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拝啓・古地図サロンから④

2018年5月11日 金曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年4月27日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

ぽかぽか陽気の午後、かすかな風が心地よい御堂筋です。みなさま、お元気でいらしゃいますか。

本日、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、第4回目の古地図サロンをひらきました。2回目以降はリピーターの方の来場がほとんどなのですが、今日は新しい参加者がお一人のみで、ぼちぼち何かPRを考えたほうがいいのかな、という感じになってきました。ただ、少人数になるのは悪いことばかりではなくて、落ち着いてゆったり過ごしていただける一面もあるので、もうしばらく、様子を見ようかなと思っています。

4回目になって、気のついたことがあります。これまでのところ、サロンに来られる方は全員がお一人さまなのですね。不思議といえば不思議ですが、それはそうかもしれないと妙に納得してしまうところもあります。古地図とは孤独を愛する人の趣味なのか。同好の人が周りにいないだけなのか。あるいは、これまでが単なる偶然で、次回は同伴、団体の来場がどっと増えるのか(なさそうな話ですが)。私としては、お一人さまで気ままに来られて、自由にくつろいで、好きなだけ居て、気がすんだら帰るという利用の仕方が、サロンの基本イメージだったので、予想どおりの経過です。気にしていません。来場者数の多い少ないも、実はあまり気にしていません。たくさん来ていただければ、もちろんうれしいのですが、サロンという場では大事なことがほかにある気がするのです。

今日は、サロンのオープン前から来られて、私が地図の展示など準備しているのを見て手伝ってくださる方がいました。3時間のサロン開催中、いつもにも増して熱心に古地図を見ていく方が多く、もうひとつ言えば、珍しいことに女性の来場が男性を上回った日でもありました。同じことをやっていても、その日によって空気は少しずつちがっています。今日の空気は今日だけのもの。その日に来られた方たちとのあいだで自然にできあがったもので、再現は二度とできません。文章でお伝えしようとしても、限りがあります。このブログの読者で、まだサロンにお越しでない方も、よければ一度、空気を吸いに来てみませんか。別に古地図の話をしなくてもかまいません。サロンはマニアの集まりではありません。私はいつも本の中で、古地図はとても人間的なメディアだと書いていますが、サロンもそのような場だと考えています。

とはいえ、古地図の話ももちろんいたします。今回の展示の中心は「鳥瞰図」でした。じっくり覗きこんでいく方が多かったのは、各地の美しい風景を絵画のように描いた作品の力でしょう。鳥瞰図はすべて原図(オリジナル原版の地図)で、特に色合いの鮮やかな図には立ち止まって見入る方が目立ちました。次回(5月25日)の展示も鳥瞰図を特集する予定です。今回とはまたちがう趣きの作品を用意いたします。一方で、常設の復刻地図の方も時間をかけて見ていかれる方が多かったのですが、それは展示の仕方を変えたからでしょう。復刻地図は台紙入りのビニールに入れるようにしましたので、手にとって見やすくなりました。

恒例のジャンケン地図は、円山応挙原画の「大坂旧城之図」でした。内容が少し異なる2種類の図があって、一方は大正時代発行、もう一方は昭和の天守閣復興記念阪です。これも好評でした。ほかにも大正時代の平和記念東京博覧会の会場鳥瞰図2点が、「ウォーリーを探せ」的な面白さで、みなさんで輪になって囲んで見入る場面がありました。お一人さまで来られても、会話が自然にはじまるのも、古地図があいだをとりもってくれるからでしょう。

終了はいつもよりちょっと遅くなりました。片づけを終えて大阪ガスビルを出ると、黄昏の御堂筋でした。この時間帯は、街角が一番きれいに見えるマジック・アワーです。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。

 

●鳥瞰図ミニ特集
「実用新案・日本鉄道パノラマ地図(大正12年・1922)
「日光山両社真図(明治33年・1900)
「大阪旧城之図」円山応挙原画・林基春筆写(昭和6年・1931)
「大阪旧城之図」円山応挙原画・福島豊次郎編(大正11年・1922)
「最新式大東京地図」裏面「平和記念東京博覧会会場鳥瞰図」(大正11年・1922)
「平和記念東京博覧会会場全景」(大正11年・1922)
「箱根名所図絵」吉田初三郎作(大正6年・1917)
「UNZEN」吉田初三郎作(大正10年・1921)
「比叡山御遊覧のしほり」吉田義人作 昭和初期
「近畿名勝遊覧・最新実測大阪市街地図」(大正7年・1918)

 

