11月新刊『ぶらり大阪「高低差」地形さんぽ』(新之介・著)を1月4日の朝日新聞朝刊でご紹介頂きました。
新年早々「こりゃ春から、縁起がいいや」とスタッフ一同喜んでおります。朝日新聞さんありがとうございました。
https://140b.jp/blog3/2020/11/p3326/

11月新刊『ぶらり大阪「高低差」地形さんぽ』(新之介・著)を1月4日の朝日新聞朝刊でご紹介頂きました。
新年早々「こりゃ春から、縁起がいいや」とスタッフ一同喜んでおります。朝日新聞さんありがとうございました。
https://140b.jp/blog3/2020/11/p3326/

2020年12月12日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
【今回の目次】
■古地図サロン(11/25)のレポートと次回予定
●2021年初春の講座・講演・出版予定など
★古地図ギャラリー
①東畑建築事務所「清林文庫」の「メルカトル世界地図帳」「オルテリウス世界地図帳」
②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の「大阪府全図(三部作)」
開催日:11/27(金)午後3~5時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて
皆さま、お元気でいらっしゃいますか。今回のサロンはコロナ第3波を気にしつつ本年最後の開催となりました。来場者数はいつもとほぼ変わらずで、無事終了。2時間が過ぎるのが早かったです。
明治~大正~昭和と近代大阪の地図のバラエティを見てきた本年の締めくくりに、前回の古地図ギャラリーでとりあげた井沢元春作の鳥観図を展示しました。「ふたつの飛鳥と京阪奈」「河内路と飛鳥」「倉吉市と周辺文化遺跡絵図」の3点です。
野山の緑が美しい絵画的な世界に都市や史跡が溶けこんで、みなさん吸い寄せられるように見入っていました。いずれも井沢氏のご遺族から提供していただいた図で、特に大阪湾から琵琶湖までの広域を描いた大作「ふたつの飛鳥と京阪奈」のスケール感と迫力は満点。井沢元春の名を聞くのは初めてという方がほとんどで、戦後40年間を鳥観図一筋に生き抜き、日本各地の図を描いたことから昭和の伊能忠敬と呼ばれるに至った生涯を紹介すると、サロンが驚きの声で包まれました。平成2年に亡くなれたのが惜しまれます。没後30年が経ちましたが、今後の再評価が望まれます。
他の展示は、戦前~戦中~戦後の大阪の区分地図、近郊図など。変わり種は昭和16年の「大阪府中等以上学校分布図」で大阪市内と府下の中等以上学校を網羅した図で、現在の高校、大学の前身にあたる学校の名前を見つけるのが面白いです。浪速区、西成区、天王寺区の地図は、今と境界線が違い、思わぬ町が思わぬ区に属していたりして、意外性が楽しめました。
というわけで、皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。
《原図》
「大阪市観光案内図」昭和13年(1938)
「大阪府中等以上学校分布図」昭和16年(1941)
「区域変更図」昭和18年(1943)
「大阪市区分地図・西成区地図」昭和11年(1936)
「大阪市区分地図・天王寺区地図」昭和11年(1936)
「浪速区詳細図」昭和20年代後半
「大阪市街鳥観図」昭和21年(1946)
「朝日新聞特選大阪府近郊地図」昭和27年頃
★他に昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図2点
「ふたつの飛鳥と京阪奈」(前回の古地図ギャラリー掲載作品)
「倉吉市と周辺文化遺跡絵図」昭和58年(1983)
※井沢元晴の作品は今回の古地図ギャラリーにも掲載しています。
会場は大阪ガスビル1階カフェにて開催。私の30分トークは16:00時頃からです。テーマは「昭和の地図」。サロン参加は無料(ただしカフェで1オーダーが必要)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。新型コロナウィルスの状況によって中止になる場合は、この場で事前にお知らせいたします。
講座「古地図地名物語」は7年目に突入。2021年初春は1月22日(金)、2月26日(金)、3月26日(金)の実施予定。各日とも時間帯は午前10時30分~12時。テーマは上町台地西側エリアの「西区」「浪速区」「西成区」です。
問い合わせ/06-6222-5222または朝日カルチャーセンター中之島で検索
本渡章が「摂津名所図会」、大阪市立大学大学院文学研究科の菅原真弓教授が「浪花百景」を題材に住吉の話をいたします。講演の後、「すみよし歴史案内人の会」による町歩きも予定。詳細は住吉区民ホールの案内、住吉区の広報などでご覧ください。
日時/2021年2月27日(土)午前10時~12時
会場/住吉区民センター小ホール
大阪24区物語の書籍化が進行中。2020年3月頃、140Bから刊行予定。出版記念講演も予定しています。
前回に続き、東畑建築事務所(大阪市中央区)のご協力を得て、世界有数の稀覯本コレクション「清林文庫」の逸品をご紹介します。
まずメルカトルの『世界地図帳』。メルカトルといえばメルカトル図法で名高い16世紀最大の地図学者。彼の死の翌年(1595年)に出版された同書の扉には「アトラスまたは世界の創造と創造された(世界の)姿に関するコスモグラフィー」との長い副題が記され、球体を抱え持つアトラスが描かれていました。
