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【新刊情報】『いっとかなあかん店京都』

2018年11月6日 火曜日

『いっとかなあかん店 京都』

著者/バッキー井上
写真/打田浩一
装画/長友啓典(生前の作品)
デザイン/中村 健(長友啓典の弟子)
判型/A5版
頁数/184ページ(オールカラー)
定価/本体1,500円+税(税込1,620円)
発売/2018年11月上旬

 

〈要旨〉
本書は京都生まれ京都育ちで、Meets Regionalやdancyu、毎日新聞(大阪本社夕刊)に連載を執筆する著者が40年の歳月の中で出会った「京都のたまらん店案内」です。

「実は店のことについての具体的な紹介をほとんどしていない」(あとがき)と書いている通り、メニューや価格、席数などWEBの店ガイドのような「情報」にはほとんど触れていないのに、一瞬でその店の匂いや湿気、ぬくもり、ざわめきの中に連れていかれる。著者が「人生込み」で店と付き合い、紡ぎ出してきた小骨のようなフレーズが心地よく刺さり、そのゴキゲンな空気の中に身を置きたいと強く願ってしまう、不思議な本です。

48の店、55の話を京都のど真ん中で読んでシビレるもよし、ですが、京都を想いながら「あの店いこう」と考える時間もきっと楽しいはずです。どうぞご笑覧くださいませ。

〈刺さるフレーズ〉
「大人という字はダサい」「立ち飲み屋は磯辺の浅瀬である」「街のご馳走は過ぎていった時間だ」「セコスタンスときつい旅」「酒場のことは夢まぼろしだ」「ポン酢とネギでドリブル人生」「腕も折れよと上げ下げグラス」「人は歌にやられる。ましてや京都」

〈絶好調!「いっとかなあかんシリーズ」はコチラ!〉
「いっとかなあかん店大阪」江 弘毅
「いっとかなあかん神戸」江 弘毅

【新刊情報】『生きた建築 大阪 2』

2018年10月12日 金曜日

『生きた建築 大阪 2』

著者:倉方俊輔 髙岡伸一
監修者:橋爪紳也
定価:本体1,600円+税
判型:A5判
頁数:192ページ(オールカラー)
発刊:2018年10月23日

 

 

 

いつの時代も建築は、その当時の社会背景や流行を反映して建てられ、建築を見ることは、その街がどのように歩んできたのかを知る手がかりになります。この本では、大阪を代表する建築を時代ごとに紹介する中で、大阪という都市の成り立ちについて考えます。

明治時代に建てられた近代化を象徴する重厚な建築群、大正〜昭和初期にかけての近代建築、そして戦後の高度成長期や大阪万博の空気感をまとった建築から、大阪ステーションシティやあべのハルカスなどの現代建築まで。今なお生き続ける建築の物語を紐解いていきます。

本書の著者のお二人、倉方俊輔さん(右)と髙岡伸一さん(左)  撮影/西岡潔

 

この本の構成について、著者の一人である髙岡伸一さんは、このように語っています。

本書では、53件の建築をおおよそ建設された年代順に並べました。建っているエリアで分類した前書とは、対照的な構成になっています。年代順に読み進めることで、近代から現代に至るまでの建築の変化がわかるだけでなく、そこから大阪という都市の歴史が読み取れるように配慮しました。また建築の歴史は木造からコンクリートへ、そして装飾的な洋風建築から合理的なモダニズム建築へと、必ずしも単線的に進化したわけではない、ということにも気づいていただけると思います。大阪という限られたエリアの中でも、常に建築は多様な可能性に開かれていたのです。

そして本書が歴史の教科書と大きく異なるのは、年代順に並べられたすべての建築が、私たちと共に現代に「生きている」ということです。それぞれが固有の物語を内包する建築の集積として都市はあり、私たちは複数の時空が絡まり折り畳まれた、実に豊かな多次元の空間を生きているのです。それこそが、都市という人類最大の創造物の魅力なのだと思います。一つひとつの建物は、その時空間への入口であり、本書が扉を開くきっかけになれば幸いです。

(髙岡伸一「まえがき」より)

 

生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪の盛り上がりに見られるように、今や大阪は建築の街といっても過言ではありません。その街を歩くのにぴったりのガイドとしても、建築史の教科書としても役立つ1冊です。シリーズの第1弾である『生きた建築 大阪』やイケフェス大阪の公式ガイドブックと合わせて、ぜひお読みください!

