担当/中島 淳
3月18日(火)のナカノシマ大学で「メディアタウン扇町の 意外すぎる歴史と、いま」というお題で講義してくれる山納洋さん(大阪ガスネットワーク エネルギー・文化研究所員)の新刊『歩いて読みとく地域経済〜地域の営みから考えるまち歩き入門』(学芸出版社)を読んだ。

本は3月12日(水)発売。山納さんの拠点の一つ、扇町ミュージアムキューブ1階の[談話室マチソワ]でも買えます!
手練れのまち案内人かつ地域分析のエキスパートが書いた本であるが、ページを開けると「私たちのまちの成り立ちを知る」という感じの、小学校で習った社会科教科書の副読本のような、懐かしい匂いがした。
山納さんが目の前で話してくれるように分かりやすくてフレンドリーな筆致なので引き込まれる。
写真3はJR姫路駅前にある、手延べそうめん「揖保乃糸」の看板です。ネオン看板はかつては大阪にも神戸にもありましたが、今となっては絶滅危惧種です。長く残ってほしいものです。
「揖保乃糸」はテレビCMも流していますが、ひとつの工場で作っているのではありません。そうめんを作っているのは兵庫県手延素麺協同組合に加盟する、つまり多くの生産者によって構成された組織なのです。原料は組合が組合員に支給または指定し、製造方法の指導を行い、厳密な検査を実施して商品のクオリティを保っています。
(『歩いて読みとく地域経済』より「二毛作地域の産物」)
山納さんがイベントやプレゼンの場などで話しているのを聞いたことがある人は同意してくれるだろうが、この文体は山納さんの語り口そのまんまです。「地域経済」というちょっとカタそうな字面でも入りやすい。目に入る視覚情報から順番に掘り下げて、「地域経済」の本質に迫っていく。この姫路や龍野のような土地の話が章ごとに展開されていく。
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当たり前のことだけど、一つの土地で産業なり商売なりを立ち上げて根づかせ、それを続けていくことの大事さや困難さを考えたら、本当に気が遠くなる。けれどそういう先人がいたからこそ今の生活やまちがあるのだし、地域の産業なり商売なりがその土地の「代替不可能なキャラクター」として地元の人にもよその人にも認知されて育っていく。
本はどの章から、どの地域から読んでいただいても面白くて頭に入るが、第1章の「生活史のリテラシー」だけは最初に読もう。山納洋という人の「アタマの中」を公開してくれる。
まちを歩いていると、目の前にさまざまな「謎」が立ち現れます。そうした時には近くのお店で尋ねたり、ネットで調べたりします。するとそこから、そのまちの新たな側面が明らかになってきます。大事なことは、こちらから何らかの働きかけをしないと、謎は謎のままで終わるということです。
(『歩いて読みとく地域経済』より「まち読みのために その1」)
と書いた後で、「新開地の立ち食いうどん屋はどうしてパチンコ屋の前にあるのか」という、山納さんが主催するまち歩き“Walkin’About”の参加者の話を紹介している。こういう文章を読むと「まち読み、って誰でも気軽に参加できるんだ」と思ってしまえる。
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大阪ガスで働いている人に、山納さんの話を聞いたことがある。曰く
「ヤマノウはね、とにかく目がカメラなのよ。本を読んでも写真を見ても、たちどころに画像情報として記録していく。その量と精度が半端じゃない」
NHKに「100カメ」というおもしろい実況エンタテインメント番組があるが、山納さんはいわば「ひとり100カメ」の人だろう。
そのまちに入った瞬間、さまざまな視覚情報が飛び込んでくるのだが、それらをカメラで記録するように脳内に取り込み、そして店に入ったり道ゆく人に聞いたりして、聴覚情報や味覚情報からその地域の「像」を言語化していく。『歩いて読みとく地域経済』はその集大成の一つだ。
あなたが登場しているまちに全く土地勘がなかったとしても、山納さんの目に映ったまちの風景写真や細かい地図を見ていると、ごりごりと掘り進んでいける。そんな知的かつ身体的プロセス(何せ、六甲全山縦走56kmを8時間台でやってのけるスーパー健脚ですから)を、本の中で追体験できるような楽しみにも溢れている。そして「続きはあなたがこの地域を歩いて体験してください」である。

3/18(火)ナカノシマ大学でも『歩いて読みとく地域経済』を販売。講座終了後はサイン会なのでお楽しみに
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そんな山納さんが今回のナカノシマ大学でとり上げるお題は、30年以上働いて親しんでいるホームグラウンド「扇町」。
過去の話を掘り下げ、かつ自らのフットワークを駆使してネタをごりごり掘っておられる最中なので、どうぞお楽しみに!
ナカノシマ大学の申し込みはこちら→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250318