アトラスといえばギリシア神話の天空を支える巨人の名が有名ですが、本書では、世界初の地球儀作成者とされるリビアの伝説の王の名に由来するものと考えられています。1606年には地図作成者ホンディウスの手で新図を加えて刊行された増補版が、メルカトル・ホンディウス版アトラスとして好評を博し、1640年までに30版を重ねて各国に広まりました。今でも地図帳がアトラスと呼ばれるのは、本書の扉が起源です。
「清林文庫」蔵の本書はメルカトル・ホンディウス版アトラスの一冊でラテン語阪。見開きの地図頁をご覧ください。左上にギリシア、右端に日本が描かれています。約400年前の作成とは思えない鮮やかな色合い。豊かな装飾性に魅せられます。
次はオルテリウスの『世界地図帳』。オルテリウスはメルカトルと同時代に活躍した地図作成者・出版者。メルカトルのアトラスに先立つ1570年に出版した『世界地図帳』は、世界最初の近代的地図帳とされ、1612年までに41版を数える大成功を収めました。
オルテリウスはメルカトルとも交流があり、ライバルが世界地図帳作成事業に取り組んでいるのを知って刺激され、先に完成させたと伝えられています。『世界の舞台』と題された地図帳には、日本列島が描かれた頁(写真)があります。時を経たものの重厚さが漂う表紙とともに、じっくりとご覧ください。
☆東畑建築事務所「清林文庫」
創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関しても国内外の書籍、原図など多数を収め、価値はきわめて高い。
近代化に突き進む明治の日本が取り組んだ大事業のひとつが学校教育でした。世界地図帳がその重要な教材になりました。今回掲載の2点の発行年は次の通りです。
『A NEW ATLAS帝国新地図』明治24年(1891)発行
『NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図』明治39年(1906)発行
それぞれの表紙に「ATLAS(アトラス)」の文字が見えます。メルカトルの『世界地図帳』の扉をアトラスの絵と文字が飾ったのが、世界地図帳をアトラスと呼ぶようになったはじまりと先述しました。流れはこうして明治の日本にも及んだわけです。
『A NEW ATLAS帝国新地図』は日本地図帳ですが、表紙は「JAPANESE EMPIRE」の英文字と地球がデザインされてユニバーサル志向。一方、近畿の頁の題名は「畿内全図」で、「畿内」は歴代皇居が置かれた大和・山城・河内・和泉・摂津の五カ国をさす古代以来の名称。新旧の日本が混然となった地図帳に、明治の子供は何を思ったでしょうか。
『NEW SCHOOL ATLAS普通教育世界地図』の「世界現勢図」と題した頁を見ると、今とは国の数も国名もかなり違うのがわかります。フランス、ドイツ、イギリスの版図(領土)が別枠で載っています。凡例に日本の航行路、日本の海底電線とあるのが、近代国家の仲間入りをようやく果たした日本が胸を張っているようで、明治末の世界を覆っていた空気を感じさせます。

前回に続き、昭和の伊能忠敬と呼ばれた神戸生まれの鳥観図絵師・井沢元晴が残した作品を、ご遺族の協力を得て紹介します。
「大阪府全図」は、(一)北摂、(二)大阪・堺、(三)泉南で構成された三部作。それぞれの部分図(写真)を掲載しました。南北に長く連なる野山の緑と海岸線の青が美しく、大阪城や古墳群などの史跡、野を貫く鉄道、大小の市街の風景に時の流れと人の営みを感じます。
スケールのゆたかさと精緻な筆致を兼ね備え、細部を覗き込んでも、引いて眺めても見ごたえたっぷり。鳥観図の醍醐味が集約された本作は、井沢元晴の代表作のひとつともいえる逸品です。今回掲載の図では、画面を両断して太く流れる淀川をダイナミックに描いた一枚が筆者のイチオシ。右端に大阪城と中之島の東部も見えます。
2020年は井沢元晴没後30年にあたります。渾身の大作「大阪府全図」が節目の年に、再び人の目に触れる機会を得たのは喜ばしいことです。今回は部分図のみの公開ですが、いつか作品の全貌が多くの方に知られる日が来るのを望みます。
☆鳥観図絵師・井沢元晴
井沢元晴は戦後から昭和末までの約40年間に、日本各地を訪ねて多くの鳥観図を描き、昭和の伊能忠敬とメディアで紹介されました。活動の前半期にあたる戦後の20年間は「郷土絵図」と呼ばれた鳥観図を作成。その多くは、子供たちに郷土の美しさを知ってもらいたいとの願いをこめて各地の学校に納められ、校舎に飾られました。学校のエリアは主に西日本です。「郷土絵図」の活動は60年代半ばまで継続し、新聞各紙にとりあげられました。
井沢元晴氏のご遺族は今、「郷土絵図」にまつわる思い出や絵の消息に関する情報をお持ちの方を探しておられます。当時の生徒さん、学校関係者など、このブログをご覧になって、少しでも心あたりがあるという方が、もしおられましたら、次のアドレスにメールをお送りいただければ幸甚です。小さな情報でもかまいません。よろしくお願いいたします。
足立恵美子(井沢元晴長女)emikobook@yahoo.co.jp

3刷の帯をアップしました。
残念ながら3年前の初版時のお店が閉店したところが数店ありました。実感としてはコロナ禍ではなく、後継者難が多かったです(あとがきでも書いていますが「いっとかなあかんかった店」になってしましました)。
で、新たに6軒を加えました。全店のデータもすべて更新しています。

平たい街だと思われがちな大阪ですが、実は高低差=デコボコ地形に溢れています。そこにはその場所の歴史はもちろんのこと、大阪という土地の誕生の物語まで刻み込まれています。
