‘未分類’ カテゴリーのアーカイブ

拝啓・古地図サロンから⑮

2019年8月29日 木曜日
2019年8月26日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

〈今回の目次〉
 ■新・古地図サロン(7/26)のレポートと次回予告
 ●7/17|ナカノシマ大学「大阪24区物語③」レポート
 ●7/26・8/23|朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」レポート 
 ●9/27|朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」予告編
 ●10/28・11/11|朝日カルチャーセンター中之島「天保山街歩き」予告編
 ●10/18・11/1|大阪狭山市で講演など・予告編
 ●月刊誌「望星」|7月号に掲載
 ●日本経済新聞|7/4付夕刊に掲載
 ●毎日放送テレビ「NEWSミント」に出演

■新・古地図サロンのレポート
開催日:7/26(金)午後3~6時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

いろいろあって更新が1カ月遅れになりました。酷暑が来て台風が来て今はもう秋風もどきの涼やかな空気が駆けていきます。7月に行われた古地図サロンの頃は、じりじり真夏の陽射しが御堂筋に張り付いていました。こんな暑い日に果たして人が来るのか、そういえば去年の夏はほんのパラパラだったようなと思い出していましたら、3時過ぎからぽつぽつと人が来られて、私が話をはじめる4時頃にはそれなりの輪がテーブルのまわりにできました。その方が私も話がしやすい。ありがたいことです。今回も先月に引き続き、大正時代から昭和半ばにかけての地図を中心に見ていただきました。7/4の日本経済新聞に明治~大正~昭和の大阪の市と区の歴史をまとめた記事が私のコメントと併せて載ったのをネタに、地図の実物を見ながらお話。実を言うと、私もその日初めてじっくり広げて見る地図があって、そこに思わぬものを発見し、今日の盛り上がり場面となりました。

その地図は大正14年(1925)2月20日発行の「大大阪最新地図」で、大阪朝日新聞社編纂。新聞付録として作成されたものと思われます。同年の4月に区の数が4区から一気に13区に増える市域の大拡張があり、大大阪が誕生した記念に発行されたものです。淀川の北側に「中島区」「姫島区」という聞きなれない名前の区が載っています。地図の欄外に、中島区は東淀川区、姫島区は西淀川区に訂正との注記があります。この2区は当初、「中島区」「姫島区」と命名され、地図が作られた後に名前が変わり、注記を添えた状態で地図が出回ったのでしょう。

私の見たどの資料にも載っていなかった幻の「中島区」「姫島区」がいきなり現れ、私もびっくり。当日の来場の方たちも、おやまあ、あらまあ、と喜んでおられました。ちなみに、中島は淀川北岸の広域名称、姫島は当地にあった古代の島の名前です。大大阪誕生当時の区名にまつわる忘れられた逸話を、この地図は後世に伝えてくれました。大正14年は西暦1925年、今から94年前の話です。そのほかの地図では、大正はじめの有名企業や商店の案内が載っている市街図が好評でした。なお、参加者の方からご自宅にあった古い地図2点をいただきました。ありがとうございます。地図は古くなると処分されるのが常ですが、地図が文献資料には残らない情報を教えてくれることもあるのです。また、次回も地図で遊びましょう。

今回のサロン古地図
大阪市街全図・著名諸会社・銀行・商店案内 大正2年(1913)
大大阪最新地図・大阪朝日新聞社編纂 大正14年(1925)
大大阪実測地図 大正15年(1926)
大阪港之図・大阪港案内 昭和6年(1931)
大阪市区分地図・最新東淀川区地図 昭和15年頃(1940頃)
大阪府近郊地図・朝日新聞特選 昭和27年頃(1952頃)
最新大阪市案内図 昭和31年(1956)
最新八尾市内地図 昭和38年(1963)
新日本分県地図・大阪府全図 昭和46年(1971)

他に復刻版の古地図など約10点をご覧いただきました。

★次回は9/20(金)午後3~6時 いつもは第4金曜ですが次は第3金曜なのでご注意。会場は大阪ガスビル1階カフェにて開催。私のトークは午後4時頃からです。テーマは引き続き、大阪の区の変遷。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。
★以後、年内の予定は11/22(金)

【最近の主な古地図活動】
●7/17のナカノシマ大学「大阪24区物語③」レポート
3回シリーズの最終回。大正14年誕生の住吉区は、現在の住吉区・住之江区・東住吉区・阿倍野区・平野区の5区をひとつにまとめた超巨大区でした。このエリアは古代の律令制で定められた住吉郡と重なり、住吉大社を核にした広域文化圏の存在を伺わせるものでした。ナカノシマ大学では、大正14年の巨大な住吉区を2つに分け、それぞれのエリアの特徴と、エリアに含まれる5区それぞれの変遷をご紹介しました。
どの区にも固有の歴史があり、近隣の区とつながりながら、大阪の中にポジションを占めてきました。明治以後の近代化の波に洗われながら、区は時代ごとに役割交代や引継ぎをしながら、現在の24区の姿を作るに至ったのです。区の未来について語るなら、まず過去を知ること。3回連続講座を終えた実感です。
講座の内容の書籍化が進行中です。詳細は後日あらためて報告いたします。
ナカノシマ大学の情報はコチラ

