3月18日
大阪 堂島 パウゼ(18日、20日)

 近所の喫茶店の昼ごはんの話。
 喫茶店のスパゲティやオムライスはその店の特徴をよく表している。
 とくにイタリアンとかナポリタンとかの冠を冠せられたスパゲティは、イタリア料理店のそれとはまったく違う。スパゲティ≠パスタである。
 洋食屋を含めケチャップ味のイタリアンやナポリタンあるいはミートスパは、なかなかうまいものがあるが、それは日本の日常の食事メニューとしてかろうじて残っている、という感じなのかどうなのか。
 家でもウインナーソーセージを立て切りにしてピーマン、玉ネギと炒めたものをパスタに混ぜてさらにケチャップやらトマトピュレーやらを味を見ながら炊めて完成。
 緑の丸箱のクラフトの粉チーズとタバスコで食べる、というのをよくする。ワインではなくてビールやなこれは。

 しかし、うちの会社のすぐ前の喫茶店「パウゼ」のメニュー「〈スパゲティー各種〉750円 ミート・イタリアン・アサリトマト」のイタリアンは、ひたすら「イタリアン」すなわちイタリア料理店のトマトのパスタに近い。タバスコも合わないしね。
 酸っぱいトマトソースに細く切った鷹の爪、乾燥バジル、粉チーズがうまく合っている。感覚的には「限りなくイタリアンに近いスパゲティ」という感じで、そのセンスが好きだ。
 この店は喫茶店なのにトルコライスが名物で、ミンチカツやヘレカツ、サーモンフライなどなどのトルコライスバージョンがある。
 そういう喫茶店の「イタリアン」。月に1回食べている。
 家でアリオエオリオとかボンゴレとか真剣にしていたのが(笑)、ここ数年先ほど書いたスパゲティをつくることの回数が多くなっているのに気がつくのと同様に、イタリア料理屋に行くのより、この店の「イタリアン」を食べている回数の方が多い。

記事一覧
江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