この本では、地形ブームの立役者とも言うべき『ブラタモリ』の「大阪編」「大坂城 真田丸スペシャル」に案内人として出演した著者が、大阪市内・府下を合わせて34のエリアをピックアップ。高低差のわかる地図とフィールドワークを行ったルート案内によって、誰でも地形さんぽを楽しむことができます。
大阪市内だけでなく、泉州・河内・北摂とさまざまなエリアを取り上げており、それぞれに違った個性を味わえるのも地形さんぽの魅力の一つ。あなたの住む町やゆかりのある町もきっとあるはず。この本を通して、今まで知らなかった町の新しい一面に出会えるはずです。
・プロフィール
新之介(しんのすけ)
大阪高低差学会代表。1965年大阪市生まれ。本名は新開優介。2007年よりブログ「十三のいま昔を歩こう」を運営し、2013年に大阪高低差学会を設立。地形と歴史に着目したフィールドワークを続けている。著書に『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩』『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩 広域編』『凹凸を楽しむ 阪神・淡路島「高低差」地形散歩』(いずれも洋泉社)。
2020年10月2日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
【今回の目次】
■古地図サロン(9/25)のレポート
●2020年秋~2021年初春の朝日カルチャーセンター中之島講座案内
●島民「水都」特集号
●出版予定
★古地図ギャラリー
①東畑建築事務所「清林文庫」の18世紀パリ鳥観図
②昭和の伊能忠敬・井沢元晴の鳥観図原画
開催日:9/25(金)午後3~5時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて
コロナ禍による中止を経て7月に復活した古地図サロン。今月も「密」を避けた会場レイアウトでの開催です。
明治~大正と続いた今年の展示。今回のメインテーマは昭和の古地図(前編)で、初期から中期の図を見ていただきました。昭和3年刊の「東海道パノラマ地図」は清水吉康による鳥観図(裏面が浮世絵師・菱川師宣の東海道分間絵図)は折本形式の装丁が、江戸期の道中絵図を思わせます。昭和初めの大阪城天守閣復興にちなんだ「大阪城旧之図」も鳥観図(原画は円山応挙)。
昭和4年の「大大阪市街全図」に見る大阪市中は今と地形が異なる場所がいっぱい。古い浪花の記憶の色濃い昭和前期の地図から戦後まもない1930年代の地図まで、市街地が劇的に改造され、地図の描き方も大きく変わっていったのがわかります。街が変われば、もちろん、そこに住む人の意識も変わってくるわけで、そのへんをいろいろと想像させてくれるのが古地図の楽しさです。
今回の展示で最も年代が新しい昭和45年当時の「大阪市施設交通案内図」なども、他の図と比較してはじめて、この時期に施設・交通が主役の地図が発行された背景が見えてきます。
来会者の中でお二人が、昭和の東区の詳細な市街図を持参してくださったのも、場を大いに盛り上げてくれました。東区は平成元年に南区と合併し、今の中央区になりました。中央区の誕生についても、来会者それぞれに思うところがあって、話題は尽きません。
都構想の住民投票が近いということで、関西テレビの報道記者が来会され、区の変遷について少しお話しました。明治以来およそ150年間かけて、大阪市は現在の24区制になりました。どの区も大きな時代の流れの中で生まれ、150年間のどこかの時点で、大阪の歴史をつくる役割を果たしてきました。区の名前ひとつとっても、それぞれに由来があります。歴史を抜きにした議論は成り立たないと思いますし、行政区画と経済の関係についても現状の議論に疑問を感じます。そんな中で実施される都構想の住民投票。私は大阪府民で投票権がないのですが、結果には大いに注目しています。
この日は、前回のレポートで紹介した天保14年の古地球儀のレプリカ(写真)も展示し、好評でした。ご提供いただいた所蔵者の飯塚修三氏に御礼申し上げます。
というわけで、次回のサロンも昭和の古地図(後編)をテーマに開催します。昭和の伊能忠敬と呼ばれた鳥観図絵師・井沢元晴(古地図ギャラリー参照)の残した作品もご紹介します。
皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。
・今回のサロン古地図
《原図》
「東海道パノラマ地図」作・清水吉康 昭和3年(1928)
「最新大大阪市街全図」昭和4年(1929)
「大大阪区勢地図・最新の北区」昭和13年(1938)
「最新大阪市街地図」昭和31年(1956)
「大阪市施設交通案内図」昭和45年頃(1970)
「大阪城旧之図」写・林基晴(筆・円山応挙)昭和6年(1931)
「大阪城旧之図」発行・福島豊次郎(筆・円山応挙)大正11年(1922)
「改正新版大阪市街新図 明治中期
《復刻》
「大阪市街新地図」大正13年(1924)
《特別展示》
天保14年の古地球儀(レプリカ)※西宮市いいづか眼科:飯塚修三氏所蔵
会場は大阪ガスビル1階カフェにて開催。私の30分トークは16:00時頃からです。テーマは「昭和の地図」。サロン参加は無料(ただしカフェで1オーダーが必要)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。年内は11/27(金)にも開催予定。新型コロナウィルスの状況によって中止になる場合は、この場で事前にお知らせいたします。