●7/26・8/23の朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」レポートと次回予告
古地図地名物語は毎回、大阪市内1エリア・大阪近郊1市をとりあげ、それぞれの地名を多数ご紹介しつつ、その由来や歴史を掘り下げていく講座です。今年で5年目になりました。7月は「桜ノ宮周辺と交野市」、8月は「中之島西端・川口周辺と貝塚市」をテーマに実施。市内の桜ノ宮、川口は由来が豊富、近郊の交野市、貝塚市はともに数多くの遺跡があり、歴史と伝承に彩られた地域です。そういう地域ほど難読地名や名前の響きからして何かありそうな地名が多く、私も楽しく講座をさせてもらっています。
9/27(午前10時30分~12時)は古地図地名物語の通算30回目「住之江周辺と泉大津市」です。この回のみの参加もオーケーです。
10/28・11/11の両日(午前10時~12時)は教室での解説と街歩き案内の2回講座でテーマは「天保山」です。
→問い合わせは06-6222-5222 または「朝日カルチャーセンター中之島」で検索を。

●10/18・11/1の大阪狭山市で講演・予告編
大阪狭山市の公民館ホールで、講座(街歩き付)をします。講座は古地図入門、街歩きのコースは大阪狭山市内です。詳細は次回の更新時にお伝えします。
→問い合わせは072-366-0700
大阪狭山市立公民館 https://www.osakasayama-kouminkan.jp/

●月刊誌「望星」に掲載
東海教育研究所発行の月刊誌「望星」7月号(特集・それだけじゃない大阪)に登場。私が案内したおススメ大阪散策コースを編集部が記事にした頁、私が書いた「大阪らしさ」についての話を収めた頁の2本立てです。テーマが「それだけじゃない大阪」ということもあり、これまで話したことのない内容が活字になりました。2本立てになったのは予定外ですが、出来上がりを見ると、編集部の好判断だったと思います。
「望星」誌 https://www.tokaiedu.co.jp/bosei/

●日本経済新聞に掲載
「大阪の市と区の変遷」について取材を受け、記者がまとめた記事が7/4付夕刊の記事になりました。《関西タイムライン・時を刻む》「『大大阪』市制歩みと挫折」というタイトルがついています。取材内容を地図・写真・年表とともにまとめた読みやすい記事でした。都構想の賛否を問う住民投票の実施が決定的になりましたが、どうして大阪が今のような24の「区」の形になったのか、歴史的経緯について基本的な事柄がほとんど知られていないままま話が進んでいくのは無茶な話です。その中で、やっとまともに取りあげる記事が出た感があります。今の状況では、あまりにも考えるための材料が少なすぎます。他でも「区」についての基本的な情報を知らせてもらいたいものです。

●毎日放送テレビ「NEWSミント」出演
8/7 午後4時30分~5時10分のニュース番組「NEWSミント」《令和を読む》のコーナーに出演しました。テーマは、江戸時代の大阪で流行した七墓めぐりについて(お盆が近いので)。西アナウンサーと梅田墓地があったグランフロント近辺、千日墓地があった千日前近辺を歩きながら、古地図を広げて解説をしました。撮影では他の場所も行ったのですが、編集によりカット。番組の最後に著書『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』の紹介がありました。

 

『ザ・古墳群〜百舌鳥と古市 全89基』3刷です!

2019年6月13日 木曜日

おかげをもちまして、古墳好きのみなさまの熱いご支援と、5月14日(火)の「世界遺産ほぼ内定」の追い風を受けまして、『ザ・古墳群~百舌鳥と古市 全89基』は2刷からひと月半で3刷3,000部を発行することができました。

世界遺産決定は7月5日(金)の夜から6日(土)未明にかけて。弊社でもその後にさまざまなイベントを予定していますが、世界遺産云々にかかわらず、「古墳好き」「百舌鳥・古市ファン」が世の中に1人でも増えてくれるように多くの人たちと連携して活動を続けたいと思っています。

この3刷から、前方後円墳型の「祝 世界遺産」の金のシールを貼って出荷いたします。書店のみなさま、古墳グッズショップ並びに飲食店のみなさま、ご注文をお待ちしております!

『ザ・古墳群』ポストカードも古墳グッズショップやナカノシマ大学書店にて好評発売中!

拝啓 古地図サロンから⑭

2019年6月3日 月曜日

2019年5月28日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

〈今回の目次〉
■新・古地図サロンの(5月24日)のレポートと次回予告
●4/30|森之宮ミューズモール「まちライブラリー・ブックフェスタ」レポート
●4/22・5/13|朝日カルチャーセンター中之島「天王寺七坂めぐり」レポート
●6/2|「文学・歴史ウォーク」で案内と60分トーク
●7/17|ナカノシマ大学「大阪24区物語③」予告編
●7/26・8/23・9/27|朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」予告編
●月刊誌『望星』に登場予定
●日本経済新聞に登場予定

 

■新・古地図サロンのレポート

今日はアイスコーヒーが美味しい夏日和。開始時刻早々から数人のお客さんが地図を囲んで、見入っておられました。リニューアルした古地図サロンも、去年の旧サロンでおなじみの風景が続いています。

今日のテーマは、大正時代の終わりの大大阪誕生から昭和半ばの高度成長期への区の変遷です。今はなくなった東区の地図、大淀区の地図が注目を集めました。特に、大淀区の地図は「こんな細長い地図、見たことない」というくらい特徴的なスタイルで人気に。4時からの私のトークも、地図の中身を順番に大阪の区が人口増加ととともに増えていった歴史を、あれこれ質問にも答えながら、紹介しました。

その後、みなさんで、大正14年の大大阪誕生で13区になった頃の地図や、戦前の北区地図裏面を埋め尽くした広告をネタに歓談。しかし、サロンがいちばん盛り上がったのは、裏面が「西成区・阿倍野区・浪速区・住吉区部分図」になった有名家具店のチラシです。チラシですから発行年は書いていません。そこで、内容から見て、いつ作成されたものなのか、全員で推理してもらったところ、ああでもない、こうでもないと言いあいながら、1954年、1960年、1970年の3説にしぼられ、最終的に1960年作成でほぼ間違いなしとの結論になりました。めでたしめでたし。また、次回も地図で遊びましょう

