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松井宏員『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』重版となりました!

2022年8月29日 月曜日

編集担当/中島 淳

おかげさまで、2022年6月上旬の発売からまだ3カ月も経っていませんが、「この本ええで」といろんな方が広めていただき、めでたく重版となりました。

お買い上げいただいた読者のみなさま、この本を平台の前に出してど〜んと販売していただいた書店の方々、このブログを見て「そんなに人気なら1冊買おうか(笑)」と思っていただいたあなたに、心から感謝申し上げます。

あらためてこの本のことをご紹介すると……
著者である毎日新聞大阪本社夕刊編集長・松井宏員(ひろかず)さんが2005年の4月から、なんと17年以上にわたって「大阪版」の朝刊に連載を続けている「わが町にも歴史あり〜知られざる大阪」の原稿がベースになっています。

「現役記者による大阪の街についての連載」というと、「文化度が低い」みたいな上から目線になったり、難解な熟語をたくさん使っていたり、かと思えば逆に「大阪=ベタベタ」みたいな表現のオンパレードであったり……ということを想像されるかもしれませんが、ぜんぜん違っていました。松井さんの原稿は、綿密な取材を経た確かな内容を短くわかりやすい文章で表現していて、「手練れで読む人を飽きさせない」というプロの芸。そして何より、「普通の、弱い人間のスタンスを大事にする」というものです。

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本書p18〜23に掲載された「天満堀川跡をたどる」より。大川からの分岐点にあった太平橋(たいへいばし)の親柱が置かれた北村商店の前で松井宏員さん(2020年7月15日撮影・大阪市北区菅原町)

どうもコロナになってから、経団連会長アバターのような「経済を回さないと」的な言葉遣いをする人があちこちで増えました。そんな中でも松井さんの「弱い人間目線」スタンスは不変で、この道35年、百戦錬磨のスター記者になっても取材対象に対しては「いつも真面目で、労を惜しまない」人です。そのくせ酒飲みでちょっとヘタレな自分の弱さも原稿には隠さず書く。そういう松井さんの人柄にファンが増え、この本が支持されたのではないかと思っています。

著者も編集者も「意外だった」表紙のこと

松井さんの文章が醸し出す「“大文字”ではない、普通のひとびとが紡いできた大阪の歴史」をどうやって本というパッケージに表現するか……ということであれこれ考えた結果、画家・イラストレーターの須飼秀和(すがい・ひでかず)さんに表紙絵を描いてもらうことにしました。

須飼さんは八尾市観光協会の『Yaomania』(2014〜17年)、明石観光協会の『ひるあみ』(2019年〜)の表紙を描いてくれた人で、美しい色彩の中に「自然と街、人間」が見事に調和していて、かつ「なつかしい」気持ちを抱かせてくれる稀有な才能の持ち主。田舎道に置かれた自動販売機を描いても「人の匂い」を感じさせる画家です。
表紙のモチーフについては須飼さんのイメージする世界も大事にしたかったので、特に指定をせず、1冊分の原稿を読んでもらって、「描いてみたい場所を一緒に回りましょう」ということに。それが2021年の夏でした。

赤レンガの中央公会堂、重厚な中之島図書館、難波橋のライオン像、天満堀川合流点の蔵、大阪天満宮、天神橋筋商店街、天満駅界隈、扇町公園、太融寺、曽根崎警察署裏のごて地蔵、北新地の蜆橋跡、ダイビル……とたくさん回りましたが、須飼さんが長い間足を止めて、念入りに撮影していたのが「歯神社(はじんじゃ)」です。

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©須飼秀和

「ここが表紙に……!?」
正直、松井さんの原稿を読むまでは行ったことのなかった場所で(というより、前に何度も通ったけどそこが「歯神社」だとも知らなかった)とても意外でしたが、あまり感情を顔に出さないシャイな須飼さんが、歯神社前の雑踏風景を楽しそうにずっと見ていたのが印象的で、そう考えるとたしかに「これまでにない表紙にはなるなぁ」とは思いました。

3週間ほどして届いたのがこちらの下描き。

「歴史の本」にもかかわらず、「歴史の名所」的なたたずまいでは全くないし、登場人物も「梅田エストの入り口近くにいる人たち」ばかりですが、今から考えたら、「歴史はだれのものでもある」「それはいつもの街に横たわっている」ということを伝えるのがこの本の目指すところなので、この絵で大正解だったと思います。


大阪キタと中之島  歴史の現場 読み歩き。著者の松井さんがこの表紙を初めて見た感想を「あとがき」に書いているので、まだこの本をお手に取っていない方は、よろしかったらそこからお読みいただいてもきっと楽しいと思います。
最後になりましたが、表紙に描かれたみなさま(名前は存じ上げませんが)にも、心から重版のお礼を申し上げます。

拝啓・古地図サロンから32

2022年8月12日 金曜日

2022年7月22日・本渡章より

【今回の見出し】

■7月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第12回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その12〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:7月22日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。猛暑の夏です。さらに新型コロナの感染急拡大も重なって、今回のサロンは私を入れて参加者5人のこじんまりした会になりました。そのぶん、ゆったりと地図を見たり、歓談したりできたようで、少人数も時にはわるくないと思いました。

「ブログを見て来ました」という初参加の方がおられ、大阪市電の65年間にわたる歴史をまとめた記念誌『市電』(昭和44年・大阪市交通局発行)をサロンに御寄贈いただきました。ありがとうございます。市電誕生から廃止までの経緯が多数の写真とともに掲載された貴重な記録です。市電唱歌のソノシートが付録に付いていて、これもたいへん珍しく、他の参加者といっしょに楽しく拝見しました。

市電は私の子供の頃、日常の風景でした。外の景色が見えるのが面白く、遊園地のアトラクションみたいな感覚で乗っていた記憶があります。私より少し若い世代の方には、実際に街を走っている市電を見た記憶がないとのことで、これも世代ごとに見ている風景が違うという実例のひとつ。時代の流れを感じさせられます。

5月に開催した中之島図書館での鳥観図展に、井沢元晴作の鳥観図を出展していただいた足立恵美子さんに戦災画のファイルを2冊持参していただいたのが本日のトピックでした。終戦まもない大阪の焼跡を訪ね歩いた井沢元晴が筆で描き残したものです。瓦礫の野原になった市内にぽつぽつと立ちつくす焼け残りの建物や橋。モノクロの画面は静かですが、無言ではありません。足立さんは絵師・井沢元晴の御遺族。大阪以外の街を描いた戦災画もあるとのことで、この夏に他の場所でも公開をしていきたいとお話されました。ぜひ、多くの方に見ていただきたいと思います。

公開地図では日本統制地図(戦時体制期の地図会社の名前)発行の旭区の市街図について主に話をしました。あるはずの橋が描かれていないなど、戦時体制下の地図の特徴を確認。戦後に大発展する千林エリアなど、旭区がたどった足跡を地図からイメージしてみました。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

