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10/7、8、9 三連休イベント出展のお知らせ

2023年10月4日 水曜日

今週末は京都・滋賀でのイベントに出展します。

下鴨中通ブックフェア2023
10/7(土)-8(日)
10:00-16:00
京都府立京都学・歴彩館

二年連続出展になります、
昨年好評だった品切れの蔵出し京都関連本もあるだけ持っていきます。
今年は本の雑誌社も上洛、
本好きは楽しめること間違いなし。

 

きのもと秋のほんまつり
10/9(月・祝)
10:30~
江北図書館駐車場(滋賀県長浜市)

内田樹関連本をいつもより多めに持っていきます。
そして、もちろん140Bの定番本も!
運営の能美舎さんとのファーストコンタクトも楽しみです。

2会場とも青木がお店におります。
いつもの版元さんや本屋さん仲間もたくさん出展されます
その会場でしか味わえない空気と一緒に本の世界をお楽しみください。

『生きた建築 大阪』重版出来

2023年9月26日 火曜日

「発売即」「たちまち」などは派手でかっこいいし羨ましい時もあるけど、じっくり時間をかけて丁寧に売ってきた書籍として充実感にもひとしおのものがあります。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015年刊行の『生きた建築 大阪』は、今や日本最大級の公開建築イベント「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」で公開される建築物リストのベースになっている「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」の50の建物を紹介したもので、2016(取次扱いは2017)年より発売している「イケフェス大阪公式ガイドブック」の対となる定番の書籍となっています。

生きた建築の関連書としてふさわしい生きた書籍として8年ぶりに、『生きた建築 大阪』重版出来です。

平尾剛さんは9/28(木)にこんな話をします!

2023年9月22日 金曜日

担当/中島 淳

9/28(木)ナカノシマ大学の講師・平尾剛さんから、

日本代表時代。キックで前進をはかる平尾さん

「当日はこんな話をしたいと思います」というメールをいただいた。

「大まかな流れとしては、

1  ラグビーワールドカップ2023

2  スポーツの面白さ=具体的な人物を紹介しつつ

3 「日本のスポーツのアカンところ」をチクリと

 

でいこうかなと思っています」とのこと。どうぞご期待ください。

1(ラグビーW杯2023)について

 

9月28日(木)18時の時点で、実際にラグビーワールドカップ1999でFB(フルバック)としてプレーした平尾さんから見て、優勝候補の筆頭や「台風の目」となりそうなチーム、そして日本代表がサモア、アルゼンチンを下してベスト8に進出するには何が必要か(誰のどんなプレーが、ということも含めて)、という展望を。

2(スポーツの面白さとリスペクトする人物)について

 

こちらについては固有名詞も含めて当日のお楽しみですが、リスペクトする人物は多岐にわたっています。

体がきしむような肉弾戦もあれば、砂浜で気軽にプレーできるタッチラグビーもあったり。体力に応じたスポーツを日頃から楽しんでと平尾さん

ラグビー選手では「冷静な分析ができる、言葉に重みのあるアスリート」である、あのフォワードの選手。プロ野球では「古典的な筋トレをしないからだの鍛え方をしている」いまや孤高の存在であるあの投手。大リーグでは「若年層の成長を意識しつつ、技術を惜しみなく伝える」あの人や、ОBながらいまだに現役MLBプレーヤーから「憧れ」の眼差しで賞賛されるあの人のことをたっぷりと。

もちろん選手だけでなく、伝説の指導者やあの名著を書いたジャーナリストなど、「平尾剛リスペクト」の人物が続々登場します。

3(日本のスポーツのアカンところ)について


平尾さんは東京五輪や神宮外苑再開発など、スポーツを大義名分に「利権」を得たい人たちの動きに対して、元アスリートかつスポーツ教育学者の立場で警鐘を鳴らしてきましたが、それ以外にも「絶叫ワンパターンの実況中継」や「バラエティ番組で消費されるスポーツ選手」など、平尾さん自身が「今、スポーツを見ていても素直に楽しめない」と思える様々なことについて、ざっくばらんに語ってもらいます。

ナカノシマ大学終了は19:30で、日本vsサモア戦のキックオフは翌朝4:00。どうぞお楽しみに!

スポーツの魅力を「言葉」で語れる人・平尾剛さん

2023年9月13日 水曜日

担当/中島 淳

平尾剛(ひらお・つよし)さんの新刊『スポーツ3.0』の発売前夜となるオンライントークイベント(9月8日開催)を、砂かぶりの特等席で見せていただいた。

平尾さん(右)と、編集者でミシマ社代表の三島邦弘さん。2人とも1975年生まれの同い年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平尾さんは神戸製鋼コベルコスティーラーズではウィング(WTB)とフルバック(FB)で活躍し、ウェールズなどで開催された「ラグビーワールドカップ1999」では日本代表として活躍。身長2m・体重100㎏ある外国選手の強烈な当たりや数々のずる賢いプレーに体を張って対抗してきた人である。そんな人からナマで話が聞けるなんてめったにないことだ。

それ以上に平尾さんの話に価値があると思うのは、引退後「スポーツ教育者」となって大学で教鞭をとる傍ら、「社会的に弱い人間を顧みない、問題だらけの東京五輪は中止するべし」など、常に堂々と社会に発言してきたからである。

「爽やかな体育会系」というのは、スポーツ団体を牛耳るエラいさんにとっては得てして「従順で使いでのある人間」として利用されることが多いのだが(JOCの会長がまさにそれですわな)、平尾さんは「爽やかでナイスガイのアスリート」ではあっても、「アカンもんはアカン」と声を出す人で、筆者は常にリスペクトしている。

その平尾さんが9/28(木)のナカノシマ大学に講師として登壇するので、真っ当かつ分かりやすくてオモロい「平尾トーク」をひと足お先に浴びておきたいという手前勝手な目的で京都にお邪魔する。

