秋のブックフェア出展のお知らせ
<第二弾>
下鴨中通ブックフェア2024
10/12(土)10:00~16:00
10/13(日)10:00~16:00
(雨天中止)
京都府立京都学・歴彩館
(京都市左京区)
3年連続の出展になります。毎年、洛北の雰囲気の伝わるとても気持ちのよいイベントで楽しみにしています。
今年もたくさんのお客さまに遊びに来ていただけること期待してお待ちしています。
(青木)
秋のブックフェア出展のお知らせ
<第二弾>
下鴨中通ブックフェア2024
10/12(土)10:00~16:00
10/13(日)10:00~16:00
(雨天中止)
京都府立京都学・歴彩館
(京都市左京区)
3年連続の出展になります。毎年、洛北の雰囲気の伝わるとても気持ちのよいイベントで楽しみにしています。
今年もたくさんのお客さまに遊びに来ていただけること期待してお待ちしています。
(青木)
10月より秋のブックフェア出展強化月間が始まります。
<第一弾>
きのもと秋のほんまつり
10/6(日)10:00~16:00
木之本スティックホール(滋賀県長浜市)
昨年に続いての出展、今年は「地方でつくる本の魅力」というテーマも強く打ち出されトークライブなどもあります。
参加出版社も増えて各社紹介の特製冊子も会場で配布予定です、地方で出版活動する意味や醍醐味を一緒に考えられたらさらに楽しくなりそう。
世話役は木之本の能美舎さん、いつもありがとうございます。
担当/中島 淳
天満天神繁昌亭の天神寄席(7月を除く毎月25日開催)に弊社が関わるようになったのは最近だと思っていたら、もう10年も前のことだった。
まだ寒い頃だったように記憶するが、天神寄席のプロデューサーでありブッキングマネージャーであり鼎談のホストである髙島幸次先生と、当時、上方落語協会副会長を務めていた桂春之輔師匠(現・四代目桂春團治)がわざわざ弊社を訪ねてきて、天神寄席への全面協力と、その頃毎月発行していたフリーマガジン『月刊島民』に寄席の告知記事を掲載するなどを打ち合わせした。
その後、残念ながら『月刊島民』は季刊『島民』に変わり、2021年3月にはメインスポンサーの京阪電車がコロナ禍で大幅に業績が悪化したため発行を続けられず、13年の歴史にいったんピリオドを打ってしまったが、幸いなことに『島民』なき後も「天神寄席」はずっと続いている。ありがたい話である。
筆者は「天神寄席」の25日には繁昌亭の専用受付で接客させていただくことが多いが、扉を開けた入り口のところで暑い寒い過ごしやすいなどを感じながら、ちょっと華やいだ夕暮れの天満に身を置いていると、「やっぱり大阪はええな」と感じることが多い。
9月25日は彼岸も過ぎてもう少し涼しくはなっていると思うので、ぜひお越しいただきたいものである。ということで髙島先生にバトンタッチ。
脳内で、髙島先生の声と節回しが再現されるはずですので、あのリズムでお読みください。
*
今回のゲストは玉岡かおるさんです。作家さんがゲストのときは、たいがい近刊の小説をテーマにお招きするのですが、今回は事情があって、2021年刊行の『帆神 北前船を馳せた男・工楽松右衛門』(新潮社)がテーマです。
なぜ3年前の小説が? と思われるかも知れませんが、実は今年の4月に、この作品に登場する高砂市の十輪寺境内に「玉岡かおる文学の碑」が建てられたのです。そこで、新田次郎文学賞、舟橋聖一文学賞の受賞に加えて、文学碑まで建立された同作について、改めてお話を伺いたくお招きした次第です。
さらに、11月16日(土)には玉岡さんもご出演される「文士劇」の公演があります。演劇は素人である文士(作家)が芝居をする文士劇は、130年の歴史を持ちますが、大阪では66年ぶりの公演となります。今回は、なにげに文士劇2024旗揚げ公演『放課後』と銘打って、サンケイホールブリーゼでの公演です。作家・玉岡かおるさんの芝居への意気込みもお聞きしたいですね。
*
……ということで、ここからは当日のゲスト、玉岡かおる先生のメッセージを。
こちらは、華やいだ衣装で笑みを浮かべつつ、壇上から客席の隅々までを視界に収めながら高らかに講義するあの口調を想像しながら、どうぞ(2022年11月のナカノシマ大学を思い出してしまいました)。
でもねー、庶民にとっては海は遠く、船にまつわる落語なんてあるのかしら?