◉今回のサロンで展示した古地図

《原図》
最新大日本鉄道地図 昭和11年(1936) 大阪毎日新聞社
大大阪市街新地図 イロハ引早わかり 昭和12年(1937) 駸々堂旅行案内部
大阪市区分地図・旭区地図 昭和17年(1942) 日本統制地図
大阪市案内図 昭和39年(1964) 大阪市交通局

《復刻図》
畿内紀州掌覧図 慶応2年(1866) 三都発行書林

次回9月は第4金曜が祝日のため、30日(金)午後3~5時開催予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは基本、奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで一年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】
第6回街・人・物・神シームレス【前編・後編】(仕事地名・泉州編)
第7回古くて新しい仕事と地名の話【前編・後編】(仕事地名・河内編)

 

●動画古地図でたどる大阪の歴史」続編、作成中(制作:大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。他に「古地図サロン」、著書『古地図で歩く 大阪24区の履歴書』紹介編の動画もあります。
7月16日(土)「此花区・港区・大正区」をテーマにリアル講座(OCU主催)を開催。編集後、動画として公開を予定しています。

●最後の「なにわなんでも大阪検定」は12月実施!

初回からずっと私も運営に関わってきたので、13回目の今年が最後の検定試験になったのは残念。これまで挑戦しそびれていた方、この12月が受験の最後のチャンスです。初級と上級の2種あり。試験は12月11日(日)実施。申込受付中で、締切は10月18日です

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

8月17日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・都島区編」
9月22日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・鶴見区編」
10月24日・11月21日に「大阪古地図むかし案内 ~島之内から道頓堀へ、新旧ミナミの変遷」(教室講座と現地街歩き)を予定しています。

|古地図ギャラリー|

秋山永年【富士見十三州輿地全図

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その12〉

『富士見十三州輿地全図』は題名のとおり、富士山が見える13州のエリアを描いた図。13州とは武蔵・安房(あわ)・上総(かずさ)・下総(しもうさ)・常陸(ひたち)・上野・下野・相模・駿河・甲斐・伊豆・信濃・遠江(とおとうみ)で、現在の東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・茨城県・静岡県・山梨県・長野県にまたがる広域。富士山を主題にした関東一円図です。

富士山が絵画や詩歌の題材として人気を得るようになった江戸時代後期には、地図の世界でも居ながらにして「富士見」が楽しめる図が現れるようになりました。本図はその一例です。凡例には国名・道の他、神社、温泉などの名所、さらには関所も記入され、旅の気分を高めています。

作者の秋山永年は江戸の人。初版は天保13年(1842)で、作者が嘉永6年(1853)没した後の安政の頃にも再版され、本図は明治18年(1885)発行。半世紀近くにわたって出回ったことから、人気のある図だったのがうかがえます。

富士山を真上から見た平面図で描いているのが、江戸時代の作としては異色。葛飾北斎が空から鳥瞰した日本図を描いていますが、この図は富士山だけが平面図で、13州の地図中に富士山だけがぽっかりと火口を見せて仰向いていて、鳥瞰図とも異なる地図世界を生み出しました。秋山永年がどこからこのユニークなアイデアを得たのかは不明です。

ともかく、平面図にしたのが富士山でなかったら、こんなにインパクトのある図にならなかったのは確かです。世界文化遺産になった富士山の存在感の大きさにも、あらためて気づかされます。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

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過去の古地図ギャラリー公開作品

第11回(2022年5月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大日本分境図成」

 

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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7月28日(木)のナカノシマ大学では、間宮吉彦さんがこんな内容で講義します。

2022年7月23日 土曜日

お題その1は「つくった店が、街の顔になった」

QOO

間宮さんが独立してInfixを立ち上げた最初の仕事[QOO]は、難波の総合結婚式場「高砂殿」を巨大クラブにするコンバージョン(用途変更)だった

1981年に岸和田の[SAD CAFE]を設計して以来、「街」と切っても切れない関係の店をデザインし続けてきた間宮さんの「街と店の軌跡」について話していただきます。
登場する街は「鰻谷(東心斎橋)」「木屋町三条」「アメリカ村」「南船場」「南堀江」「北浜」などですが、街好き店好きの方には「たぶんあそこかな」とピンときているはず。店主との丁々発止のやりとりから生まれた店誕生の物語です。

その2は「長く生きた建物を別なミッションで再生」

「総合結婚式場がクラブに」「材木問屋が洋書店に」「酒屋の倉庫がバーラウンジに」「外資系銀行がカフェレストランに」「築200年の商家が日本茶カフェに」「築70年の町家がカフェ&ゲストハウスに」という仕事の軌跡は、デザイナーになる前に「ある店」に通った経験あってのこと。その話もお聞き逃しなく。

その3は「ここまで広がる空間デザイナーへの依頼」

21世紀に入ると、間宮さんのInfixには従来の「流行る店」というお題だけでなく、施主から以下のようなリクエストが舞い込んできました。「超高層マンションやオフィスビルの公共空間」「歯科医院」「日本旅館」「伝統産業ミュージアム」、はては「永代供養墓」などなど。私たちが何げなく利用している場所もInfixの仕事かもしれません。

そして最後は「大阪の『川沿い』をふたたび表通りに」

中之島バンクス

堂島川河川敷の遊歩道沿いにカフェやバー、物販店、ウエディング会場をつくった「中之島バンクス」

少なくとも1950年代まで大阪の川や川沿いは「日常の行楽地」でした。ところが60年代後半に阪神高速道路が開通すると、川はいつの間にか「裏側」になり、高速道路で蓋をされた川沿いは「薄暗い場所」になってしまいました。それが2010年代に入ると中之島を中心に新しい動きがはじまります。ラストは会場の大阪府立中之島図書館から徒歩で行ける「身近な行楽地」のデザインワークについてです。

Riverside Sushi Bar TOSA

2022年3月に登場した最も新しい店、北浜の[Riverside Sushi Bar TOSA]のテラス

当日は、「会場から徒歩15分以内で行ける間宮吉彦設計の店」MAPも用意しています。お楽しみに!

受講のお申し込みはこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/site/seminar/article/p20220728

会場では、間宮さんの30数年間の作品を1冊にまとめた『Infix Spaces & Projects 1991-2022 間宮吉彦 クロニクル』も販売します。お楽しみに!

『Infix Spaces & Projects 1991-2022 間宮吉彦 クロニクル』を発売しました!