会場は京都御苑の東側にあるミシマ社の和室。日が落ちるといち早くひんやりした秋を感じられるロケーションの一軒家というのも実にうらやましい。ほっこりした空間で、平尾さんも聞き手の三島さんもリラックスした空気の中でトークがはじまった。

審判と協力して「いい試合」になるようプレーするのがラグビーの選手

将棋の名人戦中継みたいな感じがしないでも(笑)。背中はミシマ社の角智春さん(左)、山田真生さん

 

ラグビーワールドカップ2023フランスが開幕目前だったので、ラグビー観戦の魅力を。とくに審判(レフェリー)の役割とレフェリーに対する選手に関わり方について、興味深いことを話してくれた。

「日本の警察って、停止線のところで隠れて待ち伏せしていたりするでしょ。ラグビーの審判はそれと真逆ですわ」

どういうことなのだろうか。

「レフェリーは、判定者ではなく『指揮者でありデザイナー』なんです。いい試合に持っていけるように常に選手とコミュニケーションを取って、『そこから前でプレーしたらペナルティやで、出たらアカンで〜』と注意して反則でゲームが途切れないようにする」

たしかに笛ばっかり吹かれてその都度ゲームが中断してたら観るのはしんどい。「反則を未然に防ぐ」というのも審判の役割というのは目からウロコである。同時に

「ブレイクダウン(ボールの争奪戦)の攻防になった時に、密集に正面から入らないで斜めから入るとオフサイドを取るレフェリーと、それは流すレフェリーがいます」

そのあたりはかなり低めでもストライクを取る人、取らない人という野球の審判に似ている。

「斜めから入ってペナルティにされて文句を言う選手は子ども。大人のチームはその時点で審判のクセを見抜いて、『こっから入ると笛を吹かれるからもう少し正面から入ろう』と修正して次に備えます。手練れの選手は細かく、『いまのは角度が横すぎたんですかね』と確認して、できるだけ審判と話そうとする」

そんな審判や選手の動きも頭におきつつラグビーを見ると確かにおもしろくなる。「クレバー」だと言われる選手はさすがによく審判と話しているよなぁ。

平尾さんはこのほかラグビーワールドカップ観戦の思い出として、「敵味方のサポーターが肩組んで記念撮影するなんて、野球やサッカーでは考えられないでしょ。アレは両者の間に『ええ試合を観に来た同士』だという連帯感があるんですよ」と言うと、三島さんは驚いて、ミシマ社の地元・京都パープルサンガの応援に行った日のことを話してくれた。

「サンガのユニフォームで飲み物を買いに行ったら、係員から『ここから先は相手チームのサポーターがいるのでそれを脱いでください』と言われたんですよ」

Jリーグでもよく一触即発状態からサポーター同士が衝突してケガ人まで出る事件になることがあるが、そういう点でもラグビーは観客席の中に「敵味方のテリトリー」というのがない。同じブロックに対戦相手のサポーター同士が共存するのはぜんぜん普通なので、「スポーツ観戦に来たんだから、敵味方を超えて楽しめよ」と平尾さんではなくとも言いたくなる。

「ド下手なオッサンが楽しんで競技を続けている国」に学ぼう

 

このほか、日本の部活スポーツの問題点として平尾さんは「補欠というのをなくしたいですね。どんなレベルの選手でも、それに応じた形でたくさん試合ができるような方向に舵を切ることが、スポーツの豊かな国になる道だと思います」と。

野球マンガにもよく登場する、「一軍がバッティング練習をしている外野の奥で、球拾いと声出しだけをしている、背番号のない薄汚れたユニフォームの二軍三軍」というアレですな。たしかにそれも「青春の1ページ」かもしれんが、ボールゲームは試合をしてみないとその楽しさが分からない。なのに彼らは試合ができない。

平尾さんは著書の中で、元プロサッカー選手の中野遼太郎さんの言葉を紹介している。

「日本にサッカー文化が根づかないのは『めっちゃ楽しそうにサッカーをする、死ぬほどサッカーが下手なおっさん』がいないからではないかという」

そして

「つまり育成年代の子供たちは、プロ選手になれなくてもサッカーを楽しめる道が他にあること、そうして生涯にわたって続けられる安心感を、このおっさんたちから学んでいるのではないか」(平尾剛『スポーツ3.0』より)

トークイベントの中でも、「下手でもガハハと笑って一生続けられるスポーツ」の大事さが何よりも盛り上がった。体を動かしてチームでプレーするのは楽しいものだから、本当は。「やったことがないことをするとワクワクする、というのがスポーツの一番大事なところだから、生活全般がスポーツですよ」という平尾さんの言葉には、かなり考えさせられた。

「ケガを押して試合に出るのを『美談』とするような悪しき風潮はヤメましょう」同感です

「金メダル」や「世界一」を取った時はメディアが総動員で盛り上がるわが国のスポーツだけど、日常生活ではどうなんやろか? スポーツというと「死ぬほどサッカーが下手なおっさんが楽しそうにやる」姿よりも、「前回りができなくて恥ずかしかった体育の授業」を思い出してしまう。でもスポーツには、「落ちこぼれ」や「補欠」というものとはぜんぜん違うところに楽しさがあるはずだ。

平尾さんの言葉は、そんな「呪縛」を解いてくれるヒントになる。ちなみに、著書『スポーツ3.0』は9/15(金)にいよいよ発売です。

9/28(木)ナカノシマ大学の会場でも販売しますよ。

 

拝啓・古地図サロンから38

2023年8月16日 水曜日

2023年7月28日・本渡章より

【今回の見出し】

■7月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動★8月~11月(講座・テレビ・イベント・執筆など)
  • 古地図ギャラリー第18回
    東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その18〉