……と思っていたら、なんと今回の天神寄席では、船にまつわる落語を一挙に集めてくださいました!
……今週は週末から雨マークが4日間ほど灯っていますが、9月25日(火)はきっと晴れです(ホンマか)。
ナカノシマ大学から申し込むと、前売りで200円安く、当日では700円安く入れます。10年間ずっとです。どうぞよろしく♬
●天神寄席九月席のお申込はこちら→ナカノシマ大学web
担当/中島 淳
山崎豊子(1924〜2013)をテーマにナカノシマ大学を開催するのは、今回で3回目になる。
1回目(2016年9月)の講師は、代表作の一つ『大地の子』の編集者で、文藝春秋の元代表取締役社長の平尾隆弘さん。2回目(2018年9月)は『女系家族』以来半世紀にわたって秘書として作家を支えてきた、『山崎豊子先生の素顔』(文春文庫)の著者・野上孝子さん(故人)だった。
いずれも作家の出身校である相愛大学(旧制相愛女学校)本町キャンパスの音楽ホールで、満員の受講者を前に平尾さん、野上さんが、山崎豊子との濃密な時間を思い出しながら語っておられたのが記憶に残っている。
平尾さんは山崎豊子が作品ごとに新境地を開拓し、「ブレイクスルー」を果たしていったことをこう評していた。
野上さんは、山崎豊子作品の魔力のような面白さこそ、その類まれなエネルギーにあると語っていた。
*
ナカノシマ大学9月講座は、作家が亡くなる直前まで作品づくりのために奔走した、編集者の矢代新一郎さん(新潮社)が登壇する。筆者が平尾さんや野上さんと出会い、これまでにナカノシマ大学を2度も開催できたのは、ひとえにこの人の橋渡しがあったからこそであった。
今回ならではの特色は、同じ大阪府立中之島図書館(3階展示室・ナカノシマ大学会場の隣)で開催される「山崎豊子パネル展(9/4〜28)」の最終日に実施することだ。ぜひセットで楽しんでください。
矢代さんは開催日までまだひと月以上あるのに、すでに投影資料を気合十分でぐいぐい書き進めている。大作家の手足となって動いた編集者のエネルギーおそるべしである。
矢代さんは、最後の小説となった未完の『約束の海』のほか、「山崎豊子 自作を語る」シリーズ3部作『作家の使命 私の戦後』『大阪づくし 私の産声』『小説ほど面白いものはない』に加え、作家の没後に刊行された『山崎豊子スペシャル・ガイドブック(新潮文庫版では『山崎豊子読本』)』を責任者として編集してきた人。
それだけに、受講者に披露せずにはいられない「とっておきのネタ」がてんこ盛りにある。
すでに矢代さんからは「時間がちょっと押しても大丈夫ですか?」となかなか悩ましいリクエストを送ってこられていて、主催者としては「ぜんぜん大丈夫ですよ〜」と言いたいところをぐっと堪えて、「そこを何とか12時45分までに終わってください(汗)」とお願いしている。
それほど内容がたっぷりなので、どうぞご期待ください。
*
矢代さんとは、140Bがかつて『月刊島民』(2008〜21)で特集「山崎豊子をあるく」を編集していた際に、「この『山崎豊子スペシャル・ガイドブック』を編集した人から話を聞かねば」と東京の新潮社にお邪魔して、お話を伺った。
その島民90号は、有り難いことに島民100号記念読者アンケートの結果が「第1位」に輝いた号だったので、読者のみなさんにとっても読み応えがあったのだと思う。実際に作っていて本当に楽しかった記憶がある。
特集のラスト(p8-9)には、矢代さんや秘書の野上さんを取材した拙文を掲載している。よろしかったらぜひご一読ください。
*
矢代さんが山崎豊子を担当したのは2009年から13年まで。
山崎豊子は「戦争三部作」といわれる『不毛地帯』(全5巻・新潮文庫)、『二つの祖国』(全3巻・新潮文庫)、『大地の子』(全4巻・文春文庫)を完結させて、そこで作家人生を終えるつもりだった。が、新潮社の「天皇」と呼ばれたカリスマ編集者・斎藤十一はそれを許さなかった。
「芸術家に引退はない。どうしても引退したいのなら先の短い私のために香典原稿をいただきたい」と言われて『沈まぬ太陽』(全5巻・新潮文庫)を書き上げた。2009年というのはその後に『運命の人』(全4巻・文春文庫)を完成させた頃だろう。
この時、山崎豊子は御年85歳。「大作家の担当」というのは文芸編集者冥利に尽きるとはいえ、40歳も年長で強烈な個性のかたまりのような山崎豊子が相手というのは、本当に大変だったろうと想像する。以下、『月刊島民』90号から。
と話している(そりゃビビるわな〜)。
誌面ではこの後に「打ち合わせが終わった後の、山崎先生のありえない歓待の仕方」や「編集者がうるっとくる殺し文句」などについても触れている。もう9年近く前のことだが、30分程度の取材の中で、「相手が書きたくなる」ネタを次から次へと提供してくれる。抜群のサービス精神と頭の良さ。山崎豊子に信頼されるだけのことはあります。
当日の講座「生誕100年。最後の担当編集者が語る 作家・山崎豊子の『華麗なる』執筆秘話!」はこの3倍以上(でも足りない)のネタがてんこ盛りの濃い濃い資料を用意して来阪されるから、どうぞお楽しみにしてください。
「閉会時間大丈夫かな……」という悩みは当日まで消えないだろうが。
担当/中島 淳
去る8月9日(金)、FM COCOLO「MARK’E MUSIC MODE(月〜木曜17:00〜20:00)」のDJ、マーキー(MARK’E)さんを講師にお迎えしてナカノシマ大学8月講座を開催した。
