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ヤマノウさんが目の前で語る『歩いて読みとく地域経済』

2025年3月11日 火曜日

担当/中島 淳

3月18日(火)のナカノシマ大学で「メディアタウン扇町の 意外すぎる歴史と、いま」というお題で講義してくれる山納洋さん(大阪ガスネットワーク エネルギー・文化研究所員)の新刊『歩いて読みとく地域経済〜地域の営みから考えるまち歩き入門』(学芸出版社)を読んだ。

本は3月12日(水)発売。山納さんの拠点の一つ、扇町ミュージアムキューブ1階の[談話室マチソワ]でも買えます!

手練れのまち案内人かつ地域分析のエキスパートが書いた本であるが、ページを開けると「私たちのまちの成り立ちを知る」という感じの、小学校で習った社会科教科書の副読本のような、懐かしい匂いがした。

山納さんが目の前で話してくれるように分かりやすくてフレンドリーな筆致なので引き込まれる。

写真3はJR姫路駅前にある、手延べそうめん「揖保乃糸」の看板です。ネオン看板はかつては大阪にも神戸にもありましたが、今となっては絶滅危惧種です。長く残ってほしいものです。

「揖保乃糸」はテレビCMも流していますが、ひとつの工場で作っているのではありません。そうめんを作っているのは兵庫県手延素麺協同組合に加盟する、つまり多くの生産者によって構成された組織なのです。原料は組合が組合員に支給または指定し、製造方法の指導を行い、厳密な検査を実施して商品のクオリティを保っています。

(『歩いて読みとく地域経済』より「二毛作地域の産物」)

山納さんがイベントやプレゼンの場などで話しているのを聞いたことがある人は同意してくれるだろうが、この文体は山納さんの語り口そのまんまです。「地域経済」というちょっとカタそうな字面でも入りやすい。目に入る視覚情報から順番に掘り下げて、「地域経済」の本質に迫っていく。この姫路や龍野のような土地の話が章ごとに展開されていく。

当たり前のことだけど、一つの土地で産業なり商売なりを立ち上げて根づかせ、それを続けていくことの大事さや困難さを考えたら、本当に気が遠くなる。けれどそういう先人がいたからこそ今の生活やまちがあるのだし、地域の産業なり商売なりがその土地の「代替不可能なキャラクター」として地元の人にもよその人にも認知されて育っていく。

本はどの章から、どの地域から読んでいただいても面白くて頭に入るが、第1章の「生活史のリテラシー」だけは最初に読もう。山納洋という人の「アタマの中」を公開してくれる。

まちを歩いていると、目の前にさまざまな「謎」が立ち現れます。そうした時には近くのお店で尋ねたり、ネットで調べたりします。するとそこから、そのまちの新たな側面が明らかになってきます。大事なことは、こちらから何らかの働きかけをしないと、謎は謎のままで終わるということです。

(『歩いて読みとく地域経済』より「まち読みのために その1」)

と書いた後で、「新開地の立ち食いうどん屋はどうしてパチンコ屋の前にあるのか」という、山納さんが主催するまち歩き“Walkin’About”の参加者の話を紹介している。こういう文章を読むと「まち読み、って誰でも気軽に参加できるんだ」と思ってしまえる。

大阪ガスで働いている人に、山納さんの話を聞いたことがある。曰く

「ヤマノウはね、とにかく目がカメラなのよ。本を読んでも写真を見ても、たちどころに画像情報として記録していく。その量と精度が半端じゃない」

 

NHKに「100カメ」というおもしろい実況エンタテインメント番組があるが、山納さんはいわば「ひとり100カメ」の人だろう。

そのまちに入った瞬間、さまざまな視覚情報が飛び込んでくるのだが、それらをカメラで記録するように脳内に取り込み、そして店に入ったり道ゆく人に聞いたりして、聴覚情報や味覚情報からその地域の「像」を言語化していく。『歩いて読みとく地域経済』はその集大成の一つだ。

あなたが登場しているまちに全く土地勘がなかったとしても、山納さんの目に映ったまちの風景写真や細かい地図を見ていると、ごりごりと掘り進んでいける。そんな知的かつ身体的プロセス(何せ、六甲全山縦走56kmを8時間台でやってのけるスーパー健脚ですから)を、本の中で追体験できるような楽しみにも溢れている。そして「続きはあなたがこの地域を歩いて体験してください」である。

3/18(火)ナカノシマ大学でも『歩いて読みとく地域経済』を販売。講座終了後はサイン会なのでお楽しみに

そんな山納さんが今回のナカノシマ大学でとり上げるお題は、30年以上働いて親しんでいるホームグラウンド「扇町」。

過去の話を掘り下げ、かつ自らのフットワークを駆使してネタをごりごり掘っておられる最中なので、どうぞお楽しみに!