『生きた建築 大阪』の紹介ページはこちら

 

拝啓・古地図サロンから⑨

2018年10月10日 水曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」
毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、9月に開かれたサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年9月28日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

先月に続いて今月も台風のニュースを気にしながらのサロンになりました。今日のところは御堂筋の空に明るい晴れ間がのぞいています。秋はもうそこに。皆様、いかがお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、9月26日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。

10分前に会場に入り、珈琲を注文していると、早くも来場の方がお一人。お話をしながら、古地図を広げてサロンの準備している最中に、またお一人。その後も最後まで、ぽつぽつの来場が続く一日でした。「月刊島民」発行人の大迫さんも来場。「島民」編集部は、このブログを運営している株式会社140B(毎回のブログ更新ありがとうございます)にあって、140Bは大阪ガスビルのご近所なのでした。大迫さんは仕事の話が終わると、展示の古地図をひととおりじっくり閲覧。来場者との記念写真にも加わっていただきました。大型台風接近中にもかかわらず、今日はとてもなごやかな雰囲気です。

今回の展示テーマは「大阪以外特集」でした。いつもは地元大阪の古地図がほとんどなのですが、東京・京都・滋賀・神戸の古地図をならべてみました。参加者はみなさん大阪とその近隣の在住なので、他都市の地図はどうなんだろうと思っていたのですが、心配無用でした。いつもと同じように、興味をもってゆっくり見て帰られる方ばかりで、むしろなじみの薄い場所だからこそ疑問もいっぱいで、話のタネが尽きなかったように思います。大阪の古地図も一部まぜておいたので、比較という面からもいつもとちがう面白味がありました。話もなかなか弾みました。

たとえば、明治14年の大阪の地図には梅田ステーション(大阪駅)が絵入りで載っていますが、明治11年の東京の地図では東京駅を探してもありません。新橋は載っていて、「新橋を早やわが汽車は~♪」という懐かしの鉄道唱歌を思い出し、この時点では新橋までしか鉄道が通じていなかったと納得。地図を見ながら、あると思ったものがなかったり、ないと思っていたのにあったりする意外性に直面して、軽い驚きとともに自分たちなりの発見を体験できるのが古地図の面白さです。こういうのはネットで検索すればたぶんすぐわかるのですが、小さな疑問、小さな発見でも自分で見つけてこそ楽しみが大きいのですね。

サロンでは毎回、来場の方たちが古地図を熱心にのぞきこむ姿が見られます。きっと、古地図の中にそれぞれの楽しみを見つけて心を遊ばせているのだと思います。展示の中に東京市が東京都になった当時の地図があります。大京都、大神戸という呼び名が題名に付けられた地図もあります。近代化が大いに進んで人口が増え、市街区域も拡大して、それぞれに大都市となった自信が地図にもあふれています。銅板で印刷された明治の京都地図は、繊細な線描の表現と淡い彩色がなんともいえない味を出しています。地図そのものの味だけで充分楽しめそうです。

今回は明治時代の東京風景を描いた石版画も二枚、お見せしました。吾妻橋と上野の東照宮。いずれも当時の有名な名所です。グラデーションがかかった赤と青の色調がきれいです。地図ではありませんが、この時代の印刷物がかもしだしている美意識には、注目させられます。印刷技術はその後の時代のほうが優れているのですが、明治の印刷物には、なんというか人間味、ぬくもりを感じさせるものが多いのです。

こういう感触は、写真では充分に伝わらないと思います。来月以後のサロンの日程は余すところ2回です。発行された当時の古地図をまとめてご覧いただく機会も、あとわずかになりました。珈琲一杯でどなたでも出入り自由のサロンを定期的に開催できるのは、これが最初で最後になるかもしれません。次回のサロンは教科書になった地図を特集。なかなか見る機会がないので、必見です。大阪の古地図も用意します。お見逃しなく。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。


本日の公開古地図
★「京都府管内地図」明治初期
「京都府・滋賀県交通地図」昭和初期
「大京都市街地図」昭和17年(1942)
「実測東京全図」明治11年(1878)
「東京都政地図」昭和18年(1943)
「新区政・東京全図」昭和23年(1948)
石版画・東京名勝「上野東照宮之図」
石版画・東京名勝「吾妻橋之図」
「大神戸市街地図」昭和16年(1941)
「最新実測・大大阪明細地図」大正14年(1925)
「最新大大阪市街全図」昭和4年(1929)
「大阪府大地図」昭和30年代

 

以上11点、石版画2点。すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

今回のセレクト地図は★京都府管内地図でした。明治初期の銅板地図です。

なお、本も3冊展示しました。

『鳥瞰図!』本渡章(私の最新刊。朝日放送ラジオ「武田和歌子のぴたっと」のおすすめ本コーナーで紹介されました)
『凸凹を楽しむ東京スリバチ地形散歩』皆川典久(東京での地形ブームの原点となった本)
『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』伊藤比呂美(東京のとげ抜き地蔵よりも効く悩み多き人生の特効薬)

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、10月以後の日程は次のとおり。

10月26日(金)午後3~6時
11月休み
12月7日(金)午後3~6時 ※この日がサロンの最終回です。

 

どなたでも参加できます。もし、興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。では、次回サロン(10月26日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年9月28日
本渡章

★本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

第10回は10月26日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

拝啓・古地図サロンから⑧

2018年9月25日 火曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、8月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年8月30日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