「大大阪最新地図・時事新報社編」大正14年(1925)
「地番入東区地図」昭和10年(1935)
「大大阪区勢地図・最新の北区」昭和13年(1938)
「大阪市区分地図 昭和27年(1952)
「大淀区詳細図」昭和29年(1954)
「最新大阪市街地図」昭和31年(1956)
「西成区・阿倍野区・浪速区・住吉区部分図」昭和35年(1960)推定
「大阪市詳図・舗装道路明細」昭和30年代後半
「大阪都市計画都市高速道路及び都市計画街路図」昭和39年(1964)
「大阪のすがた・大阪府地図付」昭和42年(1967)
他に復刻版の古地図など約10点をご覧いただきました。

★次回は7/26(金)午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェにて開催します。
トークは午後4時頃から。テーマは5月に続き大阪の区の変遷。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OKです。
★以後、年内の予定は9/20(金)、11/22(金)

【最近の主な古地図活動】
●4/30(火)森之宮ミューズモール
「まちライブラリー・ブックフェスタ」レポート

毎年恒例のブックフェスタ。今年は連休中に市内各所で多数(100以上と聞きましたが、最終はもっと増えたかも)のイベントが催されました。私の出番は、森之宮キューズモール「まちライブラリー」でのカフェ・イベントです。主催は[へんこや書房]の村上和也さん、当日は奥様とご一緒に運営していただきました。ありがとうございました。

前回の報告どおり、予約で予定席数が埋まっていたのですが、当日の参加希望者もおられて、席を追加しての開催でした。話のテーマは「森之宮大旅行」。ご当地ネタです。江戸時代~昭和の古地図を見ながら、森之宮エリアを詠んだ万葉歌から、地名の変遷、森之宮からはじまる伊勢参宮の街道の旅など、江戸時代~近代の地図を見ながらいろいろ。ドリンクでくつろぎながらの雰囲気がカフェならではでしたが、ある昭和の地図の発行年をノーヒントでズバリと当てた来場者がおられたのには、びっくり。その後も、来場の方それぞれのコメントが面白く、質問もいただき、私も楽しませてもらいました。

へんこや書房の村上さんとは、「また来年もやりましょか」ということに。他の展開もあるかも。
へんこや書房はネットの古書店です。お店のホームページはこちらから

●4/22・5/13|朝日カルチャーセンター中之島
「天王寺七坂めぐり」レポートと次回予告

教室での解説と街歩き案内の2回講座。街歩きの日は、七坂(真言坂・源聖寺坂・口縄坂・愛染坂・清水坂・天神坂・逢坂)の風景を味わいつつ、寺町の久成寺・銀山寺・法泉寺・生国魂神社・大江神社など逸話の多い寺社を訪ねました。天気が良すぎて汗をかく街歩きになりました。

坂と関係ないですが、梶井基次郎の墓のある常国寺で印象的な出来事が。過去に何度か訪れて、墓に毎回レモンが何個も置かれているのを見てきました。代表作の「檸檬」にちなんだお供えです。その日は今までで最高の20個近くのレモンが墓前にあり、そのうちの2個にサインペンで言葉が添えられていました。没後90年近く経っても根強い読者がいるんですね。梶井基次郎は若くして世を去りましたが、幸せな作者だと思います。写真は別の日に撮ったものです。レモンにどんな言葉が書かれていたかはナイショです。

次回の街歩き講座は、秋です。テーマは天保山周辺を予定しています。10~12月に実施します。申込受付開始は9月1日から。
→問い合わせは06-6222-5222、または朝日カルチャーセンター中之島で検索を

【夏の主な古地図活動・予告編】
●6/2(日)「文学・歴史ウォーク」で案内と60分トーク

200回以上も続いている講演とウォークを楽しむイベント。私の60分トークあり。更新時には終わっているかもしれませんが、いちおうご案内。6月2日(日)午前10時、地下鉄谷町線大日駅・改札口前集合。佐太天神宮、来迎寺、津嶋部神社など守口市の古社寺を訪ねます。当日参加OK。
→問い合わせは文学・歴史ウォーク事務局 080-5333-5783(担当・井尻)

●7/17|ナカノシマ大学「大阪24区物語③」予告編

3回連続講座の最終回。テーマとなるエリアは市街南部の住之江・住吉・東住吉・阿倍野・平野の5区。大阪の古層をかたちづくり、現在もディープに受け継ぐ5区の成り立ちと変遷を見渡します。区はただの行政区分ではなく、固有の歴史を持った文化圏です。

講座お申し込みの方全員に、講座当日に付録として昭和31年版・大阪市街図のオリジナル復刻地図を進呈!
→ナカノシマ大学の情報はこちらから

●7月〜9月|朝日カルチャーセンター中之島
「古地図地名物語」予告編

通算30回を数える古地図で大阪の地名と遊ぶシリーズ講座です。この夏は、次の3回を予定しています。地名はいちばん身近な足元の歴史です。古地図のビジュアルな面白さとともにお楽しみください。新規のご参加、歓迎です。
7月26日(金):桜ノ宮・淀川沿い周辺と交野市
8月23日(金):中之島西端・川口周辺と貝塚市
9月27日(金):住之江周辺と泉大津市
→ただいま申し込み受付中。問い合わせ:朝日カルチャーセンター中之島教室(06-6222-5222)
朝日カルチャーセンター中之島の情報はこちらから