ナカノシマ大学の申し込みはこちら→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250318

扇町、ヤマノウさんの「談話室マチソワ」本談義

2025年2月25日 火曜日

担当/中島 淳

3月18日(火)のナカノシマ大学「メディアタウン扇町の意外すぎる歴史と、いま」に登壇する山納洋(やまのう・ひろし)さんは、まち歩きの主催や地域プロデューサーとして、あるいはミーティングの名ファシリテーターとして有名な人だが、大阪ガスネットワーク株式会社エネルギー・文化研究所の研究員というのが本職だ。

山納さんのプロフィールだけを見てもA4用紙がぎっしり埋まってしまうほどたくさんあるので、それはこちらを見ていただくことにして……→ https://www.og-cel.jp/area/h_yamanoh/index.html#l03

この日(2月22日)は、山納さんが2023年秋から拠点の一つにしている、劇場・映画館の複合施設「扇町ミュージアムキューブ」1階のカフェ[談話室マチソワ]にお邪魔した。マチソワの店主は3人いて、その一人が山納さんである。HPにはこうなっていた。

大テーブルでメモを取る人、小テーブルから参加する人……堅苦しくないのがええ感じ。山納さんは「店主」なのでカウンターでコーヒーを淹れつつ、トークに参加していた

 

この日のイベントは

■BIBLIOPHILE’S CAFE(本を紹介する会) 店主:やまのう

2/22(土) 16:00-18:00 参加無料(1ドリンク制)

お気に入りの本、面白かった本を持ってきて紹介し合う会です。

というもの。

この[談話室マチソワ]は、街場のカフェとはちょっと違っていて、趣旨をこのように紹介している。

※以下、談話室マチソワHPより

 

人々が集まり、お茶を飲みながら知らなかった人とも話ができるお店。自然なかたちでつながりやアイデアが生まれる。どこからも自由な、リラックスできる場所。マチソワはそんな空間です。

マチソワでは、スタッフがお客さんに話しかけ、お客さんの話に耳を傾けます。情報を発信するだけでなく、受け皿ともなり、有機的につなぎ合わせ、開放するメディアとして、劇場の片隅にひっそりと佇んでいます。

 

扇町ミュージアムキューブの廊下とマチソワの間には扉がない。「面白そうだな」と思ったらスッと入っていける。

知らない同士で話をするのが「ここでは普通」であるとみなさん認識しておられる。

みなさん、山納さん同様に聞き上手で、ひとりが本を紹介すると、次々と質問が出てきたり、自分の経験を語ったりして、それで話が盛り上がって……という好循環が続く。

読むべき本のネタは仕入れられるわ、自分の読んだ本についても興味を持ってもらえるわ、ですこぶる楽しかった。これも主催者の人徳であろう。山納さんは各人の「お気に入り本」の話が広がりすぎて制限時間をオーバーした時だけ、サッと切り上げて次の人に移る。そのあたりが実にウマい。

この日、参加者がとりあげた「お気に入りの本」は以下の通り。

●中村博史『大阪城全史』(ちくま新書)

●中島岳志・磯崎憲一郎・若松英輔・國分功一郞『「利他」とは何か』(集英社新書)

●石川智久『大阪 人づくりの逆襲』(青春新書)、『大阪が日本を救う』(日経BP)

●北川央『おおさか図像学』(東方出版)

●山田鐘人・作、アベツカサ・画『葬送のフリーレン』(小学館)

●『日本の家紋とデザイン』(パイインターナショナル)

●雑誌『デザインのひきだし』(グラフィック社)

「大阪の本推し」の人が3人いた。

山納さんの本の解説はフレンドリーかつ理路整然としていて、聞く側のストレスが全くない

会の最後に、山納さんから「お気に入り本」の紹介があった。

●山崎亮『面識経済』(光文社)

これも読みたくなりました。
ちなみに、この日筆者が推したのは

⚫︎河井寛次郎『蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ』(講談社文芸文庫)