台風20号の大風が吹き荒れた夜が明け、御堂筋は一転、晴れわたる青空におおわれ、いい気分の昼下がりです。皆様、夏の終わりをどのようにお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、8月24日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。

前回は来場が少なく、ゆったりしたサロンだったので油断して、3時ぎりぎりに会場入りしましたら、この日は「オープン待ちの方がおられますよ」と、カフェのスタッフさんから言われ、あわてて展示をセッティングすることになりました。その方と、広げた地図を前にお話していると、まもなくお母さんと娘さんの2人連れでの来場者があり、「この日を待っていたんです」とお母さんからひと声。仕事の都合で、今日しか見に来られないので、ほんとに楽しみにしてましたとのこと。

こういう方たちがおられるので、油断できません。親子連れの方は、新刊の『鳥瞰図!』を買って読まれ、興味が湧き、ネットで探して古地図サロンを知り、わざわざ足をはこばれたそうです。

あいにくこの日の展示は、8月の終戦記念日にちなんで戦争にまつわる地図特集だったのですが、鳥瞰図に限らず、古い地図全般に興味があるそうで、そのあと話は俄然盛り上がりました。先にオープン待ちしておられた方は書店勤務で、やはり鳥瞰図も古地図もお好き。地図の話題に、本をめぐっての最近のニュースなども加わって、話のネタは尽きません。そのあともポツポツと来場があり、切れ目のほとんどないサロンになりました。

戦争にまつわる地図は、話題としては重いので、サロンではどうかなと思っていたのですが、意外というか、これまででいちばん反響が大きい展示になりました。私は戦後生まれですし、来られた方たちもほとんどが戦争の実体験のない世代です。若い来場者にはなおさら遠い昔の話でしかないだろうと、勝手に思い込んでいました。

ところが、地図の力はすごいです。戦前、戦中、戦後まもなく作成された当時の地図には、戦争を知らないはずの人にも、かつてその場所で起きた出来事をありありと想像させる何かがあるのですね。

空襲で焼失した地域を赤く塗った大阪地図があります。主に市街中心部と湾岸部、淀川流域が真っ赤です。中心部は行政とビジネス、湾岸と淀川流域は軍需工場、軍事施設が多かったエリアです。戦後の復興計画を描き込んだ大阪地図があります。道路整備と市街の区画整理が主な内容ですが、焼失エリアと復興計画エリアが重なっているのがわかります。あたりまえと言えばあたりまえですが、2枚の地図を見比べていると、単に焼けたから復興するというだけではない、いろいろな感慨が湧いてきます。焼失エリア地図であれば、実際にその地図を作るために、敗戦直後の焼け野原の街を、どこまでが焼け、どこが焼け残ったか、自分の目で見て歩いた人がいたことに思いがおよびます。

ソ連での抑留者が戦後になっても日本に帰れず、彼の地で埋葬されたのを示す埋葬地分布地図があります。大陸のじつに多くの地域に埋葬地が散らばっていたのがわかります。平成になってソ連から渡された40,000人の日本人名簿をもとに作成された地図です。初めて見た時、何も言葉が出ませんでした。この日、この地図を見た方たちはどんな思いを抱かれたでしょうか。

今回からジャンケン地図はなくなりました(理由は前回書いています)。1枚だけ、セレクトした地図を用意しますが、希望があれば広げて見ていただくことにします。今回のセレクト地図は抑留者埋葬地分布地図でした。そのほかの地図も、戦争の記憶を濃密に伝えてくれました。たとえば、明治の地図は、今の地図と紙じたいが違うという話を来場者としましたが、紙もまた何かを語っています。当時作られた実物の地図が持っているその時代の空気です。

5時20分頃になって来場が途切れ、来場の方が帰り際に注文してくださったアイス珈琲(ごちそうさまでした)をいただきながら、ひと息ついていると、また1人来場がありました。何度も来られて、たぶん来場回数いちばんの方。いつも地図をひととおり、じっくり見られて、言葉少なに帰られます。いいですね、こういうのも。今日はカフェのスタッフさんからも、1人、地図を見に来られました。仕事が忙しいと思いますが、よかったら、またいつでもお越しください。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。


本日の公開古地図
★「戦後強制抑留者の主な埋葬地」平成3年(1991)
「第十六師団機動演習地図」大正元年(1922)
「大演習枢要地図」明治31年(1898)
「東京日日新聞日露戦争地図」明治37年(1904)
「双璧の天橋立・国民精神総動員」昭和14年(1939)
「最新大大阪全図」昭和17年(1942)
「戦災焼失区域明示・大阪市地図」昭和21年(1946)
「中支戦局詳解地図」昭和12年(1937)
「大阪地形図」昭和7年(1932)
「大阪市計画街路及土地区画整理事業区域図」昭和39年(1964)
「大阪都市計画高速道路及び都市計画街路図」昭和39年(1964)

以上11点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

 

