2月22日
神戸 元町 太田屋

 帰国から初めての日曜日。食のキューバ危機がまだ続いていて焼肉を食べたくなった。
 所謂「焼肉体質」は30代の後半ぐらいからまったく変わってしまっていて、ここ10年ぐらいはてっちりなどの鍋のようにみんなで行ったりする場合は別としてあまり行かなくなった。前回、焼肉を食べたのは多分、岸和田のだんじり祭の寄合の帰りに行ったきりなので、もう半年は焼肉屋には行っていない。
 この『太田屋』はとても良い肉を、とくに赤身をヒレ、イチボ、ラムシン、ヒウチ…といった部位に別けて出す。前述の焼肉体質が抜けてからはそういうネーミングには全然興味を持てなくなって、ロースかカルビかハラミぐらいしか言わなくなった。「生」からいって「塩」、「タレ」という食べ方もしなくなった(そうか、もう生ギモは食べられへんのか)。
 2人でご飯とスープのついたランチセットの焼肉定食と上カルビ定食を1人前ずつ。さすがにええ肉が出てくる。それにてっちゃんを1人前。ビール1本、酒1合で満腹。そして家に帰って昼寝。
 日曜の幸福きわまりないランチ。日本は食に恵まれている。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