座学の講座にもかかわらず、40年来のファンをはじめ、小学生から70代まで多彩な年齢層の受講者のみなさんが大阪府立中之島図書館の3階多目的スペースをぎっしりと埋め、超満員の熱気の中で始まった。
当日の最高気温は37.0℃。いつもは「冷やしすぎやで」という3階の巨大クーラーもこの日はあんまり効かず(すみません)、みなさんパタパタとあおぎながらの受講だったが、その団扇にも「マーキーさん❤️」という文字がドーンと入っているものもあって、最初からピースフルでグルーヴ感満点な空気が満ち満ちている。
*
筆者が初めて生でマーキーさんを見たのは京阪神エルマガジン社にいた1990年。雑誌『SAVVY』の関係者たちを招待するパーティーで司会をするはずだった同僚が、なんと会場で骨折してしまった。その時に飛び入りで司会を引き受けてくれたのがマーキーさんだった。
「マーキー、すまん、頼む!」と上司の編集部長N氏が彼に頭を下げると、その場の状況を瞬時に理解したマーキーさんは「パーティーに遊びに来た」モードが一瞬にして切り替わり、5秒後にはそこにいるのが当然という顔でステージに立って、「さ、みんなええかな〜」と観客に笑いかけてパーティーが始まった。
そのサービス精神に呆気にとられつつ、シビれていたのはもう34年も前のことだ。
*
マーキーさんに取材で話を聞くようになったのはMeets Regionalに移動して、アメリカ村の「ママ」と呼ばれた日限萬里子さん(ひぎり・まりこ/1942-2005)の連載「ママいるぅ?」(1997.4〜2000.12)の担当になったことがきっかけだった。
日限さんのエピソードはとても面白くて興味深かったが、それを補完する「街の証言者」の話が聞きたい。マーキーさんからは日限さんが1969年に三角公園前に開いたカフェ[LOOP]や、77年に誕生したカフェ&クラブ[パームス]、そしてアメリカ村ユニオンで取り組んだ1983年の「アメリカ村カーニバル」のことで何度かお話を聞いた。
一つ質問すると、当時の情景が彷彿としてくるような表現をフル稼働させて、聞く側を楽しませながら答えてくれる。[LOOP]も[パームス]も知らず、初期のアメリカ村に縁のない人間である筆者にとっても、この取材は楽しいひとときだった。
その日限萬里子さんが2005年に62歳で亡くなってしまったことで、アメ村や1960〜80年代のミナミの歴史が語り継がれることが少なくなったように思う。
そんな話を人に「届けられる言葉」で届けてくれる人は、やっぱり現役のDJとしてリスナーを楽しませてくれる人でないといけない。
マーキーさんは「自分で遊び場(仕事場でもある)を作ってきた人」で、かつ「街の当事者で歴史の語り部」でもある人。改めてお話をぜひ聞いてみたいし、受講者のみなさんにも聞いてほしい、ということで講師にお願いした。
お忙しいのに、よくぞ引き受けていただいたことだとほんまに感謝しております。
*
8月講座は18時にスタート。MARK’Eさんの歴史が70分。10分間の休憩を挟んで、会場からいただいた質問に答えていただく時間が20分。
前半では「堺の家から近大附高に通うはずが、布施の友人宅に居候してそこから高校やミナミの喫茶店に通い、商店街の人たちに可愛がられて連れていってもらった志賀高原のスキー場で衝撃を受けた」ことや
「信州のスキー宿で住み込みバイト中に、地下のディスコを盛り上げようと“DJ”を任された」こと
「フリースタイルスキー競技のDJを社長から“ディスコで盛り上げとったやろ。あの感じや”と無茶振りされ、見よう見まねではじめた」こと
などなど、「谷口雅之青年がマーキーになるまで」の話がとても興味深く、振られた「お題」を試行錯誤しながら自分の中で消化させていったからこそ「その後」があったのだなぁと改めて感じ入った。
*
質問は、なんと受講者の半数近い42人から寄せられた。
たくさんの質問をお寄せいただいたことにまずお礼を申し上げると共に、時間の都合上4人の方しか採り上げられず、ほんまにご容赦ください。
とくにマーキーさんの類まれなポジティブ志向の理由や、健康を維持して見事な滑舌を保つ秘訣、「生まれ変わったら何をやっていますか?」とか「どこで服を買っているんですか?」などの多彩な質問が寄せられた。
印象的だったのは、マーキーさんと同世代の方からの質問。
「私も70カラット(歳)になりまして、向こうの岸に行く準備のことなど考えてしまいます。向こうの岸にいる両親に誇れる人生でありたいなどと思っています。マーキーさんは、向こう岸に行くことを考えてはりますか?」
こちらの質問に対してマーキーさんは、ほんの数ミリを削ることで格段に性能を増すサーフボード職人の技と、その職人の言葉を紹介した。確かこんな内容だったと思う(違っていたらすみません)。
この言葉が会場内に静かな感動を引き起こし、ナカノシマ大学8月講座はあっという間の1時間45分を終了した。
*
そのあと、みなさんマーキーさんにプレゼントを渡したりサインをしてもらったりでそれが長蛇の列になっていて、20時までに全員に退出してもらわねばならない中之島図書館の係員のみなさんと我々はやきもきしたが(裏口から出ていただきました)、こんなに多くの受講者の笑顔を見ることができたのはラッキーこの上なしでありました。
次回は、大阪の船場が生んだ大作家・山崎豊子の「最後の編集者」がお江戸から登壇してくれる。
