大阪・京都・神戸 街をよく知るからこそできる出版物&オリジナルメディアづくり

‘未分類’ カテゴリーのアーカイブ

建物のええとこを「可視化」して、仲良くさせてくれる人

2025年10月3日 金曜日

担当/中島 淳

コジマユイさんが描く建築物の絵は、黒ボールペンの線だけで描かれたものがシンプルなものが多い。

モノクロの世界なのに、色とりどりの絵よりも華やかな写真よりも、建物に対する「親近感」が湧いてくるから不思議である。この人の作品を通じて建築好きになった、という人も少なくない。

大阪証券取引所ビルのエレベーター(『絵で残したい船場の近代建築たち』より)

建築物のビジュアル表現にもこんなアプローチがあるのだ、という新鮮な驚きを多くの人に知ってもらおうと、今年の1月から不定期連載で「絵で残したい船場の近代建築たち」をスタートさせて作品を描いてもらっている。

この連載のためにお江戸から来阪して現場を見て描いてもらい、すでに3回アップしていてまもなく4回目がアップされるはずだ(お楽しみに)。

そしてこの10月20日(月)のナカノシマ大学に登壇していただけることになった。お題は「わたしが船場の建築をずっと書き続ける理由」。

すでに半分以上が埋まっているから、こちらもお早めにお申し込みください。

昨年のナカノシマ大学。コジマユイさんは学校でも教えていることもあって、講義にムダがなく話が聞きやすかった(2024年10月17日)

コジマユイさんは「絵でよし、接してよし」の人。

絵のフレンドリーなタッチと人柄が見事にリンクしていて、建築物のオーナーや広報の方と初対面で打ち解けるのがほんまに早くて、取材がほいほいと進む。

何よりもコジマさんがその建築物に本当に興味を持ってくれていることが伝わってくるから、みなさん全力でサポートしてくださる。こちらも見ていて楽しい。

ナカノシマ大学でも作品と建物解説をよく通る声で披露してくれると思います。質疑がたくさんあると、サービス精神にターボがかかると思うので、みなさんよろしくお願いします。

会場では、10月25日(土)・26日(土)に実施される「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2025」のガイドブック『OPEN HOUSE OSAKA 2025』だけでなく、コジマユイさんが編集発行する作品集も販売します。お楽しみに。

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20251020

 

 

 

 

スズキナオさんが環状線の駅前で「飲む」のは酒だけではない

2025年8月17日 日曜日

担当/中島 淳

残暑(しかも猛暑)お見舞い申し上げます。

スズキナオさん(写真)と編集の松村貴樹さんは鼻が利くのだろう。ぶっつけ本番でこんなええ店にたどり着く能力がスゴい(弁天町駅[立呑み 木村屋])©️インセクツ

 

いよいよこの木曜日(21日)はナカノシマ大学で、『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』(インセクツ)の著者・スズキナオさんと編集者の松村貴樹さん(インセクツ代表)のコンビが、私たちが知ってるようで知らない、JR大阪環状線駅前の「楽園」について、とっておきの取材秘話を披露してくれるのだが、この本を読み返してみて、改めて「へえ〜」と発見したことがあった。

環状線の駅前は、昭和の終わりに誕生した「大阪城公園駅」や平成になって新設された「今宮駅(関西本線の今宮駅は1899年だが)」以外は、少なくとも半世紀以上の歴史があるし、19駅のうち半分以上の天王寺、桃谷、玉造、京橋、桜宮、天満、大阪、福島、野田、西九条の10駅は明治(しかも19世紀)生まれ。当然125年以上経っている。

昭和7年(1932)開業の寺田町駅の駅名標が2015年、壁面の塗装作業の最中に発見。2番ホーム(外回り)に展示されている©️インセクツ

そんな駅前ゆえに歴史は半端ないのであり、取材者にとっても編集者にとっても「掘り甲斐」のある街なのだ。19駅前の散策はほんまに大変だったとは思うが、読む方としては楽しいことこの上ない。