■古地図サロンのレポート

開催日:7月28日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

お暑うございます。皆さま、お元気でいらっしゃいますか。

これまでの展示は市街地図が主で、都府県単位の地図が少々というケースが多かったのですが、今回は地形図を1枚添えてみました。題名は「大阪近郊」(昭和2年発行)。地図の中でも理系の匂いがする地形図は、根っからの文系人間を自覚している私にはいまひとつなじめなかったのですが、この図には意外な新鮮味を感じました。長~いイモムシみたいな堤防の記号に着目すると、大阪府下のあちらこちらに延びていて、しかもしばしば地域をすっぽり囲んでいる。「囲堤」という呼び名は知っていたものの、こんなにたくさんあったとは驚きました。大規模で抜本的な治水が行き届かなかった時代に、水害から地域を守る役目を担っていたのです。一般的な市街図ではわからない治水の歴史が垣間見えました。地形図は基本的にモノクロで見かけが地味です。等高線と多種の記号でびっしり埋め尽くされているのもなんだか辛気臭い。そんな先入観を持っていましたが、これを機に認識をあらためます。

さて、古地図サロンの姉妹編「サロン東風(こち)」が近鉄八戸ノ里駅前の豆玩舎ZUNZO(宮本順三記念館)で9月8日に催されます。グリコのおまけミュージアムとして知られている豆玩舎(おまけや)さんでのサロンはまた違う雰囲気になると思います。情報は【最近と今後の古地図活動】をご覧ください。

では、9 月のサロンでまたお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◉今回のサロンで展示した古地図

◆地図(原図)
大阪市街全図・著名諸会社・銀行・商店案内 大正2年(1913)大阪毎日新聞社
大阪近郊 昭和2年(1927)大日本帝国陸地測量部
大阪都市計画地域図 戦前 大阪市電気局
最新天王寺区地図 昭和11年(1936)和楽路屋
近畿遊覧交通略圖 戦前 作者不明

◆復刻
大阪実測地図・6枚組 明治20年(1987)内務省
五畿内掌覧図 天保12年(1841)河内屋喜兵衛・竹原好兵衛他

◆編集図
浪花の繁栄~大坂三郷の商工~ 『まちに住まう 大阪都市住宅史』付録
近代都市の構築~大大阪の生活と文化~ 『まちに住まう 大阪都市住宅史』付録

★次回は2023年9月22日(金)午後3~5時開催予定

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーしてください)。途中参加・退出OK。勉強会でもなく会員制でもありませんので、どなたでも気軽にご参加ください。

諸事情により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

 

【最近と今後の古地図活動】

●絵師・井沢元晴が歩いた〈1945〉瓦礫の街」

8月1日(火)~15日(火) 大阪府立中之島図書館・2階多目的スペース
終戦まもなく、広島から大阪へ、焼跡の街を歩き描いた絵師がいました。歳月を経て完成された戦災画を遺品とともに公開。展示構成を担当。

展示の模様とインタビューが8月3日NHK(鳥取放送局)ニュース番組「いろ★どり」でオンエア。
8月4日付・産経新聞朝刊でも紹介されました。

 

●「家族で出かける東大阪むかし旅~古地図のまちをのぞいてみよう

8月20日(日)午前10~12時 旧河澄家
「古地図って何?」もしかしたら日本初かもしれない親子連れ夏休み古地図イベントをいたします。江戸時代に代々庄屋を務めた旧家の河澄家(東大阪市日下町)にて。

問い合わせは東大阪市役所06-4309-3283(文化財課)

日本地図学会「鳥瞰図セッション」にパネリストで出演

 

8月27日(日)10時30分~12時 岐阜県図書館ホール
8月26~27日に開催される日本地図学会・定期大会でもよされるセッション。鳥観図絵師の青山大介さん、岡本直樹さんと本渡章がパネリストを務めます。2日間の大会は他にも盛りだくさん。

 

もうひとつの古地図サロン「東風(こち)」

9月8日(金)午後2~4時 豆玩舎ZUNZO(宮本順三記念館)
グリコのおまけミュージアムとして知られる豆玩舎(おまけや)の大きな子供部屋みたいな会場で、風の向くままの新企画。豆玩舎(おまけや)は近鉄八戸ノ里駅前。東大阪観光協会後援。

 

朝日カルチャーセンター中之島での講座8~11月

「古地図地名物語」8月25日(金)・9月22日(金)午前10時30分~12時
阿倍野区・平野区の地名を訪ねます。
「梅田の歴史、平安期から」10月23日(月)・11月13日(月)午前10~12時
ビル街に残る平安時代以来の梅田の歴史の数々。教室と町歩きの講座。

銀杏歴史研究会「地図と資料でたどる[70年万博]と[あの頃の大阪]」

9月10日(日)9時30分~11時30分 大阪駅前第2ビル・第3研修室。
1970年開催の大阪万博はいったい何を残したか? 当時の世相をふりかえりつつ、万博から民博への大回転、太陽の塔の生誕など。

主催・銀杏歴史研究会

「古地図で知る大阪の災害史」

9月24日(日)13時30分~15時 平野区民センターで講演
6月の中之島図書館「江戸時代の災害に令和の私たちが学ぶこと」に続き、災害の話をします。今回は水害と街の暮らしがテーマ。

主催・平野区民センター

 

大正区ウォーキング(題名未定)

10月1日実施。詳細は後ほどお知らせ。

主催・大阪コミュニティ通信社

平野区民センターで講演「古地図が語る大災害」(仮題)

9月24日(日)13時30分~15時

6月の中之島図書館「江戸時代の災害に令和の私たちが学ぶこと」に続き、災害がテーマの講座です。主催・平野区民センター。

街の話「江戸から明治へ~古地図の天満はこんな街」

11月23日(祝)15~16時30分 北勝堂

西天満に根をおろしたまちライブラリー「北勝堂」さんの主催。地元の話たっぷりの講座。

雑誌「歴史人」10月号(9月4日発売)に執筆

京の都の大通り、河原町通・烏丸通の歴史の話(2頁)を執筆。歴史人×お通り男史タイアップ企画。

ABCアーク「歴史発掘プログラム」玉野市編

アートとポタリングと鳥人と製塩の街、岡山県玉野市の知られざる歴史発掘がテーマ。これまで伊丹市・泉州・紀の川市(和歌山県)・但馬播磨(銀の馬車道・鉱石の道)などの歴史発掘プログラムに参画。ABCアークは「歴史人」発行元。

●「大阪の地名に聞いてみた」ブログ連載、全12回24編が完結!