2022年7月12日 火曜日

編集担当/中島 淳

表紙/ミュゼ大阪(南堀江・1998年)

表紙/ミュゼ大阪(南堀江・1998年)

書名/Infix Spaces & Projects 1991-2022 間宮吉彦 クロニクル
著者/ Infix Spaces & Projects 1991-2022編集委員会
体裁/変形A4判(270×210mm)カバー一体型表紙本文100ページ
定価/2,970円(本体2,700円+税) ISBN978-4-903993-47-8
発売/2022年7月11日(月)

30年以上にわたって大阪に拠点を置き、京阪神・東京・堺などで「人があつまる店」「記憶に残る店」を設計し続けてきた空間デザイナー・間宮吉彦さんの「年代別作品集」と言える1冊が7月11日(月)に発売となりました。

間宮氏がデザインした店はその時代ごとの「街の顔」と言える影響力があり、街好き、店好きが必ずと言っていいほど通っていた店ばかり。
間宮デザインの大きな特徴は、店を容れる建築物が新築であろうと「古くさいもの」であろうと、「街の記憶となっているもの」「街の人から愛されているもの」のエネルギーを取り込んだ形で着地させる……というものでした。

名前を聞くと「あ〜! あの店!?」と多くの人が思い出す

邪魔者だった堂島川沿いの阪神高速高架が「傘」となり、晴れでも雨でも快適に過ごせる遊歩道が誕生。レストランやウエディング施設もでき、裁判所の南側にも人が集まる(中之島LOVE CENTRAL)

邪魔者だった堂島川沿いの阪神高速高架が「傘」となり、晴れでも雨でも快適に過ごせる遊歩道が誕生。レストランやウエディング施設もでき、裁判所の南側にも人が集まる(中之島LOVE CENTRAL)

難波の外れにあった結婚式場をクラブにしたり(QOO)、南船場の材木問屋を洋書店にしたり(ハックネット)、大淀の酒屋の倉庫をレストランバーにしたり(ノー スクラブ)、神戸・旧居留地の外資系銀行をカフェレストランにしたり(E.H.BANK)、本町の真ん中にある巨大オフィスビルにレストランウエディングの店をつくったり(mitte)、堺で築200年の町家を茶房にしたり(つぼ市製茶本舗)、堂島川の遊歩道沿いに店舗の集合体をつくったり(中之島バンクス)、北浜の旧いビルを滞在型ホテルにしたり(THE BOLY OSAKA)……などなど、デザインする店を街の「延長線上」に位置づけつつ、いい意味で「予想をちょっと裏切る」新鮮さを加えることで、間宮デザインの店は常に人気の第一線をキープしてきました。

その時代の街を知る人ならではの「固有名詞」も数多く登場

戦後すぐに建てられた堺の小さな町家。紀州街道に面した通り沿いにはテラスのあるカフェが、奥には和室のゲストルームがあり、海外からのリピーターもいる(サカイノマ 熊)

戦後すぐに建てられた堺の小さな町家。紀州街道に面した通り沿いにはテラスのあるカフェが、奥には和室のゲストルームがあり、海外からのリピーターもいる(サカイノマ 熊)

本の内容は、タイトルが示すように年ごとのいろんな仕事が、店のファンにとっては懐かしい写真と間宮氏のテキストで紹介されていますが、それだけにとどまりません。
DJのMARK’Eさんや中野亮さん(Marble)、松原眞由美さん(IN)、服部滋樹さん(graf)、久住有生さん(左官)、松宮宏さん(作家)など、時代を体現する街や店にかかわった多くの「関係者」「表現者」のインタビューや寄稿は、読み物としての面白さもたっぷり盛り込んでいます(筆者も編集者として寄稿)。

こんな「記憶に残る店」の軌跡をたどる

Bar Marble(鰻谷)、シーラカンス(南堀江)、Quixotic Bar(アメリカ村)、クック・ア・フープ(木屋町三条)、GRAND CAFE(アメリカ村)、クラブ エイジア(渋谷)、ドゥニーム(京都ほか)、ミュゼ大阪(南堀江)、UNDERLOUNGE(アメリカ村)、茉莉花(中目黒)、cor(北堀江)、正弁丹吾亭(法善寺)、ASSEMBLE ON EIGHT(堺)、e’ze(北浜)、Mia via(江坂)、中之島ダイビル、サカイノマ(堺)、中之島LOVE CENTRAL(西天満)、優り草(三条京阪)、Riverside Sushi Bar TOSA(北浜)……etc.

ぜひ、あなたが特別な時間を過ごしたあの店やこの店の記憶をたどってみてください。

〈お知らせ〉
この本の出版を記念して、7月28日(木)の18時から大阪府立中之島図書館3階多目的スペースで開催されるナカノシマ大学に、間宮吉彦さんが講師として登壇します。テーマは「記憶に残る店、30余年の軌跡をたどる」。
お申し込みはこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20220728

拝啓・古地図サロンから31

2022年6月29日 水曜日

2022年5月27日・本渡章より

【今回の見出し】

■5月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第11回

東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その11〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:5月27日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。初夏の陽気の御堂筋で、いつものようにサロンが開催されました。

今回は戦前の市街図、府域図の他に、これまでお見せする機会がなかった手描き図を用意しました。手描き図とは文字通り、筆やペンで線を描き、彩色した地図です。もとの図は一枚限りですが、薄紙を重ねて透かし、手描きで写した図を残す場合もあります。展示した「泉州岡田浦」(2枚)も、そうして模写されたと思われる図。海岸線の形は同じですが、浜辺の風景は2枚の図で大きく異なり、明治初期の岡田浦(現・泉南市の地名)の変貌ぶりを伝えています。それぞれの図の作成年は1年違うだけなので、変化のスピードは驚くばかりです。参加のみなさんは、薄紙を重ねて模写し、新たな情報を加えていくという手描き地図の世界に興味しんしん。トレーシングペーパーがあれば、今でも、誰でも手描き地図が作れますので、お試しを。

他には、戦前の大阪市街図と都市計画図、さらに原図と復刻の地形図も展示。昭和初期の原図6枚を張り合わせて手製の大阪府域図にした大判地形図が、思わぬ好評を得ました。モノクロで記号がいっぱい入った地形図は、通常の市街図と比べて見にくいのですが、縮尺が細かくて情報量が豊富。手製の大判地形図は、広げると迫力があります。他では、大阪都市計画地域図の精緻さに、虫眼鏡で見入る参加者が続出。計画目的に沿って色分けされた戦前の大阪市街の姿、今はない旧町名のいろいろに、みなさん、街角の歴史を感じたようすでした。

決して見やすくはなかった地形図と都市計画図が、じっくり見ると面白かったというのが今回の収穫。虫眼鏡の活躍の場も、いつもより多かったです。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

◉今回のサロンで展示した古地図

《原図》
泉州岡田浦 明治12年(1879)手描き図
泉州岡田浦 明治13年(1880)手描き図
日本交通分県地図・大阪府 大正12年(1923)大阪毎日新聞
地形図(大阪市域・府域6枚張り合わせ)昭和7年(1932)大日本帝国陸地測量部
最新西区地図 昭和16年(1941)日本統制地図
大阪都市計画地域図 発行年不明 大阪市

《復刻図》
12枚組・京阪地方仮製貳万分壱地形図 大阪近傍 明治20年(1887)参謀本部陸軍測量局

次回は2022年7月22日(金)午後3~5時開催の予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは今後も奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

9月は第4金曜が祝日のため、30(金)午後3~5時開催!