そして、「降りて歩いて飲んでみる」の「飲む」ほうは期待に違わぬ店が駅ごとにこれでもかこれでもかと登場するが、スズキナオさんはもう一つの「飲む」に対しても貪欲だった。そして「う〜ん、目のつけどころが違うなぁ」と思わせてくれた。

意外であったけど「豆乳」である。酒場や食堂だけでなく、駅前(もあるけど結構遠いところにある)の豆腐屋さんにもこの本の中で何度となく出向いていて、そこも編集者の松村さんが写真に押さえている。彼も一緒に飲んだのだろうか。

JR野田駅と阪神野田駅・地下鉄野田阪神駅を結ぶ「野田新橋筋商店街」にある[豆房] ©️インセクツ

森ノ宮駅の東側、疎開道路をさらに東に入った[斉藤豆腐店]は、残念ながら2024年夏で閉店してしまった ©️インセクツ

 

 

 

京橋中央商店街、創業55年の[のとや豆腐店]©️インセクツ

寺田町駅を5分ほど東へ行ったところに入り口のある、長〜い生野本通商店街。そこから枝分かれした「栄通商店街」にある高部商店 ©️インセクツ

 

 

天王寺駅の南「あべのベルタ」の地下[まるしん豆富店]©️インセクツ

 

スズキナオさんは必ず店頭で豆乳を飲み(酒を飲む前に、というのがええ感じだ)、豆腐やお揚げさん(たぶん)を買っているようだが、いろんな媒体で見る「酒場めぐり」のライターというよりも、「生活者」らしくておもしろい。

お江戸から大阪市内に引っ越してきたスズキナオさんにとっては、「住む街」としての良さを判断するバロメーターが「良い豆腐屋さんがある界隈は暮らしやすい街だ」(『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』より)なのだ。

そこに「オーガニック」とか「ヘルシー」とかの言葉を使わず、「街の豆腐屋が近くにある」ことの幸せを力説している。こういうところに、スズキナオさんの人気の秘密があるように思う。

取材先にも読者にも近いし、絶対に「知ったかぶり」とか「俺に言わせりゃ」がない人なのだ。

『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』で、「豆腐屋さんで豆乳を飲む」という意外なアプローチも発見することができて、ちょっとラッキーだった。

知らない街で豆腐屋を見つけたら豆乳を1杯いただく。酒を飲まない日でもええような気がする。

……と書いている間に、いよいよナカノシマ大学の開催日が迫りました。8月21日(木)にお会いしましょう。

申し込みはお早めに→https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250821

最初の駅を見て唸った、スズキナオさんの「大阪環状線」本

2025年8月6日 水曜日

担当/中島 淳

大阪での移動は地下鉄が多いけれど、そうすると目的地に着くまでのプロセスが見えない。だから、ちょっとおもしろくない。

電車に乗った街から、目的地の街までの間に「徐々に景色が変わっていく」というのが、とくにコンパクトシティの大阪ではお薦めの体験なのだ。

40分ぐらいで一周できて、生駒山や六甲山、二上・葛城・金剛山が見えて安治川や木津川、寝屋川も渡って、高層ビル街も工場も商店街も盛り場も住宅街も車窓からよく見える大阪環状線というのは、ほんまに「よう出来ている」路線だと思う。

加えて、「どの駅前にも、湯気の立つウマいものがある」ことが決定的な魅力だろう。

本体2,200円+税。もちろんナカノシマ大学当日に販売します!

