11月5日
神戸 元町 グリルミヤコ

 3日の祝日「文化の日」から引き続きええ天気なので、自転車に乗りまくっている。
 この日は午前中にひとつ仕事を終え、大阪の事務所に出ようとして元町駅に行って自転車を止めていることを思い出した。11時過ぎたところ。まだ昼食に早いが、平日の元町あたり、それも西へ栄町やら乙仲通あたりをうろうろしていると『グリルミヤコ』のドアが開いていた。
 ええ天気やからドア開けてるんやなあ、と思って前を通ると店主と目が合った。「まいど」と言うのと、よっしゃ『ミヤコ』で食うたれ、の決定が同時。自転車を止めて店に入る。
 客はまだいない。シェフであり店主がいるカウンター前に座る。「カニのマカロニグラタン。これ食べな損や。コウさん、これうまいで」と言う。食べな損、て、このシェフは相変わらずオモロすぎる。「ほなもらうわ」と注文。
 それから但馬の香美町とのタイアップで、3日まで直送ズワイガニを使った「カニ洋食フェスタ」をやってて、まだグラタンだけできること。香美町の紅ズワイガニ漁は小さな規模なので、9月解禁から捕り始めるとすぐにやめるから、漁獲高が少ないこと。などなどを後付けで聞かされる。

 初めに出されたサラダを食べて、焼けるまでしばし待つ。出たあ。これはすごい。
 お、という感じの良いデザインのフィッシュスプーンで食べる。
 なんちゅう量のカニ身。昼やし白ワインは我慢我慢。
 途中で「やっぱりマカロニグラタンはタバスコやで。これはアメリカンでいかな」みたいな会話を挟んでどばっーとかけて、お、味変わるやん。一気食い。
 「やっぱり街はうろつくもんやなあ」
 「そうそう。そやないと損する。ことしは香美町のキャンペーンやったから格安。来年は5000円やなあ」と店主。
 「ホンマや得した。これ1000円は安いわ。また来くるわ。ごっつおさん」
 こんなふうに、毎日昼を過ごせたら、しあわせに近い(なぜか「花のように鳥のように」@桂銀淑風)。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