古地図とともに大阪の区をめぐる「古地図地名物語」の第2期講座(7~8月)終了。7月24日「北区」、8月28日「大淀区(現・北区)」、9月25日「福島区」がテーマでした。
『図典「摂津名所図会」を読む』『図典「大和名所図会」を読む』の出版記念講座「奈良から大阪へ、謎解き名所の旅」も10月5日(月)に終了しました。
2020年秋~2021年初春は、以下の2講座を予定しています。
(1)「大阪古地図むかし案内」町歩き講座
10月26日・11月9日午前10~12時、阿倍野の熊野街道をテーマに教室講座と街歩き・計2回
(2)「古地図地名物語」第3期講座
2021年1月22日(金)、2月26日(金)、3月26日(金)に実施します。テーマは上町台地西側の「西区」「浪速区」「西成区」です。
問い合わせ/06-6222-5222または朝日カルチャーセンター中之島で検索
●「島民」9月号・「水都」特集に寄稿7ページにわたって執筆。中之島はいかにして水都大阪の顔になったのか。大正~昭和の古地図を題材に1960年代にクローズアップされた新たな中之島イメージを紹介。
ナカノシマ大学での連続講座、大阪24区物語の書籍化に向けて、ようやく編集作業がはじまりました。諸事情によりお待たせしていましたが、来春には、140Bから刊行の予定です。
前回の古地図サロンに来訪された東畑建築事務所(大阪市中央区)を8~9月にかけて2度訪問しました。来訪時にお聞きした同事務所が所蔵する「清林文庫」を拝見。世界有数の稀覯本コレクションには、国内外の古地図も多数含まれています。所蔵品を収めた書架が並ぶ姿は圧巻。多くの方に、その一端を知っていただきたく、同事務所のご協力のもと、ささやかですが、このコーナーで公開のお手伝いをしたいと思います。
写真は「ブレッテ 1734年のパリ鳥観図」より、セーヌ川沿い市街の見開き図、シテ島に架かる橋ポン・ヌフ周辺の部分図。同書はパリ市街を区分した鳥観図をまとめて書籍化したもの。表紙写真の風格ある装丁が、時代を感じさせます。
18世紀は欧州各国で鳥観図が流行し、繁栄する大都市が格好の題材になりました。パリ全市街を網羅したブレッテの鳥瞰図集は、巨大な風景を細部まで見尽くす視覚の楽しみ追求の所産。作成にかけであろう膨大な労力が、時代の熱気の沸騰ぶりを物語ります。部分図でしかお見せできないのが残念。次回もコレクションの一部をご紹介したいと思います。
☆東畑建築事務所「清林文庫」
同事務所の創設者東畑謙三が蒐集した世界の芸術・文化に関する稀覯本、約15,000冊を所蔵。建築・美術工芸・絵画・彫刻・考古学・地誌など分野は幅広く、世界有数の稀覯本コレクションとして知られる。古地図に関してもメルカトル「世界地図帳」(ラテン語阪)をはじめ国内外の書籍、原図など多数を収め、その価値は高い。「清林文庫」のコレクションは、2020年10月24・25日開催の「生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪」で一部がオンライン公開される予定。
日本各地を歩きめぐり、郷土の風景と街の営みを目に焼きつけ、その成果を多くの鳥観図に実らせた絵師がいます。昭和の伊能忠敬と呼ばれた神戸生まれの鳥観図絵師・井沢元晴です。亡くなられて30年が経った今、残念ながら、その業績を知る人は少なくなりました。このブログが結んだ縁で、ご遺族から連絡をいただき、先日、残された貴重な原画を拝見する機会を得たのは幸運というしかありません。
以前、サロンで展示した「古京飛鳥」も、緑豊かな風土を歴史の彩りとともに味わい深く描いていたのが印象的でしたが、原画の迫力は別格でした。山々と河川の合間で育まれたそれぞれの郷土の美をありのままに伝えようとした強い意志が、どの原画にもあふれています。魅力の一端をブログ読者に知っていただくために、ご遺族の了解を得て、この場で一部を公開します。
今回は「ふたつの飛鳥と京阪奈」の原画の部分図3点(大阪・近つ飛鳥/古京飛鳥/京都・宇治・琵琶湖)をご覧いただきます。ふたつの飛鳥とは、近つ飛鳥、古京飛鳥をさし、円熟期の井沢元晴が好んで描いた題材でした。部分図からも、原画の広大なスケールを想像していただけることでしょう。次回もご期待ください。
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☆鳥観図絵師・井沢元晴
大正4年、神戸市生まれ。戦中の従軍で任務として鳥瞰図を作成。戦友のほとんどが戦死したなか、九死に一生を得て復員。生き残った者の務めを果たしたいとの思いから、郷土を描き、子供たちに夢を持たせる鳥観図絵師を志す。各地を自転車で旅した40年間に「わたしたちの郷土地図」と題して多くの鳥観図を描き、新聞、テレビなどで「昭和の伊能忠敬」として、たびたび紹介された。原爆投下直後の爆心地を描いた画集を昭和45年に広島平和記念館に寄贈。飛鳥、吉備路、平泉など歴史の地を訪ねた鳥観図では、独自の境地を開拓するなど評価は高まり、昭和51年には吉川英治賞の候補にも挙げられた。平成2年永眠。
2020年7月31日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
【今回の目次】
■古地図サロン(7/17)のレポート
●2020年7月|文学・歴史ウォーク「東住吉区の下高野街道」レポート
●2020年7月|朝日カルチャーセンター中之島「古地図地名物語・北区」講座・レポート
●2020年秋の朝日カルチャーセンター中之島での講座の予定