8月21日(木)のナカノシマ大学に登壇するスズキナオさんがインセクツから上梓した『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』は、編集者でインセクツ代表の松村貴樹さん(共に登壇)と環状線の全19駅を「事前アポ取りなし、打ち合わせなし」でぷらぷらと歩き、立ち寄り(飲み)、また歩き、立ち寄り(飲み)……を繰り返したエッセイだ。

「そうそう、〇〇駅前はこんな感じやった」とか、「環状線とは何だかんだ言うても付き合い長いよなぁ」ということを思い出させてくれて、「こんど、あの商店街歩いてみたろ」という気持ちに、自然となる。

駅ごとにドラマチックな出来事が待っている訳では決してないが、スズキナオさんの文章を読むと、「どの駅前でも、楽しい客として普通に歓迎してくれる街がある」と分かり、改めて「大阪はフトコロの深い街だな」だと感じさせる。

著者の現場での佇まいが「ええ感じ」なのはこのイラストが物語っている。

『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』より新今宮駅前の探索。初めての店でも好奇心たっぷり&楽しげに振る舞うスズキナオさんは、どの店からも「上機嫌なお客」として歓迎されたのでは ©️スケラッコ

スズキナオさんは東京生まれ東京育ちで、大阪での生活はまだそんなに長くないと思うが、「大阪は“よそもの”に優しい街」であることが文章から伝わってくるし、彼自身がいろんな店を「まずは受け入れる」というスタンスで楽しんでいる。

変にスカしたり、知ったかぶりしたりしていないのだ。

筆者も(大昔だけど)九州から来た“よそもの”なので、「大阪に住もうかどうしようか」と迷っておられる方はぜひ、この大阪環状線や他の著書を読んでじっくり考えてほしい。

とくに筆者が「おお!」と思ったのは、この本の最初に「野田駅」を持ってきたこと。

こういう本の場合、どうしてもトップに「売れ筋の街」を持ってきたがる書き手なり編集者なりが必ずいる(その誘惑にはなかなか抗しがたい)。

まず京橋や鶴橋、新今宮、西九条などの「私鉄連絡主要駅」か、福島や天満を持ってきてインパクトを出す、という手もあるが、あえて快速が停車しない(けどとても環状線らしい)野田をまず持ってくるとは、この企画に対して著者も編集者も自信満々であることを感じさせる。

「大阪の駅前酒場の特集でなく、環状線の特集やで〜」である。

この本はナカノシマの会場でMoMoBooksさん(『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』p25に登場)が出張販売してくれるが、前もって読んでからナカノシマ大学へ行けば、また別の楽しみが広がると思う。

当日は、本には出ていない環状線駅前の楽しみ方もお二人がアレコレ指南してくれるはずで、会場とのキャッチボールも楽しみです。

ナカノシマ大学の申し込みはこちらへ。ちょうど半分を超えたところ。ぜひ!

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250821

 

7月の140B出張販売の予定

2025年6月26日 木曜日

7/5(土)11~16時

先月に続いて、ブランチ大津京(大津市)のSELFBOOKSさんの「カギ開放day」に店頭ダイレクト販売に伺います。今月は地元滋賀県彦根市のサンライズ出版さん、先月と同じく京都の英明企画編集さんの3出版社でお待ちしています。
そしてもちろん前回好評だったNami.さんの「本の交換所」も開催されます、いろいろな本の楽しみ方がみつかると思います。ぜひ遊びに来てください。

 

SELFBOOKさんはもともと無人のシェア型古書店という実験的な店舗、いわゆる大型書店とも町の本屋さんともちがう新しいタイプの店舗です。先月も普段はID登録者のみ入店できる店内に興味持たれるお客様が多かったです。

 

7/19(土)~20(日)10~17時

毎年恒例のBOOK MARKET 2025に今年は「英明企画編集」さんとの合同ブースで出展します。BOOK MARKETは今年で15回目の説明不要の人気の本の販売会、全国74の出版社と本と出会えます。そしてスタンプ集めてオリジナルトートバックもらって下さい。

浅草・台東館 7階北側会場
東京都台東区花川戸2-6-5

3連休の前半2日間です、当日は参議院選挙もあります、投票ついでにぜひお出かけ下さい(投票割りも予定しています)。初参加「英明の松下さん」の小気味よいトークを聞きにも、たくさんのお越しお待ちしております。(青木)

 