山納さんは3月18日(火)のナカノシマ大学に「扇町」というお題で講義するが、実はこの「扇町ミュージアムキューブ」は15年前まで大阪市水道局のビルで、水道局が移転した部屋に「MEBIC大阪(現在は本町の大阪産業創造館17階にある)」というクリエーターを育てるインキュベーションの拠点があって、山納さんはそこで働いていた。

その前は、神山の交差点近くにある小劇場演劇の拠点「扇町ミュージアムスクエア」にいたというから、まさに扇町の申し子のような人である。

だからナカノシマ大学は面白くなることは確実だと思うが、次回はもう少し扇町のことを書きます。

 

ナカノシマ大学の会場、中之島図書館が使いやすくなった!

2025年2月19日 水曜日

担当/中島 淳

ナカノシマ大学の会場である大阪府立中之島図書館は明治37年(1904)竣工の重要文化財。

ナカノシマ大学の会場(3階多目的スペース)へは2階正面玄関から入り、中央の曲線階段を登るか、カフェのある南端から上がるかのどちらかで

カメラやスマホを構えてパチパチ撮りたくなるディテールには事欠かないが、このような「年代物の近代建築物」は反面、使いづらさももちろんある。

「会場の3階まで階段上がるのしんどい」

「トイレ行くのにまた階段下りるの面倒だし」

 

というご意見が寄せられていた。ほんまによう分かります。

私たちスタッフも、会場で本を販売するとか、配布資料がたくさんあるときに階段を上り下りするのはちょっとなぁ……という感じでした。

それがこの2月から改善されました。

正面玄関に入らず、右(南)に歩いて、突き当たりを左折(東へ)してください。

北浜駅や栴檀木橋(せんだんのきばし)を渡って図書館に来られる方は、こちらの入り口の方が近いかもです

そうすると真新しい建物が待っている。こちらが「新館」で、本館とは階上でつながっています。自動ドアを入るとエレベーターがあるので、「本館3階連絡通路」のボタンを押してください。

ナカノシマ大学の会場は「3階多目的スペース」だがここは「4」を

本館連絡通路のフロアに着くと、あとは直進するのみです。

 

 

矢印の誘導に従って直進しましょう

 

 

 

 

 

これまでに見ることのなかった、年代モノの眺めでした

 

 

窓越しに中央のドームが望める新鮮な景色を見ながら、突き当たりを左に入れば会場です。どうぞお試しあれ。

それでは、明日のナカノシマ大学、作家・蓮見恭子さんによる「小説『はにわラソン』の作者が古墳の郷・古市の魅力を語る」、お待ちしております。

受講お申し込みはこちらまで(20日15時で締切)→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250220

 

 

蓮見恭子さん入魂のナカノシマ大学資料109ページ!

2025年2月17日 月曜日

担当/中島 淳

『はにわラソン』の作者、蓮見恭子さんはサービス精神の権化のような人である。

2月20日(木)のナカノシマ大学に投影する資料がありましたら、前日までに送ってください」とお願いしたら、早々と100ページ以上のパワーポイントが到着した。

蓮見さんは現地取材の際にほんまにたくさんの写真を撮っておられて、この画像もナカノシマ大学のタイトルバックとはちょっと違う時期に撮影したもの

内容は当日のお楽しみだけど、中身は「5部構成」になっている。

第1部『はにわラソン』への道

第2部  古墳とマラソンとの出会い

第3部  古市古墳群の衝撃

第4部  マラソン運営の取材

第5部  羽曳野市のもう1つの顔

ナカノシマ大学にはこれまでにいろんな小説家の方に登壇してもらっているが、ここまで自作に対して「頭の中」を見せてくれる人もほんまにレア中のレアで、そういう意味でも今回のナカノシマ大学は、古墳好きマラソン好き古市好きの人だけでなく、文学好きの人にもお薦めしたい講座である。

読売新聞2025年2月11日(祝)朝刊

『はにわラソン』の売れ行きも好調だと聞く。2月11日(祝)には読売新聞の大阪府下全域版に、蓮見さんの写真入りインタビュー記事が掲載された。こちらから全文を読めます→ https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20250210-OYTNT50120/