●「島民」9月号・特集に寄稿
●その他(出版関連・ラジオ番組出演・天保の地球儀など)
開催日:7/17(金)午後3~5時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて
皆さま、お元気でいらっしゃいますか。5月のサロンがコロナ禍で中止となり、6月の緊急事態宣言解除を経て、今回は4カ月ぶりの開催となりました。コロナ以前とは会場のセッティングも変わり、「密」を避けた分散仕様。そのぶんスペースは広め。飲食は別席で済ませたうえで参加、という対応になりました。
いったい、どのくらいの来会があるのかな、と思って会場入りすると、すでに初参加の方が2名、開場待ちをしておられました。「島民の案内を見て来ました」とのこと。案内が載ったのは3月号なので、よく7月まで覚えていてくださいました。その後もぼつぼつと来会があり、2時間のサロンの間に10人ほどがお見えになりました。半分以上が新規の来会です。
今回の展示は大正時代の地図がテーマです。前回と前々回でとりあげた明治の地図と比べると、装丁も描き方も江戸時代的な絵図の要素が影をひそめ、近代測量が標準になって、現在の地図に近くなっています。一部の遊覧地図に絵図的な表現が残っていますが、描く対象が鉄道や海水浴場など新しい風景になっています。そんな中で、「大大阪明細地図」は、大正14年(1925)に人口・面積全国一になった大大阪誕生の瞬間をとらえたグラフ入り地図として異色。それまでの大阪が、江戸時代の大坂三郷を受け継いだ小さな大阪市だったのを思うと、大正時代のこの飛躍が物語る意味は限りなく大きい……というような話を私からはいたしました。
この数回、続けてきた明治時代の地図「改正新版大阪市街新図」の発行年判定は、この日も来会者から新情報がもたらされ、図の内容は明治22年頃のものではないかと推定されるところまで、こぎつけました。当初は明治初年の内容ではないかと言っていたので、明治中期に修正されたのは、大きな違いです。ぱっと見た感じは、実に大らかというか、描き方に素朴さがあり、明治のごく初期の地図の雰囲気に見えたのですが、結論は意外な方向にたどり着こうとしています。サロンの参加者からは、「自分で調べると、いろいろ発見があって面白い」という声も。発行年不明の地図1枚で、ずいぶん楽しめるものです。
さて、今回はサロン初参加で東畑建築事務所の方々がお見えになりました。世界有数の稀覯本コレクション「清林文庫」を所蔵され、その中に非常に貴重な地図資料があるとのこと。ご厚意により、後日閲覧させていただくことになりました。楽しみです。
サロンが結んでくれたご縁の話題がもう一つ。先日、江戸時代の貴重な古地球儀を拝見する機会がありました。そちらの話題は、このレポートの最後の最後に写真付で触れています。ぜひ、ご覧ください。
というわけで、皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。
・今回のサロン古地図
《原図》
「改正新版大阪市街新図」明治中期
「大阪市街全図」大正11年(1922)
「大大阪明細地図」大正14年(1925)
《復刻》
「近畿名勝遊覧・最新大阪市街地図」大正9年(1920)
「大阪市街新地図」大正13年(1924)
「大阪市パノラマ地図」大正13年(1924)
他に資料として、『古地図研究』312号(日本古地図学会・2004年5月発行)
会場は大阪ガスビル1階カフェにて開催。私の30分トークは16:00時頃からです。テーマは「昭和の地図」。サロン参加は無料(ただしカフェで1オーダーが必要)。途中参加・退出OK。必ずマスク着用のこと。年内は11/27(金)にも開催予定。
※新型コロナウィルスの状況によって中止になる場合は、この場で事前にお知らせいたします
●7/5 文学・歴史ウォーク複数の旧街道が交差する東住吉区界隈を歩きながら解説しました。JR阪和線・美章園駅集合。行基ゆかりの榎神社、聖徳太子の伝承が残る股ケ池明神、平重盛創建の法楽寺、他に山坂神社、桑津天神など訪問。『平家物語』前半の主要人物・平重盛と境内に残る諫鼓鳥の逸話は、時間を割いて現地で紹介しました。樹齢800年の楠大明神もも見ごたえがありました。
●2020年秋の朝日カルチャーセンター中之島・古地図講座以下の2講座を予定しています。
(1)10/5(月)13:00~14:30 『図典「摂津名所図会」を読む』『図典「大和名所図会」を読む』出版記念講座
(2)10/26(月)・11/9(月)10:00~12:00 阿倍野の熊野街道をテーマに教室講座と街歩き・計2回
問い合わせ/06-6222-5222または朝日カルチャーセンター中之島で検索
中之島はいかにして水都大阪の顔になったのかを探る特集号です。大正から昭和の古地図を題材に、7頁まるごと執筆しました。中之島が水都のシンボルになったのはいつ頃か? さて? 「島民」9月号は9月1日発行。
●その他(出版関連)★『図典「摂津名所図会」を読む』(創元社)が6月中旬刊行されました。副題は「大阪名所むかし案内」。江戸時代の観光案内『摂津名所図会』の図版340点余を掲載し、説明文を添えた決定版。
★ナカノシマ大学での連続講座、大阪24区物語は140Bから書籍化される予定です。140Bからは『鳥観図!』に続いてのナカノシマ大学からの書籍化。題名、発行予定日等は未定。
★毎日放送ラジオ「ありがとう浜村淳です」(7月9日)にゲスト出演。『図典「摂津名所図会」を読む』にまつわる話をしました。