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。一年間の連載が2023年1月に完結(題字と似顔絵・奈路道程)し、書籍化が決定! 追加取材を加え、ブログの内容を大幅に再構成し、刊行されます。
それまではブログ「大阪の地名に聞いてみた」でお楽しみください。

第12回ここは水惑星サンズイ圏【前編・後編】
第11回島の国の島々の街【前編・後編】
第10回仏地名は難波(なにわ)から大坂、大阪へ【前編・後編】
第9回人の世と神代(かみよ)をつなぐ神地名【前編・後編】
第8回語る地名・働く地名【前編・後編】(仕事地名・北摂編)
第7回古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)
第6回街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】(仕事地名・大阪市中編)
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】

 

●動画古地図でたどる大阪の歴史」続編、作成中

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。「此花区・港区・大正区」の動画も作成中。(制作・大阪コミュニティ通信社)

|古地図ギャラリー|

【内裏図】文久3年(1863)池田奉膳蔵

内裏図は禁裏図とも呼ばれ、御所とその周りの公家屋敷を描いた京都ならではの絵図。文久から元治、慶応へとめまぐるしく年号が変わった1861年から1868年は、京都が幕末期の激動の舞台になったのを反映して、多くの内裏図が発行されました。改訂が繰り返されて出版され、反響が大きかった図です。
池田奉膳蔵「内裏図」はその一枚。華麗な多色刷り、各屋敷の家紋、家領・石高、正門の位置などが描か込まれ、さらには左端に、御所・公家町の外の宮・門跡・堂上の一覧図を載せるなど、見た目の美しさ、情報の豊富さで、他の内裏図を凌いでいます。公家屋敷群の北東部が白枠になっているのは、そこに屋敷がない空白地であるのを示しています。北東は鬼門にあたり、公家衆は鬼門とされる北東に屋敷を持つのを避けたのでしょう。同じ頃の他の内裏図にも同様の空白が見られます。

 

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。
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過去の古地図ギャラリー公開作品

第17回(2023年6月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「地球萬國山海輿地全図」

②青山大介作品展2023

 

第16回(2023年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「天王寺・石山古城図」

 

第15回(2023年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より長谷川圖書「摂津大坂図鑑綱目大成」

 

第14回(2022年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より久野恒倫「嘉永改正堺大絵図」

②鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「私たちの和田山町」

 

第13回(2022年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「淀川勝竜寺城跡全図」

 

第12回(2022年7月)

①東畑建築事務所「清林文庫」より秋山永年「富士見十三州輿地全図」

 

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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●電子書籍のお知らせ

本渡章の著書(古地図・地誌テーマ)のうち、電子書籍になった10冊(2022年末現在)は次の通りです。
(記載の刊行年は紙の書籍のデータです)

『鳥瞰図!』140B・刊(2018年)

思考・感情・直観・感覚…全感性を目覚めさせる鳥瞰図の世界にご案内。大正の広重と呼ばれた吉田初三郎の作品群を中心に、大空から見下ろすパノラマ風景の醍醐味を味わえます。併せて江戸時代以来の日本の鳥観図のルーツも紐解く、オールカラー・図版多数掲載の決定版。

『古地図で歩く大阪 ザ・べスト10』140B・刊(2017年)

梅田・中之島・御堂筋・ミナミ・天満・京橋・天王寺。阿倍野・住吉・十三・大正・平野の10エリアを古地図で街歩きガイド。さらに博物館、図書館、大書店、古書店での古地図探しの楽しみ方、大阪街歩き古地図ベストセレクション等々、盛りだくさんすぎる一冊。オールカラー・図版多数掲載。

*上記2冊は各電子書籍ストアでお求めください

*下記8冊は創元社(オンライン)の電子書籍コーナーでお求めいただけます

『図典「摂津名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

大阪の地誌を代表する「摂津名所図会」の全図版を掲載。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添えた。調べものに便利な3種類の索引、主要名所の現在地一覧付。江戸時代の大阪を知るためのビジュアルガイド。

『図典「大和名所図会」を読む』創元社・刊(2020年)

姉妹本『図典「摂津名所図会」を読む』の大和(奈良)版です。主要図版(原寸大)には細部の絵解きの説明文、その他の図版にもミニ解説を添え、3種類の索引、主要名所の現在地一覧も付けるなど「摂津編」と同じ編集で構成。江戸時代の奈良を知るためのビジュアルガイド。

『古地図が語る大災害』創元社・刊(2014年)

記憶の継承は防災の第一歩。京阪神を襲った数々の歴史的大災害を古地図から再現し、その脅威と向き合うサバイバル読本としてご活用ください。歴史に残る数々の南海トラフ大地震の他、直下型大地震、大火災、大水害の記録も併せて収録。

『カラー版大阪古地図むかし案内』(付録・元禄9年大坂大絵図)創元社・刊(2018年)

著者の古地図本の原点といえる旧版『大阪古地図むかし案内』に大幅加筆し、図版をオールカラーとした改訂版。江戸時代の大坂をエリアごとに紹介し、主要な江戸時代地図についての解説も収めた。