★「戦後強制抑留者の主な埋葬地」が本日のセレクト地図でした。平成発行ですが、内容から見て古地図サロンでの戦争地図特集にふさわしいと思います。

なお、本も3冊展示しました。

『鳥瞰図!』本渡章(私の最新刊。鳥の目で日本を見下ろしたら……)
『ヒコーキ野郎たち』稲垣足穂(鳥瞰図の黎明期は飛行機の誕生期でもあった)
『米朝ばなし 上方落語地図』桂米朝(地図入りの落語本は珍しい)

 


古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、9~10月は毎月第4金曜、11月休み、12月は第1金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(9月28日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年8月30日
本渡章

★本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

第9回は9月28日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

拝啓・古地図サロンから⑦

2018年8月2日 木曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年7月30日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

台風一過。地震、豪雨からこのかた、大荒れの天地。陽射しが戻ったかと思うと、酷暑も再来。難儀なこの夏、皆様どのようにお過ごしですか。

今月の古地図サロンは、台風12号上陸目前の7月27日午後3~6時、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、予定どおり開催されました。当日は御堂筋を行き交う人も台風情報を耳にして、どこか空模様をうかがうようす。私もちょっと落ち着かない気分での会場入りでした。

結果は天気の崩れはなかったものの、「明日あさっては外出禁止令?」などの報道の心理的影響か、サロン来場者は過去最低の3人のみとなりました。お越しくださった皆様ありがとうございました。

というわけで、最初に、2018年後半のサロン日程のお知らせです。

8月24日、9月28日、10月26日(いずれも第4金曜)

11月はお休み。

12月7日(第1金曜)※サロン最終日。2019年以後の開催は未定

こんなオープンなかたちで古地図のサロンを定期的にひらく機会は、もう無いかもしれません。少なくとも、大阪ガスビルでのサロンはあと4回で終了です。お見逃しなく。

さて、今回の公開地図の主役は江戸時代(天保年間)の大坂絵図です。題名を「改正摂津国大坂図」といいます。草花の文様が浮き彫りされた臙脂色の表紙が渋いです。折りたたまれた図を広げると、木版刷り独特の落ち着いた色調に彩られた大坂の姿があらわれます。虫食いが数箇所ありますが、これも発行からおよそ180年を経た歴史のしるし。今まで残ったのが幸運だったといえます。

天保山の載っている部分が、地図からはみ出ています。木版では、今のように簡単に版をつくりなおせないので、あとから築造された天保山を、こんなかたちで地図に付け足したのです。面白いですね。つまり、天保山の部分と他の部分は作成時期がずれているのですが、それを何食わぬ顔で(?)ひとつにしてしまっているわけで、今とは感覚がちょっと違います。

というような話を本日の来場者といたしました。毎回、こんなふうに会話が弾むとは限りません。二、三度目の来場で、会話ができるようになった方も少なくありません。

サロンでは私から解説はしますが、会話が一方的になるのは避けています。関心を持つツボはみんな違うと思うので、私としてはその違いの部分を知りたい。なので、来場の方が口をひらくのをじっと待つこともしばしばです(決して解説を惜しんでいるのではないのです)。

来場者によっては、静かに地図を眺めていたいというオーラを発している場合もあって、そういう時は、私も椅子に座るなどして、邪魔をしないようにしています(無愛想に見えたらすみません)。時々、距離の置き方に迷うケースもあり、話をするタイミングがつかめないまま、来場者が帰ってしまったりすると残念な気持ちが残ります。迷い多きホストです。

古地図サロンは「見るだけオーケー、話しかけオーケー」ということで始めたのですが、あまり他にないタイプのイベントなので、来場された方も勝手がわからず、とまどいがあると思います。そういう時は、ホストのほうもとまどいながらお迎えしているのだと思っていただくと、気が楽(?)になるかもしれません。いちどお試しください。私としては楽しく、くつろいでいただきたいのです。

 

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。


本日の公開古地図
★「改正摂津国大坂図」天保13年(1842)
「日本府県管内地図・大阪府」大正7年(1918)
「大大阪市街全図」大正15年(1926)
「近畿名勝遊覧早わかり地図」昭和6年(1917)
「大阪市電車地図」昭和12年(1937)頃
「全日本最新名勝名物地図」昭和初期
「改正神戸市地図」大正4年(1915)
「新版京都案内地図」昭和21年(1932)
近畿名勝遊覧・実測大阪市街地図 大正9年(1920)

 

以上9点、※の1点を除く8点が〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

★「改正摂津国大坂図」天保13年(1842)が本日のジャンケン地図でした。次回からはジャンケンをやめ、希望があればその都度お見せする形式に変えたいと思います(ジャンケンで負けたショックをひきずる方もおられるようなので)。

なお、本も3冊展示しました。

『鳥瞰図!』本渡章(私の最新刊。大正~昭和の鳥瞰図全盛期の作品満載)
『パノラマ地図の世界』別冊太陽(現代の鳥瞰図絵師たちの作品世界)
『宇宙の目』P,K.ディック(究極の鳥瞰は宇宙を見下ろす)