以上10点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

★「大阪旧城之図」2点のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

なお、本も4冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
(オールカラー・図版多数の最新刊です)
『大阪古地図パラダイス』本渡章
(吉田初三郎作の鳥瞰図が付録です)
『烏有此譚』円城塔
(言葉に羽根が生えた小説。鳥瞰図を連想)
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』川上未映子
(鳥瞰を音にしたらすこん、かも。頭の中で鳥が羽ばたくエッセイ集)

 

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、毎月第4金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(5月25日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年4月27日
本渡章

★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第5回は5月25日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

拝啓・古地図サロンから③

2018年3月28日 水曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


 

☆2018年3月23日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

桜咲く季節となりました。窓の外を行く人の足どりも明るく軽い御堂筋です。みなさま、お元気でいらしゃいますか。

本日、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、第3回目の古地図サロンをひらきました。1回目からお越しの方が数人お見えになり、新しく参加の方の方も数人おられ、古地図を見ながら歓談されたほか、いま執筆中の本(ナカノシマ大学で進行中の講座の書籍化)に載せる鳥瞰図10数点の撮影も行なわれました。鳥瞰図とは3Dタッチの絵のような地図です。今回はサロン展示の古地図に加えて、鳥瞰図が午後のひとときに華やかさを添えてくれました。

いつもどおり3時にサロンをオープンしますと、まもなくカメラマンの浜田さんが登場。先に来ていた編集者の大迫さんと息のあったコンビで、次々と鳥瞰図の撮影がはじまりました。いずれも戦前の絵師たちが技を尽くした美しい鳥瞰図ばかり(乞うご期待)。著者の私も次の本の完成を楽しみにしています。撮影がすすむ間に、サロンにも来訪者がぼつぼつ。珈琲やジュースを飲みながら、テーブルに広げた本日の展示古地図をのぞきこんだり、隣の人としゃべったり。いつもの時間が流れていきます。

本日の展示のトピックは蒸気機関車全盛期の鉄道地図のミニ特集。鉄道というだけでそこはかとないロマンが香るのは、昔も今も変わりなく、特に蒸気機関車があたりまえに走っていた頃の鉄道地図には、旅することへの憧れが、路線図はもちろん山と海の街々の風景、名物紹介の広告や印刷の色合いにまでにじみ出ていて、味があります。いわゆるレトロ感覚と呼ばれているものの中身は、かつての人々が感じた心情が、こういう機会をとおして、今の人に伝染することなんでしょうね。来場者のどなたかが、「この鉄道地図と同じ色の図を昔、駅で見たことがある」と言われてましたが、そういう記憶を呼び覚ます力が古い地図にはあるのです。

鉄道地図5点のうち「最新大阪電車地図」は路面電車の市電が市内交通の主役だった頃の路線図です。これが本日のジャンケン地図(ジャンケンに勝った人にお見せします)。今回も勝率は5割でしたが、なぜか私がジャンケンに強いというイメージができあがっているのは、惜しくも敗れた人の嘆きの深さを物語っているようです(くやしかったら勝ちましょう)。

今日はそのほかに大正時代の大阪市街図、終戦直後の大阪府図、1960年代の大阪観光写真集も見ていただきました。大相撲春場所にちなんで、およそ50年前の出身地別入幕力士分布図という変り種地図もお披露目したのですが、大相撲がゴタゴタ続きのせいか不人気でした。

毎回展示しているナカノシマ大学作成の復刻古地図15点について、「売り物ではないんですよね」という声がありました。これは私が出講する講座の教材として配布するもので非売品ですと応えると、4月のナカノシマ大学(鳥瞰図シリーズの最終回です)に参加しますとのこと。会場で最新の復刻版をゲットしてください。

もうひとつ、今日の出来事。大迫さんからサロンのことを聞きましたと、読売新聞記者の彦坂さんが来訪。紙面での連載記事について相談がありました。4月から新企画がはじまるそうです。メディアからは初回のサロンで朝日放送ラジオの橋本さんが来られていました。橋本さんとは以前からのおつきあいですが、新しい仕事の話をかねての来訪でした。私の住まいは南大阪の近郊で交通至便というわけではないので、こうして気軽に立ち寄っていただけ、顔をあわせられるのも街なかサロンのいいところです。

さらにもうひとつの今日の出来事。ナカノシマ大学の受講者で、執筆中の鳥瞰図の本の資料提供者でもある泉さんが収集された京阪電鉄関係の図版をどっさり収めたファイルを持参して来訪されました。大正の広重と呼ばれた絵師・吉田初三郎の貴重な鳥瞰図を含む質量ともに充実したコレクションで、この場ではとても内容を紹介しきれません。ファイルから鳥瞰図数点を選んで、その場で撮影させていただいたことだけ記しておきます。泉さんのコレクションについては、いずれまた、あらためてお話する機会があると思います。