●月刊誌「望星」に登場予定

東海教育研究所発行の月刊誌『望星』の取材をうけました。大阪特集号を出されるそうで、私のお題は古地図にちなんだ大阪散策コースとのことでした。インタビューの後、編集者と一緒に街を歩きました。中之島から堂島、天満、梅田をぐるっとめぐりながら話を続けたのですが、大阪らしさとは何かについて、これまでしゃべったことのない内容が多かったです。言って、すっきりしました。聴いて下さった編集のYさん、記事を予定外の2部構成でまとめていただくことになり、まことにお疲れさまでした。

『望星』大阪特集号の発売は6月15日だそうです。
「望星」誌の情報はこちらから

●日本経済新聞に登場予定

日本経済新聞の記者の取材を受けました。テーマは「大阪の区の変遷」で、私の著書『続々・大阪古地図むかし案内』を読んで、連絡してこられたそうです。ちょうど古地図サロンやナカノシマ大学で進行中のテーマなので、最新情報をプラスして記者にはお話しました。記事の掲載は7月初旬で、日は未定。詳細は次回更新時に報告できるでしょう。

 

 

●大阪24区をテーマにした古地図の新刊本の執筆、追い込み中です。

現在進行中のナカノシマ大学「大阪24区物語」の書籍化をめざしての原稿執筆が、佳境に入りました。都構想の住民投票がにわかに現実味を帯びてきたこともあり、「区」って何なの、と今こそ見直す時期が来たと思います。次回の更新の頃には、脱稿できているはず……です。

また、みなさんとどこかでお会いできるのを楽しみにしています。

 

【新刊情報】『緊急検証 大阪市がなくなる』

2019年5月29日 水曜日

『緊急検証 大阪市がなくなる』
著者/吉富有治


写真/松本創

デザイン/津村正二(ツムラグラフィーク)
版型/A5版
頁数/96ページ(本文モノクロ)
定価/本体800円+税(税込864円) 
発売/2019年6月1日(土)

 

大阪の政治と行政を20年以上にわたり取材してきたジャーナリスト・吉富有治氏の新刊『緊急検証 大阪市がなくなる』を2019年6月1日(土)に緊急出版・発売します。吉富有治氏の著書には『大阪破産』『大阪破産第2章』(ともに光文社)、『橋下徹 改革者か壊し屋か』(中公新書ラクレ)、『大阪破産からの再生』(講談社)があります。

リアルタイムで2019年春の統一地方選と「クロス選挙」を追いかけ、維新の両首長当選後の「大阪都構想」への住民投票に対する各政党の対応の変化についても実に的確な予測で、とくに「公明党が賛成に回るであろう」ことを指摘し、現実はその通りに進行しています。

しかし、この本の面白さはそれ以上に「維新はどのようにして橋下徹が不在となった後も、大阪の大衆の支持を得てきたのか」「なぜ2015年の住民投票に僅差で勝利したのに、自民党は今回のクロス選で惨敗したのか」について切れ味の鋭い分析を行っています。

それに加えて、大阪市を解体して特別区に再編する「都構想」の本質をもう少し詳しく見極め、「賛成・反対の両者がテーブルについて率直に話し合える市民協議会のようなものを今こそ立ち上げるべきではないか」と建設的な提案をしています。

大阪の政治の主役は「あくまで住民投票の権利を持っている市民」だと著者は言います。大阪市がなくなって地方自治が後退する云々の感情論とは一線を画す、「すぐ近くの、未来の大阪」を考えるための材料として実に有用なテキストだと思います。

巻末には、『誰が「橋下徹」をつくったか』で日本ジャーナリスト会議賞を受賞した、松本創氏とのシリアスな対談も約20ページ掲載しております。ぜひご一読ください。

『ザ・古墳群〜百舌鳥と古市 全89基』2刷発売のお知らせ

2019年4月23日 火曜日

昨年5月に発売いたしました、百舌鳥・古市古墳群とその地元を歩くガイドブック『ザ・古墳群〜百舌鳥と古市 全89基』の初版6,000部が完売し、2,500部増刷いたしました。2刷本は4月21日(火)より順次、納品いたします。

この本の編集にご協力いただいた関係者のみなさま、この本をご購入いただいた読者のみなさま、そしてこの本を多くの方に薦めていただいた古墳好きのみなさまに心よりお礼申し上げます。

【今回の増刷にあたって】
1 百舌鳥・古市古墳群の関係者から聞き取りを行い、本文に登場する一部の古墳は再撮影して写真を差し替えました。

2 周辺の名所や店舗情報はすべて更新し、こちらも必要に応じて再撮影しています。

3 地図も更新し、季節ごとの古墳の写真や周辺の飲食店、新たにオープンした古墳グッズショップなどの写真も追加して掲載しています。

百舌鳥・古市古墳群89基のうち49基は、2019年7月に世界文化遺産に登録される可能性があります。版元としても世界遺産登録は大歓迎ですが、世界遺産登録候補に入っていない40基の古墳には、見逃せない味わい深さがあります。

世界遺産登録が実現する・しないにかかわらず、この本をきっかけに、一人でも多くの古墳好きが生まれることを願っています。

『ザ・古墳群〜百舌鳥と古市 全89基』
定価:本体1,500円+税
判型:A5判(ビニールカバー装)
頁数:224ページ(オールカラー)
第2刷:2019年4月21日より納品
協力:堺市、堺市博物館、藤井寺市、羽曳野市、 百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議