 

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、8~10月は毎月第4金曜、11月休み、12月は第1金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(8月24日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年7月30日
本渡章

★本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

第8回は8月24日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

拝啓・古地図サロンから⑥

2018年7月13日 金曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年6月25日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

先日、地震がありました。まだ一部の交通機関が復旧作業中ですが、お変わりありませんか。被害にあわれた皆様にはお見舞い申し上げます。

本日、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、午後3~6時、第6回目の古地図サロンをひらきました。今回は開催期間のちょうど半分、折り返しの月に当ります。地震後の梅雨空の晴れ間を見上げつつ、年末まで無事にサロンが進行できるよう願うばかりです。

先月もお知らせしたとおり、10月までは予定通り毎月第4金曜にサロンを開催します。11月はお休み。12月の最終回は、今のところ第1金曜で開催を検討しています。最終回といっても特別なことはしないと思いますが、もしかしたらするかもしれません。とりあえず日程のみ次回お知らせします。今しばらくお待ちください。

さて、今日は前回に続いてゆったりした時間の流れるサロンになりました。何度か来られてなじみになった方が、ぽつぽつと来られて、珈琲など飲まれたあと、サロン・コーナーで展示の古地図を眺め渡し、目にとまった図の前で立ち止まり、しばらく見入って、少しお話して、また見入って、少しお話して、次の図を見て、気がすんだら帰られる。このサイクルの、のんびりした繰り返し。私一人になる時間帯はちょっとだけで、みなさん、阿吽の呼吸で来場の時間帯をずらしておられるようです(そんなわけはないのですが)。

サロンにはほとんど(全員かもしれません)の方が一人で来られて、一人で帰って行かれます。話はたいてい私とされるのですが、来会者同志でうちとけて話される方もいます。質問のかたちで話しかけてこられることが多いですが、疑問を明らかにしたいというよりも、古地図をはさんでちょっと人と会話をしてみたいという雰囲気でしょうか。

中には、私が気づかなかったことを教えてくれる方もいます。今日も吉田初三郎の鳥瞰図に載っているお寺に番号が記されているのを見つけて「これは何でしょう」と尋ねてこられた方がいました。よく見ると、確かにそういうお寺がいくつかあって、他のお寺は番号無しです。どういうわけかと私も首を傾げましたが、おそらく西国三十三所の札所の番号でしょう、という結論に。「よくこんな小さい数字を見つけられましたね」と言うと、その方はうれしそうな顔をされました。

来会者のお名前をきいたり、住所などを記帳していただいたりはしていません。毎回来られても、次回も来られるとは限らないので、どの方とも今日が最後のつもりで接しています。私の知人にはあまり声をかけていませんので、来られる方もほとんどがサロンで初めて知り合った方たちです。サロンでだけお会いして、古地図をはさんでの会話を楽しんで、それだけのサロン。そこが、いいのです。続いているのが不思議に思えてきますが、これもやはり古地図に秘められた力のなせる技でしょう。

ジャンケンは前回に続いて、なんとなんと、またも私の全勝でした。今日の対戦者の中には「通算5連敗中です」という方もいました。勝つ気が全然ないと、反対に勝ってしまうみたいです。あまりに気の毒なので、今回も特別に本日のジャンケン地図(大正の広重・吉田初三郎の鳥瞰図・挿絵が多数載ったベストセラーのガイドブック)をみなさんに見ていただきました。次回は勝って、正々堂々とご覧ください。

カフェ(サロン会場)の松田店長さんから『大正・昭和の鳥瞰図絵師 吉田初三郎のパノラマ地図』(別冊太陽)をいただきました。古書店でしか入手できない貴重本。ありがとうございました。本日の展示に加えたあと、自宅でゆっくり拝見いたします。

 

サロン終了の午後6時。御堂筋は半袖姿が目立ちます。帰宅の人、仕事中の人、飲みに行く人、それぞれの顔が行き交うガスビル前。ちょっとだけ蒸し暑いような6月の夕暮れ。明日の天気予報は雨だそうです。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。

鳥瞰図ミニ特集(第3弾)
「日本鳥瞰近畿東海大図絵」昭和2年(1927)吉田初三郎・作
「日本鳥瞰中国四国大図絵」昭和2年(1927)吉田初三郎・作
「日本鳥瞰九州大図絵」昭和2年(1927)吉田初三郎・作
「箱根名所図絵」大正6年(1917) 吉田初三郎・作
「UNZEN」大正10年(1921)吉田初三郎・作
「鉄道旅行案内」大正10年(1921)
※全300頁余の本。鳥瞰図・挿絵は吉田初三郎・作
「古京飛鳥路とその周辺」昭和中頃 井沢元晴・作
「京都府蝅葉図絵」昭和4年(1929)金枡長観・作
「びわ湖八景めぐり」昭和初期 京阪電車発行
「近畿名勝遊覧・大阪市街地図」大正7年(1918)
「最新交通遊覧案内地図」昭和9年(1934)
「日本遊覧旅行地図」昭和11年(1936)高橋勝・校閲