最近の蓮見さんは、「駅伝」「マラソン」を題材にした作品が多いので、「高校時代は陸上部?」だと勝手に思っていたがその逆で、作品をよりリアルに着地させるために走りはじめたという。以下、読売の記事から

構想のきっかけは約10年前。高校女子駅伝を題材にした作品の執筆中、登場人物の目標タイムやペースがイメージできず、「書くために走り出した」という。

(中略)雨にぬれながら声をかけてくれるボランティアらの姿が頭をよぎり、走る側ではなく、裏方に光を当てたいと考えた。コロナ禍でマラソン大会が中止となるなど、取材がスムーズには進まない時期もあったが、「スポーツ小説、ご当地小説、お仕事小説。私自身のキャリアの集大成」という形に仕上がったという。

蓮見さんは「近くにありながら、あまり古墳に親しみがなかったが、実際に歩いてみて面白さに気付いた。どうやったら古墳を『エンタメ』にできるか一緒に考えてもらえたら」と語る。

とある。

作品の登場人物は実に多彩で、主人公・倉内拓也が勤務する「土師市(モデルは羽曳野市)」の市長や市役所の面々をはじめ、土師市の北隣「白鳥市(モデルは藤井寺市)」で働く古代コスプレイヤー「白鳥姫子」こと坂口唯、南隣「山城市」の名産、鴨を売り出すべく被り物で有名な「カモネギ部長」、拓也がいた箱根駅伝の出場校「東都大学」の監督やメンバー、マラソン大会を支援するワイナリーのオーナー、マラソンの開催に反対する地元の有力者たち、元中学校社会科教師で退職後は観光ボランティアをやっている古墳ガイドの女性……と、百舌鳥・古市古墳群をご存じの方は「あの人やん!?」とニンマリしてしまうことだろう。

読売の記事はこう締め括られている。うれしゅうございます。

 20日午後6時からは、府立中之島図書館で、蓮見さんが古墳群の魅力や作品の過程などを語る講座(2500円。ナカノシマ大学のウェブサイトで受け付け)も開かれる。

ナカノシマ大学の受講申込はこちらから。

お待ちしております→ https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250220

 

2月25日(火)の天神寄席に、作家の増山実さんが登場!

2025年2月5日 水曜日

担当/中島 淳

2月25日(火)、天満天神繁昌亭で開かれる月1回恒例の「天神寄席」に作家の増山実さんがゲスト出演します。

増山さんは朝日放送「ビーバップ!ハイヒール」などの人気番組を手がけた放送作家でもあります。

小説は西宮球場と阪急ブレーブスへのオマージュでもある『勇者たちへの伝言 いつの日か来た道』(ハルキ文庫)で2016年「大阪ほんま本大賞」を受賞し、その後も『空の走者たち』『風よ僕らに海の歌を』『波の上のキネマ』『甘夏とオリオン』を発表。『ジュリーの世界』では第10回京都本大賞に輝きました。

天神寄席の鼎談ホストでプロデューサーの髙島幸次先生が考えた2月のお題は「珍談奇談奇話逸文」。増山さんの『今夜、喫茶マチカネで』(集英社)を読んでこのお題をイメージしたそうです。

北摂の方にはピン、と来ると思いますが、そう、あの待兼山です。

増山さんからメッセージもいただいていますので、ご覧ください。

「待兼山」。なんと魅力的な響きの地名でしょうか。
大阪の池田・豊中・箕面市の境、現在は大阪大学豊中キャンパスの敷地になっています。
この駅前の喫茶店を舞台に書いた私の小説が『今夜、喫茶マチカネで』。
街にゆかりの人々が人生で経験した、心温まる「奇談」を集めた連作短編集です。
刊行を記念しての今回の天神寄席は、題して『珍談奇談奇話逸文』。
『今夜、喫茶マチカネで』とどこかシンクロする噺を集めました。
夢の話。人間に化ける動物の話。報恩話。怪談話……。「不思議な話」が大好きな方、
ぜひ一夜限りの「待兼山奇談倶楽部」ならぬ、「天神奇談倶楽部」に参加してみませんか。

2月の繁昌亭は、「大阪天満宮の梅見」と切っても切れません。日のあるうちからお越しください。

天神寄席の申し込みはこちらまで。お待ちしています!

