11月20日
大阪 生野 西光園

 焼肉・ホルモンの『西光園(本店)』は「さいこうえん」と読む。東大阪や大東にある同名の「せいこうえん」は、創業者の妹さんが開いて、店舗を増やしていった。
 この日は焼肉ともかく、2代目の女主人の韓富江さんの「つゆだく豚キムチポッカ」を食べに、JR環状線桃谷からとぼとぼ歩いて鶴橋中学校そばの『西光園』まで食べに行った。富江さんの弟の韓哲秀さん日く、「亡き母の味を姉が見事に受け継いでいる」という済州島出身者の人々の家庭料理だ。皮付きの豚肉が入っていて、それをアテに飲んで、つゆだくスープは白メシにかけて食べると、茶碗二杯は軽くイケる。
 このあたりは生野区でも一番コリアン色の強いところで、哲秀さんが小学校3〜4年の1978年頃までは「チョゴリが普通に着られていた」そうだ。
 その後、この界隈の焼肉ホルモン店がグルメガイドに載ったり、ヨン様韓流ブームがあったりしてコリアンタウン化された御幸森商店街に観光客が来るようになった。
 仁徳時代にさかのぼる猪飼野の「つるのはし」以降1700年。富江さんは「生野に来たら皆、韓国人や」とぽいぽいと抜群のカルビやきっちり掃除したテッチャンをタレ皿に入れてくれる。腹がハチ割れそうでもう動かれへん。
 しかし、だれが、在特会やネトウヨのヘイトスピーチを予想しただろう。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