 

以上12点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

★鉄道旅行案内 大正10年(1921)が本日のジャンケン地図でした。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

なお、本も5冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章(夏の街歩きは給水を忘れずに)
『大阪古地図パラダイス』本渡章(吉田初三郎・作の大阪府鳥瞰図が付録)
『古地図が語る大災害』本渡章(南海トラフ大地震、上町断層地震、どっちも怖い)
『大正・昭和の鳥瞰図絵師 吉田初三郎のパノラマ地図』別冊太陽(初三郎の鳥瞰図がたっぷり)
『江戸切絵図散歩』池波正太郎(江戸の2次元ウォークにぴったり)

 

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、毎月第4金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(7月27日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年6月22日
本渡章

★本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

第7回は7月27日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

【イベント】本渡章さん『鳥瞰図!』発売記念イベント一覧

2018年6月28日 木曜日

本渡章さんの最新刊『鳥瞰図!』の発売を記念したイベントが各地で開催されます。大阪だけでなく、東京にも登場。読者のみなさんとお会いできるのを楽しみにしております!

 

※詳細が決まったものからアップしていきます。

 


9/13(木)|紀伊國屋書店新宿本店

紀伊國屋書店新宿本店トークイベント
「鳥瞰図絵師・吉田初三郎の人生」

大正2年(1913)、デビュー作となる「京阪電車御案内」が時の皇太子(のちの昭和天皇)の目にとまり、お誉めの言葉を賜ったことから鳥瞰図絵師としての人生を歩み始めた吉田初三郎。大胆なデフォルメやわかりやすさを重視した作風は、大観光時代の旅行ブームに沸く日本人を魅了し、鳥瞰図ブームと言える流行をつくり出しました。

まさに「時代の寵児」と言える初三郎は、日本にとって鳥瞰図の父と呼ぶにふさわしい存在です。その人生や人物像を解説すると共に、東京周辺が描かれた鳥瞰図もたっぷりご紹介!本渡さんのコレクションの中から、選りすぐりの華やかな作品を実際にご覧いただきます。

日時:9/13(木)19:00〜20:30(18:40開場)
会場:紀伊國屋書店新宿本店9階イベントスペース
参加費:500円 定員:50名

◎終了しました。お越しくださったみなさん、ありがとうございました。

 


7/28(土)|東京カルチャーカルチャー

スリバチナイト6

恒例、真夏のトークバトル、スリバチナイトがこの夏も実現!東京スリバチ学会設立15周年記念トークイベント!! 今や全国に拡散し、ノリノリの東京スリバチ学会も設立15周年! 今年はオリジナルのメンバー、東京スリバチ学会の皆川会長・石川副会長そして大山顕氏の3氏に加え、6月に『鳥瞰図!』を出版した本渡章氏をゲストに迎え、トークバトルを行います。まち歩きが趣味の方、そして地図好き・地形萌えの方々など、全員集合です!!

出演:皆川典久(東京スリバチ学会会長)、石川初(東京スリバチ学会副会長・GPS地上絵師)、大山顕(住宅都市整理公団 総裁・デイリーポータルZ)、本渡章(地図研究家、鳥瞰図研究家)ほか
日時:7/28(土)18:00〜(17:00開場)
会場:東京カルチャーカルチャー
参加費:前売チャージ券2700円(税込・要1オーダー)、当日チャージ券500円増

◎終了しました。お越しくださったみなさん、ありがとうございました。

 


7/20(金)|大阪工大OITタワー

紀伊國屋書店梅田本店トークイベント 「鳥瞰図絵師・吉田初三郎の人生」

大正2年(1913)、デビュー作となる「京阪電車御案内」が時の皇太子(のちの昭和天皇)の目にとまり、お誉めの言葉を賜ったことから鳥瞰図絵師としての人生を歩み始めた吉田初三郎。大胆なデフォルメやわかりやすさを重視した作風は、大観光時代の旅行ブームに沸く日本人を魅了し、鳥瞰図ブームと言える流行をつくり出しました。まさに「時代の寵児」と言える初三郎は、日本にとって鳥瞰図の父と呼ぶにふさわしい存在です。その人生や人物像はどのようなものだったのでしょうか。本渡章さんに解説していただくと共に、本渡さんのコレクションの中から、初三郎の初期から全盛期にかけての華やかな作品を実際にご覧いただきます。

日時:7/20(金)19:00〜20:30(18:45受付開始)
会場:大阪工大OITタワー201号室
参加費:500円 定員:50名

◎終了しました。お越しくださったみなさん、ありがとうございました。

 

 

【新刊情報】本渡章『鳥瞰図!』が発売されます

2018年6月20日 水曜日

『鳥瞰図!』

定価:本体1,600円+税
判型:A5判
頁数:192ページ(オールカラー)
発刊:2018年7月3日

 

 

 