マクミランさん、23(月)はMBSラジオ「松井愛のすこ〜し愛して♡」に出演

2025年6月19日 木曜日

担当/中島 淳

ピーター・J・マクミランさん登壇のナカノシマ大学「2025年夏、大阪で知るあたらしい百人一首の世界」がいよいよ来週、6月27日(金)に迫りました。すでに7割が埋まっていますので、みなさんお早めにお申し込みください。

マクミランさんは京都嵯峨の、小倉山の麓に住んでおられます。そこから大阪に来るだけでも結構「旅」ですが、来週は三度、来阪されるようです。

〈その1〉

6月23日(月)の午前はMBSラジオ「松井愛のすこ〜し愛して♡(月〜金曜10:00から)」に、わざわざナカノシマ大学のプロモーションも兼ねて茶屋町までお越しいただきます。マクミランさんは11時過ぎから登場されるので、どうぞお楽しみに。

人気者の松井愛アナウンサーのことだから、フレンドリーかつぶっちゃけた質問でぐいぐい聞いてくると思いますが(百人一首のネタは豊富に持っていそう)、それを手練れのマクミランさんがどのように捌くかが聞きどころ。

ユニークな切り返しを楽しみにしておきます。

何よりも、マクミランさんの声と滑舌の良さをたっぷりとお楽しみください。

〈その2〉

27日(金)の講座本番を前に、またまた嵯峨の小倉山の麓から猛暑を押して大阪の「百人一首」の場所を訪ねるようで(たぶん海ぎわかと)、そこで「現場」を体感した興奮のままに翌日、中之島図書館に乗り込んで来られるそうです。

なので、かなり期待できること間違いありません。

ほんまにお忙しい人なので、この機会をお見逃しなく。

申し込みはこちらから。では、27日(金)にお会いしましょう。

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250627

 

百人一首の「小倉山」から来たるピーター・J・マクミランさん

2025年6月9日 月曜日

担当/中島 淳

2009年の10月にはじまったナカノシマ大学は今年で16年になるが、アイルランドの人が登壇するのも、「百人一首」にちなんだ講座を行うのも初めてなので、主催者としては二重三重のうれしさを感じている。

この4月20日(日)に京都の「須佐命舎」(上京区)で開かれたマクミランさんの講座「シン・百人一首」。超満員で、北海道から来た人もいて驚きました

地球の裏側にあたるアイルランドの研究者が、百人一首の沼にのめり込んだのは最近の話ではない。

2008年には、百首を英訳してコロンビア大学出版から発刊し、日米で翻訳賞を受賞している。日本文学研究者として名高いドナルド・キーンが絶賛したほどの内容だった。

マクミランさんは現在、百人一首の「聖地」である京都・嵯峨の小倉山の麓に住んでいる。

小倉山峰のもみぢ葉心あらば 今ひとたびのみゆき待たなむ(貞信公)

の場所だから、日本の古典文学の研究をするのにはうってつけのロケーションだろう。

昨年秋にはEテレ「100分de名著」に百人一首のプレゼンターとして出演。

今年1月22日に皇居の宮殿・松の間で執り行われた「歌会始の儀」では召人(めしうど)控を務め、召人三田村雅子さんの後に次の歌を詠んでいる。

初春に言の葉の花はblossom(ブロツサム)海越えてゆく夢をぞ見たる

それもこれも、一千年続く百人一首には、それだけ「時代を超えた普遍性」があり、「国際性」のある文学だということを彼が一貫して主張し、その研究成果が認められている故の大役だと思う。

今回、マクミランさんにはナカノシマ大学での講義をお願いするにあたって、「大阪で詠まれた歌」についての解説もお願いした。

その中でどれが取り上げられるかは当日のお楽しみだが、百人一首の六首は「大阪発」の歌である。

⚫︎住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ(藤原敏行朝臣)

⚫︎難波潟みじかき蘆のふしの間も あはでこの世をすぐしてよとや(伊勢)

⚫︎わびぬれば今はたおなじ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ(元良親王)

⚫︎音に聞く高師の浜のあだ波は かけじや袖の濡れもこそすれ(祐子内親王家紀伊)