拝啓 古地図サロンから⑬

2019年4月22日 月曜日

2019年4月16日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

〈今回の目次〉
■新・古地図サロンの(3月22日)のレポート
●4/15|ナカノシマ大学「大阪24区物語②フロントエリア編」レポート
●3/24|ナカノシマ大学「東京vs大阪・地形自慢バトル」にゲストで登場
●4/22・5/13|朝日カルチャーセンター中之島「天王寺七坂めぐり」の予告編
●4/30|森之宮ミューズモール「まちライブラリー・ブックフェスタ」に登場
●6/2|「文学・歴史ウォーク」で案内と60分トークの予告編
●7月〜9月|朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」の予告編

 

■新・古地図サロンのレポート

開催日:3/22(金)午後3~6時 大阪ガスビル1階カフェにて
旧サロンから数えて通算12回目の古地図サロン・レポートです。「島民」での告知を見て、という方が大半で、最終20人くらいの来場がありました。今回より30分ほど私のトークを途中に挟むと予告したとおり、4時から本日公開の古地図にまつわるお話あれこれ。テーマは明治~昭和の大阪の区の移り変わり。終わってからも質問、雑談その他で終了時刻間際まで賑やかな会になりました。

去年も思ったことですが、古地図を囲みながらドリンク一杯で気軽に歓談できる雰囲気は、講演や講座とはまた違う良さがあります。「日本一気楽に古地図と遊べる場」と私は呼んでいますが、そういう場だからこそ聞ける来場者の声があって、その場で生まれる発見もあるのですね。小さな発見でも、歓談の中でみんなで見つけたものには、ワクワクがもれなく付いてきます。そこがサロンの値打ちです。

本日公開の主な古地図は次のとおりです。全て当時発行のオリジナル版です。
「摂津国大阪府区分新細図」明治12年(1879)
「新撰大阪市中細見全図」明治14年(1881)
「大大阪明細地図」大正14年(1925)
「区域変更図」昭和18年(1943)
「南区詳細図」昭和30年代(1960年前後)
他に復刻版の古地図など約10点をご覧いただきました。

★次回は5/24(金)午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェにて開催します。
トークは午後4時頃から。テーマは3月に続き大阪の区の変遷。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OKです。
★以後、年内の予定は7/26(金)、9/20(金)、11/22(金)

 

【最近の主な古地図活動】
◆4/15|ナカノシマ大学「大阪24区物語②フロントエリア編」レポート

「区」を通して暮らしの足元の歴史をたどる3回講座の第2回は、ベイエリア、リバーサイド、サンライズロード、生長点エリアなど、近代大阪の牽引車になった10区がテーマです。成長と拡大の主役エリアは年代ごとに入れ替わり、方向性にも違いがあります。過去の歴史が繰り返されることもしばしばです。「区」の誕生や消滅にはどんな意味があるのか、各時代の地図を見ていただきながらお話しした90分でした。

付録の「大大阪明細地図」は、大正14年(1925)に人口日本一になった大阪を描いた地図。当時13あった区の人口と面積のグラフ付で、意外な各区のプロフィルが見えてきます。この講座は次回が完結編。今夏、開催の予定です。

●3/24|ナカノシマ大学「東京vs大阪・地形自慢バトル」にゲストで登場

皆川典久さん(東京スリバチ学会)、新之助さん(大阪高低差学会)による「地形自慢バトル」のお話の後、ゲストで登場。地形の楽しみ方などについて質問。持参した鳥観図のお披露目もいたしました。

 

 

【春~夏の主な古地図活動・予告編】
●4/22日(月)・5/13日(月)朝日カルチャーセンター中之島で
「大阪古地図むかし案内・天王寺七坂めぐり」講座」

教室講座と町歩きが1セットの本講座も早や8年目。古地図を手にして訪ねる今回のスポットは天王寺七坂です。よく知られているようで、案外と知られていない坂の街の由緒来歴をご紹介します。
→時間帯は午前10時~12時。問い合わせ:朝日カルチャーセンター中之島教室(06-6222-5222)

●4/30(火)森之宮ミューズモール「まちライブラリー・ブックフェスタ」に登場

恒例の「まちライブラリー・ブックフェスタ」が今年も関西各所で催されます。私は4月30日午後3時20分より、森之宮キューズモールでのイベントに登場します、と前回アナウンスしましたが、同イベントすでに予約で満席になりました。ありがとうございました。

●6/2(日)「文学・歴史ウォーク」で案内と60分トーク

2001年にはじまり、200回以上も続いている講演とウォークを楽しむ団体「文学・歴史ウォーク」主催のイベントです。6月2日(日)午前10時、地下鉄谷町線大日駅・改札口前に集合。佐太天神宮、来迎寺、津嶋部神社など守口市の古社寺を訪ねます。途中で私の60分トークあり。当日参加OK。
→問い合わせは文学・歴史ウォーク事務局 080-5333-5783(担当・井尻)

●7月〜9月|朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」

古地図を楽しみながら大阪市と大阪府の地名の由来や街の歴史を探るシリーズも、いつのまにやら5年目になりました。地名の由来と変遷の一つひとつはとても小さな歴史ですが、集まると奥行きと広がりが見えてきます。今夏の講座内容は次の通りです。
7月26日(金):桜ノ宮・淀川沿い周辺と交野市
8月23日(金):中之島西端・川口周辺と貝塚市
9月27日(金):住之江周辺と泉大津市
→時間帯は午前10時~12時。問い合わせ:朝日カルチャーセンター中之島教室(06-6222-5222)

●古地図の新刊、執筆中

現在進行中のナカノシマ大学「大阪24区物語」の書籍化をめざして、原稿を書いているところです。古地図ももちろんたくさん載る予定。いつ刊行されるかは未定ですが、夏に開催の同講座完結編の頃にはお知らせできるかもしれません。今なにかと話題の大阪の「区」にスポットをあてた、これまでにない本になると思います。乞うご期待。