『大阪暮らしむかし案内』創元社・刊(2012年)

井原西鶴の浮世草子に添えられた挿絵を題材に、江戸時代の大坂の暮らしぶりを紹介。絵解きしながら、当時の庶民の日常と心情に触れられる一冊。

『大阪名所むかし案内』創元社・刊(2006年)

江戸時代の観光ガイドとして人気を博した名所図会。そこに描かれた名所絵を読み解くシリーズの最初の著書として書かれた一冊。『図典「摂津名所図会」を読む』のダイジェスト版としてお読みいただけます。全36景の図版掲載。

『奈良名所むかし案内』創元社・刊(2007年)

名所絵を読み解くシリーズの第2弾。テーマは「大和名所図会」。全30景の図版掲載。

『京都名所むかし案内』創元社・刊(2008年)

名所絵を読み解くシリーズの第3弾。テーマは「都名所図会」。全36景の図版掲載。

※その他の電子化されていないリアル書籍(古地図・地誌テーマ)一覧

『古地図でたどる 大阪24区の履歴書』140B・刊(2021年)

『大阪古地図パラダイス』(付録・吉田初三郎「大阪府鳥瞰図」)140B・刊(2013年)

『続・大阪古地図むかし案内』(付録・グレート大阪市全図2点)創元社・刊(2011年)

『続々・大阪古地図むかし案内』(付録・戦災地図・大阪商工地図)創元社・刊(2013年)

『アベノから大阪が見える』燃焼社・刊(2014)

『大阪人のプライド』東方出版・刊(2005)

 

●本渡章(ほんど・あきら)プロフィール

1952年大阪市生まれ。作家。(財)大阪都市協会発行時の「大阪人」編集などを経て文筆業に。1996年第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。短編が新聞連載され『飛翔への夢』(集英社)などに収録。編著に『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)がある。その後、古地図・地誌をテーマに執筆。
著書『鳥瞰図!』『古地図でたどる大阪24区の履歴書』『古地図で歩く大阪 ザ・ベスト10』『大阪古地図パラダイス』(140B)『古地図が語る大災害』『カラー版大阪古地図むかし案内』『図典「摂津名所図会」を読む』『大阪暮らしむかし案内』(創元社)など多数。共著に『大阪の教科書』(創元社)がある。

「服の話」で思い出す江弘毅との会話 in 1987

2023年8月16日 水曜日

8月31日(木)のナカノシマ大学には弊社の看板編集者で文筆家の江弘毅が登壇するが、お題は彼の生家(岸和田の洋装店)にも関係ある服の話である。

江は2006年の『「街的」ということ〜お好み焼き屋は街の学校だ』(講談社現代新書)をはじめ、京阪神の「店」や「街」について数多くの著書を残しているほか、「岸和田だんじり祭」についても著書が2冊ある。けれど服についての本は初めてだ。

『なんでそう着るの? 問い直しファッション考』2023年6月発売(亜紀書房)。ナカノシマ大学当日も会場で販売

本の中身については詳しく書かないが、「服を着ていく場所」について、「寿司屋」「鰻屋」などについての考察はこの人ならではの視点だし、ドラマ「孤独のグルメ」の松重豊さん(井之頭五郎役)の背広姿がまことに理にかなっている、という指摘もその通りだと思う。服を着るというのはとことん「社会的」な行為なので、周りにいる人が「うっとおしぃなあ」と思わないことが前提、というのも腑に落ちる。

しかしコミュニケーション旺盛な江弘毅がナカノシマ大学で「周囲から合格点をもらえる着こなし」なんて話をするわけないので(会場からの質問次第でするかもしれないが)、当日はコロナで大きく変わった、服の「社会性」についてもう少し深く、おもろい、かつアホな話に着地するのではないかと思う。だからみなさん、この本を読んでいようといまいと関係なく楽しめること請け合いです。

当日は東京から、この本の編集者である亜紀書房の斉藤典貴さんも登壇し、江にファッションの本を書いてもらおうと思ったきっかけ(同社のブログ「『お洒落』考」に2019.12〜2022.5月連載)や、東京ネイティブの斉藤さんが江の原稿や服に感じた「新鮮な驚き」についても話してもらいたいし、会場からの質問なども取り込みながらわいわいと進めていきたい。

最近は「あさイチ!」にもよく登場するライターの永江朗さんがこの本のことを『Meets Regional』9月号の書評に書いていた。

「この本も『へえ』とか『なるほど』がいっぱいある。もっとも、だからといって『そうか、これは取り入れよう』とか『真似しよう』とならないのは、こちらも初老になったからで、いまさら自分の服装のルールは変えたくない。ぼくはジーンズの裾をロールアップしてはくし、アメリカン・トラッド風のスーツでもタイはウィンザーノットにする。ポロシャツは着ない。とりわけ無印良品についての考え方は、江さんとぼくとでは正反対だ。……てなことがあれこれ浮かんでくるのがこの本のいいところだと思う。何をどう着るかについての思考を促す」

……たしかにこの本を読んでいたら、持っていた服のことや、その服にちなんだことを思い出した。

デカい声で電話をかけまくっていた編集者

 

私が江弘毅に初めて会ったのは、堂島2丁目「堂北ビル」に京阪神エルマガジン社があった昭和の頃。

筆者は月刊誌『Lmagazine』(1977〜2008)の編集部にいた。江はそのLマガの別冊で、勢いのある「シティマニュアル」シリーズの編集長をしていた。

Lマガは「エンタテインメント情報誌」で、先行していた『プレイガイドジャーナル』(1971年創刊)を3年目ぐらいに抜き去り、当時大学生だった関西の若者に圧倒的に支持があったように思う。とくに学園祭特集は部数を増やしてもすぐに完売するような人気だった。