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250225

「古市」好きは蓮見恭子『はにわラソン』にヤラレる

2025年2月2日 日曜日

担当/中島 淳

作家の蓮見恭子さんは堺の旧市街の人で、子どもの頃から仁徳天皇陵古墳などが馴染みだったという。

2/20(木)ナカノシマ大学でも販売。税込924円

蓮見恭子『はにわラソン』(双葉文庫)より

その蓮見さんから「古墳のまちを舞台にしたマラソンを題材に小説を書きました」と聞いて、最初は「二つの世界遺産(百舌鳥と古市)を結ぶコースにしたんやろなきっと」と勝手に思っていた。

ところが、最新作『はにわラソン』(双葉文庫)を開けると、いきなりこの地図が出てくる。名前こそ変えているが、どう見ても

「土師市って……羽曳野市やん!?」「隣町の白鳥市って……藤井寺市やん!?」

である。百舌鳥古墳群は登場しない。小学校の終わりから高校までを堺で過ごした筆者もこれには驚いたが、よくよく考えると「そらそやろな」となった。

というのは、筆者も『ザ・古墳群〜百舌鳥と古市 全89基』というガイドブックの編集で「古市古墳群」に何度となく通ったことで「古墳めぐり」の面白さを知ったし、古市を知らなかったら「本を出したらそれでおしまい」になっていたかもしれない。

ナカノシマ大学のタイトル写真と同じ、応神天皇陵古墳の西側、外濠外堤(がいごうがいてい)の景色。秋にはコスモス畑と正面の金剛山(右)・大和葛城山を見ながらのハイキングである

百舌鳥古墳群(堺市堺区・北区・西区)は、確かに大阪市内からとても便利な場所にある。なんばから南海高野線、天王寺からJR阪和線、梅田や新大阪から地下鉄御堂筋線と、3本のルートがある。

それに対して、古市古墳群は大阪阿部野橋(地下鉄天王寺駅直結です)から出る近鉄南大阪線一択。20分は余計にかかる。

けれど断言するが、ここを歩いてみたらあなたの古墳に対する認識はきっと変わると思う。

空が広くて山が近い。カントリーロードを歩きながら古墳をめぐる気持ちの良さは「知らんかったわ〜」の世界だ。百舌鳥古墳群は、政令指定都市の中心部にあるために、「都市型住宅地に囲まれている」感がある。

「墳丘に登れる古墳」も百舌鳥に比べて圧倒的に多いし、ユニークな古墳にも多数会えるし、主要な古墳の近くには「葛井寺(ふじいでら)」「道明寺」「道明寺天満宮」「誉田(こんだ)八幡宮」……と国宝のある寺社が控えていて、そういった重層的な文化集積度も古市に軍配が上がる。

近鉄土師ノ里駅から鍋塚古墳〜仲姫命(なかつひめのみこと)陵古墳を通って15分ほど歩いたらこの景色に出会える。2月には墳丘に梅が見られます

6年前、「世界遺産に登録されたから行ってみよか」と一番大きな仁徳天皇陵古墳の拝所に行って、「中に入られへんのかいな……」と落胆して帰った人は、そのリベンジに古市に足を延ばしてほしい。ダマされたと思って。

例えば、藤井寺市の南、羽曳野市との市境近くにある「古室山古墳」は冬の夕方になるとこんな景色になる。

宮内庁が古墳を囲むように設置している無粋な柵もここにはない。

原っぱを歩いて墳丘に取り付くと、好きな斜面から登るだけ。冬から早春にかけては樹木の葉が抜け落ちて墳丘のラインがよく見えるので、実は一番推しの季節だ。

こんな土地を舞台にして公式フルマラソン大会をやるという小説『はにわラソン』の文中にも古墳がいろいろ出てくる。古墳好きなら「あそこのことや♬」とすぐに分かるはずだが、それは読んでのお楽しみということで。

「河内ワイン」の金銅農園によるシャルドネ畑

『はにわラソン』に登場するのは「土師市(羽曳野市)と白鳥市(藤井寺市)にまたがる古墳群」だけではない。

その東側、石川を渡った山裾エリア(羽曳野市駒ヶ谷)のこともしっかり取材している。

羽曳野市はブドウの生産が盛んで、出荷量も栽培面積も大阪府下でトップ。デラウエアの生産はなんと全国3位だ。

そういう土地柄ゆえにワインも「地場産業」として定着していて、デラウエアやシャルドネのワインが市内で普通に売っている。

デラウエアは5〜8月の出荷。農産物の売店で買える

駒ヶ谷の[河内ワイン館]では地場のワインがあれこれ買えるだけでなく、予約制でワイナリーの見学(7人〜)も受け付けているし、館内の「金食堂」は7人からの貸切オンリーだが、食事とワインの両方をここでゆっくり楽しめてお薦めです 。http://www.kawachi-wine.co.jp/index.html

