4月11日
大阪 福島 ミチノ・ル・トゥールビヨン

 昼に一人でフレンチレストランに行って食べることができるのは、土曜日しかない。
 仏料理はワインを飲まんと食うたうちに入らないので、飲めない仕事のある平日の昼はふさわしくない。日曜日の昼もカップルとか子ども連れとかが多くて、そういうとこでは一人で飲み食いしたくないからやはり土曜日となる。
 この日の土曜は、午前中にグランフロント大阪で仕事があって、そこからてくてく歩いて福島6丁目まで行った。このごろフランス料理、とりわけレストランには謹慎状態というか足が遠のいているのだが、この店だけは別。
 理由は急に食べたくなるからだ。それは何の前触れもなくいきなりやってくる。ワイン依存症アル中のように、そうなると居てもたってもいられない。何週間も前にスケジュール調整をして予約をして…、というのではないから余計にそうなる。
 料理についてはメートルの原くんが必ず説明してくれるのだが、「へえ〜」とか「すごいな」とか答えるだけで、まったく何も聞いていない。が、クミンの使い方、ものすごい抜群なのがこの日の料理であったと記憶。さてどの皿やったか?
 そしてシェフの道野正さんと料理以外の世間話。おたがいグルメ的な話は絶対しなくて、エキサイティングで少しだけ偏差値が高い、政治や街やファッションの話ばっかり。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