午後6時、サロンを終え、本日3杯目の珈琲をいただいて、ほっとひと息。カフェの松田店長と少しお話。最後に、スタッフの巴里さんといっしょに写真を撮らせていただきました。いつもいろいろ気をつかっていただいて、ありがとうございます。珈琲も美味しくいただいております。

 

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。

●鉄道ミニ特集
「大阪毎日新聞壱万五千号記念・全国鉄道地図・付名勝交通案内」(大正14年・1925)
「改正鉄道地図・付近畿著名醸造家案内」(昭和初期)
「最新大阪電車地図」(昭和10年・1935)
「最新版鉄道案内図・付温泉名所詳図」(昭和27年・1952)
「日本国有鉄道編纂・毎日新聞社・日本国有鉄道線路図」(昭和28年・1953)
●その他
「大阪市街全図」(大正10年・1921)
「日本新分県地図・大阪府」(昭和21年・1946)
「出身地別入幕力士分布図」(昭和46年・1971)

 

以上8点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点、60年代の写真集「大阪観光」も展示しました。

★「最新大阪電車地図」のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

なお、本も4冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
(いつも歩いている街がタイムトンネルに変わる)
『大阪古地図パラダイス』本渡章
(古地図と遊ぶ。クセになる)
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
(誰もが知ってる。でも、ちゃんと読んだかな)
『ゴットハルト鉄道』多和田葉子
(人体はトンネル、神への迷路。めくるめく幻想小説)

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、毎月第4金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(鳥瞰図特集を予定)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年3月23日
本渡章

★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第4回は4月27日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

拝啓・古地図サロンから②

2018年3月17日 土曜日

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

本渡章のサロン「古地図ものがたり」

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


 

☆2018年2月23日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

窓の外は、ぽかぽか陽気の御堂筋です。春は目の前。みなさま、お元気でいらしゃいますか。

本日、大阪ガスビル1階カフェfeufeuにて、第2回目の古地図サロンをひらきました。先月のように月刊「島民」での案内もなく、ほかに宣伝らしいことはしていなかったのですが、午後3時のオープンから切れ目なく来訪があり、それでいて、ゆったりとした空気が流れ、古地図を見たり、おしゃべりしたり、珈琲を飲んだり、今回はなかなかサロンらしいひとときが味わえた気がします。第1回サロンを盛り上げた「はじまりの熱気」はおさまって、これからはサロンとしての色あいがだんだんと出てくるのでしょう。サロンは12月まで続ける予定ですが、御堂筋の四季のようにいろいろな色を楽しめたらいいなと思います。

オープン前の準備中に、「島民」編集・発行人の大迫さんが来られました。サロンのことや次の本(只今執筆中)のことなど、ちょっとお話。今日の展示の古地図もひととおりご覧になると、鞄からとりだした「島民」最新号をひと山置いて風のように去っていかれました。いつも多忙な大迫さんです。こちらのカフェにも先月から「島民」は置いてありますが、きっと、またすぐになくなるでしょう。

さて、今回も3時のオープン前後からぽつぽつと、来会の方がありました。「こちらが古地図サロンですか」とたずねてこられた女性は、中央公会堂のスーベニア・ショップでサロンの案内を見て来ました、とのこと。案内はどこにもお願いしていないので、たぶんショップの方が「島民」を見て、中之島近辺の催しとして紹介してくださったのでしょう。ありがたいことです。その女性は古地図をひととおり見たあと、展示していた本を手にとり、椅子に座って静かに読んでおられました。テーブルでは数人の方たちが、古地図をのぞきこみながら、あれやこれやとおしゃべりしておられます。

サロン・スペースはとても小さいのですが、つかず離れずの距離感で人それぞれの時間を過ごすには、ほどよい広さともいえそうで、そこまで計算していたわけではないのに、雰囲気ができあがりつつあるのは、やはり中之島、御堂筋という場所柄が大きいように思います。オープン直後の雰囲気は、そのあとも人が入れ替わりながら、終了まで変わりませんでした。