美味いもん好きワイン好きの蓮見恭子さんは、「土師市」のワイナリーとオーナーも物語の重要な人物として登場させている。

彼女はここ10年、マラソンや駅伝の小説をよく書いているが、蓮見作品の主人公は競馬の女性騎手や女性国際犯罪捜査官、古道具屋に嫁いだ女性、たこ焼き屋のおばちゃんまで、その幅も広すぎるぐらい広い。

『はにわラソン』は、羽曳野市のような地場を舞台にして名産のええネタまでふんだんに盛り込んでいる上に、マラソンコースの設定や大会までの運営プロセスの緻密さが凄まじくリアリティがあって、最後まで面白く読ませてくれるのだ。

主人公は、蓮見小説では珍しく男性。ちょっとイケメンのようであるが、とにかく巻き込まれやすいキャラである。

東京・小金井にある大学生の時には箱根駅伝のメンバーになれず、クラブの「主務」となってチームを支えた。卒業後は地元にUターンして「土師市」の職員となり、市長の無茶ぶりで「マラソン大会プロジェクトリーダー」となって実現のために奮闘する。

……という物語と、「古市古墳群」「羽曳野市の名産」をどうやって結びつけたのであろうか?

蓮見恭子さんの登壇は、『たこ焼きの岸本』の大阪ほんま本大賞受賞にちなんだ2021年11月講座以来、3年3か月ぶり

そのあたりは2月20日(木)のナカノシマ大学でじっくりお聞きしたいものである。申し込みはこちらへぜひ♬

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20250220

建築イラストレーター・コジマユイさんの連載がスタート

2025年1月15日 水曜日

担当/中島 淳

コジマユイさんの「絵で残したい 船場の近代建築たち」の連載が140B ホームページで始まりました。

https://140b.jp/semba_no_kenchiku/

第1回は、船場の建築めぐりの「出発点」とも言える北浜1丁目交差点の「大阪証券取引所ビル」。

コジマユイさんは昨年10月17日(木)のナカノシマ大学と、その後のイケフェス大阪で来阪された際に、これまでに描いていなかった船場の近代建築物を集中的に取材しているので、この先の作品も楽しみです。

ボールペンでここまで仕上げるコジマユイさんの「建築愛」をこれからたっぷりとご堪能ください。

 

焼酎蔵元5社からナカノシマ大学受講者へプレゼント

2025年1月12日 日曜日

担当/中島 淳

1月16日(木)のナカノシマ大学「焼酎と大阪の 深くて意外な歴史」の講師で「黒瀬杜氏」の子孫の黒瀬暢子さん(焼酎プロデューサー)が、「講義だけでなく実際に飲んで感じてほしい」と、講座当日に受講者にプレゼントする焼酎のミニボトルの提供を、蔵元各社にお願いしてくれました。

薩摩酒造の大阪支店長執行役員の佐野竜三さん(右/北九州市出身)と営業本部の期待の星・山本優香さん(天草出身)のええお顔

すると立て続けに薩摩の5社から連絡が!

①薩摩酒造 芋焼酎「さつま白波」
②濱田酒造 芋焼酎「海童」
③大口酒造 芋焼酎「黒伊佐錦」
④小正醸造 芋焼酎「小鶴」
⑤喜界島酒造 黒糖焼酎「喜界島」

どの焼酎になるかは当日のお楽しみです。ただし……

大阪府立中之島図書館の3階多目的スペースでの講座なので、アルコールは御法度。なので終了後にお渡しいたします。

ほんまは黒瀬さんが講義している最中に香りだけでも嗅いでほしいところですが、「匂いだけ」で我慢できないのが普通の人間なので、講座の閉会までお待ちくださいませ。

お渡しするのはミニボトルなので、賢明なナカノシマ大学受講者のみなさんは、「こんな大きい瓶をいただけるんですか⁉︎」とはゆめゆめ誤解されませぬように(笑)
ナカノシマ大学の受講申し込みはこちらから