明治36年(1903)、ライト兄弟による人類最初の動力飛行機が大空を舞いました。その10年後、ある日本の絵師が1枚の鳥瞰図を発表した。のちに「大正の広重」と呼ばれることになる吉田初三郎です。初三郎の登場をきっかけに、やがて日本に空前の鳥瞰図ブームが訪れます。遊覧旅行の世界的な流行の波にも乗り、列島を空から見下ろす鳥瞰図は人々の心を広大なパノラマへと解き放ちました。

空前の鳥瞰図ブームはなぜ起きたのでしょうか。その背景には、飛行機の登場の他に、鉄道路線網の発展とそれが可能にした旅行ブーム、博覧会の流行など、さまざまな要素がありました。つまり、鳥瞰図は20世紀日本の風景や社会を色濃く反映しながら発展していったメディアなのです。

カバーにも使用している「日本鳥瞰近畿東海大絵図」(本渡章蔵・1927年)

 

また、空から見下ろす=鳥瞰するという手法は、鉄道路線図・交通案内図など隣接するジャンルに取り入れられ、互いに影響し合いながら進化し、領域を拡大していきました。こんなところにも鳥瞰図が使われているのかと驚くほど、その用いられ方には豊富なバリエーションがあります。

東京・横浜・名古屋、大阪といった大都市を描いた鳥瞰図はもちろん、伊勢や島根・広島などの観光地も含め、北は北海道から南は長崎まで、この本では日本全国のさまざまな鳥瞰図を紹介しています。図版点数は約100点。まさに盛りだくさん、見ごたえたっぷりの内容です。

 

◎紀伊國屋書店梅田本店にて
本渡章さんのトークイベントを開催!

「鳥瞰図絵師・吉田初三郎の人生」
お申し込み・詳細はこちらから

 

 

拝啓・古地図サロンから⑤

2018年6月6日 水曜日

本渡章のサロン
「古地図ものがたり」

毎回、古地図数点を公開。見るだけOK、話しかけOK、古地図マスターこと本渡章さんがお話し相手をつとめる楽しいひととき。ここでは、1月に開かれた初めてのサロンの様子をご紹介。本渡さんが訪れた人へ宛てたメールの形式で綴ります。

■毎月第4金曜、3:00PM~6:00PM
■大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催


☆2018年5月25日付・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。

拝啓

ゆっくり歩く御堂筋、今日は何のイベントか、ゆるゆる走るゴーカートを見かけました。みなさま、お元気でいらっしゃいますか。

本日、大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、午後3~6時、第5回目の古地図サロンをひらきました。1年間の予定で始めたサロンですが、月日が経つのは早いものです。そう思いつつカレンダーを見ていると、重大事に気がつきました。サロンは毎月第4金曜開催なのですが、なんと11月のその日は祝日でカフェはお休み。さらに12月のその日も年末休みに入るとのこと。どうしたものかと考えましたが、今のところわかりません。とりあえず、11月のサロンはお休みにして、12月の初めか中旬に最終回を催そうかと、そこまで思案したところです。ちゃんと決まりましたら、あらためてお知らせいたします。しばしお待ちを。

さて、本日は静かな一日になりました。ぽつぽつとお客さんはお見えになりましたが、私一人の時間帯もあり、その間は古地図を眺めたり、文庫本を読んだりしました。じつを言うと、こういうのが、サロンを始める前に頭に描いていたイメージで、今までが予想外の展開でした。こんなに来会者があるとは思わなかったというのが正直な感想です。そういうわけで、今回はのんびりしたペースで時が経ち、そのぶんお話もいろいろとできました。

いつも思うことですが、何を面白いと感じるかは人によってまちまちです。しかし、まったくバラバラなのかと言うと、そうでもなく共通しているところがある。矛盾するようですが、本当です。サロンでは毎回、古地図を展示していますが、どれに興味を持つかは人によって違います。それでも、話をしてみると、古地図を通して感じとっている面白さには共通したものがあるのです。

例えば、今日の来会者から耳にした言葉の中に、「あの頃はこうだったんですね」という一言がありました。明治時代のある古地図に見入りつつ、とてもしみじみとした口調で言われたのです。それがその方の面白がり方だったわけです。来会のみなさんは昭和から平成の生まれだと思うのですが、明治の古地図が示している「あの頃」をじっさいに見たわけではないのに、まるで思い出を懐かしむかのように愛でている。不思議なことですが、人にはどうも、自分が知らない過去の記憶を楽しむ能力があるのですね。古地図が、それを引き出してくれる。耳を傾けていると、具体的な話の内容は人によって異なりますが、結局はみなさん、自分の知らない「あの頃」を楽しんでいるのです。

変なことを書いてしまいました。でも、こういう話はこの場以外に書く機会がなさそうなので、とりあえず書いておきます。これを読まれているあなたは、どう思われますか。静かな一日もいいものです。今日のサロンの空気が、これを書かせてくれたのだと思います。