 

また、みなさんとどこかでお会いできるのを楽しみにしています。

 

 

拝啓・古地図サロンから⑫

2019年3月4日 月曜日

2019年2月21日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

2019年バージョンの新・古地図サロン開幕の3月22日(金)まで、あと約1ヶ月。お待たせしておりますが、このへんでオープン前の近況報告とお知らせをいくつか。

まずは見出しのピックアップ。

■新・古地図サロンの2019年の日程
(前回のお知らせから一部変更あり)
■新・古地図サロン3月22日の予告編
◆1/30|ナカノシマ大学「大阪24区物語①上町台地編」レポート
●3/22|の朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語」の予告編
●3/24|ナカノシマ大学「東京vs大阪・地形自慢バトル」に登場予定
●4/15|ナカノシマ大学「大阪24区物語②フロントエリア編」の予告編
●4/22|朝日カルチャーセンター中之島「天王寺七坂めぐり①」の予告編
●4/30|森之宮ミューズモール「まちライブラリー・ブックフェスタ」に登場予定

 

■新・古地図サロンの2019年の日程

前回のお知らせから9月の回のみ日程が変わりました。
9月20日(金)午後3~6時 ※第3金曜に変更です。
3月22日・5月24日・7月26日・11月22日(各第4金曜・午後3~6時)は変わりません。

■新・古地図サロン3/22(金)の予告編

大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、午後3~6時開催。参加無料(カフェで1オーダー必要)。明治~大正~昭和の大阪の「区」の劇的な変貌を地図でたどります。大正14年と昭和18年がポイント。4~5時の間に30分間、私のトークあり。ナカノシマ大学での講座「大阪24区物語」とあわせて聞くとふむふむふの内容です。
※月刊「島民」3月1日号の「月報」にも案内が掲載されます。

◆1/30|ナカノシマ大学「大阪24区物語①上町台地編」レポート

大阪市中央公会堂で午後7時開催。「市」よりも歴史が古い「区」の成り立ちを各年代の地図を見ながら考える3回講座の第1回。街の背骨の上町台地から肋骨のように延びる街道筋の姿、台地の東西にひらけた水辺と交流の風景、そこで育まれてきた生活文化と区の関わり。その他てんこ盛りの90分になりました。

付録の「古今対照大阪市街地図」は古代~中世~近代の大阪を一枚に収めた時間地図で、ここにも区のルーツが隠されています。キーワードはやはり上町台地。講座と並行して、書籍化のための原稿も執筆中です。乞うご期待。

●3/24|ナカノシマ大学「東京vs大阪・地形自慢バトル」

皆川典久さん(東京スリバチ学会)、新之助さん(大阪高低差学会)の待望の顔合わせが実現した。「地形自慢バトル」の軍配は果たしてどちらに挙がるのか。さらにびっくり。東西の地形のスペシャリスト対決という注目の舞台に、なんと、私にも登場せよとの指令が届いた。主役はもちろんみながさん・新之助さんのお二人だが、何やら私にも出番が与えられるらしい。詳細は当日のお楽しみ。
※講座は満員御礼につき申し込みは締め切っています。

●4/15|ナカノシマ大学「大阪24区物語②フロントエリア編」

「区」から見直す大阪の歴史・第2弾。大都市に変貌していく大阪の最前線となり、さまざまな形で成長を支えた10区がテーマ。川と海、そこに浮かぶ島々が果たした役割を振り返りながら、10区がどのようにしてできあがっていったかを考察します。付録の大正14年発行「大大阪明細地図」は、大大阪と呼ばれた13区時代を知る格好の資料。3月1日より申し込み受付開始!
→ナカノシマ大学の情報はhttps://nakanoshima-daigaku.net/

●3/22|朝日カルチャーセンター中之島
「古地図地名物語」

大阪市と大阪府の地名を訪ねる古地図講座も5年目に入り、3月は第27回となりました。今回の「古地図地名物語」は、難波周辺と高石市・忠岡町・田尻町がテーマ。地名の由来と変遷のひとつひとつはとても小さな歴史ですが、集まると奥行きと広がりが見えてきて、味わい深い。
→時間帯は午前10時30分~12時。問い合わせは朝日カルチャーセンター中之島教室(06-6222-5222)

●4/22・5/13|朝日カルチャーセンター中之島
「大阪古地図むかし案内・天王寺七坂めぐり」

教室での講座と町歩きの2回講座。古地図を手にして訪ねる今回のスポットは天王寺七坂。よく知られているようで、案外と知られていない坂の街の由緒来歴をご紹介します。
→時間帯は午前10時~12時。問い合わせは朝日カルチャーセンター中之島教室(06-6222-5222)

●4/30|森之宮ミューズモール
「まちライブラリー・ブックフェスタ」

毎年恒例になった「まちライブラリー・ブックフェスタ」が今年も関西各所で開催されます。私が登場するのは、森之宮キューズモールでの4月30日のイベント。午後3時20分より、古地図を広げて森之宮と大阪のタイムトラベルを参加者といっしょに楽しみます。詳細は後日あらためて発表。

また、みなさんとどこかでお会いできるのを楽しみにしています。

 

 

『奈路道程の堺を歩けば。展』がサカイノマにて開催中!

2019年1月17日 木曜日

140Bの本や発行物でおなじみのイラストレーター奈路道程さんの個展
「奈路道程の堺を歩けば。展」がサカイノマにて、2月14日(木)まで開催中!