小正醸造の大阪支店長、上機嫌でナイスガイの上妻(こうづま)元樹さん

書店イベント参加のお知らせ

2025年1月7日 火曜日

迎春、本年もよろしくお願いいたします

さて、新年早々に開催される尼崎市のTSUTAYA尼崎つかしん店さんでの「独特で面白い出版社フェス」に140Bも参加します。

1/17(金)~3/23(日)の間、約20社の出版社の商品がお店の特設棚で展開、毎月二日間、出版社の担当が直接販売(参加出版社は変わります)に伺います。

3か月連続の店頭イベントは新しい試みで出版社としても、新しい読者さんとの出会いの場として楽しみにしています。
1月は25日(土)と26日(日)に店頭におります。

今年40周年を迎える「つかしん」でお待ちしております(青木)

 

上機嫌で、半端ないフットワークの焼酎伝道者・黒瀬暢子さん

2024年12月30日 月曜日

担当/中島 淳

1月16日(木)、「焼酎と大阪の 深くて意外な歴史」でナカノシマ大学に登壇する黒瀬暢子さんは、このために福岡からわざわざ来阪してくれる。

ナカノシマ大学はお江戸からの登壇も頻繁で、2024年も4回(4月譽田亜紀子さん、9月矢代新一郎さん、10月コジマユイさん、12月岩野裕一さん)を数えたが、九州からはナカノシマ大学15年の歴史の中で初めてである。

テーマが「焼酎」ならやっぱり本場からお呼びせなアカンと思ったので、ご足労いただくことになった。

今回は、薩摩生まれの芋焼酎と黒糖焼酎の誕生と普及に「大阪」が大きく関わっていることを、薩摩藩主である島津家の祖・島津忠久(生年不詳〜1227)が大阪の住吉大社で生まれたという平安時代末期に遡ってひもといていく。

住吉大社の境内。源頼朝の寵愛を受けた丹後局が出産した場所がこの「誕生石」と伝えられ、ここで生まれた子が薩摩藩「島津氏」の始祖・島津忠久公だとされている(黒瀬さん提供)

今日だれもが気軽に焼酎を買ったり、お店で楽しんだりすることができるのは、実は大阪と島津家(薩摩藩)との交流・交易の歴史がベースにある。

さらに明治後期に「黒瀬杜氏」の力によって薩摩で焼酎量産化が成功し、そして「近代焼酎の父」と呼ばれている河内源一郎(1883〜1943)や第一次焼酎ブームを作った薩摩酒造の本坊蔵吉(1909〜2003)ら大阪工業高等学校=大阪帝国大学醸造学科(竹鶴政孝もOB)卒業生たちの活躍で新しい酵母が発見され、新商品が生まれ……そして九州の焼酎がポピュラーな日本の酒となって今に至っている。

そんな大きな歴史の流れを、黒瀬杜氏の子孫である黒瀬暢子さんが大阪で講義してくれる。

黒瀬暢子さんは「焼酎プロデューサー」という名前で活動しているが、これは「焼酎の新商品を企画・開発する」というより、「焼酎のファンを増やす」ことを大きな目標に、日々SNSで蔵元探訪記や焼酎イベントのレポート、新商品紹介、そして新しい飲み方提案などの発信をしている。また、黒瀬さん自身が主宰する、焼酎に親しんでもらうための女性向けの会(焼酎女子会enjoy!)は、なんとこの5~6年の間に130回以上も開催している。

小倉のホテルで開催された「焼酎女子会enjoy!」で挨拶する黒瀬さん。日本経済新聞「本格焼酎・泡盛の日」特集で取材した(2023年8月26日・筆者撮影)

ナカノシマ大学は15年続けているが、やっと200回を過ぎたことを考えると、ひと月に2回(会場のレストランを押さえ、蔵元や行政などにも協力をお願いして参加者を募って……)というのは半端ないエネルギーであろう。

そのようなスゴ腕の伝道師であるが、なんと2018年までは焼酎を一滴も飲んだことがなかったという。

黒瀬さんは早稲田大学を卒業してサンリオに入社、その後は児童向けの大型遊具企画制作会社に勤務して、東南アジアに何度も出張しては、現地のショッピングセンターのスタッフに「遊具の組み立てと設置の仕方」を指導していたらしい。