本日、公開した古地図で人気があったのは、江戸時代の京都絵図、それと明治中頃の大阪・和歌山の地図でした。江戸時代の地図は、どれもそうですが、見れば見るほど縮尺も方角もいいかげんで、見せたいものを大きく、そうでないものは小さく描かれていて、当時の人々が何を思っていたのか、いろいろ想像させられます。もうひとつの図は、明治の陸軍大演習記念という内容も興味深いですが、今は消えてしまった地名がたくさん記されていて、歴史のうつろいをまのあたりにできます。それは今まで本にくりかえし書いてきたことですが、来会の方といっしょに古地図を囲んでお話ししたり、質問に応えたりしているうちに、私ももういちど新鮮な目で古地図を見る時間が持てました。

本日の来会者は12人。男女比は2対1。初めての方が3分の1。前回も来られた方が多かったです。ナカノシマ大学の受講者や島民読者が多く、ほとんどがサロンではじめてお話する方です。リアクションは次につながるエネルギー源でもあります。なんとなく、こういう場があったらいいなという感じではじめたサロンでしたが、やっぱり、はじめてよかったです。

本日の主役となった展示の古地図の題名は、次のとおりです。

「文久改正・京都指掌図」(文久2年・1862)★
「大演習枢要地図」(明治31年・1898)
「大大阪最新地図」(大正14年・1925)
「全日本最新名物名勝地図」(昭和7年・1932)
「大大阪氏街新地図」(昭和12年・1937)
「大阪市案内図」(昭和15年・1940)
「最新大阪地図」(昭和27年・1952)
「近畿名勝遊覧・最新大阪市街地図」

 

以上8点、すべて☆〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点、1970年万博前の「大阪写真集」も展示しました。

★「京都指掌図」のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。本日のジャンケン勝率は前回に続き、ぴったり5割でした。惜しくも敗れた方、泣かないでください。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

 なお、本も4冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
(私の最新刊。これを読んだら歩きたくなる)
『大阪古地図パラダイス』本渡章
(古地図と遊ぶ本。付録が吉田初三郎の大阪府鳥瞰図)
『電車道』磯崎憲一郎
(時空の感覚を拡大する鳥瞰小説。表紙が初三郎式鳥瞰図)
『鳥たち』よしもとばなな
(生死を越えて、人は鳥の目を持てる。著者代表作になるかもしれない小説)

 

古地図サロンはどなたでも参加できます。地図が読めない、方向音痴だとおっしゃる方も大丈夫です(じつは私も方向音痴)。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、気軽にお越しください。古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

今回は、店長の松田さんがご不在で、女性スタッフのみなさんにいろいろお世話になりました。ありがとうございました。

では、次回サロン(3月23日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

                                                           敬具
平成30年2月23日
本渡章

★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第3回は3月23日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

本渡章の「拝啓・古地図サロンから」①

2018年2月9日 金曜日

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

本渡章のサロン「古地図ものがたり」

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


 

☆最初のメール(本渡章よりみなさまへ)

拝啓

窓の外は、大粒の雪が降る御堂筋です。寒いですが、みなさま、お元気でいらしゃいますか。

本日、かねてよりの予告どおり、大阪ガスビル1階カフェfeufeuにて、第1回古地図サロンをひらきました。宣伝媒体は月刊「島民」の月報コーナーのみだったにもかかわらず、予想以上の反響がありました。3時間の開催中、まったく来場が途切れず、ほとんどの方が長時間話し込んでいかれました。カフェの一角の小さなサロンながらあふれる熱気、みなさまにもご覧いただきたかったです。

オープン時刻は3時でしたが、30分前からすでに3人の方が、珈琲や善哉などご飲食がてら待ち状態に入っておられました。出足の早さに驚きつつ、展示コーナーのセッティングを急ぎました。「古地図ものがたり」の案内スタンドの工作に手間どっている私を見かねて、店長の松田さんが助けて完成してくださいました。ご協力ありがとうございます。そもそもこの古地図サロンは、カフェfeufeuのご厚意がなければ実現しなかったものです。中之島の目の前、御堂筋沿いの名建築の1階カフェという最上の舞台を提供していただき、感謝々々です。

さて、3時少し前にオープンしますと、次々と来会者がありました。テーブルからテーブルへ、古地図をのぞきこまれ、私に目で訴えてこられます。これまで古地図にまつわる講座やイベントをたびたび行なってきましたが、至近距離でこういう目に囲まれたのは、この日が初めてでした。ひとりひとりから、いろいろなお話やご質問をいただきました。古地図の実物を見るのは初めてという方が多く、そのぶん新鮮な驚きを持たれたようでした。いっぽうで歴史や地理に詳しい方もおられ、やがて、それぞれのテーブルに人の輪ができると、その方たちが中心になって話が盛り上がりました。もちろん、じっと見つめ、耳を傾けるだけの静かな方もおられて、それもまたサロンにふさわしい空気をかもしだしていたと思います。