浜村淳さんは歴史にもくわしく、有名名所はもちろん、知る人ぞ知る歴史の跡の話題もいくつか話ができてよかったです。
★天保年間作成の貴重な古地球儀を拝見してきました。「島民」の古地図サロン紹介記事が縁で、古地球儀の持ち主の飯塚修三さんと知り合い、7月初旬に拝見の機会を得ました。各地の博物館に出展され、日本で22番目に古いと公認された逸品です。
飯塚さんは古文書、医学史、和算、天文、古地図など多方面に通じた研究家。古地球儀は箱入りのまま回転させて見る独特の造りで、粘土製の風合いといい、筆描きの色合いといい、見た目がたいへんチャーミング。江戸時代の人々も楽しく未知の世界の想像をふくらませたことでしょう。
掲載写真の古地球儀は[西宮・いいづか眼科 飯塚修三氏所蔵]
2020年5月12日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
【今回の目次】
■新・古地図サロン(5月22日)中止のお知らせ
●その他の情報まとめてお知らせ
5月22日(金)開催予定の古地図サロンは、新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止いたします。なお、2020年後半は以下の日程にて開催を予定しています。もし、コロナウィルス等の状況によって中止・延期などの変更がある場合は、事前にお知らせいたします。
7月17日(金)午後3~5時(4時から私の30分トークあり)
9月25日(金)午後3~5時(同上)
11月27日(金)午後3~5時(同上)
いずれも午後3~5時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。
★サロン参加は予約不要・無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)
★途中参加・退出OK
★サロンの内容については古地図サロン・レポート1~19をご覧ください
●文学・歴史ウォーク「東住吉区の旧街道を歩く」講演と街歩き
7月5日(日)午前10時~3時頃
問い合わせ/文学・歴史ウォーク事務局 080-5333-5783(担当・井尻)
●朝日カルチャー中之島教室
古地図地名物語「北区・大淀区・福島区」の3回講座
7月24日・8月28日・9月25日の午前10~11時30分
※朝日カルチャーは5月休講。6月より再開予定。
問い合わせ/06-6222-5222 または朝日カルチャーセンター中之島で検索
●『図典・大和名所図会を読む』の書評
新刊『図典・大和名所図会を読む』(創元社)が、朝日新聞(文化欄)、サンデー毎日(今こそ読みたい欄)、奈良リビング(書評欄)で紹介されました。 同署の姉妹編『図典・摂津名所図会を読む』(創元社)は6月中旬刊行予定です。
●24区の本も……
2019年のナカノシマ大学での連続講座「大阪24区物語」の書籍化は、諸事情により滞っていましたが、次回更新の頃には新情報をお届けできると思います。それまで写真の御堂筋地図でお楽しみください。これは昭和何年頃の地図でしょう? 戦前、戦後どちらでしょうか?
2020年3月27日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
【今回の目次】
■新・古地図サロン(3/27)のレポートとサロンの今後
●2020年1~3月|朝日カルチャーセンター中之島「新・古地図地名物語」講座・レポート
●2020年4月以降の朝日カルチャーセンター中之島古地図講座について
●2020年3/14|住まいのミュージアム「災害古地図に学ぶもの」講座・中止
●その他(出版関連)
開催日:3/27(金)午後3~5時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて
皆さま、お元気でいらっしゃいますか。3月のサロンはいつもどおり開催されました。新型コロナウィルスの影響でイベントの中止があいつぐ中、1時間短縮での実施です。すでに「島民」誌や読売新聞に案内が掲載されていて、来会者がいる可能性がある以上、中止は考えていませんでした。結果、リピーター及び新規の来会と合わせて、いつもと同じ10人ほどの参加者があったのは、外出自粛の声が日増しに大きくなる3月下旬時点で「どうなのか」との批判が出るかもしれませんが、今回に限っては中止しなくてよかったと思っています。
ただ、このレポートを書いている4月12日時点で、事態は形容できないほどの深刻な局面に突入しています。次回は5月22日(金)3時からの開催を予定していますが、それまでに事態が収束に向かう見込みは薄いでしょう。中止の場合は、予定日の一週間前には、この場でお知らせいたします。これまでの来会の方々とは他に連絡の手段がないのが心苦しく、開催の可能性が低くても、現時点では結論を保留といたします。
さて、気をとりなおして、3月27日のご報告です。この日のサロンは前回のテーマ「明治期の大阪の古地図」の後編となりました。明治20年以降の地図をいくつか広げて、見ていただきました。地図でありながら当時の名所の絵をふんだんに描いた明治25年(1892)発行の「大阪市明細全図・名所細密挿画付」が目立っていましたが、みなさんが長い時間見入っていたのは、明治43年(1910)の「実地踏測大阪市街全図」のほうでした。
市街の描き込み方が細かく、情報量が多いぶん、現在との違いがいろいろと見えてきて面白いのでしょう。私からの話は、天王寺で開かれた内国勧業博覧会の地図2点を中心にいたしました。この2点は今回が初公開です。