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで1年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)。

第1回大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回花も緑もある大阪【前編・後編】
第5回場所が仕事をつくった【前編・後編】

新着番組、古地図でたどる大阪の歴史」公開中(制作:大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。
他に「古地図サロン」紹介編、著書「大阪24区の履歴書」紹介編の動画もあります。
現在、大正区編・此花区編を制作中。

大阪府立中之島図書館で「昭和~平成~令和をつなぐ鳥観図絵師列伝」開催

5月16日(月)~28日(土)、鳥観図絵師4人(吉田初三郎・井沢元晴・石原正・青山大介)の作品約30点を集めて中之島図書館3階展示室にて公開。予想を上回る2597人の来場を得て、好評のうちに終了しました
井沢元晴の図はご遺族、石原正・青山大介の図は青山氏より出展。企画・構成と吉田初三郎の図の出展は本渡章が担当。21日には青山大介ワークショップも行われ、参加者は熱心に中之島図書館鳥瞰図作成の手ほどきを受けました。

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

6月17日(金)午前10時30分~12時 「地図で訪ねる昭和30年代の大阪」*終了
7月22日(金)午前10時30分~12時 「古地図地名物語・旭区編」
8月・9月も「古地図地名物語」都島区編・鶴見区編を予定しています。

いちょうカレッジで4回シリーズ講座開催予定

入門科「大阪のまち探検コース」~古地図のまちをのぞいてみよう~
5月31日(火)、6月7日(火)・14日(火)・21日(火)各午後2時~4時
予約制でしたが、定員30名の募集に過去最高の160人の応募をいただきました。ありがとうございました。
このブログが公開される頃、講座は最終日を迎えていると思います。また、機会がありましたら、大阪駅前第2ビルでお会いしましょう。
大阪駅前第2ビル5階 総合生涯学習センター

|古地図ギャラリー|

1.【橋本玉蘭斎【大日本分境図成 上

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その11〉

『大日本分境図成(だいにほんぶんきょうずせい)』は幕末に刊行された日本地図・地域図集。折りたたむと懐中におさまる小冊子で、上巻に、日本全図及び東北・関東・中部・近畿・四国・九州・琉球の各図。下巻に、富士山・琵琶湖・長崎などの図を収録。作成した橋本玉蘭斎は著名な地図作者で、五雲亭貞秀の名で数多くの鳥瞰図も残した人物。

掲載したのは上巻の表紙と本州・四国の地図の頁。これまで古地図ギャラリーで紹介してきた地図とは、一見して趣が異なります。日本地図には違いないのですが、旧国名と国境が記されているだけで、現代人の目には地図としての情報量が少なすぎます。上巻の他の図も同様の趣で、刊行の意図が読みとりにくいのです。

情報が豊富でデザイン性も高い地図を多数残した橋本玉蘭斎としては異色の本図が、どんな経緯で生まれたのか詳細は不明。手がかりがあるとすれば、ひとつは幕末発行という時代性。もうひとつは携帯可能な小冊子という体裁。この2点です。幕末は開国を控えて、日本人が日本という国を意識した時代でした。横浜開化図をはじめ時代を映した作品群で名高い橋本玉蘭斎(五雲亭貞秀)は、手軽に持ち歩ける地図集を世に出すことで、それまで日本地図など見たことのない多くの人々に、日本国の姿、列島にひしめく国々の姿を知らしめたかったのでしょう。現代の目からは少なすぎる情報量の図に、一目瞭然のパワーを期待したのだと思います。下巻の富士山や琵琶湖の図には橋本玉蘭斎の発見した日本が描かれ、興味深いのですが、『大日本分境図成』の本領は上巻の素気ないほど簡略な日本図の方にあるでしょう。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介されました。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られました。学校のエリアは主に西日本です。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられました。

過去の古地図ギャラリー公開作品

第10回(2022年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「新改正摂津国名所旧跡細見大絵図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「笠岡市全景立体図」

 

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』の著者・松井宏員(ひろかず)さんがナカノシマ大学に登壇します

2022年6月16日 木曜日

教科書や大河ドラマでは分からない大阪の歴史を知って、歩くことのおもしろさを伝えてくれる松井宏員さんの新刊『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』の発売にちなんで、6月30日(木)18時半から、大阪府立中之島図書館3階にてナカノシマ大学を開催します。

お題は「天満堀川・蜆川……消えた川と橋」の話。

艶っぽい花街(かがい)のシンボルだった川

曽根崎川(蜆川)跡の碑

国道2号から南に入った「北新地中央河庄筋」にある曽根崎川(蜆川)跡の碑の前で。「河庄」とは『心中天網島』で治兵衛が小春と手を切る決意をする「河庄の場」の舞台となった茶屋[河庄]のこと。背中は松井宏員さん(2020年7月1日撮影)

大阪市北区のど真ん中には、ほんの100年前まで北新地の北側(曽根崎新地)と南側(堂島新地)を隔てる蜆川(しじみがわ)という情趣満点の川が流れていました。大江橋の近くで堂島川から分かれ、中之島の西側あたりでふたたび堂島川に合流する細い川です。

文楽や歌舞伎でおなじみ近松門左衛門の名作『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』(享保5年〈1720〉)はこの川なしには生まれませんでした。いまやだだっ広い交差点でしかない「桜橋」かいわいも、当時の絵が示すような艶っぽい風景でしたが、現在はアバンザ堂島の北側に石碑が残るのみです。

その桜橋からもう少し東に行った、御堂筋沿いの滋賀銀行梅田支店の場所には、蜆橋(しじみばし)が架かっていました。新撰組の芹沢鴨や沖田総司らが大坂相撲の力士らと衝突し、流血の惨事が繰り広げられたのはこの橋の上。

そういう事件もありましたが、昔の旦那方が小舟で北新地の料亭に乗りつけていたとは、夢のような話ですね。しかし明治42年(1909)の大火災「北の大火」によってこの川は瓦礫の捨て場となり、やがては埋め立てられてしまいます。

240年の歳月をかけて完成した「扇」の形

太平橋の親柱

太平橋の親柱はしばらく放置されていたが、大阪府が堂島川沿いを整備した際に小さな公園が造られ、親柱もそこに設置。すぐ横にある乾物問屋[北村商店]には古い土蔵や家屋が残る。左は松井宏員さん(2020年7月15日撮影)

もう一つの天満堀川(てんまほりかわ)は、豊臣秀吉の時代(慶長3年〈1598〉)に、天神橋の北詰を西へ300メートルほど行った場所からいまの扇町公園の辺りまで開削されました。

天満堀川の河口にある太平橋(たいへいばし)を少し北に行くと、道路脇に樽屋橋(たるやばし)の親柱があります。酒樽や醤油樽の材料となる材木商が軒を並べていた樽屋町に架かった橋で、井原西鶴の名作『好色五人女』(1686年)の一つ「樽屋おせん」はここで生まれた話。浪曲師・春野恵子の十八番でもあります。

その後、幕末の天保9年(1838)に、大塩平八郎の乱を鎮圧した幕府が天満堀川を北東に延伸させて大川と繋ぎ、大川をショートカットする「バイパス」となります。同時に、天神橋筋にかかる扇橋(おうぎばし)を「要」にして見事な扇形が完成されました。