堺のど真ん中「旧堺」エリアをまるごと楽しめるガイドブック「堺を歩けば。」は2017年5月の発売以来、地元・堺の住民をはじめ全国の旅好き・待ち歩き好きから好評を博して完売し、2018年8月に増刷となりました。表紙や題字、本文イラストを手がけた奈路道程さんの個展がSAKAINOMAcafeにて開催されています。

「堺を歩けば。」表紙絵や挿絵のほか、個展に合わせた書き下ろしの作品も発表予定。ポストカードや書籍も販売。実は、140Bからは「堺を歩けば。」と「ザ・古墳群」のポストカードが新発売!※こちらからもご購入いただけます。→ナカノシマ大学書店

 

【特別企画】
奈路道程さんによる対面似顔絵制作

2019年2月9日(土)
11:00-14:00/15:00-18:00
ワンドリンク付き1000円(税込)

SAKAINOMA cafe
〒590-0947
大阪府堺市堺区熊野町西1-1-23
TEL 072-275-7060

奈路道程の堺を歩けば。展 [入場無料]
会期:2019年1月12日(土)〜2月14日(木)
時間:8:00〜19:00

 

オープニングパーティーの写真と合わせて、SAKAINOMAcafeでの個展の様子をご紹介!

奈路さんと今まで最も仕事を共にしてきたであろう江が乾杯の音頭を!

「堺を歩けば。」でも紹介されている名だたる名店からごちそうが勢ぞろい。

新聞社から取材を受けている奈路画伯。

「堺を歩けば。」の担当編集である弊社の中島がご挨拶。ご協力くださった皆様も参加されています!

対面似顔絵制作中の奈路画伯。特徴をつかむのがとても速いです!

みなさま、是非「堺を歩けば。」片手に、SAKAINOMAcafeにお立ち寄りください。堺の魅力を再発見してみましょう!

拝啓・古地図サロンから⑪

2018年12月28日 金曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」
毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。2018年最後のサロンの様子を、本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。


☆2018年12月7日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

あっというまに冬が来ました。御堂筋はイルミネーションきらきらの季節です。皆様、いかがお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、12月7日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。2018年1月からほぼ毎月続けて、これで11回目。最終回のつもりでしたが、季節とともにうつろう心、いろいろあって来年からの新バージョン古地図サロン(詳細後述)へのバトンタッチの会となりました。

本日は江戸時代の古地図がメインテーマです。公開した中でいちばん古い図は、刊行日が天明年間の日付で、今からざっと230年前に作られたものです。よく生き残ってくれました。虫食いもあって、かなり傷んでいますが、隣に並べた現代の復刻版と比べると、色合いの深さといい、紙のしっとりした質感といい、味わいに明らかな差があります。年代を経たものが持つ風格です。

表紙のある図は、みなさんに指で表紙に触れてもらいました。見た目には目立ちませんが、花や草木の浮彫りがほどこされていて、指先でその奥ゆかしい美しさを感じ取ることができます。江戸時代の地図の復刻版の中には、色をかすれさせるなど古びた感じを再現した一見本物風のものもあるのですが、和紙の趣きや、こうした繊細な浮彫りまでは真似できないようです。

天明年間の図には裏面に、もとの持ち主が筆で描いたと思われる江戸時代の家の間取り図が載っています。地図として古くなっても、紙が貴重な時代なので裏面を有効利用したのでしょう。大きな蔵を併設した商家の間取りに、当時の暮らしの一コマが想像されます。

色刷り、モノクロを問わず、原図の味わいは格別です。江戸時代の原図は観る機会が少ないので、本日お越しのみなさんには喜んでいただけたと思います。

復刻版の江戸時代地図にトレース紙に描いた昭和地図を重ねた、ちょっと変わった大阪の図があり、これを広げた時も盛り上がりました。トレースには難波にあった大阪球場が載っていたり、少し前の昔と江戸時代の昔が地図の中で折り重なって見えます。建築事務所に勤めていた方からもらい受けた図で、トレース図は精度の高い本格的なもの。公開する機会がほとんどなかったのですが、大勢で囲んでわいわいと観るには楽しい図でした。

途中までご参加の方も、最後まで残られた方も、常連の方も、本日初参加の方も、どなたさまもおつきあいありがとうございました。サロンからの帰りはイルミネーションたけなわの御堂筋が夜を照らしていました。

というわけで、大事なお知らせ

さて、本日2018年の古地図サロンは終了です。当初は1年間の予定で、これが最終回のつもりだったのですが、続けてほしいとの声があり、会場のお店からも快諾が得られましたので、来年も継続することにしました。

2019年の新・古地図サロンの日程は次のとおりです。いずれも第4金曜日。会場はこれまでと同じく御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて。

3月22日(金)午後3~6時
5月24日(金)午後3~6時
7月26日(金)午後3~6時
9月27日(金)午後3~6時
11月22日(金)午後3~6時

 

各回とも4時以降に、私の30分程度のトークあり。その日の公開地図にちなんだ話をします。どなたでも参加できます。途中参加・途中退場オーケーです。

その他のお知らせ

☆2019年1月30日(水)ナカノシマ大学「大阪24区物語①上町台地編」を開催します。
会場は大阪市中央公会堂。すでに満員御礼となってしまったのですが、現在、大阪24区の本のための原稿を執筆中。並行してシリーズ講座をひらきます。

☆最新刊『カラー版・大阪古地図むかし案内』(創元社)が12月10日刊行されました。
旧版(モノクロ)のリニューアル版。大坂大絵図(元禄時代)のカラー拡大図版を多数収録。

今後、古地図サロンがない月も、このブログで毎月の予定など、まとめてご紹介します。お見逃しなく。

なお、本日の展示古地図は次の12点でした。

【原図】7点

★「増補大坂図」天明7年(1787)
「文久改正大坂図」文久3年(1863)
「改正大坂細見図」弘化2年(1845)
「改正摂津大坂図」天保13年(1842)
「文久改正京都指掌図」文久2年(1862)
「摂津国大阪府区分新細図」明治12年(1879)
「改正新改大阪市街地図」明治初期