前回の宿題だった「改正新版大阪市街新図」の発行年判定については、次回以後に持ち越ししました。今回の時点では、どうも当初予想していたより後の年代に作成されたものらしい、というところまでわかりました。宿題を残しているので、もし次回が中止になったとしても、きっと復活いたします。というわけで、皆さまとまたサロンでお会いできるのを楽しみにしております。
今回のサロン古地図
《原図》
「改良大阪明細全図」明治20年(1887)
「大阪市明細全図・各名所細密挿画付」明治25年(1892)
「大阪市新地図・第五回勧業博覧会開設地」明治35年(1902)
「第五回内国勧業博覧会場明細図」明治36年(1903)
「実地踏測大阪市街全図」明治43年(1910)
★「改正新版大阪市街新図」明治初期
他に復刻版古地図約10点
※2020年後半も奇数月の第4金曜(7月のみ第3金曜)開催の予定ですが、新型コロナウィルスの状況によって中止になる場合は、この場で事前にお知らせいたします
古地図とともに大阪の区をめぐる新シリーズの第1期は、月1回計3回の講座が終了しました。テーマは「江戸時代の大坂三郷」「東区」「南区」。最終回の「南区」は3月27日に実施。今は中央区の一部になった南区の生い立ちを昭和初期の南区図をテキストに振り返りました。
もっとも面積の小さな南区が大阪ナンバー1の商業地域に成長していく経緯は、同じく中央区を形成する東区が近代大阪誕生の牽引車だった足跡とは、大きく色合いが異なります。区の単位で見ることで、大阪の歴史を動かしてきた主役が時代ごとに交代してきたのがわかります。区が市の歴史をつくってきたのです。
以下の2講座を予定しています。
(1)4月27日・5月11日の午前、阿倍野の熊野街道をテーマに教室講座と街歩き・計2回
(2)7月24日・8月28日・9月25日の午前、古地図地名物語「北区・大淀区・福島区」の教室講座・計3回
ただし、現時点でコロナ・ウィルス対策のため朝日カルチャーは4月第2週または第3週まで休講。上記の講座に参加を希望される方は、開催か中止かを事前にご確認ください。
問い合わせ/06-6222-5222または朝日カルチャーセンター中之島で検索
●2020年3月14日住まいのミュージアム
残念ながら、この講座は中止になりました。このテーマに関心をお持ちの方は、ぜひ『古地図が語る大災害』(創元社)をお読みください。
★『図典・大和名所図会を読む』(創元社)が刊行されました。副題は「奈良名所むかし案内」。江戸時代の観光案内『大和名所図会』の全図版180点余を掲載し、説明文を添えました。奈良の鹿は江戸時代にも鹿せんべいを食べたか、貝原益軒が訪ねた岩飛びの名所とはいったいどこか等々。詳しくは本書をご覧ください。なお、本書の紹介記事が5月初めの朝日新聞(文化面)に掲載される予定です。
★姉妹編の『図典・摂津名所図会を読む』(創元社)は6月20日刊行の予定です。副題は「大阪名所むかし案内」。『摂津名所図会』の全図版300数十点を説明文付で掲載しました。
★ナカノシマ大学での連続講座、大阪24区物語の書籍化についての新情報は、もうしばらくお待ちください。それまで、22区時代の大阪市全図をお楽しみください。
2020年1月24日・本渡章より、これをお読みのみなさまへ。
【今回の目次】
■新・古地図サロン(1/24)のレポートと次回予告
●2019年12/14|船場大阪を語る会「大坂三郷から大阪24区まで」講演・レポート
●2020年1/15|ナカノシマ大学「古地図で謎解き・なにわ七不思議」講座・レポート
●2020年1~3月|朝日カルチャーセンター中之島「新・古地図地名物語」講座・進行中
●2020年3/14|住まいのミュージアム「災害古地図に学ぶもの」講座・予告編
●その他(出版関連)
■新・古地図サロンのレポート
開催日:1/24(金)午後3~6時 大阪ガスビル1階カフェ「feufeu」にて。
早いもので古地図サロンも3年目に入りました。2020年もよろしくお願いします。本年最初のサロンは真冬にしては温かな午後、いつものカフェにて、いつもの調子で始まりました。窓の外はコートなしで歩く人の姿が目立つ御堂筋です。
まずは1時間ほど、古地図を囲みながらの雑談。今回展示したのは主に明治前期の大阪市街図です。現代の地図とちがって、江戸期・木版地図のノスタルジーが濃厚に漂います。近代化を映す市街図と絵図的な描写のミックス加減が、なんともいえません。地名表記がまちまちなのは、おおらかさの表れ。江戸時代そのままの表現もあちこちに残って、細かいことは気にしないのが、この頃の地図の面白さです。原図と復刻版が内容が全く同じであるのにかかわらず、まるで別の市街図に見える例(下記◎印)もあり、気づいてから驚いた人が多かったのも愉快でした。
さて、今日のメインテーマは前回の予告どおり、発行年不明の明治初期の大阪市街図(下記★印)について、いったい何年頃の作成なのか、みんなで考えてみようというものでした。ポイントは年代判定の目印になるものを見つけること。地図に載っている鉄道の駅や路線、有名施設などが何年にできたかを探っていけば、おのずと解答が出ます。検討の結果、今日のところ、問題の地図は明治12年以後の発行であるのがわかりました。次回はたぶん結論が出るでしょう。くわしい話はその時に。
本日初参加の方が持参された東区(現・中央区)の地図(昭和62年発行)にも、みなさんの注目が集まりました。小さな本になった地図で、各ページに住宅地図並みの細かい情報がびっしり載っていたのが驚きです。平成元年に消滅した東区の最後の姿を詳細に伝える貴重な地図でした。よく大事に持ち続けておられたと思います。