⚫︎難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき(皇嘉門院)

⚫︎わたの原八十島かけて漕ぎいでぬと 人には告げよ海人の釣舟(参議)

※最後の歌は「篁(たかむら)が島根から隠岐に船出する際に詠まれたもの」という説と、「大阪で船に乗り込んで隠岐まで行った」という説とがあり、筆者は「八十島」という表現を考えて、大阪説を採っている

住之江区の、木津川河口近くに架かる渡船場にて。埋め立てのせいで海までの距離が遠くなったが、この辺りもきっと「岸に寄る波」の住の江だったはずである

「難波」「住の江」「高師の浜」……南海沿線の地名が3つも出てくる。南海電車はもっと言いふらしてほしい。
百人一首に登場する地名は子供にとっても「全国区」なので、「沿線はそんな由緒ある場所ばかり」と結構なアピールになるはずである。
筆者が九州から関西に引っ越してきた小学校6年の時、電車に乗るために路線図を見たら、「駅名が百人一首だらけ(吉野とか宇治とか須磨とか高砂とか)」で驚いたことを覚えている。
もちろん、京都や奈良で詠まれた歌のほうが多いのだが、梅雨明けが待ち遠しい大阪で、夏を先取りする百人一首の講座は、ココロにもカラダにもいいと思うし、もう一つの「効能」がある。
それは、「百人一首の世界を現代に置き換えたら、どんな風景(心象風景も含めて)が立ち上がるか?」をあれこれ考えてみるのはとてもおもしろい、ということ。

ナカノシマ大学の会場でも販売しますが、それまでガマンできない人はぜひご購入を。1,980円(税込)

マクミランさんはこのテーマに挑み、昨年暮れに自身が経営する翻訳・制作会社から『シン・百人一首 現代に置き換える超時空訳』(月の舟)を刊行した。
昨年5月、産経新聞でインタビューが掲載された。名物コーナー「一聞百見」の記者は結びの近くでこのように書いている。

つい最近、新しい原稿を書き上げた。出版社募集中というその本は…。

「百人一首の〝超訳〟です。和歌の世界を現代に置き換えるとどうなるか。意外と現代的な表現で言い換えられるんですよ」

(産経新聞WEB2024年5月31日)

原稿は5月に書き上げていたけれど、本にするまでにちょっと時間がかかったのは、デザインを凝りまくっているのが理由としてあるだろう(何と本文もオールカラーなので驚く)。

しかもカバーと本文挿絵を、売れっ子中の売れっ子マンガ家、東村アキコに頼んでいる。マクミランさんによると、「カバー絵の構図も考えました」と。LINEを送る小野小町のイメージだ。

「小野小町って左利き!?」と一瞬思ったが、この本(右開き)のことを考えると、スマホを右手に持たせて左手で操作させるほうが、小野小町の指先も着物のディテールも無理なく綺麗に見える。完璧なディレクションやなぁ……

中身についてはネタバレを避けたいので、百首のうち一つだけご紹介。

今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならでいふよしもがな(左京大夫道雅)

こちらの現代語訳は

「今となってはただもう、あなたへのこの思いをきっぱりと断ち切ってしまおうということだけ、せめて直接あなたに言う方法がないものだろうか」

なのであるが、超訳ではこのようになっている。

「あなたのこと諦めるから最後にLINEじゃなくて直接話したい」

 

人間の思うこと・することはSNSというツールが増えた程度で、千年前も今もそんなに変わっていない。そう考えると、高校の授業やかるた大会で気の入らなかった(かもしれない)百人一首が、新鮮な見え方をするのではないかと思います。
受講申し込みはこちらまで→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250627