マーキーさんも山崎豊子も「語り継いでいきたい大阪の街の宝」。来月もまた中之島図書館でお会いしましょう。
もちろん、マーキーさんの「続編」もぜひ改めて開催したいと思っています。その時はまた、よろしくお願いします。
2024年7月26日・本渡章より
【今回の見出し】
開催日:7月26日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。
夏本番の暑さが続くなか、こじんまりした人数での開催になりました。この数年、7月サロンは8月の終戦祈念日に先がけて戦争関連の地図をいくつか見てきました。今回も中国での戦況を伝える「中支戦局詳解地図」など紹介。あわせて戦前~戦中の観光、交通の地図なども展示しました。最後に特別公開したのはガスビル近くの老舗喫茶店・平岡珈琲の3代目店主、小川さんから寄贈していただいた昭和の各地の地形図。山登りがお好きだった御尊父の遺品とのこと。山歩きには地形図が必携。故人を偲びつつ、みんなで拝見しました。
さて、上記お知らせのとおり、大阪ガスビルでのサロンはあと2回の開催で終了します。9月27日、11月22日のどちらも、どなた様もお気軽にご参加ください。
◉今回のサロンで展示した地図
◆原図
名勝・温泉・観光 最新全国旅行案内図 発行年不明 婦人倶楽部新年号付録
最新中部日本交通名所遊覧地図 昭和7年(1932)富山館
全日本最新名勝・名物地図 昭和10年代 大阪毎日新聞社
中支戦局詳解地図 昭和12年(1937)大阪毎日新聞社
大日本分県地図・大阪府 昭和16年(1941)日本統制地図
敬神・史蹟・探勝 厚生歩行地図 関急沿線編(16枚1組) 昭和18年(1943)日本統制地図
初等科地図(上) 文部省 昭和18年(1943)日本書籍
昭和の地形図各種・約20点 国土地理院
会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーしてください)。予約不要、途中参加・退出OK。
9月1日(日)10時~14時「黒姫山古墳と日本鋳物師の発祥地を訪ねて」
堺市美原区は日本最多の鋳物出土品で知られる古墳と鋳物師発祥の歴史で知られるエリア。講演と現地ウォーク。主催・文学歴史ウォーク。
9月6日(金)14時~16時 豆玩舎ZUNZO(宮本順三記念館)/近鉄八戸ノ里駅前
古地図を囲んでのおしゃべり会。会場はグリコのおまけデザイナー宮本順三さんの作品&コレクションを集めたミュージアム・豆玩舎(宮本順三記念館)
9月27日(金)午前10時30分~12時
特別講座「箕面新路線開業記念!箕面の新名所と瀧安寺絵図の世界」。北大阪急行の路線が延びて大阪の都心と直結した箕面。古い歴史と新名所が交差する街を紹介。
10月13日(日)14時~16時
大阪の24区を順にめぐる旅。今回のテーマは大阪の朝日が昇る場所、旭区。現地を歩いた後、会場でまとめの話。
※詳細は大阪コミュニティ通信社 まで。
X(ツィッター)始めました。本渡章 @hondo_akira1113
古地図以外の話題もいろいろ。その他まだ公開できませんが、進行中の案件あり。いずれご報告いたします。
一年間の連載(題字と似顔絵・奈路道程)に追加取材を加え、ブログの内容を大幅に刷新して書籍化が進行中です。刊行までブログ「大阪の地名に聞いてみた」をお楽しみください。
大阪市のたどった道のりを、それぞれの土地の成り立ちと経済、文化など多様な要素を持つ24の「区」から見つめなおすシリーズ。続編はしばらくお待ちを。詳細は大阪コミュニティ通信社まで。
第2回その2 西へ西へと流れた街のエネルギーと水都の原風景…西区
第2回その1 「江戸時代の大坂」と「明治以後の大阪」の架け橋となった巨大区…西区
第1回その2 大正~昭和は人口爆発、増区・分区の4段跳び時代
第20回(2023年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪新町夕陽廊の賑」安政5年(1859)
第19回(2023年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より黄華山・画「花洛一覧図」文化5年頃(1808)
第18回(2023年7月)
①東畑建築事務所・清林文庫より池田奉膳蔵「内裏図」
第17回(2023年5月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「地球萬國山海輿地全図」
②青山大介作品展2023
第16回(2023年3月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「天王寺・石山古城図」
第15回(2023年1月)
①東畑建築事務所・清林文庫より長谷川圖書「摂津大坂図鑑綱目大成」
第14回(2022年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より久野恒倫「嘉永改正堺大絵図」
②鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「私たちの和田山町」
第13回(2022年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」
第12回(2022年7月)