というわけで、またお会いいたしましょう。次回以後の日程は下記をご覧ください。
今回のサロン古地図
《原図》
★改正新版大阪市街新図 明治初期
◎最新大阪市中細見全図 明治14年(1881)
・改良大阪明細全図 明治20年(1887)
《複写》
・市郡境界朱引略絵図 明治6年(1873)
《復刻》
◎最新大阪市中細見全図 明治14年(1881)
・文久三年大坂大絵図 文久三年(1863)
《資料》
・天保期の大坂三郷(『新修大阪市史』付録)
他に復刻版古地図約10点。
★次回は3/27(金)午後3~6時 会場は大阪ガスビル1階カフェにて開催。私の30分トークは午後4時頃からです。テーマは「明治の大阪地図(後編)」を予定しています。
サロン参加は無料(但し、カフェで1オーダーして下さい)。途中参加・退出OK。
★2020年も奇数月の第4金曜(7月のみ第3金曜)に開催します。
【最近の主な古地図活動】
●2019年12/14の船場大阪を語る会「大坂三郷から大阪24区まで」講演・レポート
今のような大阪の24区はどうやってできたのか。そのルーツをたどると明治12年誕生の東・西・南・北の4区にたどりつきます。その原型は明治初期の4大組で、さらにルーツをたどると江戸時代の大坂三郷、豊臣秀吉の大坂城下町にあった上町と船場にまでさかのぼれます。明治以後、最初の4区が13区、15区、22区、26区にまで増え、最終的に24区になったのも、それぞれの時代背景に基づく必然性がありました……というような主旨で江戸時代から明治~大正~昭和の地図を見ていただきながらお話ししました。1時30分~4時まで、たっぷり時間がありましたが、それでも全部の区には触れるのは無理で、今日のところは区の物語のあら筋を聞いていただきました。またどこかで、続きをお伝えできればと思います。
●1/15のナカノシマ大学「古地図で謎解き・なにわ七不思議」講座・レポート
ナカノシマ大学ではこれまで何度も講座をいたしましたが、今回がいちばんくだけた内容になりました。地図の中にしかない幻の区、変名(?)で載った名橋、いくつもある梅田、七不思議の木など、古地図に描かれた「何これ?」と言いたくなる七つの謎をとりあげ、あれこれ推理を楽しみながら解答を探してみました。今回初めて私の講座に参加された方も多かったようです。古地図に興味を持っていただく方が増えるのは、うれしいことです。参加者に記念品として進呈された大正14年の電車路線を描いた古地図クリアファイルが美しい出来栄えで、よかったです。私も早速、使っています。
●2020年1~3月の朝日カルチャーセンター中之島「新・古地図地名物語」講座・進行中
大阪24区をひとつずつ順番にめぐっていく古地図地名物語の新シリーズがスタートしました。1月講座は終了しましたが、2~3月(テーマは東区・南区)の参加申し込みは今からでも可能です。
2/28(金)午前10時30分~12時 東区(現中央区)
3/27(金)午前10時30分~12時 南区(現中央区)
お問い合わせは☎06-6222-5222 または朝日カルチャーセンター中之島で検索を。
●2020年3/14の住まいのミュージアム「災害古地図に学ぶもの」講座・予告編
大阪メトロ天六駅にある住まいのミュージアム(暮らしの今昔館)にて開催の「住まいの大阪学」連続講座の第3回に登場します。古地図に描かれた大阪の災害をテーマに、災害と向かい合ってきた人々の知恵を読み取っていきます。参加無料。要予約。
3/14(土)午後2~3時半 「災害古地図に学ぶもの」。
お問い合わせは、
住まいのミュージアム(暮らしの今昔館)
☎06-6242-1160
「住まいの大阪学」参加申し込みはhttps://www.sumai-machi-net.com/
●その他(出版関連)
☆『図説・大和名所図会を読む』(創元社)2/20刊行予定。
本書の旧版にあたる『奈良名所むかし案内』(創元社・2007年刊)が品切れのため、一時は古書店で正価の8倍の値段がつき、読者に復刊が待たれていました。本書は、その旧版を大幅に増補・改訂し、版型も大きくなって見開き図版の迫力がアップ。江戸時代の名所絵を読み解きを楽しみつつ古都の歴史と風俗に触れられる決定版です。「大和名所図会」の全図版(180余点)掲載。価格3800円。
☆姉妹編の『図説・摂津名所図会を読む』も数カ月後に刊行の予定です。
「スモスモスモスモスモスモス~モ♬」の歌でおなじみの、住宅情報のSUUMOのウエブマガジン『SUUMOジャーナル』で『まんが 墓活』が紹介されました!!

『SUUMOジャーナル』(https://suumo.jp/journal/)と検索していただいたら、トップ画面にデカデカとこのイラストが載っています。
散骨や樹木葬、墓じまいなど、個人のライフスタイルに合わせて多様化する墓事情は、いわば住宅と一緒。著者の井上ミノルさんは「どうしようと思ったら、まずは家族でいろんなお墓を見ることが大事。見てくうちに”これは違うな・・・”とか、”案外これもありかも”とか、わかってきますよ」とのことで、まさに、住宅展示場をあれこれ見て決める家選びと似ていることに気付かされます。ぜひ、ご一読くださませ。
只今、掲載記念に下記のURLから『まんが 墓活』をご注文いただきますと、送料がなんと無料に! 期間限定のお得なチャンスをお見逃しなく♪
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