扇橋の周辺に「扇町」という地名が生まれたのは、この川が水をたたえていた大正13年(1924)のこと。けれど天満堀川も、水運の衰退と共に用済みとなって昭和47年(1972)に埋め立てられてしまいます。川は道路となり、さらにその上に阪神高速道路守口線が建設されました。

實地踏測 大阪市街全圖

明治44年(1911)の『實地踏測 大阪市街全圖』(国際日本文化研究センター所蔵)には、蜆川・天満堀川の両方が記されている。◯印は扇橋

蜆川も天満堀川も、「川」であった面影は年々少なくなってきていますが、それでも北区内を歩くとかつての「名残」を思わぬ場所で見ることができます。

いつもの「都会」の風景をガラリと変え、知らない大阪の歴史に連れて行ってくれる「消えた川と橋の話」、どうぞご期待くださいませ。

受講申込はこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/site/seminar/article/p20220630

松井宏員『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』発売しました!

2022年6月13日 月曜日

編集担当/中島 淳

表紙絵・挿絵/須飼秀和(すがい・ひでかず)

表紙絵・挿絵/須飼秀和(すがい・ひでかず)

書名/大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。
著者/松井宏員(毎日新聞大阪本社夕刊編集長)
体裁/四六判ソフトカバー本文288ページ
定価/1,980円(本体1,800円+税) ISBN978-4-903993-46-1
発売/2022年6月13日(月)

毎日新聞大阪本社夕刊編集長の松井宏員(まつい・ひろかず)さんの新刊、『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』が2022年6月13日(月)からリアル書店・ネット書店にて一般発売となりました。

17年以上続く、毎日新聞のロングラン連載から抜粋

淀屋屋敷跡・淀屋の碑

淀屋橋南詰にある「淀屋屋敷跡・淀屋の碑」の碑文を確認する松井さん。急な豪雨に襲われて大変だったが、ノートを濡らさずにメモする技はさすが(2020年7月31日撮影)

著者の松井さんはこの道36年のベテランで、夕刊編集長の要職にありながら紙面に連載を3本も4本も抱えるツワモノ記者でもあります。なかでも最も有名でファンが多いのが、17年前の2005年4月にはじまった「わが町にも歴史あり〜知られざる大阪」です。隔週土曜日に、毎日新聞大阪版(朝刊)に掲載されていて、2022年6月4日(土)現在、576回も続いている超ロングラン連載。「歴史」といっても教科書や大河ドラマではほとんど知られていない大阪の街と人、川と橋、大阪らしい建築物、事件や事故などの「現場」を訪ねるストーリーです。

「現場」といっても、ふだん私たちが歩いている「ターミナル」や「盛り場」「オフィス街」「川べり」などで、それが「歴史の入り口」だとはなかなか気がつかないものです。松井さんは、案内人の西俣稔さんと共に歩いて、「大阪の街は、なぜこんな『かたち』をしているのか」を現場で考え、時代時代で大阪のひとびとを救ったり元気づけたり笑わせたり泣かせたりした有名無名のヒーローやヒロインに思いを馳せます。

「私自身、別に歴史好きでもなかったが、教科書には出てこない大阪の歴史を知るにつれ、次第にのめり込んでいった。名もない先人の営みがあったからこそ、今がある。町のたたずまいは変わろうとも、時間の縦糸が現在につながっている。そんな当たり前のことに気付かされた。」(「あとがき」より)

お恥ずかしいことに、私がこの連載の存在を知ったのは、たしか2017年の夏頃でした。「新聞連載」と聞くと、「堅っ苦しくて上から目線」だと思っていた私は、記事を2〜3本拝読してそれが浅はかな思い込みだと知りました。「きのうまで知らなかったが、現場でそれを知って驚いている」という読者と同じスタンスで歩きながら、それをストレスなくすらすら読める「手練れ」の、読者フレンドリーな文章に仕上げられています。「これなら、歴史好きの小中学生から80代、90代の人まで楽しめるわ!」と引き込まれました。

本として着地するまでの、長い長い道のり

「福沢諭吉誕生地」碑

朝日放送の南にある「福沢諭吉誕生地」碑の前から、堂島川を挟んで玉江橋にカメラを向ける松井さん。大阪中之島美術館はまだ「黒い直方体」にはなっていない(2020年8月11日撮影)

そこまではよかったのですが、数百回の連載原稿はボリュームがありすぎて、1冊の本ではぜんぜん収まらない。「どこをどう切り取って本にするか」について、著者である松井さんとの間で何度も話し合いをしました。本のたたずまいを決めるデザインも「ちょっとこの感じでは松井さんの文章のおもしろさが前に出ぇへんなぁ……」と、これまた何度もやり直しをしました。

そんなこんなの紆余曲折を経て、やっとのことで「まずは松井さんのホームグラウンドである大阪市北区界隈」を、天満/曽根崎・梅田・堂島/中之島の3ブロックで構成しよう……ということに決まり、松井さんが連載時に訪ねた場所の再取材を一緒に行いました。それが2020年夏のこと。本人にとっては15年ぶりに訪れた場所も少なからずあり、当時と変わっているところは大幅に加筆・修正してくれました。

それでいよいよ出版……となりそうなのに、長引くコロナ禍で出版時期が延びに延び、この6月13日(月)にやっと日の目を見ることになりました。厳選された60篇の原稿に書かれた「歴史の現場」は、梅田や淀屋橋、南森町などの駅から徒歩数分で行ける「いつもの」場所ばかり。そんな場所で、古代から中世〜近世〜近現代と実にバラエティに富んだ人物や事件などの歴史が顔を出します。

「身近なところなのに、何故そんな大事なことを知らなかったのだろう」

大阪で雑誌や書籍の編集を40年近くやっている私でさえそう思ったほどなので、内容のおもしろさは保証します。読み物としても十分楽しめますが、できれば地図を頼りに「歴史の現場」へと足を延ばしていただければ、あなたなりのあたらしい発見が、必ず待っているはず。大阪という街のおもしろさ、深さを知ることができます。

〈お知らせ〉
●著者の松井宏員さんが、6月14日(火)朝8時頃から朝日放送ラジオ「おはようパーソナリティ小縣裕介です」に生出演します。

●『大阪キタと中之島 歴史の現場 読み歩き。』の発刊を記念して、6月30日(木)18時半からナカノシマ大学に講師として登壇します。テーマは「天満堀川・蜆川(しじみがわ)……消えた川と橋」。場所は大阪府立中之島図書館3階多目的スペース
お申し込みはこちらから

https://nakanoshima-daigaku.net/seminar/article/p20220630

書店さま、お取引についての大切なお知らせ

2022年5月26日 木曜日

【お知らせ】

この度、140Bはあらたに選書のできる本の専門卸会社「株式会社 子どもの文化普及協会」さまと取引を開始致しました。

これまで、いわゆる大手取次販売店さまとお取引のない小売店さまには商品の仕入れについてご不便をおかけしてきたと存じます。

今後、既存のトーハンさま、日本出版販売さま、楽天ブックスネットワークさま、中央社さまと合わせて商品調達にぜひご利用下さいますよう、お願い申し上げます。

子どもの文化普及協会さまの仕入先一覧

140Bの図書目録

2022年5月26日
140B青木雅幸

拝啓・古地図サロンから 30

2022年5月15日 日曜日

2022年3月25日・本渡章より

【今回の見出し】

3月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第10回

①東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その10〉

昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図〈その10〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:3月25日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。多忙が続き、今回も更新が遅くなりました.5月のサロンは予定どおり開催しますので、よかったらのぞいてみてください。