2018年というのはその会社(東京)にいた頃のこと。以下、黒瀬さんの手記から(福岡県立東筑高校同窓会『東筑會報』2022年10月1日発行号)引用する。

自分の名字と同じ「黒瀬」という名前の飲食店をネットで見つけたわたしは、東京・渋谷の「焼酎バー黒瀬」を訪れました。Facebookに投稿したところ、大学の後輩からメッセージが入ります。

 

後輩のメッセージというのは「先輩って名門の出ですね!?  黒瀬杜氏の末裔でしょう?」というもの。「クロセトウジ」という言葉に黒瀬さんの頭の中は「?」が3つほど付いたらしい。その店でもビールを飲んでいたほどで(何しに焼酎バー行ってんねんと突っ込みが入りまくったであろうが)、ほんまに焼酎には無縁の人だった。

杜氏と言えば、まさにお酒作りのプロフェッショナルです。お酒の話題を母の耳に入れてはいけないと(彼女のお母さんはお酒が大嫌いだったそう)、そーっと父に確認すると、どうも、私は焼酎の歴史を造ってきた「黒瀬杜氏」の血を引いているらしいのです。

 

そこからの行動は早かった。

信じられないわたしは、叔父が持っていた江戸時代から大正時代までの戸籍謄本を借り、家系図を作り始めました。家系図に名前がある方に会いに行っては、家系図を書き足し、書き足し。しかもアポなしで!

今は現役を引退している黒瀬杜氏の人。たぶんこの方も、福岡から訪ねてきた黒瀬さんから家系図を見せられた一人なのではなかろうか(黒瀬さん提供)

相手方にしてみたら、会ったこともない親戚から電話で「会ってください」と急に言われてもなぁ……という感じだったのだろう。

黒瀬さんの実家は北九州市の隣、福岡県遠賀郡だが、そこから「黒瀬杜氏」の里、鹿児島県南さつま市まで家系図を持ってアポなしで行くのである(一日仕事ではぜったいに済まない)。そうこうしているうちに祖母の家系のほうも杜氏がいることが分かり、双方の家系図を作ったらそれぞれ100人ぐらいになったそうだ。

江戸時代から明治、大正、昭和、平成、令和へと一族が順ぐりに託してきた「焼酎造り」のバトンパスを家系図に記した黒瀬さんは、「この焼酎文化を守ることが自分のライフワークになるのではないか」と一念発起するに至る。

東京でのビジネスマンのキャリアを終わらせて福岡に帰り、「焼酎プロデューサー」として活動を始めたのが2019年だった。

最近、「事業承継」という言葉があちこちで聞かれる。

「後を継いでくれる人がいない。どうしよう」という問題解決のためにそれを継続させるために事業を立ち上げた人の話も聞くが、廃業する実例もよく聞く。黒瀬さんの場合は「杜氏」になった訳ではないが、ちょっと形を変えた「伝統的ファミリービジネスの継承」がなされる例はとてもおもしろい。

何よりも、黒瀬杜氏が守ってきた焼酎造りのバトンリレーに「大阪」が大きく関わっていたという話は本当に楽しみである。

家系図を作るために南さつま市まで何度も出向いただけでなく、焼酎の酒蔵にも頻繁に顔を出し、東京や大阪へも取材やイベントのために訪れる。この人の運動量は半端ない。

焼酎の都・福岡で超個性的な焼酎好きを集めて開催された日本経済新聞「本格焼酎・泡盛の日」の座談会で黒瀬さん(イラスト右下)は司会を務めた(2024年11月1日掲載/イラスト&デザイン・神谷利男)

彼女の出身校・早稲田大学では2024年4月から「ラグビー蹴球部 女子部」が正式に発足したが、黒瀬さんはそれに先立つことウン十年前に同好会でラグビーをやっていた。ポジションは右のフランカー(FL7)。

スクラム、ラインアウト、モール、ラックなどのボール争奪戦には必ず顔を出し、相手の強烈な当たりも「上等じゃい」と受けて、バックスにいいボールを供給すれば必ずチャンスが訪れるという「運動量半端ないし汚れ役も多いけどきっと報われる」ポジション。

その話を振ったら黒瀬さんはにっこり笑って「そうですかね」と言った。

機嫌のいい人である。なので、この人の周りにも機嫌のええ人が集まる。焼酎業界はこの人の「上機嫌」のおかげで、かなり得をしているのではなかろうか。

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