今回は明治から大正、昭和前半にかけての古地図を用意しました。絵柄や彩色の美しいもの、味のあるものがやはり人気で、「美しい日本の古地図」というキャッチフレーズが頭に浮かびました。古地図の地名で見えてきた上町台地の地形も話題になり、「地球は生きている」というキーワードで、また盛り上がりました。

初回としては大成功で、主催者としては喜んでおります。3時間ずっと会場におられた方、おつかれさまでした。仕事を抜けて来られた方、ご苦労様でした。行き帰りに雪に降られた方、風邪をひかれませんように。初めてお会いした方、お話した方がほとんどでしたが、古地図のどこが面白いのか、ツボはほんとに十人十色で、私のほうも気づかされることが多く、大いに楽しみました。なお、本日の来場者は(途中からちゃんと数えられなかったのですが)およそ20人、男女比は6対4でした。ご参集ありがとうございました。かんたんですが、今回の報告はこのへんで。書けなかったこぼれ話は、また別の機会にいたします。

本日の主役となった展示の古地図の題名は、次のとおりです。次回はがらりとちがうラインアップになります。

「近畿名勝遊覧早わかり地図」(昭和6年・1931)
★今年1月のナカノシマ大学・付録地図の原図です。
「東宮御成婚記念・日本交通分県地図」其一 大阪府(大正12年・1923)
「賜光栄皇后御買上・伊勢参宮名所図絵」(大正13年・1924)
「大大阪実測地図」(大正15年・1926)
「新京阪電車沿線御案内」(昭和3年・1928)
「大阪市区分地図」(昭和27年・1952)

 

この他に昨年の高島屋ギャラリー「古地図・大阪まちものがたり」でお披露目した特製古地図ポスター6点。さらにもう一点、「名所細密挿画付・大阪市明細全図(明治26年・1893)この地図のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。本日のジャンケン勝率はぴったり5割でした。惜しくも敗れた方、次は頑張ってください。

なお、本も3冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
『メルカトル』長野まゆみ(地図収集館にまつわる異色の小説)
『歩く』ヘンリー・ソロー(歩くことは考えることと教えてくれる名著)

 

末筆ながら、風邪とインフルエンザにはくれぐれも御注意を。次回サロンで、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

                                                           敬具
平成30年1月26日
本渡章

★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第2回は2月23日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

【新刊情報】『京都喰らい』

2018年1月23日 火曜日

 

『京都喰らい』

定価:本体1,700円+税
判型:四六判・並製
頁数:352ページ
著者:入江敦彦
発刊:2018年1月22日

 

 

【食】には京都の言葉が塩梅ええんやないかゆう、

そういう確信がありました。

この本は京言葉で書かれた「喰いもん」の本です。

「まえがき」より

 

お待たせしました! 入江敦彦氏の『京都喰らい』がついに発売になりました。

2013年5月より小社ウェブサイトで「喰いしん坊漫才」として連載された全62回を解体して大幅に加筆・修正を加え再構築したものです。連載時からのテーマ「京言葉で喰うを語る」によりフォーカスすることで、著者・入江敦彦氏が人生をまるごと「喰う」に絡めて語った記念碑的な一冊になったと思います。

京都、ロンドン、パリ、カフェ、あん、継ぎ茶碗、ボロー市場、栓、病気、胡瓜、エプロン、西山の筍、ドーナツ、葱、柘榴、ウスターソース、山椒、Z椀、ジビエ、豆落雁、柿、牡蠣、アスパラガス、白菜の炊いたん、林檎、朝ごはん、シシカバブー、お節、苺サンド、BUT FIRST COFFEE 。。。そして先に逝ってしまった同じ釜の飯を喰うた特別な友達のこと。

 

本書は著者のファンのみならず、「食エッセイ」「京都もの」というジャンルの本としても新しい読者にも楽しんで頂けるように「京言葉」で書かれてはいますが親しみやすさ、カラー写真の多数収録やなどビジュアル面にも気をつかった一冊になっています。

ぜひ一度、書店さんで手に取ってみてやってください。楽しい読書に誘われると思います。

【著者プロフィール】
入江敦彦(いりえあつひこ) 1961年京都市上京区の西陣に生まれる。多摩美術大学染織デザイン科卒業。ロンドン在住。エッセイスト。「京都人だけが」シリーズ、『イケズの構造』、『怖いこわい京都』、『英国のOFF』、『テ・鉄輪』、など京都・英国に関する著作が多数ある。2015年刊行の書評集『ベストセラーなんかこわくない』に続き、2018年春には『京都を読む(仮)』 刊行予定(ともに本の雑誌社)。現在、『webでも考える人』にて「御つくりおき」、140Bのウエッブサイトで「年寄りの冷や飯」を連載中。