①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」
第11回(2022年5月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」
第10回(2022年3月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」
第9回(2022年1月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」
②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」
第8回(2021年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」
②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」
第7回(2021年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」
②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」
第6回(2021年7月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」
②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」
第5回(2021年5月)
①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ
②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」
③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」
第4回(2021年3月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」
②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」
③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」
④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」
第3回(2021年1月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」
②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」
③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」
第2回(2020年11月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」
②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」
③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」
第1回(2020年9月)
①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」
②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」
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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。
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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介された。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られた。学校のエリアは主に西日本。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられた。
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鳥観図絵師・青山大介(1976~)神戸生まれ。高校時代に都市鳥瞰図絵師の第一人者、故・石原正氏の鳥観図に出会い、感銘を受け、独学で鳥瞰図絵師を志す。2011年、制作に3年半をかけた「みなと神戸バーズアイマップ2008」を完成。2013年発行の「港町神戸鳥瞰図2008」は神戸市の津波避難情報板に採用された。以後、多数の作品を発表し、都市鳥瞰図の魅力を発信。2022年の「古の港都 兵庫津鳥瞰図1868」は同年開館の兵庫津ミュージアムのエントランス展示作品となる。2023年、神戸市文化奨励賞受賞。
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本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)
【『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)
思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。
『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)
梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。
*上記2冊は各電子書籍ストアでお求めください
*下記8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます
『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)
大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。
『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)
姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。
『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)
記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。
『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)
著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。
『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)
井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。
『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)
江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。
『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)
名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。
『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)
名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。
※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧
『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)
『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)
『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)
『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)
『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)
『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)
1952年大阪市生まれ。作家。(財)大阪都市協会発行時の「
著書『鳥瞰図!』『古地図でたどる大阪24区
担当/中島 淳
おかげをもちまして、マーキーさんが講師として登壇する8月9日(金)のナカノシマ大学「『遊び場』は自分らでつくろう〜サーフィン、アメ村、FM……」は受講希望者多数につき、本日で受付を締め切ります。
「アレ、どないしょうかと思ってたんや」の方、今すぐにお申し込みをよろしくです。
当日は、マーキーさんの「今日までの歴史」を追いかけるだけでも「90分ではぜったい足りん!」という感じですが、やっぱりてんこ盛りでした。
⚫︎高校時代(1968〜71年)に山登りやスキーに打ち込みつつ、ミナミの[プランタン]などの喫茶店に通っていたが、「御堂筋の西側になんか面白い店あるで」と入ったのが、のちにアメリカ村の「ママ」と呼ばれる日限(ひぎり)萬里子さんが開いた[LOOP]というカフェだった
⚫︎1975年、近畿大学を卒業して渡米し、音楽、スポーツ、芸能などの文化に触れ、帰国後はフリースタイルスキーやサーフィンなどのスポーツイベントの司会に携わる。この頃から[LOOP]界隈にサーフボードを持った若者の姿を見かけるようになり、やがて「アメリカ村」と呼ばれる
⚫︎1980年、OBC「JAM JAM OSAKA」木曜のパーソナリティとなったことを皮切りに、ラジオやテレビにも出演
⚫︎1982年にアメリカ村[アンクルサム]の2階に開いたマタニティウエアと子供服の店で、FM局「GOGOステーション」を開局、多くのメディアで取り上げられる
