8月22日
自宅 チキンラーメン

 袋入りのインスタントラーメンはよく食べる。銘柄はだいたい決まっていて、チキンラーメンかマルちゃん正麺(醤油味あるいは塩味)、たまーにサッポロ一番味噌ラーメン、エースコックのワンタンメンという感じだ。
 兵庫県たつの市に『イトメン』という麺食品製造会社がある。その『イトメン』が「トンボラーメン」という名称で袋入り即席ラーメン出したのが昭和33年。
 袋入り即席ラーメンの歴史としてよく知られる、安藤百福氏が発明したチキンラーメンもその年に発売されており、このトンボラーメンは2番目に古いそう。ちなみに翌昭和34年にエースコック、マルタイといった有名どころが相次いで出している。
 さてこの『イトメン』のラーメンだが、一番よく売れているのが「チャンポンめん」。あっさり味で、サッポロ一番塩ラーメンによく似た味かなあ。昭和38年に発売されている長い歴史のインスタントラーメンだ。
 姫路、龍野など西播では「子どもの頃から食べてた」「こればっかし」という地ラーメン的な存在らしい。もっと面白いのは、北陸では相当のシェアを持ち、石川県では「家庭に必ずといっていいほど常備している」ラーメンだそうだ。なので石川県民が就職とかで他所に住むようになったとき「あれえ、売ってない」となるそうだ。
 大阪ではレアなこのチャンポンめん含め、家で食べるインスタントラーメンはうまいと思う。片手鍋に湯を沸かして麺を入れてスープを入れるだけなのにカップ入り即席麺より絶対うまい。

 またカップヌードルはめったに食べないが、同じ湯を注ぐだけのチキンラーメンはよく食べる。専用の蓋付き鉢をもっているぐらい好きだ。凹みに卵を載せて熱湯を入れてできあがったらネギとコショウ、思い出したようにゴマ。それしか入れない。正麺やエースコックのワンタンメンは卵なしだ。
 「豚バラと白菜とネギを妙めて入れる」「小松菜とハムと卵を入れたらおいしかった」みたいなことを言う人がいるが、そんなことはしない。なぜか昔からしない。焼豚があってもラーメンに入れずにそれをアテにしてビールを飲んで、別にチキンラーメンや正麺だけを食べる。
 フレンチや鮨を食べて帰ったりしたときに、無性に食べたくなったりもする。インスタントラーメンの育ちは怖ろしい。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