6月の140B出張販売の予定

2025年6月3日 火曜日

6月はこの2つ

6/15(日)11~16時
ブランチ大津京(大津市)のSELFBOOKSさんの「カギ開放day」に、京都の出版社、英明企画編集さんと一緒に本の店頭デモ販売に伺います。
SELFBOOKさんはもともと無人のシェア型古書店という実験的な店舗、いわゆる大型書店とも町の本屋さんともちがう新しいタイプの店舗です。今回、普段はID登録者のみ入店できる店内も自由にご覧になれます。
当日はNami.さんの「本の交換所」も開催されます、いろいろな本の楽しみ方がみつかると思います。ぜひ遊びに来てください。

 

 

6/21(土)~22(日)10~18時
大垣書店イオンモールKYOTO店さんでの「会いにゆける出版社フェス」期間中(6/14-7/13)に参加の12出版社スタッフとお客さまとの直接販売会が開催されます。
大垣書店さんはいまさら説明不要の京都のメジャー(近年では全国にも店舗展開中)、イオンモールKYOTO店さんは特に賑わいにあるお店、そんな店の雰囲気に負けないよう参加出版社も元気に出展します。大垣書店さん発行の雑誌「KYOTOZINE」の特別販売も予定のようです。
店内中央エスカレーター脇の特設ワゴン会場でお待ちしております。

 

6月はたくさんの京滋のお客さまと出会えること楽しみにしています(青木)

 

5月25日(日)の天神寄席は、札埜和男さんの「大阪弁」

2025年5月15日 木曜日

担当/髙島幸次

2025年4月28日発売。1,155円(税込)

5月25日(日)天神寄席にゲストとして登壇される札埜和男(ふだの・かずお)さんから落語ファン、大阪弁好きのみなさまにメッセージが届きました。以下、ぜひご一読ください。

 このたびPHPより『大阪弁の深み−その独特の魅力を味わう』という新書を出しました。

今回の天神寄席のタイトルが「ほんまもん」の大阪弁。テレビや小説、映画などバーチャルな世界で使われる疑似大阪弁ではなく、まさしく大阪の町をフィールドワークして、拾い集めた大阪弁をもとに、「ほんまもん」の大阪弁について使用場面ごとに分析した書です。

フィールドの場は地元・天神橋筋商店街はもとより、遊園地ひらパー、野球場のほか、大阪の裁判所・税務署・警察・役所・学校の現場など「お堅い」ところも含まれます。

 今回、トリの桂塩鯛師匠に「ふたなり」を演じて頂けること、大変嬉しく思います。

  初めて本を出したのが『大阪弁看板考』(1999年/葉文館出版)という、大阪弁のお店を取材し、その由来や店主のライフヒストリーを描いた内容でした。その取り上げた店の中に「いててや」というお店があります(今はもうありません)。最寄り駅は本町でした。店には灘の「白鷹」、アテはイカの足とメザシのみ。大阪弁で「いて下さいね、どうぞゆっくりしていって下さい」という意味ですが、店主に伺うともっと話は奥深かったのです。

「『ふたなり』ゆう落語があって、そこから付けてん。落語の中で娘さんが森の中で首つり自殺して男の者(もん)二人がそれを見に行くんやわ。ほんで二人とも怖なって『(ここに)いててや、いててや』いうセリフがあって、そこから採ったんや。その案出したらここのお店のブレーンの和多田勝さん(1942年大阪生まれ1994年没。6代目松鶴の甥、エッセイスト)や古川嘉一郎さん(放送作家)もOKしてくれはって・・・」(拙著『大阪弁看板考』p.103より)。

 店主の「おかん」は若野淑子さんという雑誌『上方芸能』元記者、「いててや」の暖簾の字は和多田氏によるものでした。僕が「大阪弁ゆうのんは要するに船場のことばですね」と水を向けると「何ゆうてんねん! 船場のことばなんぞ一部の特権階級が使てた特殊なことばやないの! 元々京都から来よった連中のことばやがな。あんなもん大阪弁ちゃう。ほんまの大阪弁は昔から大阪に住んでた庶民のことばを大阪弁ゆうねん」と激しく言われました。新たな視点が啓かれた瞬間でした。