3月のサロンは教材になった地図を特集しました。過去には「歴史地図」などと題された地図の本が学校で使われていたのですね。視覚に訴える地図が、歴史の理解に役立てられていたわけです。戦前のものだと、歴代の天皇の系図も載っていて、あらためて時代を感じます。一方で、参考に展示した理系の教材は植物の分類など美しい絵入りで詳しく解説され、今の目で見てもなかなかの出来栄え。戦前の教育については知らないことも多いと、これもあらためて思います。

戦後の都市計画図と施設・交通案内図も公開しました。昭和30年代は復興がひととおり終わって、高度成長期を迎えた時代と一般に言われますが、計画図を見ていると、30年代は復興の第2段階だったのでないかと思えてきます。少なくとも、大阪市中では戦災地域の復興にかなりの時間差があったと地図から推察されました。

というようなことをお話しましたが、サロンは基本的に気軽な雑談の場所です。ブログをご覧の方から、サロンは古地図研究の場で敷居が高いと思っていたとの声をいただきましが、そんな大げさなものではありません。現在、サロンにお越しの方たちも研究しているという意識は無いと思います。古地図を見ながら、ゆったりとした時間を過ごす会とお考えください。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

◉今回のサロンで展示した古地図

《地図教材 原本》
『小学外国地図』明治29年(1896)金港堂
『日本歴史別號』明治33年(1900)冨山房
『東洋歴史精図』昭和2年(1927)帝国書院
『日本歴史地図・改訂版』昭和2年(1927)三省堂
『新體日本歴史地図』昭和4年(1929)冨山房
『高等小学地理書附図』昭和15年(1940)東京書籍

《参考資料 原本》
『尋常小学修身書』明治25年(1892)阪上半七
『日露戦争実記』明治37年(1904)博文館
『小学綴方』大正6年(1917)同文館
『教範植物学』昭和4年(1929)帝国書院

《地図 原図》
大阪市都市計画街路及土地計画整理事業区画図 昭和35年(1960)大阪市区画整理局
大阪市施設交通案内図 昭和45年(1970)ワラジヤ

次回は2022年5月27日(金)午後3~5時開催の予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは今後も奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

大阪の地名に聞いてみたブログ連載中

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
月1回ペースで1年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程)

第1回 大阪の干支地名エトセトラ【前編・後編】
第2回 続・干支地名エトセトラ&その他の動物地名【前編・後編】
第3回 桜と梅の大阪スクランブル交差点【前編・後編】
第4回 花も緑もある大阪【前編・後編】

新着番組、古地図でたどる大阪の歴史」公開中(大阪コミュニティ通信社)

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編公開。
他に「古地図サロン」紹介編、著書「大阪24区の履歴書」紹介編の動画もあります。
引き続き、大正区編・此花区編と続く予定。

●「泉州人」で監修・執筆

「泉州人」(月刊「歴史人」別冊)3月31日・ABCアーク発行。
泉州の歴史と魅力再発見をテーマにした全20ページの冊子に「雨乞いが潤す人と食」など6ページにわたって監修・執筆。

特別展「清林文庫の魅力と、その古地図コレクション」終了
ナカノシマ大学「清林文庫誕生と古地図が語る時の物語」終了

清林文庫展(東畑建築事務所所蔵の「清林文庫」(建築・美術・地誌など他分野にわたる世界的コレクション)の展示が、大阪府立中之島図書館にて4月11日(月)~23日(土)開催され、多数の来場者を得て終了しました。最終日に展示と連動して行われたナカノシマ大学(講師・本渡章)も満席でした。ありがとうございました。
※清林文庫については古地図ギャラリー参照。

特別展「昭和~平成~令和をつなぐ鳥観図絵師列伝」5月16日より開催

昭和の初めから平成・令和にかけて、吉田初三郎・井沢元晴・石原正・青山大介の4人の鳥観図絵師が描いた街と山河の風景を一堂に展示。21日には青山大介ワークショップも実施されます。展示の企画・構成は本渡章。
会場は大阪府立中之島図書館3階展示室。開催期間は5月16日(月)~28日(土)

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

6月17日(金)午前10時30分~12時「地図で訪ねる昭和30年代の大阪」

いちょうカレッジで4回シリーズ講座開催予定

入門科「大阪のまち探検コース」~歩いてみたくなる大阪のまち~
5月31日(火)・6月7日(火)・14日(火)・21日(火)各午後2時~4時
古地図がテーマの4回連続講座。いずれも教室での座学です。
大阪駅前第2ビル5階 総合生涯学習センター

|古地図ギャラリー|

1.【新改正摂津国名所旧跡細見大絵図】

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その10〉

掲載の図は江戸時代に数多く出版された広域の名所案内図のひとつ。摂津国とは現在の大阪府とは領域が大きく異なります。どちらも大阪市中と北摂が含まれますが、摂津国には兵庫県の東部が加わり、河内と泉州は入っていません。河内は河内国、泉州は和泉国として独立していました。題名のとおり、名所旧跡と街道筋の案内を主な内容とし、広い摂津国を一覧できる大きな図です。発行は天保7年(1836)で大塩平八郎の乱の前年にあたります。幕末に近づき、世相に不穏な空気が漂うなか、物見遊山のための地図の需要もあいかわらずだったのが伺えます。
注目したいのは凡例です。「歌名所古跡」「俗名所古跡」と名所をふたつに分けて載せているのはどうしてでしょう。名所とは、もともと「歌枕の名所」を指します。歌に詠まれて名を知られた場所という意味なのですが、時代が下がると、歌に詠まれてはいないが有名な場所も名所と呼ばれるようになり、江戸時代には名所観光大流行。凡例はそこからさらに進んで、名所をさらに分類して歌名所と俗名所と呼びました。あまり見かけない分類です。「俗名所」とは歌が「雅」の世界であるのに対して、「俗」の世界を打ち出したものでしょう。図中では例えば「岸の姫松」(写真・住吉大社の近く)が▲印で示された歌名所古跡で、当地を詠んだ次の歌が『古今和歌集』にあります。

我見ても 久しくなりぬ 住吉の 岸の姫松 いく夜経ぬらん

一方、●印の俗名所古跡には例えば「荒陵茶臼山」が挙げられています。どちらも由来の古い名所ですが、江戸時代には姫松が教養の対象、茶臼山が庶民的な行楽の対象と認識されていたようです。この図は江戸時代の名所受容の変遷を伝える興味深い例といえます。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