【復刻】5点

「慶応改正大阪細見全図」慶応元年(1865)
「増補大坂図」天明7年(1787)
「改正大坂細見図」弘化2年(1845)
「摂州大坂大絵図」(昭和地図トレース付)宝暦年間
「摂津国大阪府区分新細図」明治12年(1879)

 

いつもはすべて原図を展示していますが、今回は同じ内容の原図と復刻を並べたり、特徴のある復刻を観てもらいました。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。また、復刻は原図をもとに近年になって作られたものを指します。

今回のセレクト地図は★増補大坂図(原図)でした。天明7年(1787)刊行。かなり虫食いありですが、そこが味わい深い。虫もおいしかったのでしょう。裏面は江戸時代の商家の間取り図面が筆で描かれています。

なお、本も2冊展示しました。

 『鳥瞰図!』本渡章(私の近刊。吉田初三郎はじめ古今の鳥観図約100点がオンパレード)

 『燃えつきた地図』安部公房(都市という迷宮に地図はない。迷える者こそ幸いあれ)

それでは、どなたさまも、よいお年をお迎えください。

再び、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

                                                                          敬具
平成30年12月14日
本渡章

 

 

拝啓・古地図サロンから⑩

2018年11月13日 火曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」
毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、10月に開かれたサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年10月26日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

見上げれば、青と白のコントラストがくっきり。御堂筋もすっかり秋の空です。皆様、いかがお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、10月26日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。

本日もオープン待ちの方がお一人。サロンが始まってからも、ぽつぽつ来場があり、それぞれの都合に合わせて退席という感じで、常時数人おられる感じで最後まで続きました。気候がすごしやすくなって、みなさん外出がしやすくなったのかもしれません。秋はいい季節です。

今回の展示は「教科書になった古地図」がメインテーマ。明治・大正・昭和初期の学校で使われた地図帳のほか、教科書、副読本を7点。これ以外に、昭和の大阪の古地図5点を用意しました。(詳細は末尾に記載)

意外と手に取ってじっくり見る人が多かったのが、明治の「日本の歴史」教科書です。古代の日本列島図に旧国名を記して、時代順にいくつか載っています。本文は天皇に関する記述が主です。正直言って、これが一番人気になるとは思っていなかったので、びっくり。もちろん来場の方たちが戦前教育復活の支持者というわけではなく、明治時代の歴史教科書とはどんなものだったのか、そこにどんな日本地図が載っていたのか、と純粋に好奇心をそそるものがあったということなのですね。

実を言うと、私もこの教科書の中身をまだよく見ていなかったので、神話や記紀に出てくるような地名を記した古代の日本地図が載っているのを知らず、へえという感じで、みなさんと一緒に驚いてしまいました。本文は旧仮名遣いで読みにくいのですが、読んでいくと当時の教室の空気がふわっと行間からたちのぼってくる感じもします。本の紙質や文字の書体、挿絵の雰囲気など、すべてが時代を語っています。学校の世界地図も、明治から大正、昭和にかけて大きく変わりました。今はなくなった国が実に多いのです。国境も移動しています。新しい国も数え切れません。今も世界は変わり続けているのです。

昭和の古地図では、此花区の「伝法」という地名がみなさんとの話題になりました。仏法の伝来にちなんだ地名の伝法が、此花区の区名の由来とも関係があるという話なのですが、昭和4年と昭和20年代の大阪市街図で伝法の場所を探してみると、意外なことに気づきました。伝法は、今は此花区の地名ですが、その前は別の区に所属していたのです。なんと区の境界が移動していました。時代とともに世界も大阪もどんどん変わっていたのです。あたりまえといえばあたりまえですが、気づくたびに、へえと思ってしまいます。

さて、次回(11月は休みで12月7日開催)のサロンは江戸時代の古地図を中心に公開します。お見逃しなく。

というわけで、本日の展示古地図の題名は、次のとおりです。


本日の公開古地図
(学校で使われた地図帳)
★「教科摘要・帝国新地図」明治24年(1891)
「小学外国地図」明治29年(1896)
「普通教育世界地図」大正4年(1915)
「高等小学地理書付図」昭和15年(1940)
「尋常小学校修身書」明治25年(1892)
「日本歴史」明治33年(1900)
「小学綴方」大正6年(1917)
(古地図)
「最新大大阪市街全図」昭和4年(1929)
「大大阪区勢地図・北区」昭和13年(1938)
「最新大阪市街地図」昭和20年代
「新世界全図」昭和28年(1953)
「堺市詳細図」昭和31年(1956)

 

以上12点。すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。また、復刻古地図は原図をもとに作った復刻版です。

今回のセレクト地図は「教科摘要・帝国新地図」でした。学校で使用された地図帳。モダンな装丁にひかれて頁を開けると、中は片面印刷。きれいな色刷りです。

なお、本も2冊展示しました。

『鳥瞰図!』本渡章(私の最新刊。「本の雑誌」9月号の書評欄で紹介されました)
『文学地図』加藤典洋(ひとつの世界を知るには、俯瞰する地図的視点がいつも役に立つ)

 

地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて。以後の日程は次のとおり。

11月は休み
12月は7日(金)3:00PM~6:00PMに開催(※この日がサロンの最終回です)

 

どなたでも参加できます。もし、興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケーです。では、次回サロン(12月7日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年10月26日
本渡章

★本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

最終回は12月7日(金)3:00PM〜6:00PM
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。