⚫︎1983年の第1回御堂筋パレードに「アメリカ村ユニオン」として参加。同時期に三角公園などで開かれた「アメリカ村カーニバル」で司会を務める
⚫︎1985年にテレビ東京系の深夜番組「From Aスキーチーム」の番組ナレーションを担当。その後、出演していた全番組を降板し、ヨーロッパ諸国を旅する
⚫︎1989年、長堀橋交差点近くの4階建てビルを借り切って1年間限定の[CLUB MARK’E]をオープン
⚫︎1991年、FM802で初の担当番組「FUNKY EXPRESS 802」がブレイクし。番組名も「Around the MARK’E SONIC STYLE」となる
⚫︎1993年のJリーグ発足の際にガンバ大阪のオフィシャルサポーターズソング「ビバ! ガンビーノ」をMFの礒貝洋光と共にレコーディング
⚫︎2002年、50歳の誕生日に「MARK’E -Rolling50-」をWTCオープンエアスタジアムにて開催
⚫︎2003年、CD付き雑誌『FM COCOLO765 MAGAZINE』が創刊され、「マーキーのわき道、寄り道、散歩道」を寄稿
⚫︎2010年、現在も続く「FM COCOLO MARK’E MUSIC MODE」(月〜木曜/17:00〜20:00)のDJに
⚫︎2012年、生誕60年記念「MARK’E -Rolling60-」を大阪城ホールにて開催
⚫︎2016年、FM COCOLO 「SUNDAY MARK’E 765」のDJに(〜2023年まで)
⚫︎2023年、生誕70年を記念した「MARK’E Rolling70〜RADIO DAYS」を二日間にわたってフェスティバルホールで開催
⚫︎2024年、FM802開局35周年。NHK大阪「かんさい熱視線」で日限萬里子さんとアメ村を特集。証言者として出演
……と、こういったマーキーさんの歴史は会場で配布する資料としてみなさんにお渡ししますんで、マーキーさんには昨日のABCラジオ「おはようパーソナリティ小縣裕介です」でお話しいただいたような「阪神大震災の時に被災者のリスナーから言われた意外なひとこと」のようなエピソードをたくさん話してほしいと思っていますし、会場からの質問にもバンバン答えていただきたいと思っています。
担当/中島 淳
7月18日(木)のナカノシマ大学に向けて、講師の陸奥さんから『沙界怪談実記』の50篇を送っていただいた。
これらの怪談集はすべて「具体的な発生場所」が明記されているので、まち歩きにもうってつけ。怪談自体に「所在地」のタイトルが付いているのである。
「一、絹屋町の妖怪」「二、北蛇谷の飯縄の法術」「三、川尻町の老獺」「四、高須町に鬼の腕ありし話」「五、櫛屋町の戯れ狸」「六、万代庄金口の異獣」「七、寺地町大道より古銭掘出す」「 八、少林寺町の地下より古碑出土」などで、今はなき地名もあるが、かつての地図(前回のブログで投稿したアレです)を見てみると出てくる出てくる。
地図を拡大してオレンジの印をつけていたら結構な数になった。
それを今の地図に落とし込んだのが下のこちら(青いのが「怪談」の現場)。
京や大坂と同様に、堺も旧市街地は街の構造が基本的に変わっていないので、「かつての現場」をたどりやすい。
陸奥さんは、この『沙界怪談実記』の現場めぐりもライフワークにしていて、そのツアーは外国人観光客も参加するほどの人気コンテンツになっている。
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その怪談50篇を読んでみたら(古文なので大雑把にしか分からないが)、「もののけ」が出てきて人間に悪さをするというのが多く、「もののけ」は、狐や狸のほか、大蝦蟇(オオガマ)とか獺(カワウソ)とか、想像上の動物である「河童」も出てくる。
「河童」と言えば水木しげるのマンガを思い出すが、そんな可愛いものではなく、人間を咬み殺してしまう困ったヤツと書かれている。
子どもが聞いたら恐ろしいから早く寝よう、夜遊びせんとこ……と思うだろうから、青少年教育に「怪談」はきっと役に立ったことはずである。
というより、18世紀半ばの堺はすでに刺激が満載の都会だったから、子どもが悪さをせんように、このような物語をこしらえて「教化」していったのかもしれない(筆者の勝手な推測ですが)。
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35番目の怪談「千日橋下より霊泉湧出す」という話は、もののけも出て来ず、「怖い話」ではない。
「怪談」とはちょっと毛色が違う感じもするが、これも一種の「人智を超えた」超常現象なので、『沙界怪談実記』の50篇に加えられたのであろう。なかなかバラエティに富んでいる。
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この話を読んで、2年前のことを思い出した。
陸奥賢さんが主催する「堺七墓巡り」のツアーで、「七墓」のほかにこの井戸も立ち寄ったのである。
残暑真っ盛りの9月上旬。20人ほどのメンバーでJR阪和線の浅香駅に集合し、駅の周辺の神社や史跡を巡った後、JR堺市北の東雲公園と東雲墓地(前回のブログで紹介)を散策してから昼食を摂って旧市街地に入り、月蔵寺(がつぞうじ)や紀州街道を経て、一番北にあるこの「千日井」にたどり着いたのであるが(他所の人には何のことかぜんぜん分からないと思いますが、すでに軽〜く6kmは歩いている)、隊列も長〜くなって、みなさんバテバテ。