 

 

『上方落語史観』発売記念!書店フェア情報

2017年12月27日 水曜日

髙島幸次『上方落語史観』発売記念
「面白くてためになる大阪の本フェア」

2018年1月2日(月)〜31日(水)
@紀伊國屋書店梅田本店
選者/髙島幸次 仲野徹

 

 

髙島幸次先生の『上方落語史観』発売を記念して、紀伊國屋書店梅田本店にて「面白くためになる大阪の本フェア」を開催します。

『上方落語史観』もそうですが、日本史の知識をわかりやすく、かつユーモア溢れる語り口で紹介するのがお得意の髙島先生。「おもろい研究者」という独自のジャンルを築き、講演会ではいつも笑いが絶えません。このように、大阪には専門的なのに面白い研究者や著書がたくさんあります。

紀伊國屋書店梅田本店にて。仲野先生(左)と髙島先生(右)は、どんな本を選ぶのでしょうか?

そこで、髙島先生と親交があり、『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)が大ヒット中の仲野徹先生にも加わっていただき、選書フェアを開催することに。仲野先生もまた、大阪が誇る「おもろい研究者」のお一人。ノンフィクションの書評サイト「HONZ」でもご活躍中の読書家としても有名です。

今回のメインは、大阪出身の研究者による学術系の著書や、大阪にまつわるノンフィクションなど、ふだんはなかなかスポットの当たる機会の少ないもの。しかし、さすがはおもろい研究者たちが選んだとあって、どれも興味深いものばかり。はたして2人はどんな本を選んだのでしょうか? 店頭では、それぞれの選書コメントをまとめた小冊子も配付しています。これがまた絶品の面白さで、読んでみたくなること請け合い。ぜひお店に足を運んでみてください。

また、同じく『上方落語史観』発売記念の連動企画として、中之島のフリーマガジン「月刊島民」の2018年1月号では、髙島×仲野両先生の対談が掲載されています。

「難しいことを、面白く」を特集テーマに、授業や講演会で面白く話すことについて漫才を、いや語り合っています。こちらは2018年元日より配付スタート。ぜひご覧ください!

 

 

 

【新刊情報】『上方落語史観』

2017年12月20日 水曜日

『上方落語史観』

定価:本体1,500円+税
判型:四六判・並製
頁数:304ページ
著者:髙島幸次
発刊:2018年1月11日

 

 

 

この本は書名どおり、上方落語について書かれたものですが、単なる落語の解説ではありません。上方落語のネタから、大阪や日本の歴史を学ぼうというのです。

著者の髙島幸次先生

ちょっと待って、「笑わせてなんぼ」の上方落語で歴史を学べるの? そんな声が聞こえてきそうです。しかし、幕末から明治初期にかけて創作された古典落語は、当時の社会風俗や町の様子、その時代を生きた人々の考え方や生活習慣が色濃く反映されています。そのため、意外にも落語のネタは歴史を学ぶための手がかりが溢れた「教科書」なのです。

そんな上方落語の歴史世界を案内してくれるのは、落語が大好きな日本史研究のエキスパートである髙島幸次先生。研究者ならではの史実に対する鋭いツッコミや、今となっては意味が通じなくなってしまったものや言葉をヒントに、歴史の深みへぐいぐい分け入っていきます。

食べもの、娯楽、住まいに関する生活の様子から、遊郭での遊びや江戸時代のトイレ事情など下世話な話まで。はたまた落語に出てくる歴史上の人物の意外な事実の考証も。落語を楽しむ昔の人たちの笑い声が聞こえてきそうな、リアルな大阪の歴史を紐解きます。

【新刊発売記念イベント】

■その1

2018年1月20日(土)隆祥館書店にて
高島先生のトークイベント開催!

著者の高島先生が、隆祥館書店の二村知子さんと共にトークライブを繰り広げます。どうぞお楽しみに!

お問い合わせ・お申し込み
隆祥館書店 TEL06-6768-1023

 

 

 

■その2

2018年1月2日(火)〜31(日)
紀伊國屋書店梅田本店にて

高島先生&仲野徹先生の選書フェア

新刊の発売を記念して、高島先生と『こわいもの知らずの病理学講義』が大ヒット中の仲野徹先生が選書フェアを開催。まさにお二人がそうであるところの、「面白い大阪の研究者」によって書かれた本を中心に、「面白くてためになる大阪の本」を選んでいただきました。どんな本がラインアップしているのか、ぜひお店へ足を運んでください!

