2月14日
大阪 堂島 アマルール

 バスク料理というのはどういう料理なのか、しっかり分かっていないが、オフィスのあるビルを出てすぐの『アマルール』は、開店以来よく行っている。
 昼のランチ1080円はとりわけよく行く。この日は、カスティージャ風にんにくのスープに鴨ミンチ肉とじゃがいものグラタン。スペインのニンニクのスープは「アホ」とかファンキーに言うていて、よその店でもよく注文する。
 この店のは「チキンラーメンのスープ|みたいな味(良い意味で)がしてうまいと思う。グラタンはストーヴの小さな鍋で出てくる。最後まで熱いまま食べられておいしい。
 チキンラーメンではないが、仏伊西料理店で料理にコショウをかけることが多い。わたしは辛い香辛料にあまり強い体質ではないが、コショウはよくかけたくなる。コショウ下さい、といって奥から調理用の背の高いミルが出てきたりして、店に対して失礼かと思ったりもするが、タパスコありませんか? などとも言ったりすることがある。

 以前アラン・デュカスと『ル・コントワール・ド・ブノワ』で何回か食事をする機会があって、そのときにかれがよく料理にコショウをかけていた。自分の店の自分のレシピのはずなのに、ごりごりとミルを回してコショウをかけるのだ。
 わたしは「そうか、そういうことやったんや」と何だかうれしく、感激してしまったのだが、アラン・デュカスエンタープライズ日本代表のルノーさんは「ラーメンを見たら何でもコショウをかける日本人みたいですね」と笑っていた(苦笑だったのか)。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