 

2.【笠岡市全景立体図】

鳥観図絵師・井沢元晴の作品より〈その10〉

「笠岡市全景立体図」は昭和28年(1953)発行。古地図ギャラリー第4回(2021年3月)の「福山展望図」、第9回(2022年3月)の「躍進井原市」と同時期に作成されました。笠岡市は岡山県南西部の小都市で、江戸時代には福山藩によって開発がすすめられ、現在も広島県の中核都市である福山市と連携しつつ発展してきました。井原市も福山市との関係が深く、3つの市は境を接し、歴史も共有してきたのです。笠岡市・井原市・福山市を描いた3つの鳥観図は、戦後の復興を経て新たな一歩を刻み始めた日本の諸都市の姿を映して、絵師・井沢元晴の初期を代表する三部作になりました。後の作風とはタッチがかなり異なりますが、山河に抱かれた街の営みを描き残す意図は一貫しています。
「笠岡市全景立体図」で見る市街は、古くから海運の拠点だった笠岡港、大仙院を中心にした門前町、山裾や山間の農業地が、背景の緑の山々に抱かれて一体となった風景を見せています。戦後の笠岡市は備後工業整備地区に指定され、図の発行から10年余を経た昭和40年(1965)には、隣接する福山市にまたがって日本鋼管福山製鉄所(現・JFEスチール西日本製鉄所)が当時の最大級の規模を誇る製鉄所として開設されました。図の市街はのどかです。金浦港の岸に記された「カブトガニ」は、当地に生息する天然記念物の呼び名とのこと。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介されました。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られました。学校のエリアは主に西日本です。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられました。

過去の古地図ギャラリー公開作品

第9回(2022年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「暁鐘成・浪花名所独案内」

②本渡章所蔵地図より「大阪市観光課・大阪市案内図

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「躍進井原市」

 

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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拝啓・古地図サロンから 29

2022年3月10日 木曜日

2022年1月28日・本渡章より

【今回の見出し】

1月の古地図サロンレポートと次回予定

  • 最近と今後の古地図活動
  • 古地図ギャラリー第9回

①東畑建築事務所「清林文庫」コレクション〈その9〉

②本渡章所蔵地図より〈その8〉

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図〈その9〉

 

■古地図サロンのレポート

開催日:1月28日(金)午後3~5時 御堂筋の大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。

皆さま、お元気でいらっしゃいますか。今回は更新が遅くなり、お待たせしてしまいました。

当日は感染の行方が不透明で、外出にも自粛ムードが漂うなかでの開催となりました。参加人数を気にしなくてすむ会合の強味とはいえ、オープン後しばらくは来訪者が2、3人。静かなスタートはさすがにコロナ禍中を思わせましたが、後半は7人ほどとなり、初参加の方もお2人おられて、いつもとあまり変わらない雰囲気で終えられました。しばらくは、こんな状況が続くと思います。2022年もよろしくお願いいたします。

さて、今回の展示古地図は数が少なめですが個性の強いものを並べてみました。「大阪市街全図」は大正初期の著名会社や商店を細かく記載。この図については、参考展示した冊子「大阪に関する地域資源の掘り起こし・再評価とDCHによる繋がりの創出」に解説があり、仁丹の社長宅、相撲のタニマチの由来となった「薄医院」などが載っていると記されています。図は100年以上前の内容で、今も残る会社・商店をつい探してしまいます。サロンの皆さんもそれが楽しみのようです。「大阪府中等以上学校分布図」は戦争突入直前の学校分布の図。当時は女学校や職業学校が多かったと気づかされました。「大大阪最新地図」は著書『古地図でたどる大阪24区の履歴書』でも取り上げ、実現しなかった幻の中島区・姫島区が載っている大大阪誕生記念の地図。「世界古美術即売大展観」は、日本橋にあった松坂屋で開催の古美術即売会を双六風にアレンジした会場案内図。絵に味があり、戦前の賑わい風景に触れた気分になります。その他、計6点。少ないぶん、ひとつひとつじっくり見ていただけたかと思います。

今日は、またお一人、家のルーツを知る手がかりを求めて来場された方がいました。江戸時代から続くお店が家業で、昔の足跡については資料が乏しく、不明な点が多いとのこと。古地図サロンは気軽な雑談の場ではありますが、何かお探しの方のお役に立てるのなら、うれしいです。

というわけで、次回も皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。

◉今回のサロンで展示した古地図

《原図》
大阪市街全図 付著名諸会社・銀行・商店案内 大正2年(1913) 大阪毎日新聞社
大大阪最新地図 編入接続町村都市計画区域及路線明細 大正14年(1925) 大阪朝日新聞社
大阪近郊 昭和2年(1927) 大日本帝国陸地測量部
世界古美術即売大展観 昭和13年(1938) 大阪日本橋松坂屋
大阪府中等以上学校分布図 昭和16年(1941) 大阪府学務部学務課編
最新大阪市案内図 昭和31年(1956) 大阪市交通局

《参考》
「大阪に関する地域資源の掘り起こし・再評価とDCHによる繋がりの創出」(冊子)
令和2年(2020)発行  発行者・関西大学人間健康学部 浦和男研究室

次回は2022年3月25日(金)午後3~5時開催の予定。

会場は御堂筋の大阪ガスビル1階カフェにて。私の30分トークは午後4時頃からです。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。
(サロンは今後も奇数月の第4金曜開催。但し、祝日と重なる場合は変更します。)

コロナの状況により開催中止の場合は、事前にこの場でお知らせします。

【最近と今後の古地図活動】

新ブログ大阪の地名に聞いてみた連載スタート

誰よりも大阪を知る「大阪の地名」の声、地名にひかれ地名で結ばれる人の想い。
いっしょに耳を傾けてみませんか。月1回ペースで1年間の連載予定(題字と似顔絵・奈路道程さん)。

連載1回目は「大阪の干支地名エトセトラ」(前編・後編)。公開中。

※写真は新ブログの看板猫(猫間川)

新着番組、古地図でたどる大阪の歴史」のご案内

江戸時代の大坂、近代以後の西区編に続き、街歩きスタイルの編集による港区編もまもなく公開。
他に「古地図サロン」紹介編、著書「大阪24区の履歴書」紹介編の動画もあります。

中之島図書館・特別展「清林文庫の魅力と、その古地図コレクション」
ナカノシマ大学清林文庫誕生と古地図が語る時の物語」

4月11日(月)~23日(土)大阪府立中之島図書館にて開催。今年創立90周年を迎えた東畑建築事務所(大阪市中央区)が所蔵する「清林文庫」(建築・美術・地誌など他分野にわたる世界的コレクション)から、大坂・京都・江戸の三都の古地図を中心に江戸時代の世界地図も展示。東畑建築事務所と同コレクションの歴史を語る資料も公開。
※清林文庫については古地図ギャラリー参照。