しかし、東京にはエンタテインメント情報誌ですでにブランドを確立している『ぴあ』があり、予想通り1985年に関西に上陸。Lマガの部数は少しずつ減っていった。

会社はそれに対して食べたり飲んだり買ったりの店を通じた「街のおもしろさ」を伝えるLmagazineの別冊「シティマニュアル」シリーズを年に1〜2回出すようになり、Lマガの部数減に反比例するように右肩上がりの伸びを示した。「ひと月で古くなる映画やコンサート情報」よりも、「一度行ってみたい街の店」のほうが、Lマガを卒業した社会人読者には刺さったのだと思う。

持ってる人もきっといるでしょう。藤原ヒロユキの表紙イラストがバシッときいたLmagazine別冊『京都・大阪・神戸シティ・マニュアル』1984年2月

その「シティマニュアル」の指揮官が、神戸新聞マーケティングセンターから出向してきた江弘毅だった。

筆者が在籍していたLmagazineは、「興行元がどんなイベントをするか」によって誌面が左右される媒体だったので、8割方のネタ(上映・上演スケジュールなど)は主催者や劇場、ライブハウス、そして出演者などから入ってはくるが、編集者のセンスが入る余地は「扱いの大小」や「順番」以外にはあまりなかった。Lマガは自らの見本とした『ぴあ』のジャンル分けを流用し、親会社(新聞社)の「政治面」「経済面」「社会面」「海外面」「文化面」「家庭面」「地方面」などのシステムを踏襲していたと思う。

ところが江たちが作る「シティマニュアル」シリーズは、「こんな切り口でこんな特集をしたら当たる」ありきの媒体で、「自分たちがネタを作り出す」ところが生命線だった。「特集の切り口」がどれほど新鮮かつおもしろそうかで取材先や読者の食いつきも変わってくる。江は最初は神戸を拠点に仕事をしていたが、「シティマニュアル」の刊行頻度が高まるにつれて来阪することが多くなり、その仕事ぶりを間近に見られるようになった(やがて1988年に京阪神エルマガジン社に移籍、1989年にMeets Regionalが江を中心としたチームで創刊される)。

江が午前中に編集部に入ってきたら、お昼までは延々といろんな人間に電話をかけ続けていた。あの声なので内容はまる聞こえである。

「注目したい若いバーテンダーってページ作ろう思ってんねんけど、〇〇くん最近行ったバーでええとこ知らんか?」

「きのうポートピアランド行ったんやけど、ババリアンマウンテンレールロードに4回も乗ってふらっふらやわ(ようやるわ)。あんなマシンでおもろいページでけへんかな?」

「2ページ増えたんや。それで一人ずつお気に入りのLPを持ってコメントするなんてどやろ?」

当時のLmagazine編集部にはおとなしい人間が多かったが、電話がまる聞こえなので、そんなネタなら……と江が電話を切った瞬間に「江さ〜ん、〇〇やったら✕✕があるやん」「あ〜そやな、✕✕があったわ」みたいな形で近くの席の人間からもネタが入ってくる。お昼になると特集の企画がいくつか出来上がり、それをライターやカメラマンに伝え、一方ではグラフィックデザイナーに手描きのラフをfax.(当時はメールなどない)で送ってイメージを共有し、ずんずん仕事を進めていた。

「手離れの早い人」「会話によるコミュニケーションで仕事をどんどん進める人」というのが江弘毅という編集者の印象だったが(声がデカいのは「だんじり」だというのも後に知った)、机が離れていたし、媒体が違っていたので接点はほとんどなかった。

唯一、当時のLマガ副編集長Мさんが、江が作る「シティマニュアル」のデスクでもあったので、彼の席で話をしていたら顔を合わせることがあった。ある時、着ていた元町高架下の[ミスターボンド]で買ったボタンダウンシャツを見て、話をしたことのない江がいきなり言った。

「色見本帳みたいなシャツ着てはりますね!」

ブランケットやウールのゴツいシャツなどでおなじみPENDLETONに、Pen Westというセカンドブランドがおました

派手な柄のアロハシャツを着た(と記憶する)男にそう言われて「はは……(苦笑)」としかよう返さんかったが、確かにシアンとマゼンタがそれぞれ濃くなっていくとこんな感じかいな。

ウマいこと言うなぁ。ホメてんのかイケズなんかよう分からんけど(きっと後者や)。

もちろんその時、「36年後に、この男が服のことを話すナカノシマ大学で、主催者として司会をする」なんてことは知る由もない。このシャツはもう売ってはいないけどたまに着るし、[ミスターボンド]は初代・岡保典さんの孫、幸雄さんがモトコーで続けている。人の縁は不思議である。

「大阪のこと知らんかった」と知った『アルキメトロ』の2年半

2023年7月31日 月曜日

担当/中島 淳

OsakaMetro(大阪市高速電気軌道株式会社)のシニア向け沿線行楽フリーマガジン『アルキメトロ』が第10号「記憶をのせて  祝! 御堂筋線90周年」を最後に発行を終了した。

コロナ禍真っ最中の2020年10月に、「自然や植物をテーマに、OsakaMetroや大阪シティバスでアクセスできる、沿線の行楽情報を届ける」ことを目的に発刊されたフリーマガジンで、140Bが企画・編集を最終号までずっと担当させてもらった。

発行元が「名の通った企業や行政機関」である場合、担当者によってメディアの「手ざわり」はホンマに左右される。

その人が会社上層部のご意向(多くは訳の分からんことが多いが)を配慮し過ぎてしまうと、忖度ブレーキがはたらいて記事の中身や誌面のノリにまで口を挟んでしまうことがよくあるのだが、『アルキメトロ』担当者のKさんやSさんはむしろ「もっと面白くしたい」ことにベクトルが向く人たちで(それでも社内調整は大変だったと思うが)、私らも「期待に応えんとな」という感じでページを作った。奥付には弊社のクレジットも入れていただいた。有り難かった。

