7月28日
新世界 だるま

 串カツみたいなもんはわざわざ他所へ食べに行くもんちゃう、帰りに駅前とか近所の商店街とかで食べたらええ、そんなもんや。
 というのがだんだん出来なくなっているのは、件の地下鉄梅田駅『松葉』とぶらり横丁の『七福神』の代執行が物語っている。
 理由はどうあれ、うどん屋お好み焼き屋もしかりだが、街の店がどんどんのっべり東京的グローバリゼーション的にチェーン店、テナント化してきた。それら飲食店やパチンコ店にプラック企業的なものが多いのを知ってるが、なんかなあ、橋下大阪市政がバックでつながっているみたいな気がする。
 新世界に行って考えたことはそんなことだ。
 入口のフェスティバルゲート跡地がマルハンとドンキホーテになっている新世界は、今や大方の店が串カツ屋で、4軒並んでいる通りもあり、まるで串かつテーマパークだが、やはり串カツ屋という業態なのだろう、『だるま』の若いヤンキーなスタッフを見ると、串カツ屋というのはこういう店の形態で接客はこうせなあかん、というおっさん的完全理解がある。そこがさすがエエ店やと思うし、行列もわかるわかる。

 一人で「カツ(牛のこと。念のため)3、シシトウ、キス、ハモ(オレはハモは嫌いだが串カツに限り食う)、しそニンニク」と注文してビールで流し込んで「やっばりイケる」と激しく思った。『だるま』は新世界やったら安いし(ここらもよう出来てる)。
 帰りにふと「居酒屋選手権」で観た、「夢は一人で見るもんじゃない、みんなで見るものなんだ! 人は夢を持つから熱く! 熱く生きれるんだ!」「今の自分は嫌だ!みんなから愛される店長になりたい!」を思い出すのだったが、串カツ屋はやはり大阪のもんであり、そこらの飲食・外食産業とは一線を画している。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