特別展の連動企画として、展示最終日の4月23日(土)には、展示内容の解説と「清林文庫」誕生にまつわる逸話を紹介する講座「清林文庫誕生と古地図が語る時の物語」を開催します。会場は大阪府立中之島図書館2階ホール。講師は本渡章。

朝日カルチャーセンター中之島での講座予定

4月25日(月)教室・5月9日(月)現地 午前10時00分~12時「庚申街道沿いの史跡を訪ねて」


|古地図ギャラリー|

1.暁鐘成・浪花名所独案内】

東畑建築事務所「清林文庫」より〈その9

掲載の図は江戸時代の観光案内として、今でも昔の大阪を語る本や雑誌などに登場していますので、見たことがある方もおられるでしょう。その多くは友鳴松旭(ともなりしょうきょく)・作の「浪華名所獨案内」です。友鳴松旭については前回の古地図ギャラリー掲載の「大日本早見道中記」の絵師として紹介しましたので、そちらをご覧ください。今回掲載したのは、暁鐘成(あかつきのかねなり)の筆による「浪花名所独案内」。友鳴松旭の作とは題名の文字表記が少し異なり、図の内容も一部が異なるものの、ほぼ同じ。図の上に豊臣秀吉の大坂築城にはじまる街の歴史を説く文言が記されているのが改訂版の特徴です。

暁鐘成(1793~1860)は江戸時代の浮世絵師で戯作者。狂歌・随筆・読本・啓蒙書など活躍の幅は広く、なかでも没後70年近くを経た昭和3年(1928)刊行の「摂津名所図会大成」は地誌の傑作とされます。友鳴作「浪華名所獨案内」を世に出した版元が、絵師を人気作者の暁鐘成に代えて改訂版を作成したのは、観光案内の地図が息の長い売れ行きが期待できるコンテンツだったことを伺わせます。

題名の表記が一部変わって「浪花名所独案内」になったのは、なぜでしょう。改訂版では友鳴作の版に描き込まれた色別の観光ルートがなくなりました。遠景の山々を描くタッチも微妙に違います。端的に言うと、絵画的な色合いが濃くなりました。旧版と同じ内容のようで、細部にこだわりが見える。そこに、絵師・暁鐘成の意気を感じます。

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東畑建築事務所「清林文庫」は、同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。

2.大阪市観光課【大阪市案内図】

本渡章所蔵地図より〈その8〉

大阪は江戸時代から観光案内図の題材になる名所がたくさんありました。明治以後は、街の近代化にともなって登場した新名所が加わり、交通機関の発達もあって、観光に便利な地図が数多く出回るようになりました。昭和15年(1940)発行の「大阪市案内図」は大阪市観光課が作成。赤地に青い文字、白抜きのイラストの表紙がなかなかモダン。描かれたのは市役所前の街角です。

開くと中面が地図。「昔よりの大路堺筋」「南北の大道路御堂筋」「綿市呉服ノ本町」「洋服商街ノ谷町」「繁華ノ中心路心斎橋」「銀行商社街ノ高麗橋」「薬種問屋ノ道修町」「陶器商ノ西横堀」「菓子玩具ノ松屋町」など、赤い囲みの中の文言が、戦前の賑わいがどこにあり、当時の人々がどんな風景を見ていたのか、伝えています。裏面は当時の名所案内記。大阪城公園、大阪城天守閣、天王寺の美術館・動物園などと並んで電気科学館が大きく紹介され、天象館(プラネタリウム)実演をアピールしています。綿市呉服、洋服商街、薬種問屋、天象館……地図は時代の言葉のカプセルだと、あらためて思います。

3【躍進井原市】

鳥観図絵師・井沢元晴の作品より〈その9〉

「躍進井原市」は、古地図ギャラリー第4回(2021年3月)で紹介した「福山展望図」の姉妹編ともいうべき作品。昭和28年(1953)、井原市に市政が施行されたのを記念しての発行です。戦地からの復員後、西日本を中心に各地の街や山河を描いてきた井沢元晴は、福山市、井原市を鳥観図に残し、戦後の復興を遂げた街々の姿を今に伝えました。

井原市は岡山県南西部の小都市。隣接する広島県福山市とのつながりが深く、市域が江戸時代の福山藩領と重なっています。源平合戦で活躍した那須与一ゆかりの地で、戦国大名の北条早雲の出身地としても知られる街。この図にも那須与一の墓、那須一族の大山氏の居城だった青蔭城跡など由緒ある旧跡が描き込まれ、桜名所で名高い小田川沿いの井原堤は桜並木が花を咲かせています。裏面に記された井原市の概況の文面にも、市制施行を機に観光や産業の発展をめざす街の意欲があふれています。図中に並んでいる丸囲みの数字は、裏面で紹介されている地元の企業や商店の場所を示しています。

桜色に縁どられた小田川を挟んで、緑の山々と市街地の営みがやわらかな空気に溶け込んでいます。現在の井原市は美術館や天文台、日本庭園などの施設も整って、文化の香りも漂わせる街になりました。この図にもすでに天文台が載っています。来年、井原市は市制70周年を迎えます。

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鳥観図絵師・井沢元晴(1915~1990)は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介されました。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られました。学校のエリアは主に西日本です。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられました。

過去の古地図ギャラリー公開作品

第8回(2021年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「友鳴松旭・大日本早見道中記」

②本渡章所蔵地図より「遠近道印作/菱川師宣画・東海道分間絵図」「清水吉康・東海道パノラマ地図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「吉備路」

 

第7回(2021年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・江戸図鑑綱目坤」「遠近道印・江戸大絵図」

②本渡章所蔵地図より「改正摂津大坂図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉吉市と周辺 文化遺跡絵図」

 

第6回(2021年7月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「石川流宣・日本海山潮陸図」「石川流宣・日本国全図」

②本渡章所蔵地図より「大阪師管内里程図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「倉敷美観地区絵図」

 

第5回(2021年5月)

①2007清林文庫展解説冊子・2019清林文庫展チラシ

②本渡章所蔵地図より「近畿の聖地名勝古蹟と大阪毎日」

③フリーペーパー「井沢元晴漂泊の絵図師」・鳥観図「古京飛鳥」「近つ飛鳥河内路と史跡」

 

第4回(2021年3月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「大阪湾築港計画実測図」

②本渡章所蔵地図より「大阪港之図」

③鳥観図絵師・井沢元晴の作品より「福山展望図」

④鳥観図絵師・青山大介の作品より「梅田鳥観図2013」

 

第3回(2021年1月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「江戸切絵図(尾張屋版)」「摂津国坐官幣大社住吉神社之図」

②本渡章所蔵地図より「摂州箕面山瀧安寺全図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「小豆島観光絵図」

 

第2回(2020年11月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」

②本渡章所蔵地図より「A NEW ATLAS帝国新地図」「NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図」

③昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「大阪府全図(三部作)」

 

第1回(2020年9月)

①東畑建築事務所・清林文庫より「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」

②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図より「ふたつの飛鳥と京阪奈」

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