「面白がって仕事する」スタッフに恵まれた

当初は取材先・掲載ネタは感染リスクが少ない「野外」というのが重要で、どちらかというと「飲食・物販店」「美術館・博物館・図書館」が多かった弊社的にはあまりなじみのないジャンルだった。

それなら、これまで仕事をしたことがない人たちとこの新しいメディアを立ち上げたほうが面白い……ということで、表紙と誌面デザインは画家でグラフィックデザイナーの神谷利男さんにお願いした。岡本京子さんが第4号まで編集を担当してくれて、『アルキメトロ』という見事なネーミングと第1号の企画案「世界有数のバラの都・大阪」を考えてくれたので、それをもとに神谷さんはコンペに提出する表紙と誌面デザイン案を仕上げてくれた。

自作のバラの絵と、遊び心があってシュッとしたロゴ。

一瞬で「コレはいけますな」であった。

せっかくなので……とプレゼン当日にこの表紙をB全ポスターにして3人がかりで広げて披露したことでとどめを刺したかもしれない。神谷さんは食品のパッケージデザイン(ロッテ「Ghana生チョコレート」や東海漬物「きゅうりのキューちゃん」など)も数多く手がけているので「一瞬で人の目を惹ける」引き出しが実にたくさんあったのだと思う。

神谷さんの驚異的なところは、毎号フルカラーで3案、表紙を描き下ろしてくれたことである。通常、イラストの表紙を制作する場合はモノクロの下描きを2案ほど出して、OKが出た方を清書・着色してもらい、その画像に文字をデザインして印刷入稿することが多いのだが、神谷さんはすぐにでも印刷できるような精巧な表紙を3案つくってくるのだ。

「これは悩ましすぎるな〜」OsakaMetroに送る前に、弊社スタッフの間でもいつも意見が分かれていた。

 

第5号からは放送作家の奥村康治さんが企画と執筆を数多く担当し、大阪城公園や淀川べりなどの野鳥観察に携わる人たちが協力してくれなかったら絶対に実現しなかった「とりどり大阪」をつくることができた。

第6号では企画と執筆に放送作家の関真弓さん、編集に川嶋亜樹さんが新たに加わり、「ハスの沼へようこそ」という超季節限定のエッジな特集も展開することができた。

 

第7号あたりから当初の「植物や自然」という縛りも徐々にユルくなり、以前から上町台地界隈の情報紙『うえまち』に子どもが読みやすい連載「大阪をつくった『なにわのヒーロー』」を執筆していたライターの須藤みかさんに「大阪ヒーロー推しの旅。」を取材・執筆してもらった。

この号のみ、井上ミノルさんにヒーローのイラストを描いてもらい、それをもとに神谷さんがヒーローたちの頭文字をロゴ風にデザインした。華やかでカラフルな表紙である。

月面のクレーターにも名を残す江戸中期の天文学者・麻田剛立(あさだ・ごうりゅう)の頭文字は「ジョルジオ・アルマーニとおんなじG.Aやな」なんて話を打ち合わせの時にしていたが、それを聞いていた神谷さんが表紙にさりげなく活かしている。手練れである。

「身体を現場に連れて行く」意味を思い知る

筆者の一番の思い出は、何度も足を運んで書かせてもらった第3号「大阪『八低山』をゆく」である。

古くは4世紀末〜5世紀初頭に築造された帝塚山古墳から、新しきは「SWEET MEMORIES」を松田聖子が歌っていた昭和58年(1983)に誕生した鶴見新山まで、すべて「人間の手で造った」8つの低山をOsakaMetroや大阪シティバスでめぐる特集である。

山を造った目的も、時代とともに大きく変わっている。

「支配者の埋葬」「軍事要塞の構築」「船舶通行のために河川を浚渫し、その工事で出た土砂の観光地化」「廃棄物を盛土で埋めて公園緑地造成」など実にバラエティに富んでいるが、一番高い鶴見新山でも標高39mしかない。

ふるさとの山に向ひて言ふことなし(啄木)は好きな歌であるが、頂上の手前まで来ないと「向ひて」になるような状況にはならないような、低い山ばかりである。

それでも、大阪の歴史の中で1500年ほどの時代変化を文字通り体感でき、1日乗車券を使えば八低山をその日のうちに回ることができて、それぞれの街の食堂やカフェ、パン屋さんに立ち寄れば幸せは増すばかり……これにハマり、この号の取材から何度も八低山をめぐっている。それぞれの山には古代から現代までゆかりの「人」がいるが、それはまた時期を改めて書きたい。

8つの山で筆者が一番「山らしい」と感激した大正区の昭和山(標高35m・1970年造成)に対しては、作家の柴崎友香さんが芥川賞を受賞する直前に『大正島(アイランド)体感地図』(大阪市大正区)に寄稿してくれたテキストを読んだ時からずっと気にはなっていたが、7年後にやっと「登頂」が実現した。

昭和山頂上直下からは、土の山道で登れる

登った感想はただ一つ。「現場に来てみんと大阪は分からへんなぁ」である。

こんなに素晴らしい場所が、工場や巨大構造物が建ち並び、表通りを大型車両がひっきりなしに走る大正区にあったとは。そんなことも知らずに40年近くの間「大阪の編集者でござい」と言うてたのがほんまに恥ずかしい。

『アルキメトロ』の日々は、イコール大阪に対する自らの無知に毎回気がつく日々であった。そんな経験を与えてくれたOsakaMetroや愛読してくださったみなさまに心より感謝したい。

