを期待したのだと思います。下巻の富士山や琵琶湖の図には橋本玉蘭斎の発見した日本が描かれ、興味深いのですが、『大日本分境図成』の本領は上巻の素気ないほど簡略な日本図の方にあるでしょう。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介されました。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られました。学校のエリアは主に西日本です。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられました。

過去の古地図ギャラリー公開作品

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』の著者・松井宏員(ひろかず)さんがナカノシマ大学に登壇します

2022年6月16日 木曜日

教科書や大河ドラマでは分からない大阪の歴史を知って、歩くことのおもしろさを伝えてくれる松井宏員さんの新刊『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』の発売にちなんで、6月30日(木)18時半から、大阪府立中之島図書館3階にてナカノシマ大学を開催します。

お題は「天満堀川・蜆川……消えた川と橋」の話。

艶っぽい花街(かがい)のシンボルだった川

曽根崎川(蜆川)跡の碑

国道2号から南に入った「北新地中央河庄筋」にある曽根崎川(蜆川)跡の碑の前で。「河庄」とは『心中天網島』で治兵衛が小春と手を切る決意をする「河庄の場」の舞台となった茶屋[河庄]のこと。背中は松井宏員さん(2020年7月1日撮影)

大阪市北区のど真ん中には、ほんの100年前まで北新地の北側(曽根崎新地)と南側(堂島新地)を隔てる蜆川(しじみがわ)という情趣満点の川が流れていました。大江橋の近くで堂島川から分かれ、中之島の西側あたりでふたたび堂島川に合流する細い川です。

文楽や歌舞伎でおなじみ近松門左衛門の名作『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』(享保5年〈1720〉)はこの川なしには生まれませんでした。いまやだだっ広い交差点でしかない「桜橋」かいわいも、当時の絵が示すような艶っぽい風景でしたが、現在はアバンザ堂島の北側に石碑が残るのみです。

その桜橋からもう少し東に行った、御堂筋沿いの滋賀銀行梅田支店の場所には、蜆橋(しじみばし)が架かっていました。新撰組の芹沢鴨や沖田総司らが大坂相撲の力士らと衝突し、流血の惨事が繰り広げられたのはこの橋の上。

そういう事件もありましたが、昔の旦那方が小舟で北新地の料亭に乗りつけていたとは、夢のような話ですね。しかし明治42年(1909)の大火災「北の大火」によってこの川は瓦礫の捨て場となり、やがては埋め立てられてしまいます。

240年の歳月をかけて完成した「扇」の形

太平橋の親柱

太平橋の親柱はしばらく放置されていたが、大阪府が堂島川沿いを整備した際に小さな公園が造られ、親柱もそこに設置。すぐ横にある乾物問屋[北村商店]には古い土蔵や家屋が残る。左は松井宏員さん(2020年7月15日撮影)

もう一つの天満堀川(てんまほりかわ)は、豊臣秀吉の時代(慶長3年〈1598〉)に、天神橋の北詰を西へ300メートルほど行った場所からいまの扇町公園の辺りまで開削されました。

天満堀川の河口にある太平橋(たいへいばし)を少し北に行くと、道路脇に樽屋橋(たるやばし)の親柱があります。酒樽や醤油樽の材料となる材木商が軒を並べていた樽屋町に架かった橋で、井原西鶴の名作『好色五人女』(1686年)の一つ「樽屋おせん」はここで生まれた話。浪曲師・春野恵子の十八番でもあります。

その後、幕末の天保9年(1838)に、大塩平八郎の乱を鎮圧した幕府が天満堀川を北東に延伸させて大川と繋ぎ、大川をショートカットする「バイパス」となります。同時に、天神橋筋にかかる扇橋(おうぎばし)を「要」にして見事な扇形が完成されました。

扇橋の周辺に「扇町」という地名が生まれたのは、この川が水をたたえていた大正13年(1924)のこと。けれど天満堀川も、水運の衰退と共に用済みとなって昭和47年(1972)に埋め立てられてしまいます。川は道路となり、さらにその上に阪神高速道路守口線が建設されました。

實地踏測 大阪市街全圖

明治44年(1911)の『實地踏測 大阪市街全圖』(国際日本文化研究センター所蔵)には、蜆川・天満堀川の両方が記されている。◯印は扇橋

蜆川も天満堀川も、「川」であった面影は年々少なくなってきていますが、それでも北区内を歩くとかつての「名残」を思わぬ場所で見ることができます。

いつもの「都会」の風景をガラリと変え、知らない大阪の歴史に連れて行ってくれる「消えた川と橋の話」、どうぞご期待くださいませ。

受講申込はこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/site/seminar/article/p20220630