陸奥さんはここでかなり大事なことを解説しておられたと思うのだが、お恥ずかしいことながら覚えていない。しかし今から考えると、ほんまに大事なところに寄っていたのだなと心から思う。その証拠に写真は撮っているし。
ファミリーマートの近くにある車道沿いにこんな場所があった。まち歩きをしていると、何百年も前の「過去」が、「現在」の景色の中に急に出現してくる。
それらは大抵、「今までに見たことがあるもの」なのであるが、先達が現場でその「過去」の物語を紹介してくれると、これまでと違った景色が立ち上がって、ぜんぜん違うところに来たような気さえする。
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なので7月18日(木)のナカノシマ大学では、陸奥さんの話を通して「怪談」という視点からあたらしい堺の街を発見してほしいと思います。
当日の講義だけで飽き足らない人は、現地のツアーもあるのでお楽しみに。よその国の人たちと楽しく回りましょう。
今年も140BはBOOK MARKET 2024に出展します。
7/20(土)-21(日)
10:00~17:00
台東館 7階南側会場 ブース55
20日(11:00~)は、現在企画進行中の著者・コジマユイさんが来場、自身の画集ZINE「東京近代建築」など7種を直接販売してもらいます。
担当/中島 淳
7月18日(木)のナカノシマ大学「堺で江戸中期に生まれた怪談本 『沙界怪談実記』にお連れします」に登壇される陸奥賢さんには、 本当にいろんな顔がある。
「まわし読み新聞」という、楽しみながらグループで社会意識を高めるコミュニケーションツールを考案して、全国各地で実践し続けている人(2017年読売教育賞のNIE部門最優秀賞受賞)であり、歴史の中に埋もれた「ひとびとの足跡」を丹念に掬い上げておもしろい原稿にして読ませる記者であり、まち歩きのスーパー・エキスパート・ガイドであり、機嫌の良さを聴衆に伝染させるフレンドリーな講演者でもある。
最近は関西だけにとどまらない。東日本大震災で大きなダメージを受けた太平洋岸にある福島県いわき市の、各地域に存在する物語を可視化していく「いわき時空散走」のプロデューサーでもある。それで700km離れた大阪−いわきを頻繁に往復している。
陸奥さんが登壇する講座はいつも満杯でまち歩きも大人気だ。しかしまち歩きで肉声が届くのはせいぜい10人以内。人数が増えると大声を張り上げたりマイクを使ったりもする。それをひと月のうち10回以上やっておられるから、よく体力が続くなぁと感心するしかない。
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その陸奥さんの今回のお題は、『沙界怪談実記』。
江戸中期に先端産業(包丁や銀細工、線香、染色、浴衣、酒造、昆布加工、和菓子、三味線など)と町人文化が一気に花開いた大都市・堺で起きた摩訶不思議な事象や「もののけ」の出現を、鉄方堂という謎の人物が記した50篇からなる記録で、それぞれの「怪談」が生まれた場所は町名まで(一部は年月日まで)細かく載っている。
どれも、夢と現実がごっちゃになったような「ほんまかいな」の怪談ばかりであるが、陸奥さんはさらっと「怪異は『自然』『日常』のものであり、近世の堺の人々は飄々と『怪異と共に生きていた』ようです」と語る。彼もまた堺育ちの人なので、地場から漂ってくるなんとも言えない力(地霊)には敏感なのだ。
しかもその怪談の現場となった「町名」の数々は、18世紀半ばも2024年の今もほとんど同じで、行政区画の変更が頻繁な政令指定都市の中でも、堺の旧市街地は同じ地名がずっと生きている。そういう街を歩くのはやっぱりおもしろい。
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陸奥さんが案内する街は決して特異でも怪奇でも辺境でもなく、私たちが仕事や買い物や飲み食いでよく寄ったり通ったりしているところばかりだし、実際に人が住んでいる。
でも、そんな場所ですらちょっと視点を変えて見てみたり、数メートル移動したりすると、たちどころに「こんなところに……!」という風景が出現する。
写真は2022年9月4日に実施された「堺七墓巡り」のまち歩きツアーで、JR堺市駅前の商業施設のある有名なタワーマンションの裏手に開けた公園を歩くと、同じ緑地帯の延長に、古くから堺市民が供養に訪れる「東雲墓地」が目の前に開けた。
緑の深い墓地には有力者や将校クラスの軍人の大きな墓も目立つが、人知れず亡くなったひとびとの「無縁群霊塔」が目立つ場所で存在感を示していた。決して「金や権力を持った強者」のための墓地ではなかったことが窺い知れる。
そのような解説を陸奥さんから現場で聞くたびに、「堺の本を出してる版元のくせに、ぜんぜん知らんねんな」という自責の念と、「おもしろいからもっと知りたい」という好奇心がミックスされて、何度でも行きたくなる訳です。
7月18日(木)当日は、『沙界怪談実記』の49篇をできるだけ数多く紹介して、堺の「地霊」を体感するまち歩きを一人でも体験できるように講義してくれるが……
一度、陸奥さんのまち歩きもぜひ体験していただきたい。クセになりますから。