本日のジャンケン地図は、なんと私の全勝でした。申し訳ないので、挑戦してこられた方には、その意欲にお応えして、ジャンケン地図をお見せしました。本日の挑戦者はラッキーでした。

サロンが終了しても、まだ明るい御堂筋でした。だんだん日が長くなってきます。駅に向かって歩いている間に少しずつ灯がともりはじめました。この感じ、好きです。

というわけで、本日の展示の古地図の題名は、次のとおりです。

●鳥瞰図ミニ特集(第2弾)
「第5回内国勧業博覧会」明治36年(1903)
「大日本大阪名所廻双六」明治31年(1898)
「東京日日新聞日露戦争地図」明治37年(1904)
「御本山御遠忌記念京都明細地図」大正元年(1912)
「神戸市案内絵図」しんび堂・作 昭和初期
「吉野山名所図絵」香陽・作 昭和2年(1927)
「三朝温泉案内図絵」金子常光・作 昭和3年(1928)
「西国三十三所御開扉」昭和3年(1928)
「摂州箕面山瀧安寺全図」昭和4年(1929)
「小豆島八十八箇所霊場案内絵図」昭和17年(1942)

 

以上10点、すべて〔原図〕です。この他にナカノシマ大学特製復刻古地図15点、高島屋ギャラリーで展示した特製古地図ポスター6点も展示しました。

★「御本山御遠忌記念京都明細地図 大正元年(1912)・大丸呉服店発行」のみ私にジャンケンで勝った方にお見せしました。

☆〔原図〕とは、発行年が明治であれば、明治のその年に発行されたオリジナル版という意味です。そのほかは原図をもとに作った復刻版です。ナカノシマ大学の復刻版と古地図ポスターはサロンに常設しますが、原図は展示内容が毎回変わります。

なお、本も3冊展示しました。

『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』本渡章
(オールカラー・図版多数の最新刊です)
『大阪古地図パラダイス』本渡章
(吉田初三郎作の鳥瞰図が付録です)
『地図集』董啓章
(どこにもない街、どこにもある街。地図による奇想小説集)

 

古地図サロンは御堂筋の名建築・大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて、毎月第4金曜の午後3~6時開催。どなたでも参加できます。もし、これを読んで興味をもたれた方がおられましたら、どうぞ気軽にお越しください。途中参加・途中退場オーケー、古地図を見るだけでもオーケー、私に話しかけていただいてももちろんオーケーです。

では、次回サロン(6月22日)で、みなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

敬具
平成30年5月25日
本渡章

★本渡章のサロン「古地図ものがたり」
第6回は6月22日(金)15:00〜
大阪ガスビル1階カフェ[feufeu]にて開催します。

 

【新刊情報】『ザ・古墳群』いよいよ発売!

2018年5月11日 金曜日

『ザ・古墳群
〜百舌鳥と古市 全89基』

定価:本体1,500円+税
判型:A5判(ビニールカバー装)
頁数:224ページ(オールカラー)
発刊:2018年5月21日
協力:堺市、堺市博物館、藤井寺市、羽曳野市、
百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議

 

 

この本は、2017年に世界遺産登録国内推薦が決定した、大阪府南部の「百舌鳥・古市古墳群」にある全89基の古墳と、地元の街を歩いて楽しめるガイドブックです。「学術書」でも「解説書」でもなく、それぞれに名前と歴史があり、かたちが違う89基の古墳を現地で見て、登って、体感して楽しむことが目的です。


89基の古墳には、「立入禁止」になっている天皇や皇后の「陵(みささぎ)」も10基以上ありますが、逆に墳丘に上がることができて、地元の「行楽地」になっている古墳もまた10基以上あります。またスーパーの裏手、学校の構内、工場の敷地内、高速道路の高架下、住宅のきわにもある古墳は、得も言われぬ不思議な光景を創り出していますが、それらをライヴな写真で紹介しています。百舌鳥(堺市)・古市(藤井寺市・羽曳野市)をそれぞれ6つのエリアに分けた詳細な地元マップとも掲載しており、使い勝手はバツグンです。

取材には、百舌鳥44基=橘泉さん(堺市博物館学芸員)、古市45基=山田幸弘さん(藤井寺市世界遺産登録推進室室長)という2人のエキスパートが同行しました。古墳のことを知らない読者にもわかるように懇切丁寧な読みやすい解説を掲載。さらには全古墳の「航空レーザー測量図」などの情報も掲載し、ダイナミックに古墳の魅力を体感することができます。

 

また、古墳と共に発展してきた地元の神社仏閣や教育文化施設、古墳の地元らしい店などもご紹介。現地で古墳を案内してくれる観光ボランティアガイドやレンタサイクル、空から古墳が見られる遊覧飛行、近ごろ話題の古墳イベントなどの情報もてんこ盛り。交通アクセスが便利な大阪近郊の住宅地でありながら歴史が深い、百舌鳥・古市という「街」を歩きたくなるガイドです!

 

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