松鶴、広澤瓢右衛門、三田純市、仁鶴、枝雀、松原千明、三林京子などが常連で、店内の和多田さんの絵を見ながら「いい文化人皆死んでもた」と寂しそうに呟いておられました。

強いもんにはまず疑ってかかり、権威をカサに着て偉そうにする人間に対してはボロクソ、弱い方に寄り添い、その道でコツコツ努力するいい文化人を評価していた方でした。とりわけ芸が素晴らしいのに認められていない人に優しかったそうです。桂文我さんが「ワシ、独演会したことがないねん」と言ったのをきいて「ほな、わしがやったろ」と言ってコスモホールが満員になったエピソードも残っています。

 若野さんとの出会いはこのときだけ(1995年11月滞在時間5時間)です。名残惜しく店を出る時、カウンターから出てまっすぐ立ってお辞儀して見送って下さいました。その時励まして下さったことばが「ほんまもんになりや」。心に深く染み込み、その後の研究の支えになりました。

もう一度イカの足とメザシで、白鷹を呑んで、若野さんと話がしたかった。そうずっと思ってきました。塩鯛師匠の「ふたなり」を通じて、若野さんとの再会を楽しみにしています。

5月25日(日)天神寄席の申し込みはこちらで→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250525

ナカノシマ大学5月講座(講師・平川克美さん)のご案内

2025年5月10日 土曜日

さる4/6(日)隣町珈琲で開催された『マル』(集英社インターナショナル刊)刊行記念対談での平川克美さんと青山ゆみこさんのトークイベントでは、通常はある「生配信」も「アーカイブ配信」がなかった。閉じられた空間でその場にいたものだけが本の誕生への経緯や秘話、裏話を知ることが出来た貴重な時間だった。そして「閉じた」意味は、活字のかたまりが紙に刷られて本になっていくまでの話と本の内容とは別にしておいてもよいのではないかという配慮があったと感じた。表に出しにくい葛藤の時間について語られた本の誕生前夜の話だったと思う。

今回その『マル』の著者・平川克美さんを東京からお招きしての5/23(金)のナカノシマ大学5月講座では本の内容についてぞんぶんに語ってもらえることだろう。『マル』で描かれる舞台は1950年代の工場のある東京の下町であり、まだ何者でもない若き「マル」が少年から青年へ成長、そしていわゆるリタイア世代となって戻ってきた町と仲間の話。著者自ら「自伝的青春小説」と語るように本の中には虚実入り混じっているだろう、それでもその時代にその場に立ち会ってきた「マル」にしか見ていない世界が描かれているはず、「他者に語れない」個人の人生を記録して残しておくこのとの大切さがそこにあると思う。それは全ての人々が本来持っているオリジナルのドラマでもあるのだから。大阪にも多くの町工場のある町があるだろう、むしろ今や東京より大阪の方が多いのではないかと思う、そういった町で生まれ育つことの意味や人生への影響などを新刊『マル』に絡めて語られるだろう。
そして小説的アプローチという新しい試みだった「小説家・平川克美」誕生について、書き終わってからの著者ご本人の気持ちや刊行後のまわりの反響など現在の状況も聞いてみたい。

その後は『マル』を読んだ読者や、ナカノシマ大学を受講された方やこの本を引き取って未来に残しておく作業をしていくことが『マル』への最大の敬意だと思う、私も含めて。

まずはナカノシマ大学で平川克美さんの肉声を聞いていただければ幸いです(140B青木)

【ナカノシマ大学 5月講座】
「平川克美が肉声で語る「町工場で育つ」ということ」
5月23日(金)
18:00〜19:40(開場17:30)
大阪府立中之島図書館3階 多目的スペース
2,500円(小学生以下1,500円)
お申し込み→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250523

 

 

4月23日のナカノシマ大学で販売する、河井寛次郎の本

2025年4月20日 日曜日

担当/中島 淳

左は1,760円。右は1,870円(税込)。右には『島根新聞』での河井のインタビューや盟友・柳宗悦(1889〜1961)の寄稿も載っている。両方とも中島の私物ゆえシワや汚れが目立ちますが、当日販売するのはもちろん新品です(笑)