【新刊情報】『いっとかなあかん神戸』

2017年8月4日 金曜日

定価:1,300円+税

判型:A5判ソフトカバー無線とじ

頁数:オールカラー192ページ

著者:江弘毅

発刊:2017年8月7日

 

 

本年3月7日(火)に発売、店好き街好きに支持されて10日で重版となった『いっとかなあかん店 大阪』に続く第2弾は、著者の地元・神戸が舞台です。

開港150周年を迎えるミナト神戸。いち早く居領地に住んだ外国人によってもたらされた、洋食に中国料理、インド料理、珈琲専門店、バーなど。神戸の名店からは、明治から平成へと続く「時間の流れ」や系譜が見えます。

また、神戸は国内屈指の「超良質食材の供給地」。瀬戸内の魚と神戸牛、地元の野菜がもたらすご馳走は、鮨、焼肉、ホルモン、お好み焼、餃子、豚まん、玉子焼、貝料理……とこれまた独特かつ多彩で、文字通りネタが満載の街です。

著者の江弘毅は、1958年大阪府岸和田市出身で、神戸大学農学部在学中から神戸に移り住み、今日に至っています。雑誌『Meets Regional』編集長(1993〜2005年)時代に阪神淡路大震災を経験し、街を愛する編集者として、被災者の一人として神戸の復興を応援してきました。

神戸の街に対する思いや取材(というより、店と共有した時間)の深さは、各店の原稿に表れていますが、なかでも洋食の系譜をたどったコラム「それは147年前に始まった」は「神戸の近〜現代食文化史」とも言える力作で必読です。写真の95%以上を著者が撮影しているのも、見どころのひとつです。

巻末のK氏との対談「いっとかなあかんかった店」は[ダニー・ボーイ][キングスアームス]などのファンにとってはたまらない一文でしょう。

Amazonでのご購入はこちら

 

神戸にしむら珈琲店で発刊記念トークイベントを開催!

8月26日(土)に、この本にも登場していただいた[神戸にしむら珈琲店]中山手本店3階にて、著者の江弘毅がトークイベントを行います。共に登壇するのは、この7月に『大阪(+神戸&京都)ソースダイバー』(ブリコルール・パブリッシング)を上梓した、堀埜浩二さんと曽束政昭さんのおふたり。30年にわたって読者に街と店の魅力を伝え続けてきた3人のとっておきの話を、おいしいコーヒーを飲みながらお楽しみください。

イベントの詳細や申込み方法はこちら(別窓でチラシをご覧いただけます)

 

【新刊情報】『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』

2017年6月21日 水曜日

 

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』

定価:本体1,800円+税
判型:A5判並製
頁数:240ページ
著者:本渡 章
発刊:2017年6月23日

 

 

この本は、「大阪の古地図マスター」こと本渡章さんが、古地図を見ながら街を歩く楽しみを紹介する新しい大阪ガイドです。

取り上げられたのは大阪市内の10のエリア。その変遷を、江戸時代から明治・大正期、そして戦後の地図を見ながらたどっていきます。その上で、現在の街に残る地名の由来や街のなりたちを物語るスポットをめぐるルートを、詳細なマップによってガイドしています。その10エリアはこちらです。

1.梅 田  拡大し続けるキタの中心。
2.ミナミ  膨張するモザイクタウン。
3.中之島  大阪の顔になった島。
4.御堂筋  海と船場の物語。
5.天 満  堀の名残に歴史あり。
6.京 橋  橋から町。そして繁華街へ。
7.天王寺・阿倍野・住吉 神と仏をつなぐ道。
8.十 三  川を渡った地名のルーツ。
9.大正区  海風香るフロンティア。
10.平野  「独立国」の面影は今も。

 

古地図を見ることで、なぜその街が今の姿になったのかがわかってきます。そして、それを理解した上で歩けば、街で過ごすことがさらに楽しくなってきます。本で読んだ知識だけではなく、自分の足で歩くことで、街の歴史に触れたような、今と昔のつながりを実感できるような面白さがあります。

その他、古地図を展示として楽しめるミュージアムの紹介や、図書館での古地図の調べ方や、書店や古本屋さんでの手に入れ方の紹介も。古地図の見方だけではなく、古地図を楽しむための入門編としても楽しんでいただけます。オールカラーで、古地図を一挙47点も掲載! 本渡さんも「初めて」というほどボリューム満点の1冊です。

 

紀伊國屋書店梅田本店でフェアを開催します!

