2月8日
東大阪 布施風月

 東大阪のお好み焼きをよく知る編集者に『布施風月』のことを聞いて食べに行く。大阪天満発祥の『風月』は、餃子の王将のように何系統かに分かれてチェーン店化しているのが多い。
 お好み焼きは基本的におばちゃんとおっちゃんが 家族でやってる店のほうがおいしい確率が高いと思っている。フードパークや駅前ビルのテナントの店で、制服を着さされたアルバイトが焼くモダン焼きよりも、「家店」のお好み焼き店のモダン焼きの方がなんだかモダン焼きらしいと思う。
 ところで近鉄布施駅から次の河内永和駅まで延びるガード下の商店街にある『布施風月』は、店主ご夫婦でやられている店で、風月創業の一族のやり方でやってきた正統風月のお好み焼きを引き継いでいる。この店の伝統は客席で大将がはじめから最後まで焼いてくれるスタイルだ。奥の鉄板で焼いたのをちりとりで移動させると、それだけでお好み焼きの表面温度が低くなり「お好み焼きが死ぬ」ということだ。
 なによりも量も質も「キャベツ命」だとばかり、生地が極力少ないサクサクしたお好み焼きは「コナもん」と呼ぶのが間違っているような食感。しかしここのお好み焼き、この食感、軽さ、食べ応え…、自分が食べていたのと断然違う「さすが風月」の美味さで、これはカラダが憶えている。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