誌面に寄稿し、写真を撮影・ご提供いただいた小林渡さん、藤田雅矢さん、髙岡伸一さん、髙島幸次さん、馬場尚子さん、陸奥賢さん、伊藤廣之さん、元山裕康さん、小川流水(清)さん、小川勝章さん、湯川真理子さん、浜田智則さん、北川央さん、Brenda Chenさん、吉川公二さん、釈徹宗さん、橋爪節也さん、大西ユカリさん、楠木新さん、武部好伸さん、松井宏員さんたちにお礼を申し上げたい。

そしていきなりの「飛び込み」取材にもご協力いただいた関係者のみなさん、『アルキメトロ』をお店や施設に配架してくださった大阪の街のみなさんに、ほんまにお礼を申し上げます。

ありがとうございました。また別なところでお会いしましょう。

『アルキメトロ』のバックナンバーはこの行をクリックしたら全10号ともダウンロードして見られます。

7/25~紀伊国屋書店梅田本店さんでの合同フェアに参加します

2023年7月24日 月曜日

7/25(火)から紀伊国屋書店梅田本店さんで開催の「今年もやります! 地元やからおもろいと思うで、知らんけど 関西の出版社合同フェア」に140Bも参加します。

昨年の大盛況に続き今年も(主に)関西の出版社7社で手作り感のある売り場でそれぞれの出版社の新刊あり、推し本あり、グッズ販売あり、ガチャガチャの景品ありで、所狭しと商品が並ぶ盛りだくさんのフェアとなります。

8/16(水)までの期間中、著者や出版社によるイベントなどお客さま参加型のフェアでもありますのでぜひ、興味のある催しにあわせて紀伊國屋書店梅田本店さんにお越しください。詳細等は紀伊国屋書店さんのHPSNSで随時お知らせされています。

【参加7出版社】
インセクツ / 京阪神エルマガジン社 / 創元社 / 西日本出版社 / ミシマ社 / ライツ社 / 140B

 

7/15-16浅草での BOOK MARKET 2023 に出展します

2023年7月12日 水曜日

毎年恒例の浅草でのBOOK MARKETに今年も出展します。

いつものように刊行書籍だいたい全点と今年は缶バッジ3種類も販売もおこないます。

 

 

 

 

 

さらに7/15(土)、現在「まえだおうこ」名義でZINEなど制作されている『京都観光生活』の著者ハンジリョオさんの一日限定復活のミニサイン会を行います。リアル・ハンジさんの登場はおそらく10数年ぶりです!

 

 

 

 

【140B ブース39】 11:00~『京都観光生活』購入先着20名様。ZINE2種も限定販売します。

この機会にぜひ!

みなさまのお越しお待ちしております。

BOOK MARKET 2023
7/15(土)-16(日)
10:00~17:00
会場:台東館 7階南側会場

https://www.anonima-studio.com/bookmarket/

缶バッジは、
『すごいぞ!私鉄王国・関西』
『まんが 墓活』
『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』
の3種になります。

 

水都ラブ・サスペンス「樽屋おせん」にヤラれてください

2023年7月7日 金曜日

担当/中島 淳

春野恵子さんがナカノシマで浪曲を演じるのは2009年12月以来、14年ぶり!

7/20(木)のナカノシマ大学で春野恵子さんが演じる浪曲「樽屋おせん」は、戦乱を経た大坂が国内最大の「経済都市」としてめまぐるしい変貌をとげていく17世紀後半に生まれた、井原西鶴の『好色五人女』の一篇です。

秀吉の時代に造られた「町割り」は、大坂夏の陣で勝者となった徳川政権下でいっそう本格化していきます。交通と物流は、当時は陸上を「水運」が圧倒していました。交通の拠点は大川(淀川)沿いの八軒家浜。いまで言えば大阪駅・新大阪駅・伊丹・関空を一つにしたような巨大ターミナルだったかと。長〜い熊野街道もこの八軒家浜から始まります。

物流では、承応2年(1653)に八軒家浜の対岸に「天満青物市場」(現・南天満公園)が誕生。市場は亀岡街道(天神橋筋商店街)の終点でもあり、水路・陸路から各地の名産が集まってきました。青物市場の目と鼻の先にある大阪天満宮は、これまでの数倍の規模でにぎわいを見せたことだと思います。

当時の地図。オレンジの印を付けた天満宮から天満青物市場も樽屋橋も徒歩数分の場所にある(1691年『新撰増補大坂大繪圖』より〜国際日本文化研究センター所蔵)

近世の天満宮界隈では「醸造業」が盛んでした。味噌や酒が造られると、必ず必要とされるのが「樽」。天満宮から300メートルほど西に「樽屋町」があり、その名の通りの「樽製造の町」として栄えていました。出来上がった樽には天満の酒や味噌が入り、これらが16世紀末に開削されたばかりの「天満堀川」を下って大川本流に入り、青物市場経由で旅立っていきました。

……以上はざっくりした前置きですが、当日は髙島先生が浪曲がはじまる前に詳しく解説します。さて。

春野恵子さんの「樽屋おせん」は、かつて奉公していた天満の麹屋で営まれる法事の手伝いに来ていたおせんが、ふとしたことから御寮(ごりょん)さんに店主・長左衛門との「不義密通」を疑われ、夫の伊助からも愛想を尽かされ、追い詰められていく話です。

健気で働き者で器量良しのおせんがいじらしさ満点な一方、彼女を容赦なくいたぶる嫉妬深い御寮さんが、表情も含めてほんまにえげつない!  男女4人の演じ分けがお見事ですが、とくに御寮さんには、釘付けになってしまう迫力満点です。

髙島先生による、近世の水都大坂の解説も請うご期待

しかし、おせんはただ追い詰められるだけではありません。

ラストは西鶴の原作を少しアレンジしていますが、こちらの浪曲のほうが水都大阪らしく、「その後」の行方をあれこれ想像したくなるような結末です。

井原西鶴×春野恵子の近世版ラブ・サスペンス。どうぞお楽しみに!

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