紀伊國屋書店梅田本店でこの本を購入すると、先着順で特製復刻地図を進呈。本にも掲載されている「実地踏測大阪市街全図」(明治43年発行・著者蔵)をプレゼントします。また、7月18日(火)には著者の本渡章さんによるトークイベントも(入場1,000円)。本に掲載された古地図の展示もあります。

問い合わせT06-6372-5821(紀伊國屋書店梅田本店)

 

【新刊情報】『堺を歩けば。』

2017年5月1日 月曜日

『堺を歩けば。』

定価:本体815円+税
判型:A5判無線とじオールカラー
頁数:132ページ
編者:「堺を歩けば。」制作委員会
発刊:2017年5月1日

 

 

1冊まるごと、旧堺! 歴史とものづくりの名所・名店をめぐるガイド

街歩きの名所として注目が集まる堺市の中でも「歴史」「ものづくり」「名店」の魅力が凝縮された旧堺エリア。500年以上前から商人たちが自ら交易を行い、戦国から江戸〜明治〜平成に至る歴史上の「舞台」に度々登場し、その多くは現存しています。旧堺の歴史やものづくりの名所・名店など、堺の偉大な財産を身近に親しんでもらうために、ガイドブック『堺を歩けば。』を発刊しました。

1 南北3㎞、東西1㎞の細長いエリアを4分割して紹介。

→旧堺の真ん中を明治44年(1911)に開業した阪堺線が走っています。北端の「高須神社」から南端の「御陵前」電停まで南北約3㎞。御堂筋線の淀屋橋〜なんば、銀座線の三越前〜新橋と同サイズの街を歩いて楽しめるように4分割しました。4エリアは北から「最も原型に近い堺」「北の寺町と堺刃物の拠点」「摂津と和泉の境目で商業の中心」「利休の影響が色濃く残る街」……と性格もそれぞれ異なっていて、何度も訪れたくなる要素にあふれています。

 

2 名所解説は、ボランティア観光ガイドの第一人者の「あの人」。

→いま堺の観光が盛り上がっているのは、ボランティアガイドがあちこちで活躍しているから。その組織「NPO法人堺観光ボランティア協会」は200人以上のガイドを抱える大所帯で、理事長の川上浩さんは「名所のエピソードが豊富で飽きない」「つい、質問したくなる」と全国区の人気者です。その川上理事長にまる4日間を費やして27の名所を案内してもらい、現場で話してくれた川上さんならではの視点に基づいた解説(川上浩の目)を随所に掲載しています。

 

3 世界に誇る堺の名店や、堺ならではの「新旧融合」の名所も数々掲載。

→千利休が10歳の時に創業、芥子(けし)餅で有名な[本家小嶋]は500年、「くるみ餅」でおなじみ、秀吉が命名したと伝えられる[かん袋]は約700年と、京都ですら比肩できない時間を生きる名店ですが、敷居は低く、一般のお客さん相手の気軽な店です。そして、中国政府から「ご飯の炊き方」の指導で招聘されている名人・村嶋孟さんの[銀シャリ屋ゲコ亭]、魚好きが全国からやって来る[いわし舟]、おでんの人気店[たこ吉]などの名店が目白押し。

また、明治期に造られた紡績工場を、写真家の小野晃蔵さんがイベントもできるスタジオにした[スピニング・ミル]や、堺出身の間宮吉彦さんが設計した町家改造のカフェ&ゲストハウス[サカイノマ]なども詳しく紹介しています。

 

4 表紙や記事、デザインに雑誌で活躍の人気スタッフ+地元スタッフを起用。

→1992年にMeets Regionalの表紙でデビューし、2008年から『月刊島民』の表紙を描き続けている画家・イラストレーターの奈路道程(なろ・みちのり)を表紙に起用。デザインは同じ『月刊島民』の山﨑慎太郎です。

名所取材は京都のお寺などの記事で定評のある杉本恭子。店取材は『1泊5食』(京阪神エルマガジン社)などの著書もある曽束政昭に加え、堺在住の松永友美、藤木達三が「地元の人間でしか書けない」店の魅力を、堺まつりのプロデューサーの堀埜浩二と東京の柴口育子(やすこ)が「よそ者がつい通ってしまう堺のいい店」について執筆。また、『有次と庖丁』(新潮社)の江弘毅が、堺の庖丁づくり独特の「分業ネットワーク」について寄稿しています。

写真は内池秀人と川隅知明の2人をはじめ、旧堺のライブ感をうまく切り取ってくれました。