おかげさまで受講申し込みも定員に達し、あとは「キャンセルを見越して」いつ締め切ろうかと考えている4月23日(水)のナカノシマ大学「炎の人、言葉の人。生誕135年 陶工・河井寛次郎と大阪」である。

当日は講師・鷺珠江さんの講義だけでなく、河井寛次郎(1890〜1966)のことをもっと知っていただこうと、講談社さんにお願いして代表的な著書2つを送ってもらい、会場で販売する。

一つは昭和28年(1953)に朝日新聞社から初版が発刊され、平成8年(1996)に文庫化された随筆集『火の誓い』。

もう一つは河井の没後40年の平成18年(2006)には文庫の形で発刊された『蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ』。いずれも講談社文芸文庫である。

前者も後者も、日々の仕事や旅、民藝のつくり手たちとの切磋琢磨から生まれる陶工・河井寛次郎の「言葉」を丹念に集めた著書。どのページを開いても、今回の講座名にした「言葉の人」である河井の姿が生き生きと浮かんでくる。

タイトルこそ違えど両者はシリーズのような感じで、併せて読むとより面白いかと思う。

どちらの本にも、前回のブログで紹介した河井の一人娘、河井須也子さん(1924〜2012)が寄稿している。『火の誓い』では「人と作品・点描記」を、『蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ』では「解説」を書かれていて、異なるエピソードが掲載されている。

記念館の奥にある登り窯「鐘溪窯(しょうけいよう)」。河井が使っていたのは手前の室

前者では彼女の少女時代。民藝メンバーの「たまり場」であった河井家での、バーナード・リーチ(1887〜1979)たちとの懐かしい交友の記憶を紹介している。

長身だったリーチに合う布団がないために、河井の妻で須也子さんの母であるつねさんは自分の着物をほどいて中に綿を入れ、細長い布団を急遽こしらえた。

須也子さんがそれを「八ツ橋のおふとん」と名付けてはしゃいでいたくだりが微笑ましい。

後者には、須也子さんの夫である陶芸家の河井博次(河井の養嗣子/1919〜93)のことも書かれている。

彼女が見た、父・寛次郎と夫・博次による「美のシーソーゲーム」についての記述が印象的だ。博次が「打掛釉」に仕事の突破口を見出し、新境地となる作品を次から次へと送り出すと、その出来栄えを見た河井が「ついにわしを越えた」と手放しで称賛する。

須也子さんはそのくだりを書くのに、きっと胸がいっぱいになったのではないか。こちらの本には二人の対談も載っている。

不世出のクリエイターには、その人の人生を間近に見ていて、没後も作品の価値や人間的魅力を大衆に伝える優れた「翻訳者」がいるかいないかで、その人の歴史的・社会的評価も変わってくるように思う。

中身は開けてのお楽しみです

岡本太郎には仕事と人生のパートナーで彼の養女でもあった岡本敏子がそうであったように、一人娘の須也子さんも見事な「翻訳者」として人生をまっとうされたのではないか。

河井がこの世を去った7年後の昭和48年(1973)に記念館を立ち上げ、開館から52年が経過したいまも国内外から連日、ファンが訪れる場になっているのは、須也子さんや河井家の方々、スタッフの人たちの献身的努力の賜物だろう。
記念館や資料館の維持がいかに大変かは、これまでに鳴物入りでオープンした館の「その後」を知るだけでもう十分だと思う。
4月23日(水)ナカノシマ大学の講師である鷺珠江さんは、河井の孫であり、博次と須也子さんの三女。
須也子さんの「翻訳者のDNA」と河井家に代々伝わる「上機嫌のDNA」を両方持っている、全国的に知られた河井寛次郎記念館の学芸員だ。
だから、話がおもしろくない訳がありません。「締切」になる前にぜひお申し込みください♬

記念館からは写真のおみやげも受講者全員にお渡しします。

受講お申し込みはこちらから→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250423