8月23日
神戸 元町 林記厨房

 神戸の街なかにいておもしろいのは、来日したての外国人が食べもの屋をしているのに出会うことだ。ベトナム難民がやっているフォーが絶品のベトナム料理店があったりする。
 やはり多いのは中国人や韓国人で、元スナックの店をそのまま居抜きで使い、本場山東水酸子店にしました、みたいな店が多い。
 今回発見したのは元町駅山側の『林記厨房』。外にメニュー写真の拡大出力紙を何枚も出し、サービスランチメニュー酢豚セット780円みたいな表記も「来日したてです」と言っているようで丸わかりだ。
 日曜の昼過ぎに狙いすましたように入る。「いらしゃいませ〜」と若い女性のたどたどしい日本語。カウンターに座ると天板を外せばコンロになる仕様で、これは元鍋料理の店かなんかだとわかる。

 別メニューにでかでかとワンコインセット「飲み物1杯と料理1皿で500円」とある。その料理は蒸し鶏、鮫子、焼豚、春巻き、豚耳和え、くらげ、ミニ妙飯…。枝豆もあってそれはメニューの上に貼り紙して書いている。うーん、日本人好きな枝豆もアルヨ、的でおもろいおもろい。
 そら本場流やろ、とくらげを注文。それからピータンを頼んで生ビール。メニューを開けると最初にコースメニュー1750円などとあり、次ページから一品料理。
 お、酢豚が2種類ある。迷わず「特製黒酢の酢豚の小550円」を注文。出てきた酢豚は野菜があれへん。ピーマンやレンコン、タマネギなどがきれいに盛られた写真と全然違って豚肉のみ。これは気を利かせてくれたのだろうか、んなことないなあ、と「??」状態。 ただし料理の味はうまい。アツアツを食べると思わずエホッとむせるキツい黒酢。申し分なし。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